「ふむ、金ピカがあの最古の英雄王ギルガメッシュ、そして少女がアーサー王…………歴史の書物も信用ならんものだな」
「まあ余が死んでから暫く経っている世の中だ。言い伝えには時代を経るごとに誇張や脚色がされるものよ。為したことがちゃんと伝わっておれば容姿や性別なぞ些細な違いよ」
「とはいえ………いや、これ以上はよしておこう。ふむ、奇遇にも聖杯に懸ける願いが被ることがあるとはな」
「余こそ驚いたぞ。よもや余と同じ受肉を求め、その求める理由もほとんど同じなのだからな」
自己紹介を終え聖杯に懸ける願いを語り始めた王の集い。イスカンダルとスターリンは互いに自らの肉体で世界制覇、世界統一を目指してこの戦争に参加している。ギルガメッシュはというと
「この世の財は全て我のもの。聖杯がどのような宝であれ、宝であるならば我の物であることは明白だ。我の財を雑種ごときが奪い合うなど見過ごせる話ではない」
誰が言ったか人類最古のジャイアニストとはよく言ったものである。ここまではお互いがそれぞれの願いを打ち明け、それに相づちを打つだけのいたって平凡な問答だった。互いに願いを聞いたからと言って自分の願いを引っ込めるようなことは有り得ないと分かっている。それ故そこまで相手の願いに反論することは無かった。彼女が発言するまでは
「私の願いは、ブリテンをあの忌まわしき崩壊の歴史から救うことだ」
そう言った瞬間一気に空気が重くなった。見ればイスカンダルの表情は堅くなり、残り二人も表情こそそのままだが明らかにオーラが変わってる。そんな中イスカンダルは
「その………なんだ。今貴様はブリテンを崩壊の歴史から救うと言ったな。そのブリテンは今の英国か?それとも貴様が必死に守ろうとした過去のブリテンか?」
「決まっている。私が生きたあのブリテンだ」
「つまりそれは………歴史を変えると、そう言うことでよいのだな?歴史を変え、崩壊するはずだったブリテンを崩壊から救いたいと。そういうことだな?」
何度も確認するイスカンダル。それはまるで彼女の願いが間違っていてほしいと願うかのように。しかし
「くどい、最初からそう言っている」
「……………はー、これは余の見込み違いだったかな?」
「なんだと!?」
さっきと同じような流れ。違うとすれば落ち込んだスターリンに対して彼女は怒っているということか
「分からんか?今の世は貴様の時代のブリテンが滅び、その上に成り立っているのだ。その滅びを無くすということは今までのすべての歴史を書き換え、無かったことにするということだぞ?強欲にも程がある。確かにな、王とは誰よりも強欲で、誰よりも怒り、誰よりも悲しむ。全ての人間の頂点にいるべき存在だ」
「……………」
「だからな、百歩譲ってその願いを持つことだけは許そう。誰だって一度は思い描くことだ。あのときああだったなら、もしこうなっていれば、とな。実際余だって何度そのように考えたか数えきれん。だがな、歴史を書き換える。それはつまり貴様と共に戦った部下、同胞、それら全てを否定し、無かったことにするということだ!それだけではない。今に至るまでの全ての歴史を無かったことにするということだぞ!」
「それは………」
「なあ騎士王よ。今一度考えてはくれんか?貴様はこれらを知った上で、尚歴史を書き換えるというのか?」
「だが………しかし………」
自問自答するセイバー。何せブリテンの復興のみを願い、召喚された身だ。その願いを否定しては存在意義さえも揺らいでしまう。
「やり直せば…………いや、円卓の騎士達の頑張りを私は………………」
歴史を書き換える。言うのは簡単だがそれに伴う犠牲を考えていなかったセイバーは悩む。それを見たイスカンダルは
「今の時点で余は貴様を王とは認めん。次に会った時に再びその答えを聞かせてもらおう」
そう言い残して帰ろうとした次の瞬間
ッ!
「ん?」
宴の場となった中庭を取り囲むように音もなく出現した骸骨の面を着けた黒一色の人影。その数は数十を越える。
「馬鹿な!?アサシンのサーヴァント!?」
思わず叫ぶウェイバー。それを見たイスカンダルは
「これは貴様の差し金か?金ピカ」
「時臣め、余計な事を………この我がこんな下らん事をすると思うのか?」
「違うだろうな。聞いただけよ。どれ………」
イスカンダルは残った樽の酒を柄杓で掬い
「さぁ遠慮はいらぬ。少しばかり遅い到着だが飲むがよい。この酒は貴様らの血と共にある!」
「ライダー、あんなやつらを誘うのか?」
「何、突然の参加者にも寛大に接してこそ王の器が知れy」
パシャン!
返事はナイフだった。柄杓は切り裂かれ注がれていた酒がイスカンダルに降り注ぐ
「「「フフフ」」」
アサシンの笑い声が響く。
「そうかそうか、確かに余は言ったはずだ。この酒は貴様らの血と共にあるとな。あえてぶちまけたいというのなら…………是非もなし!」
イスカンダルがそう叫ぶと辺りに乾いた風が吹き荒れる。見ればTシャツ姿のラフな格好だったイスカンダルは戦装束に身を包んでいる。
「最後の問答だ!王、そして書記長よ!」
叫ぶイスカンダル
「王とは!孤高であるか!否か!」
その問いに
「……………」
無言のギルガメッシュ
「王とは、孤高であるべき者だ」
未だに迷いが残る声色のアルトリア
「同志とは平等であるべきだ。尤もそれらの指揮を執る上で書記長は孤高である。そうでなくてはならぬ」
「駄目だな。全くもって分かっておらん。そんな貴様らには余が今ここで、真の王たる姿を見せつけてやらねばなるまいて!」
一層強くなる風。そこに光りも加わり
「「「!?」」」
それらが収まり目を開けると
コォォォォォォォ
辺り一面の砂漠。明らかに城の中庭とは違う。
「固有結界、心象風景の具現化だなんて………」
アイリスフィールが思わず呟く
「魔術師ですらないはずの彼がどうして………」
ザッザッザ!
砂漠に響く無数の足音。見ればそれは一面を埋め尽くす兵士の海
「この風景を具現化できるのは、これが我ら全員の心象であるからさ!見よ我が無双の軍勢を!肉体は滅び、その魂は英霊として世に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者達!」
ザッ!
兵士達が足を一斉に止める。
「彼らとの絆こそ我が至宝!我が王道!イスカンダルたる余が誇る最強宝具、
ウォォォォォォォォ!!!!!!!!
一斉に鴇の声を挙げる兵士たち。まるで地響きのようなそれはまるで一つの巨大な生き物の様である。王とは孤高ではないと宣った征服王の宝具はそれに違わぬものであった。