「何だ!?」
雁夜は混乱していた。何やら赤い光がこちらに近づいたかと思えば首根っこを掴まれた感触と警告。次の瞬間には真っ暗闇。そうこうしていると
「簡潔に言うぞ!何やら凄い攻撃を受けた。何とか防いだ。でも長くは持たずそのうちやられる!どうすればいい!」
スターリンの言葉に混乱しつつも雁夜は唯一正解の行動を取ることが出来た。
「よく分からんが令呪を持って命ずる!」
キィィィィン!
「この攻撃を凌ぎきることができる堅さをここに!」
簡潔に正確に命じた令呪はその効果を遺憾なく発揮した。真っ暗闇にも慣れてくるとここが狭い車内だと分かった。その車内が令呪の効果からかほんの少し赤みを帯びている。側にはスターリンがいる。
「まだだ!まだ足りん!おのれ英雄王どんな武器を使えばこうなるのだ!」
「重ねて令呪を持って命ずる!この攻撃を凌ぎきる堅さをここに!」
キィィィィン!
更に赤みが増す車内。すると
「咄嗟だったが流石だな。間に合ったようだ」
「ここは?」
「ここはオブイェークト279の車内だ。分かりやすく言うと核戦争に備えて作られたあの履帯が四本ある戦車だ」
「ああ、あの珍妙な外見の」
「そうだ。攻撃がエネルギーのようだったので受け流せるこいつを使ったが令呪込みとはいえ凌ぎきれそうだ。正確な令呪の行使に感謝しているよ。私一人ではここで終わっていたさ」
「そいつは良かった。ん?」
車体を揺らすエネルギーの暴風が止んだ。無事に凌ぎきれたらしい。
「外に出てケリを付けるぞ。あんな攻撃を放ったのだ。隙がない筈がない」
「そうだな」
ガシャコン
ハッチから外に出るとそこは
コォォォォォォォ
雪原だった筈の外は荒れ果てた大地に。あのエネルギーが雪を全て消し飛ばしたようだ。
「よし。予想通り英雄王は立ちすくんでいる。あんな攻撃だ。隙がデカイらしいな。さて使わずに済めば良いと思っていたがこうなっては出し惜しみはするまい。最大火力で消し飛ばす!」
そう言ったスターリンの背後に現れたのは大量の爆撃機。しかし明らかに積んでいる爆弾のサイズが大きい。
「同志書記長。まさかあれは………」
「最大火力とは言ったものの流石に
「そのためのこの距離か」
「ああ、流石に我々も巻き込まれては意味がないからな」
人類の叡知。それはあまりの破壊力故に平和が成り立つ程の兵器。何故なら互いに使えばこの星が滅ぶという文字通り人類の手に余る火力。最も外へ被害が出ない固有結界内において周りの被害を気にする必要はない。しかし固有結界内であれば巻き込まれるため相応の距離が必要となる。
「さて、もしこれで倒せなければいよいよ
「ほう、凌いだか。エアを」
振り抜いた姿のまま固まるギルガメッシュ。全盛期ならばいざ知らずサーヴァントという枠組みに囚われている彼はエアを連発することはできずこうして使った直後は大きすぎる隙を晒してしまう。
「令呪を使ったか。それを鑑みても大した物だ。全力では無いとはいえ星をも砕く一撃を耐えるとは」
「さて、流石の我もこれは不味い」
目に写るのは無数の爆弾。今までの物と明らかに異なる巨大な未知の爆弾に思わず千里眼を使い、絶望するギルガメッシュ。防ぐ時間はない。持ち前の鎧も無意味だと察する。
「よもや、よもや、神秘無きこの時代に人類が自らの星を破壊しうる火を産み出すとは、存外現代の人類も捨てたものでは無いということか。尤も制御しきれておらぬようだが」
起爆する火。無数の熱線と爆風、目に見えない極小の無数の弾丸がギルガメッシュの鎧を紙のように貫き、その体をも貫く。血は出ない。しかし致命傷だ。
「そういえばそうだったな。いつの時代も、人類というやつは破壊に関しては得意だったな……………」
倒れるギルガメッシュ。決着は付いた。スターリンの勝利で
「よし。解くか」
その言葉で一気に現実世界に戻る。その場にいるのは橋の上で倒れるギルガメッシュとスターリンと雁夜だ。スターリンは倒れたギルガメッシュに近づく。サーヴァントは死ぬと消える。消えていないということは未だに死んではいないということ。最も死ぬのは時間の問題だが
「聞こえているか?英雄王。私の勝ちだな」
「ああ、我の………負けだ」
「もうすぐ貴方は消える。その前に言わせてほしい。良い戦いだった。いつまでも語り継ぎ、誇らせて貰おう」
「書記長、そなたは我にエアを抜かせた。それだけでも、誇れることだ。更には我に勝ったのだ。これ以上の、名誉は無いぞ。有り難く受けとれ」
「そうさせて貰おう」
段々薄れるギルガメッシュの体
「最後にこれだけは言っておこう。我は強大故にまだセイバーが残っているが奴の脱落を待たずに聖杯は満たされる。あの聖杯はこの世全ての悪で汚染されている。どのような結果になるか見物だ…………な………………」
とんでもないことを言い残して消えるギルガメッシュ。完全に消えた瞬間
ズン!
腹の底に響く音。見れば山の方から巨大な聖杯と思われる物体がが姿を表している。最も聖杯と呼ぶには烏滸がましい程の禍々しさで。止めどなく黒い泥を吐き出し続けるそれは本能レベルでスターリンに、サーヴァントに警鐘を鳴らす。本当の戦いはこれからだった。
こんな締め方ですが打ち切りじゃあ無いですからね!ちゃんとまだまだ続きますから!