現に微睡み、藤波に堕ちよ   作:小夜夏

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超絶まったり〜だけどもうちょっと頻度多くしたいと思っていたり、思わなかったり

煽りストな語彙力が欲しい




伍:既に終わった話

 

 

「あり?一年ズは?」

 

交流会のために一年生たちを鍛え始めてはや一週間。

初めて会った時に生意気な口きいただけあって根性もあるし、強くなりたいと燃えてるからか腕もメキメキと上達している。

 

鍛え甲斐あるよな〜とパンダは思いながらグラウンドに戻ると一年生たちの姿はなく、同期しかいない。

 

「パシった」

 

実に短く教えてくれた真希にパンダはあの一年生たちは今頃、自販機あたりに向かっているのだろうと当たりをつけた。

 

普段ならそこまで気にはしないがふと交流会の打ち合わせが今日だと気づいたパンダは不安になった。

 

一年生たちが強くなりたいと燃える理由──虎杖が死んだあの一件。

悟とバチバチの上層部が仕組んだという話は生徒であるパンダでさえ聞いているのだ。

あの上層部嫌いで有名な先輩も悪態を吐いていたし、悟も機嫌が悪そうにしていたのでそれは真実なのだろう。

 

……今日、東京校(うち)にやってくる京都校の学長なんてモロその人じゃん!

もし、あいつらがそれを知っていて京都校の学長と鉢合わせなんかしたら…ヤバイって!!

 

パンダはパンダだがパンダのクセして人一倍人の心があるのだ。

絶対、まずい事態になるだろと思ったパンダは大丈夫なのかとそれとなく真希に伝えた。

 

「お遣い位出来るだろ」

「そうじゃなくてさ…」

「もう終わっちまったことにジジイどもが今更騒ぐワケねぇって」

 

真希がそこまでバッサリと言い切るのならそうなのかもしれない。

だが、さっきから感じる不安はこれぽっちも消えない。

 

「ん〜でもな〜…他の奴らはそうじゃなさそうな気がする…」

「…そのためにわざわざ京都から来るってか?」

 

暇人じゃねぇんだからと取り合わない真希にいやいや、杞憂に過ぎれば良いだけどさとパンダは前置きして言う。

 

「だってアイツら、嫌がらせ大好きじゃん」

 

 

◇◆◇

 

 

パンダの杞憂だったら良い。

まあ、でも一応見に行った方がいいかと自販機に向かえばど派手に壁をブチ抜いた音と振動が響いた。その後には連続した銃声も。

 

パンダと狗巻はその震源へと急いで向かい、真希はそのまま銃声が響いた自販機に行く。

 

「ウチのパシリに何してんだよ。真依」

「あら、落ちこぼれすぎて気づかなかったわ。真希」

 

そこにはパンダが予想した通り、真希がよく知っている京都校の人間(双子の妹)がいた。

 

「お前だって物に呪力を篭めるばっかりで術式もクソもねぇじゃねぇか」

「呪力がないよりマシよ」

 

「あーやめやめ。底辺同士でみっともねぇ」

 

一問答するがすぐにみっともないと思った真希は仰向けに倒れ込む釘崎に声をかける。

 

「野薔薇!!立てるか!?」

 

ムダだと言う真依に見る目がないなと真希は思う。

いや、こいつらの根性を知らない奴に気づけと言う方が仕方ないかと持っていた稽古用の薙刀の切っ先を真依に突きつける。

 

「何?やる気?」

 

「ナイスサポート、真希さん」

 

真依がこっちに気を取られている隙に背後から忍び寄っていた釘崎が襲うのを見て仕方のないやつと薙刀を担ぎ直す。

 

ザッと近寄ってきた気配に目を向けると何故か上半身が裸になっている男──京都校の三年である東堂が側に落ちていた上着を拾っていた。

 

大人しいその姿にパンダたちの方はどうにかなったかと真希は内心ほっとした。

 

「帰るぞ、真依」

 

真依を落とすのに夢中になっている釘崎は東堂が近寄ってくるまで気づかず、驚いて手を離してしまった。

 

「伏黒は…」

「心配すんな、パンダたちがついてる」

 

真希は嫌な想像をしている釘崎にすぐさま訂正を入れさせる。

 

一方の真依はすぐに釘崎から離れて空になった銃から薬莢を出して弾を充填する。

 

まだやる気の真依に面倒だなと構えようとした時──

 

「さっきから騒がしいと思えば」

 

まさかこんな時に来るとは思わず、真希は驚いた。

そして彼女が来たのならこれ以上割って入る必要はないなとすぐさま判断して構えるのをやめた。

 

一方、聞き覚えのない声に誰だと釘崎は振り向いた。

 

そこにいたのは数冊のバインダーやファイルを抱えた真希と似たような制服を着た少女。

いや、少女ではないな。

 

釘崎はすぐに自分の考えを否定する。

小柄な姿だが、こちらを冷たく見下ろすような桔梗色の瞳には見覚えがある。

あれはクソな大人がよくする目に近い。であればこの人物は子供ではなく自分と同じくらいの年齢の女性だろう。

 

「交流会まで待つことも出来ないなんて…いつから京都校は動物園に変わったんですか?」

 

長い袖からちょこんと出るグローブに覆われた手を唇に這わせながら嘲笑する。

その煽りは先ほど自分たちを煽った真依のようでこの人はあの女と同類なのかと釘崎は理解した。

 

「なっ」

 

まさか煽られるとは思っていなかった真依は青筋を浮かべて銃を構えようとしたが、側にいた東堂によって止められた。

 

「玉蟲か。丁度、お前に会いたかった」

「……私は一生会いたくなかったのですが」

 

初手の嫌味を華麗にスルーされた藤花は面倒臭さを全開にしながらも東堂と会話をする。

 

間に挟まれた釘崎は私たちを挟んで会話するなよと内心ツッコミを入れながらも東堂に玉蟲と呼ばれた女性を改めて見る。

 

────あの人が先輩たちが言っていた玉蟲先輩。

 

会って間もないが先輩たちが微妙な反応をするのも頷ける。

むしろ、悪い人ではないと言う先輩たちの精一杯のフォローに涙が流れそうだ。

 

どこが不器用な人だよ伏黒。お前の目は節穴か。

態度といい、言動といい釘崎はあのセンパイとは上手く付き合えないだろうなと確信した。

 

「お前がここに居るということは停学にはなっていないんだろう?退屈し通しってワケでもなさそうだがそれでも役不足だ。

お前も交流会に出ろ」

「また交流会の話…どいつもこいつも五月蠅いですね」

 

東堂の要求に藤花は嫌そうに顔を歪める。

つい一週間前からことあるごとに話題に上るその話に良い加減うんざりしていたのだ。

 

「俺たちにとって最後の交流会。魂と魂がぶつかり合い、血湧き肉躍る素晴らしい戦いにしようではないか」

「結構です」

 

その戦いを想像しているのか闘志を漲らせる東堂に対して藤花はバッサリと切り捨てた。

想定外の反応に出鼻を挫かれた東堂を見て藤花は良い気味だとフンと鼻を鳴らす。

 

「外野のあなたが喚こうが癇癪起こそうがムダですよ。交流会についての話は既についているんですから」

 

そして東堂が口を開く前に交流会には絶対に出ないことをピシャリと叩きつける。

話がついているのは五条とで学長は相変わらずしつこく粘ってくるが藤花が参加しないと決まったことには変わりがないのでそれは棚に上げておく。

 

「お前が交流会に出ると言うまで存分に話し合いたいが…。くっ…それ以上に大事な用事が…!高田ちゃんの個握が!!」

 

玉蟲と会えると分かっていればもっと早く来たのに…!!と血涙を流さんとばかりに悔しそうに言う東堂に藤花は話聞いてました?とツッコむが無視された。

相変わらず自分勝手に物事を進ませる東堂に思わずビキリと青筋が浮かび上がる。

 

京都校の生徒を連れて遅れるわけにはいかないとぶつぶつ呟いて帰る東堂に一発入れたい気持ちになるが、東堂の用事のおかげでこの一悶着が終わるのなら別に良いかといつの間にか握っていた拳を解く。

 

「何、勝った感出してんだ!!制服置いてけゴルァ!!」

 

五月蝿い奴らが帰って満足する藤花だが他はそうでもないようだ。

さっきから真希の側にいた人物──この間パンダに転がされていたのを見たので最後の一年生だろう。が真希に羽交い締めされながら威嚇している。

真希が止めていなければ一発ぶち込みに行っていただろう。

 

交流会でボコボコにすんぞと宥められてようやく静まったのを見てこの場にもう用はないと判断した藤花は戻ることにした。

 

「玉蟲先輩」

「………なんです?」

 

真希に呼び止められた藤花は面倒だという表情を隠さずに顔だけそちらに向ける。

 

「先輩は交流会出ないってことでいいんすよね」

「見ての通りですが?あなたたちも元からそのつもりでしょう?」

 

確かめるように紡がれた言葉に藤花は何を当たり前なことを聞いているのだろうと目を一度瞬かせて答えた。

 

その冷たい物言いに沸点が低い釘崎が噛みつこうとしたがそれを察した真希に軽くチョップされる。

 

「…まあ、そうなんじゃないかとは思ってましたけど」

「用がそれだけなら戻らせてもらいますね」

 

話はそれで終わりだと切り上げて去る藤花の後ろ姿を見る。

 

交流会の話が出た時、藤花は今回出ないのではないかと二年生たちは思った。

藤花が任務に忙しいことを知っていたから。

だが、一番は真希たち二年生を好ましく思っていないと知っていたから。

 

仕事の話になれば事務的とはいえきっちりと対応するし、嫌味は言うが面倒もちゃんと見てくれる。

意外だがあれでも周りをしっかりと見ていてそれに助けられることもある。

 

藤花のことは苦手だが悪い人ではないのだ。

それは真希だけではなく他の二年生も思っている。

 

それでも、出ると言うなら真希たちは拒絶する気は一切なかった。

出来る限り協力して京都校の奴らをボコそうと思っていたのだ。

 

まさか嫌がられてると最初っから諦められていたとは…。

 

「…真希さん、私あの先輩キライです」

「そう言うなよ。あの人は悪い人じゃないんだ。ちょっとムカつくけど」

 

 

 

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