書記長が行く第四次聖杯戦争   作:ガチタン愛好者

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第17話~聖杯破壊~

「なんだ………ありゃあ。あんなのが万能の願望器だというのか?」

 

「あれがそう見えるか?少なくとも私にはそうは見えん。あれは悪だ。資本主義だとかそんなものではない。全人類の共通の悪、滅ぼさなくてはならない敵だ。魔術に疎くとも体が震える程の禍々しいオーラ、一体何をどうすればああなるのやら」

 

「とにかく近づけるだけ近づこう。あれをなんとかできるのは俺達だけだ。あんなのが町を襲ったら…………」

 

「考えたくもないな。行くぞ!乗れ!」

 

召喚したBT快速戦車に飛び乗り山へ向かう。暗闇のお陰か未だに町は静まり返っている。

 

「魔術に疎い俺でも知ってる大原則。魔術は一般人から秘匿されなくてはいけない。この大原則を守るためにも、無垢の一般人を守るためにも、力を貸してください。同志書記長」

 

「言われなくとも。確かあの切り札はまだ残っていたな?」

 

「令呪のことか?ああ、キャスター討伐のお陰で後二画残ってる」

 

「そうか、それを使いきるつもりで行くぞ。あの聖杯らしきものは何よりも最優先で潰さねばならん!」

 

見れば鳥肌まみれのスターリンの体。元々怖がりのスターリンはサーヴァントとして本能レベルで恐怖する相手に気合いと根性と信念だけで突き進む。それを見た雁夜の腹を括る。

 

「あれを破壊できるか分からないし破壊して解決するかも分からないけどもやらずに後悔するよりやって後悔だ!」

 

 

 

冬木市にある大きな山。その麓でスターリンと雁夜はBT快速戦車から降りた。何故ならば

 

「既にここまで…………」

 

真っ黒い聖杯らしきものから吐き出された泥が斜面を覆いすぐそこまで到達していたからだ。

 

「時間がない。宝具を開帳する。集え我が同志!」

 

その叫びと共にスターリンと雁夜、そして真っ黒い聖杯らしきものと泥が現実世界から姿を消した。

 

 

 

慌てて開帳したせいか泥とスターリン達との距離はそこまで開いていない。ギルガメッシュの時のように水爆を乱発するわけにはいかない。

 

「ダメもとだったがダメか………」

 

泥は凍らず雪原を侵食する。泥とはいっても泥のようなものであり、本物の泥では無いため凍らない。

 

「幸い泥の速度は遅い。逃げながら対処法を探そう。この雪原はあの広大すぎるソヴィエトの大地の具現化。果ては無い」

 

泥と一定の距離を保ちつつ色々試してみる。銃を撃ち込み、ロケットを撃ち込み、爆弾を落とした。しかしいずれも効果は無い

 

「あれは飲み込まれているのか?一切効いていないらしい」

 

「そんな!?一体どうすれば!」

 

「今考えている!」

 

スターリンは皇帝(ツァーリ)の使用も検討したが

 

『無理だ。近すぎる上にもし効果が無ければ最悪の状況になる』

 

皇帝(ツァーリ)は人類史上最大最強の破壊力を持つ爆弾でありスターリンの持つ中で一番強い攻撃手段だ。しかし一度の召喚で一度しか使えない。一回こっきりの切り札なのだ。

 

「なあ、同志書記長。もし皇帝(ツァーリ)を使えばあの泥と聖杯を一掃できるか?」

 

「……………正直分からん。効くかどうか定かではないしそもそも近すぎて使えん。使えば確実に我々は塵も残らんぞ」

 

「そうか………」

 

しかしこのまま逃げ続けても事態は好転しない。このまま逃げ続けられる保証もない。

 

「仕方ないか…………同志書記長。一か八かでやりましょう。このまま逃げ続けてもしょうがない」

 

「正気か!?いや…………分かった。やろう」

 

「令呪を持って命ずる」

 

キィィィィン!

 

「リミッターを外した最大火力のツァーリ・ボンバを使用しろ。バーサーカー」

 

「何!?本気か!?確かにそれなら可能性は上がるが…………」

 

「元々長生き出来ない身だ。桜ちゃんのことだがちゃんとあいつには伝えてあるんだろう?俺が死んだって誰も困らない。元々死ぬつもりで参加した聖杯戦争だ」

 

人類史上最大の爆弾であるツァーリ・ボンバだがその最大威力は一度も発揮されていない。実験の際もかなり威力を落として行われた。それでも衝撃波が地球を三周するほどの威力を持つツァーリ・ボンバ。そのリミッターを外せばその威力は想像を絶する物となる。現実世界で使ったならば地球が危うい。固有結界とはいえ一切現実世界に影響が出ないという保証はない。

 

「それにここであれを仕留め損なう方が不味いだろ?」

 

「ああ、そうだな。乗れ!」

 

首根っこを掴まれ、少しの浮遊感を味わうとそこは

 

ゴォォォォォ!

 

沢山の計器に囲まれたコックピット。機体を白く塗装された特別仕様のTU-95の機内だ。中からは見えないが巨大な爆弾層に収まりきらず半分ほどはみ出ているツァーリ・ボンバが腹にくっついている。

 

「しかし後戻りは出来んぞ?実験でさえ逃げ損なうリスクがあったのだ。リミッターを外している今確実に巻き込まれるぞ?いいんだな?」

 

「ああ、重ねて令呪を持って命ずる」

 

キィィィィン!

 

「ツァーリ・ボンバであの泥と聖杯を完全に消し去るまで固有結界を維持し現実世界に一切影響をもたらすな!!」

 

一画増えて四画あった令呪が完全に消える。強力な令呪の力がスターリンとツァーリ・ボンバを包み込む。

 

「ふむ、今ので令呪を使いきったな?雁夜」

 

「!?今俺の名前を…………」

 

「令呪を失った今雁夜。お前は私のマスターではない。故にお前に従う理由は無くなった」

 

ツァーリ・ボンバを泥の中心である聖杯に向けて投下するため巨大な機体を旋回させているTU-95。そのターボプロップの音が響く機内に明らかに声色が変わったスターリンの言葉が響く。

 

「一体どういう…………まさか裏切るつもりか!?同志書記長!」

 

「心外だな。そう思われていたのか?これでも君を信用しているのだよ?同志雁夜」

 

「その呼び名は………」

 

「ここは我が固有結界。故に誰か戦いに関係ない一般人を器用にそいつだけ固有結界から弾き出すことが私には出来る」

 

「…………まさか!?」

 

「私の横にはマスターではない一般人が居る。そんな一般人は即刻ここから弾き出さねばならない」

 

「やめてくれ同志書記長!」

 

「同志雁夜。お前に私がこれから行うことを止める術はない。いいか?私は英霊。既に一度死んでいるしこんな聖杯では受肉出来るかも怪しい。その点同志雁夜はまだ生きている。それに桜を残して死ぬ気か?そんなこと私が許さん。しっかり最後まで面倒を見なさい」

 

「そんな…………」

 

決意が硬いスターリンを止める術が無いことに脱力する雁夜

 

「ただ………そうだな。今から私は命と引き換えに多くの冬木市民。そして人類を救う。そんな身の丈に合わない行いをした男がいたことを忘れないでくれ。さらばだ!同志雁夜!我がマスターよ!」

 

足の震えが、全身の鳥肌が隠せていない。それでも死ぬと分かっていて突き進む鋼鉄の男。そんな姿に雁夜は

 

「分かった。私はこの歴史に刻まれないあなたの偉業を忘れない!どうか御武運を!同志書記長!」

 

見よう見まねの敬礼をする雁夜。それを見たスターリンは微笑み

 

キィィィィン!

 

一瞬雁夜の視界を光が包み込んだ。再び目を開けるとそこは泥も聖杯もない平和な山の麓。

 

「っ!」

 

手の甲には何もない。使用済みの令呪はうっすら残るがそれすらない。今までそれが当たり前だった一人の男との繋がりが感じられない。

 

「繋がりが消えた。つまり同志書記長は完全に消えた。消えたなら固有結界は解除される。でもあの泥と聖杯は出てこない。つまり…………」

 

寒い夜空を見上げる雁夜

 

「やり遂げたんだな。同志書記長。無茶しやがって。馬鹿野郎……………」

 

声は無限の闇に消えていく。それを聞くものはいない。

 

「最後の最後でカッコつけやがって!お前はそんなキャラじゃ無いはずだろ!ビクビク怯えて粛清しまくってた独裁者はどこへ行った!」

 

雁夜の目からは止まることの無い塩辛い水が流れ続けた。

 

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