職業:元巫女の少女へ、艦隊を指揮する気はありませんか? 作:月見ノ猫
「…で、一体何処にいるんだ。その指揮官様とかいう大層御大層な身分の奴は」
「逆に聞きますが、一体どのような手段で探そうとしていたのですか…」
「総当たり」
「…いったいどのような手段であそこまで来たのですか?」
「ゴリ押し、片っ端から全部の部屋調べて」
聞いてあきれました。こんなところまで単騎で来たのですから大層な知恵を絞ってきたのだと思えば単純に脳筋戦法で来ることが出来た、というのですから。
突如として私たちのいた船を襲撃し、瞬く間に指揮官を除く全船員を作戦も何もなく、ただ目の前の敵をひたすらに討ち取ったというこの女性。
名前はーハクレイレイカ
只者では無いこの女性、だがしかし私たちの様にKAN-SENではない。では彼女は一体…?
そもそも、なぜこの船には10人のKAN-SENがいることを知っているのか。そしてなぜ航路を知っていたのか。
航路の情報は他港でもわかるものの、KAN-SENの売買は限定された裏のパスがある母港間のみ共有され、その他の母校や大本営には過去一度たりとも漏洩されていないのだ。
つまり、彼女は他の母港に潜んでいたスパイ…
いや、その線は絶対ない。スパイなら事を荒立てずに任務を遂行するはずだ。もしくは要道のために他の暴動を起こしてそちらに目が向かっている間に本来の任務を行うはず。
いや、仮に私たちの救出が揺動だったとしたら?
…それもない、指揮官を捕まえたいのであれば確実にこの期は狙わない。
何故なら動くにしても大雑把すぎる。護衛艦の揺動も、この船への直接的攻撃も、もう少し隠密にやるはずだ。そうでなければ他の母港から、この騒動を嗅ぎつけられる。
嗅ぎつけられれば確実に他の母港によって闇に葬られるからだ。
じゃあ、改めて彼女は何者…?と、疑問が出てくる
ですが、それよりもさらに気になることが一つ。
「何故ついて来られているのですか?ユニコーン様?」
ぴくっと、震えた小柄な身体と紫陽花の様な美しさと可憐さを持った髪色と幼げな顔立ち。
不安げな表情の中に何処か少しだけどうしても付いて行きたいという固い意志が練り混じったような強張った顔をしている、私と同じロイヤル所属の軽空母艦、ユニコーン様がわつぃたちから二歩、三歩程後ろに間を開けながら付いて来ていました。
「あ、ぅ、そ、その…」
「ここは危険ですから、皆さんと一緒にいるように。…と、お願いしたはずですが」
そう言うと、体を縮こまらせて顔を俯かせてしまう。
どうやら本人には悪気はないらしい。ですが、このような荒事にいくらKAN-SENであるユニコーン様でも、見せられない。
自らが奉仕するのは厭わなく無くても、きっと他人のを見れば、間違いなく、心がやられる。
何故ならユニコーン様の精神には【誰かに対して甘えるような軽い依存癖】を持っているから。
誰かに傷つけられるのが怖いのではなく、誰か支えてくれるような存在がいなくなる方が彼女には効く。恐らくイラストリアス様もそれには気付いていた。だから、最後の最後まで何も言わず逃げることもなく依存されるものとしてあの鎮守府にいた。あの方ならば一人で逃げだすことなら容易だったのに。ユニコーン様の精神の砦になるために、残った。
依存しているものほど、依存するものがなくなると手が付けられなくなることを、無意識に気が付いていたのでしょう。
特に、ユニコーン様の場合は心が幼い、だけどそれに対して心が自立を求めてひたすらに、まるで指の掛け場もないような崖を上るような、そんな危うさを含んだ状態で今、この場で汚されて、衰弱しているであろうロドニー様の姿をご覧になったら、確実に心は破綻する。
故に来てほしくないのだ、ユニコーン様のためにも。
だけど、出来ない。やらないのではない、出来ないのだ。どうしても彼女の無意識なその健気さにはどうしても抗えないのだ、良心同士が呵責し合うような、せめぎ合うような、そんな気持ちのぶつかり合いを感じ苦虫をかみしめるような感覚に陥ったときでした。
ユニコーン様にいつの間にか発煙筒を、ミコと呼ばれる重桜の神職の女性が着る服装によく似た服を身にまとったレイカ様は手渡し…
「これを、外で焚いてきて欲しい。外の協力者にこっちに来てもらえるように誘導するサインだから」
そういうと甲板に繋がる通路を指さす。
こくりと小さくうなずいたユニコーン様は言われるがままに通路を駆けていく
その様子を何一つ浮かべていない無表情のまま、レイカ様は私の方を向き
「こうして、話しておいた方がいいだろう?お前にとっても、あの子にとっても」
そう言うとそのままユニコーン様が駆けていった通路から枝分かれするように供えられた狭い階段をいつの間にか一人で登っていました。
気が付いた私はその後を追うように急な階段を慌てて駆けあがります。
慌てて登ってきたメイド少女に連れられてやってきたのは、最上層の区域。
どうやら、指揮官とやらはこの区域にいるらしいが…。
「アレか?」
「ええ、あの部屋です」
防音でもしているのか音は一切部屋外に漏れ出てはいないが、鉄製の扉ばかりの船内に、唯一と言ってもいいかもしれない、木製の扉に金の縁に【指揮官室】と書かれた札が中に埋め込まれている扉があった。
まるで扉から、【上級階級の者以外立ち入りを禁ずる】、と主張しているかのようだ。
率直に言おう。趣味が悪い、反吐が出そうだ。
メイド少女と私、互いに扉の傍の壁に背を向けて。一瞬だけ互いの顔を見る。いつでも動けるが気をじっと待つようにその場に佇む姿から、どうやらメイド少女は、私に突入するタイミングを譲ったようだ。
息を一瞬だけ大きく吸い込み、口に含んだ空気を肺に直接流し込むように溜める。
そして、中腰の姿勢から左足を前に出して、その左足を軸に腰を捩じり右足を体の奥へと回しこむように動かす。
…そして、
―喝ッッ!!
吸い込んで溜めたい気をはじき出すように声を出したと同時、限界まで引き延ばされたゴムのようにしなやかに、且つ、勢いよくはじき出された右足は頑丈な鉄製のカギをものともせずに、扉をまるで弾き飛ばしたかのように元あった場所から丸々吹き飛ばした。
綺麗に穴が開いた扉の跡を通り抜けて部屋の中へと飛び込む。
そこにいたのは…
気を失いながら恥部をさらけ出して床の上で寝そべる女。恐らく、最後の一人のカンセンとやらの少女。
そしてもう一人は、汚い海綿体を精一杯大きく膨らませて固くなった棒を糸引く粘液で湿らせたまま隠さず丸出しのまま、驚きの表情で満ち満ちた顔をこちらに向けている男。
体格は少し筋のついた体つき、身長も低くもなく高くもない平均的と言ったやつだ。
そんな男は状況を理解したのか、手近にあった机の上の拳銃に手を伸ばす。
そのまま、照準を私に向けて引き金を引くつもりだったのだろう、しかしその動きが遅いうえ隙だらけだった。
―容姿ハ何テ事ノ無ヒ、男ダッタ
―其ノ、醜悪ナ人ノ性サへ無ケレバ、コンナ事ニ成ラ無カッタダロウニ
銃ばかりに意識を持っていった故に私が目と鼻の先まで近づいたことにこの男は気が付かなかった。
だから、遠慮なしに握った拳は悠々と、男の横っ面を歪ませ、そして鼻の血管が裂けたのか、汚らしくどす黒い静脈血を撒き散らしながら、そのまま奥にある戸棚に体を衝突させて気を失ってしまったのか動かなくなってしまった。
―壊レタ戸棚ノ奥、鋼鉄ノ何カガアッタ・・・。
目にした私は男の事なぞ露知らず、そのままその何かに近づき手を触れてみる。
―ソレハ人ガ身ニ纏ウニハ余リニ重ク、ソシテ、人ガ纏ウノニ適シタ大キサダッタ。
矛盾した装備だ。人が使うのに適したサイズであるのに関わらず。その重さは見ただけでも解るように、鈍重で、強固だった。重装備というのにも程がある。いやコレはそもそも装着するように産まれたものなのか?そして、使うとしてもこれはだれが使う、いや、誰が使えるのだろうか?
疑問は一瞬にして解けた
メイド少女が此方に走って来る。
そのまま、先まで犯されていた少女…というより女を介抱しながらこちらに近づいてくる。
そのまま、鋼鉄の装備をみれば。
「こんな所に保管していましたか。小心者の屑虫らしい保管場所ですね」
―コンナ重ヒ物ヲ、ソノ小柄ナ身体デ…?
そう思い、思わずメイド少女の目を見ながら、鋼鉄のソレに指をやる。
じっと私のその様子を眺めている様子からどうやら本当にこの鋼鉄の塊のような装備を着こむようだ。
介抱されている女を取り合えずメイド少女から預かると、
―取リアエズ、生臭イ
第一印象がそれだった。が、気も失って自力でこの臭いと汚れは取れないだろう。
周囲が異変に気が付き男の仲間が駆け付けるのも時間の問題だろう。
正直時間はなかった、だがせめて汚れくらい多少落とすくらいなら問題ないだろう。
部屋の中を漁り、小さなタオルを見つける。
水で濡らし、ある程度水気を切る。
そのまま汚された体を拭いてやる。穢れたままで、いるよりは気持ち程度でもいいから。拭ってやった方が心も多少は楽になってくれるだろう。
…それにしても、美女率高くないだろうか?KAN-SENというのは。
本能がもう戦闘は無いだろうと判断したのか、そんな気の緩んだ考えがよぎる。
美人の基準が一般的には分からないが、少なくとも町に出れば男を見惹く様な美の魔力の様な魅力がこの少女たちにはある。
それだけじゃない。動きの中に無意識に気品あるような仕草がある。男たちに媚びる様なそんなモノじゃなく。根本的な、そう、精神的な気品さが。
女の私でさえ美人と思うのだ、間違いなく男たちには目に毒だろう。
―ダガ、決ッシテ、手ヲ出シテ良イ湧ケジャァナイ
欲ニ身ヲ投ゲレバ、
沼ニ引キヅラレ、
其ノ先ハ破滅ダカラダ
ありとあらゆる世界を逃げ歩いてきた私はよく知っている。
一時の金銭欲に、情欲に、食欲に、名誉欲に、ありとあらゆる存在する欲。その欲に身を一度投げ出してしまえば最後、破滅に自信を追いやるという当然の帰結を。
しかし抜け出すのは困難である、そう…
「こんっのぉ…っ!!」
先に気絶したはずだが、もう気が戻ってきたこの男の様に…
―引キ金ガ引カレル
―鉛玉ガ、私ノ脳髄ヲ捉ヘル
死を直感した際あらゆる生物はきっと、超感覚の状態に陥る。例えば今の私の様に、訪れる死を前にした際にはありとあらゆる神経や精神力を総動員して、必死に生をつなぐように模索する。
脳が処理を終え、体が実行するよう全神経を伝って脳から瞬きの様なあっという間の時間の内に私の志士が命令を了承し実行する。
女に覆いかぶさるように体全身を伏せる。
弾丸は、急激な動きに追いつかなかった私の髪を掠めて、そのまま窓ガラスに銃痕とヒビを付けて飛んで行く。
一発目を外し、すでに激高していた男の怒りはさらに高まり、見るのも醜く歪んだ表情で、引き金をもう一度引こうとする。
その引き金を引けば、私は良いとしても、下になっている女の身体を貫通するのは必至だ。
させまいと、体を限界まで手で縮められたバネが、手によってかけられていた圧力が離れた瞬間勢い良く弾けるように飛ぶように、ベッドの上から勢いよく体を離して、男の腕を取り押さえ…
と、思っていたが。男の後ろから鋭い回し蹴りが…。
―ゴキっ!…と言う鈍い音が男の首元から。これは軽い治療どころで済む話じゃなくなりそうだな。半月は絶対寝たきりだ、間違いない…。
そして、蹴りを放った人物。メイド少女は、汚物でも見るような目で
「さようなら、蛆虫。もう貴方の元に使えなくていいと考えると清々します」
仮にも上司的存在を蛆虫呼ばわりとは、大層彼女の逆鱗に今まで子の指揮官とか言う役職の男は触れてしまっていたようだ。
まぁ、イラストリアスや今ベッドで気を失っている女のような扱いを散々行っていた様子から、まぁ、自業自得だ、としか言いようが無いが…。
とりあえず、メイド少女は殺さずに何故か男を縛り上げて。そのまま甲板にでも引き摺って行こうと言う。何でも…
「この方の、【お友達の方々】に見せしめと、牽制もかねて。何時までも何をしても従順だと思われない様に」
さらっと、そんな事を口にするからさすがの私も一瞬身震いした
こう、なんというか。コイツはキレると、ヤバい。一生を潰しにかかりに来かねない。
まぁ、一生を潰すどころかその場で終わらせてしまった私が言うのも、お前が言うかという気もしないわけではないのだが。
女を背負い甲板に向かう。恐らく、先にイラストリアスの義妹が制圧完了の印として渡した発煙筒を焚いているはず、イラストリアスも恐らくここに到着しているころだろう。
そう思いながら甲板へとつながる通路を通り、そのまま突き当りにあった扉を開いた。
風が激しく吹き荒れ、周りには何やら武装した真っ黒な兵士たちが、その前には一人、白服の男が。顔つきからして20代前半、優男と言う言葉がよく似合う穏やかな顔つき。
そのむさくるしい男たちの集団から間を開けてイラストリアスとその義妹が。まるでがけっぷちにまで警察に追い詰められた何らかの事件の犯人後ろに後退っていた。
いや、追い詰められた犯人と言うよりかは、花街から逃げてきた少女二人が館の主人の遣いに追い詰められた、という表現が近いかもしれない。
様子からして、イラストリアス達からしたら天敵のような存在。さきに襲った指揮官とやらの友人なのだろう。
そんな奴らの前に女を背負った状態でその場に行けば、確実にこの二人のカンセンも奴らにマークされる。
故に、その場で女を下ろし、メイド少女に託す。
何かを察したのか目を点にしたメイド少女が口を開く
「…貴女、まさかあそこにいる全員を⁉」
「いや、まぁ、全員助けるっていうのが契約の内容だし…破綻させるにはいかないしな」
「契約…?」
「ああ、契約。破るわけにはいかないだろ」
「貴女死にますよ、あの指揮官はあの蛆虫みたいに単純じゃない、狡猾で、どれでいて獰猛で、人を騙し裏切る。まさに屑と言うのにこれ以上ないほど相応しく、そして、その片鱗も見せないその姿に、騙されるんです」
なるほど、詐欺師で屑で外道であると。それでいて尚且つ素晴らしい人間だと周りの人間全員を騙す。だから人を動かせる。
なぜなら騙した後の人間を盲目的にして、自身の手駒にできるほど頭が切れるから、たとえ正義感の強い人間でも堕落させることが出来るほどの。
でも、私はどうだ。あらゆる人間から排斥された、そしてあらゆる人間を狩ってきた、生まれた時からすでに外道で、そこからさらに災禍だなんて呼ばれた私はどうだ。
多分大丈夫、なぜなら私ほど、罪深い外道は存在しないはずだから。外道であると認めて飄々と生きている最低な輩なんぞ、いないから。
「騙される前に、刈り取ればいい。何心配するな、今回の事はすべて私がやったんだからな、誰かに聞かれても、私に脅されてやったとでもいえばいい」
そう言い残したなら。もう何も言う事はあるまい。そのまま、通路から甲板へと出た。
甲板の上はヘリコプターの明かりでこれ以上ないほどに照らされ、一瞬手を光源に向けて翳す位に眩しかった。
風はヘリによって激しく吹き荒れ、衣服が荒波の様に波打つ。
そんな状態でも平然とした様子で兵士たちは突如現れた闖入者たる私に銃口を向ける。
だが、白服の男が小さく手を上げると一斉に、まるで命令された一体化された機械の様に銃口を下ろす。
よく統率が取れている。思わずそう感心した。本来不審者がいれば命令で銃口を下ろしたとしても渋々と言った様子で降ろすはず。なぜなら自身に危害を加えるかもしれないそんな不安が心の奥底の自身でも気づくことのない無意識的本能が働くだから。
しかしこの兵士たちにはそれがない、ありとあらゆる命令に躊躇いが一切ない。
人を引き寄せ相手も自身も不快無く使役され使役できる人心掌握術。おそらく即効性はないものの遅効性の毒の様に支配するその術を持っているのだろう。
白服の男が私の顔をじっと見る。
数瞬だが、目線がぶつかる。その数瞬は恐らく互いにいつ相手をどう打ち負かすか。そんな、死闘の前に起こる張りつめた空気感。それに近かった。
その均衡を打ち破られたのは白服の男の口が開いた時だった
「はじめまして。まずは感謝を、彼女たちを救ってくれてありがとう」
「それはどうも。指揮官殿のご親友様?」
「親友、ああ、親友だったさ。まさかここまでの外道に墜ちるとはね」
「知ってたのか。なら何故すぐ止めなかった。そこまで大切な【モノ】を自身の欲に消費されていたのに、どうして止めなかった」
「止めたさ、けど私には彼を完全に改心させることはできなかった。酷く言い争ったがそれでもできなかった。あの時無理やりにでも何かしら手を打っていれば、こんな事には…」
そう言うと、顔を少しだけ下に向け頭にかぶった帽子のつばを深く下ろして目元を見せないようにする。後悔が入り混じった、何とも言えないそんな様子で。
が、所詮演技だ。私にはよくわかる。顔に墨汁で書いてある
ーコノ女モ手駒ニナル迄騙シ堕トシテヤル
狸が…。思わずそう思った、だが今この場でドンパチやるのも気が引ける
…様に空気を制されてしまった。
だから…
「心中は察する。それじゃあ、私はお暇させてもらう」
そう言うとイラストリアスと義妹の手を引いてその場を後にしようとする
「待ちたまえ。どうして彼女たちを?」
「そりゃあ、友人の悪事を止められないような軟弱者が、誰かを守れるとでも?それに、私は契約したからな、コイツの仲間全員を連れ戻すまで私はこの件に首を突っ込むって」
「なら、それはもう達成されたじゃないか。あとは私たちの専門だ、君はもう安心してうちに帰りなさい。何なら私の部下に君の家まで」
「断る。契約はまだ終わっていない。よく言うだろう?家に帰るまでが遠足だって。全員を基の場所まで戻すまで契約は履行され続ける」
「だがしかし、彼女たちは海軍の所属だ、年端いかない君がこれ以上危険を冒すのは大人として…」
「海軍だろうが空軍だろうが陸軍だろうが。この件についてはその軍で起こった不祥事だろう?その軍にいる人間があとは引き継ぐ?笑わせるな、お前の場合は後でありとあらゆる所から自分たちの尻尾を掴まれない様に、跡形もなく全部を消してそれで尻拭いは終わったってやりかねない。大きな組織なら尚の事やるだろう。なら、中庸である私が責任をもって片づけたほうが、世間も納得するんじゃないか?」
「だが、彼女たちの存在は、我々にとってとても重要な事なんだ。確かに君の言う通りもみ消されるかもしれない、だがしかし、今回の件が公けになったとしても彼女たちはその後どうする?海軍の娼婦と言うレッテルを張られて後ろ指を指されながら笑われて侮辱されながらそれでも君はこれを公にするつもりか?」
「言い返させてもらうが、じゃあ娼婦の様に使われたアイツ達を、指揮官の裏の友人か誰かが言いくるめてまた同じように利用されてもお前は良いっていうんだな?一生を性奴隷の様に扱われ、盥回しに証拠隠蔽もかねて、アイツ達の全てが壊れたとしてもそれで良いと、お前は言うんだな」
「それは違う!私たちはそうならない様に事態のすべてを厳重に且つ穏やかに責任をもって終わらせると言っている!」
「なら尚の事内輪だけですべてを終わらせるんじゃなくて、私の様な第三者の存在も必要じゃないのか⁉内輪の極一部で何時の間にか丸め込むのは、お前のような人間の得意分野っぽいからな!」
いつの間にか口論は熱くなり互いの視線が火花を散らしているのがよくわかる。同時にこの口論も千日手で終わることも互いに悟っていた。
何時、何方から動く。どう動く。お互いに口を開かなくなった代わりに、きっとそんなことを無意識のうちに考えていたのだろう。
そんな時だった、互いに気が付かなかった第三の陣営がいつの間にか近づいていたのを知ったのは。
もう一つ、眩しい光源が空に現れ、同時に私たちいる船の周りは幾つもの小型船で取り囲まれ明かりを照らされていた。
それに気が付いたと同時に、この船の持ち主たる指揮官が全裸で拘束されたまままた別の武装兵たちによって運ばれていた。
―まさか、目の前の男の救援か⁉
そう思ったが、目の前の男も驚きに満ち満ちた表情で周りを見渡している。
恐らくこの男の救援ではない。なら、だれだ。いったい何処の何者が、こんなにも恐ろしいほどに素早く包囲できるほどの人員とそれを達成できる人材を確保して実行に移せたのか。
―答えはすぐに知れた
「呉の朝凪指揮官!それと、巫女服の少女!直ちに武装がある場合は解除し、付近にいる憲兵の指示を仰ぎ、行動しなさい!抵抗しない場合はこちらで手厚く保護し、抵抗する場合はその場で射殺する!」
―繰り返す!
…と、上空から少々ノイズ混じりに聞こえる【どこかで聞いた女の声】
先までの衝突寸前の緊張感故の筋の張りを緩めて、近くにいた兵士から、今いる場所で大人しく待つように言われ、待ってみる。
白服の男は兵たちと共に自身が乗ってきたヘリへと誘導されて先にその場を後にした。
やがて、上にいたもう一機のヘリが甲板へと着陸する。
重厚な鋼鉄製の扉が開き、声の主であろう女が現れる。
「あ、貴女は…大本営の…!?」
…と、驚き交じりに声を出すイラストリアスに対して、私は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
天人独特の服装に銀色のロングヘアー、小さな桃が付いた帽子をかぶるその女を私はよく知っている。
「久しぶりね、マガ♪」
「何でここにいるんだ【女神天子】」
自由気ままで女好き、そして私の数少ない信用ができるに値し、私を排斥しなかった人物。
女神天子、その人だった