「本当に、すまない……」
「気にするな。やりようはある」
臓硯が消え、支配されることが無くなった代わりに雁夜はピンチに陥っていた。というのも
「まさかこうなるとは、嬉しいんだが困ったもんだ」
臓硯が雁夜に投与した刻印虫が、臓硯が消えたことで効果を無くしたのだ。お陰で死人のようだった風貌は治りつつあるが、刻印虫のお陰で可能だった魔力供給が出来なくなったのだ。幸いなのはスターリンがバーサーカーであるにも関わらず消費魔力が少ないこと。かろうじて姿は保っているもののいつ消えてもおかしくない。
「こうして生活する分には問題ないが戦闘となると……」
「無理だ。ただ一つだけ手段が無いことは無いが」
「手段?」
「ああ、桜というあの少女であれば魔力供給が可能だ。彼女から魔力だけを受けられれば可能だ。だが……」
「出来るか!そんなこと!」
スターリンが相手だというのに声を荒げる雁夜。それほどまでに彼は桜を気にかけていた。
「せっかく魔術の地獄から逃れたというのに!」
「と言うと思ったよ。だから言ったではないか。彼女から魔力だけをとな」
「どういう、意味だ?」
「私は生前も今もこういう魔術には疎くてな。詳しくは分からんが彼女から魔力だけを受けられれば良いのだよ。可能であればな。であれば彼女が戦場に立つ必要も無くなる。さらに言えばこのサーヴァントという体になったからか感じるのだよ。彼女から潤沢な魔力がな」
「桜ちゃんに魔力が!?まあ確かにここに来なければ遠坂に居たわけだし、魔術の才能があるからこそここに来さされたわけだ。魔力供給だけをか、俺も魔術には疎いが可能ではあると思う」
「そうか」
「そして俺はまだ時臣に復讐出来ていない。今この戦争を降りるわけにはいかないんだ」
「では、桜と交渉といこう。流石に無断で無理矢理はできまい?」
「ああ、相手が魔力供給をしてくれる意志がないとこちらからは何も出来ない」
「やはりか」
桜の為に時臣に復讐するというのに、その為に桜の力を借りるという矛盾にスターリンは言及しなかった。結局のところ当事者以外が行う復讐というものはただのエゴなのである。
桜からの魔力供給はすんなりと行われた。スターリンが桜に優しく接していたこともあり、父親のようなスターリンを維持するためだと言えば二つ返事で応じてもらえた。そのせいか
デェェェェェェェン!
今まで以上にスターリンのオーラが増した。たまに訳のわからない音が鳴る程度には
「まさかとは思うがもしかしなくても以前の俺より魔力が潤沢だったりするのか?同志書記長」
「ああ、以前の死にかけだった
「同志書記長の宝具か、気になるな」
「はっはっは、時が来れば見せてやろう。我等が誇る偉大なるソヴィエトの力をな!」
魔力に余裕が出来たためだろう。上機嫌なスターリン。魔力供給元がある程度信用出来ている桜からということもあるのだろう。
それから数日後、冬木のコンテナ置き場にて
「尚も顔見せを恥じるような臆病者は!征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れぇ!」
高らかに叫ぶ赤毛の大男。それに応じるかのように
「この我に許可なく王を名乗る不埒ものがまさか二人も湧くとはなぁ」
金ピカの鎧を纏った男が現れ
「……………」
その場にはスターリンも佇んでいた。何故なのか、それは数日前に遡る。
「なあ
「補給?」
「それもあるが最も大事なのは情報だ。偵察、スパイ、あれらに勝るものはない。というわけでだ、部下を偵察に向かわせてもいいかね?」
「もしかして………」
「察しがいいな。NKVDだ」
NKVD。それはスターリンが愛用した諜報組織だ。粛正には欠かせない存在であり、破壊工作もお手のもの。スターリンが手を翳すと何処からともなく数人の男が出現し
「行け」
「「「………………」」」
そのまま姿を消した。アサシン顔負けである。そしてそのNKVDから冬木のコンテナ置き場にて戦闘が始まっているという情報を得て、こうしてスターリンは姿を晒したというわけだ。
「ふむ………」
流石に雁夜は姿を見せない。万が一殺されてしまってはその時点で敗北だからだ。そしてスターリンは金ピカを見つめる。
「ほう、誰の許可を得て我を見ている?雑種」
どうやらそれが金ピカの逆鱗に触れたらしい。何本ものこれまた金ピカの槍やら斧やらが飛んでくる。それを見たスターリンは
「短気なのだな」
スッ
手を翳した。すると真っ赤な、槌と鎌の意匠が施された門が出現する。そして
ズガガガガガガ!
門から顔を覗かせた何本もの砲がそれらを迎撃し
「お返しだ。放て」
今度は何やらフェンスのようなものを背負ったトラックが数両出現し
ヒュオヒュオヒュオヒュオ
数えるのもバカらしくなるほどのロケットが放たれた。それを見た金ピカは
「チィ!」
迎撃しようと再び斧やらを射出するも間に合わず、立っていた街灯から離れることを余儀なくされる。地面に降り立った金ピカは
「おのれ………この我を貴様と同じ地面に立たせるか!肉片の一片も残しはせんぞ!!!!」
たいそうぶちギレていた。どうやら低所恐怖症らしい。金ピカの背後に凄まじい量の様々な武具が顔を見せる。しかしスターリンは動じず
「ほう、数比べか。面白い。来い!」
その声と共に門から数両の戦車が現れる。どれも火力自慢の駆逐戦車だ。それらが放たれようかと思われた次の瞬間
「何!?この我に引けと言うのか!時臣!チッ!命拾いしたな雑種。今度我の前に現れる前に雑種同士口減らしをしておけ。我と戦うのは真の英雄でなくてはならん」
そう言い残し金色の粒子となって姿を消す金ピカ。残されたのは
「ふむ」
戦車を静かに門へとしまったスターリンと置いてけぼりを食らったセイバー、ランサー、ライダーであった。
マスターと魔力供給する人間が役割分担をするのはランサー陣営もやってましたしおかしいことではないですよね。それと戦闘スタイルが英雄王と征服王を足して二で割ったようなスタイルですが本人の戦闘力が高くない以上仕方ないのです。むしろスターリンと言えばソヴィエト。ソヴィエトと言えば大地を埋め尽くすほどの兵器ですから。