レッドのピカチュウが、挑戦者とバトルして、力の差を見せつけるお話。

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I LOVE ノコッチ.
Are you ノコッチ?
Oh, very ノコッチ!
ということでインファイトの説明を一部変えましたがご了承ください。


レッドのピカチュウが圧倒的実力を見せつける話

ドームはお椀をひっくり返したような形で、天蓋は丸くくり抜かれている。今日は晴天らしい。青空が美しい。実にバトル日和である。

ドームの中では、歓声があちこちより響いている。幾重にも重なった声は、轟音となって空気を震わせている。

声の大きさとはエネルギーだ。それには観客の期待と興奮が詰まっていて。つまりドームは熱気でパンパンなのである。

ドームの中央にあるのは横長のバトルステージでそれを囲むのが観客席。観客席はドームの奥まで段になって段々と続いている。

観客は老若男女性別問わず、多くの者が詰めかけていた。子供は瞳を輝かせて、観客席の柵に前のめりに寄りかかって、夢中になってステージを見つめてる。大人は、ある人は頭上でタオルを振り回し、ある人は甲高く指笛を鳴らし、ある人は身を乗り出して柵からステージへと落ちかけている。

見るものすべての心を昂らせる。ポケモンバトルとはそういうものだ。

だからみんなたまらない。

眼下で繰り広げられる激しい熱戦が、観客の心を鷲っと掴んでいた。

 

繰り出されるのはアイアンテール。ピカチュウの尻尾が光り輝き、鋼鉄の硬さを表面に纏い、勢いよく振り下ろされる。

対するはゴウカザルの拳。残像を残しながら素早い拳が放たれる。マッハパンチである。

拳と尻尾。あっという間に距離を縮める。そして、

 

ぶつかり合う。

 

どごぉんっ

 

質量を孕んだ重い音が辺りに鈍く響いていった。衝撃波が空気を縫って進み、観客の間を駆け抜けていった。

しかし互角である。

両者は素早く後ろに飛び跳ね、互いの距離を遠く保った。

 

「まだまだいけるな! ゴウカザル!」

 

ゴウカザルは背後からそう声を掛けられて、振り向いた後に力強く頷く。ゴウカザルに声をかけたのは少年だ。

ロイ。

彼の名前。

トレーナーである。

眼鏡の奥で見開いてる瞳には闘志を写し、絶対に倒すという強い意志を感じさせるように、拳を強く握っている少年。

ロイは挑戦者なのである。倒すべくは正面にいるトレーナーである。ピカチュウの後ろに立つトレーナー。

名前をレッドと言った。

ポケットに片手を突っ込んで、赤い帽子をかぶり、その影から何を考えているか分からない無感情な瞳をロイに飛ばしている。

凛とした佇まいは強者の風格を思わせる。

彼は間違いなく強者だ。

最強のトレーナーと呼ばれている。

若くしてポケモンリーグを制した天才。しばらくは行方が分からなくなっていた。

どこかの山奥で修業をしていたとかいないとか、真しやかな噂が立つ程度であった。が、最近になって気まぐれにバトルスタジアム(バトルをする施設)に出没し、ポケモンバトルを行うようになった。

ロイは負けるわけにはいかなかった。

小さい頃からの憧れの存在である。他のトレーナーと同じように、彼のようになりたくて、彼を目指して。ポケモンと鍛錬を積んできた。

彼は目標そのものなのである。

そしてそれはゴウカザルも同じ。

ゴウカザルが睨みつける先はピカチュウ。

ポケモンはトレーナーに似ると言う。ピカチュウもレッドに似て、落ち着き払った様子で、じっとゴウカザルを観察している。

百戦錬磨のピカチュウで、世界最強と呼び声が高い。

それでも、これまでロイと積み重ねてきた時間を想い、ゴウカザルは勝利を強く信じていた。

 

「ゴウカザル!かえんほうしゃだ!」

 

指示が飛べば、ゴウカザルは背中を仰け反らせながら大きく息を吸いこんだ。

腹が風船のようにパンパンに膨らむ。

そのままゴウカザルが頭を振り下ろしながら息を吐き出せば、口元から勢いよく炎が噴射された。

かえんほうしゃ。

炎は一直線にピカチュウへと向かっていく。空気をうねりながら進む様子は、まるで龍のようである。

しかしピカチュウは動じない。

向かってくる炎を見定めると、身体に力を込めるように地面に踏ん張った。

力むような鳴き声をあげる。するとピカチュウの身体が光り輝き、身体から稲妻の曲線が伸びる。

10まんボルトである。

エネルギーの塊であるかえんほうしゃと10まんボルトが衝突すると、たちまちに爆発が起こり、辺りに爆風を巻き起こした。

お互いの技はかき消し合った。

休んでる暇はない。

ロイは攻撃の手を緩めなかった。

 

「ゴウカザル!ニトロチャージッ!」

 

ゴウカザルはピカチュウの元へ駆け出す。勿論丸腰というわけではない。

ピカチュウとの距離を詰める間に、自らの身体に炎を纏った。ゴウカザルは火の玉となる。火の玉となってピカチュウに迫る。

ニトロチャージは素早さが上がる。

炎の力を原動力に、ゴウカザルは加速していった。

超高速で突撃してくるゴウカザルであるが、ピカチュウはぶつかる寸前にひょいと横に飛び跳ねた。

しなやかな身のこなしである。

しかしゴウカザルも追撃を行う。

弾丸のような速さの体をコントールするのは簡単な事じゃない。咄嗟に片足を地面に突き刺して、それを軸に方向転換。地面を蹴とばして、ピカチュウへと向かう。

しかしピカチュウは更に避ける。

次から次に迫るゴウカザルを避ける避ける。その姿はまるで闘牛士のようである。バトル慣れしてるピカチュウだからこそ成せる芸当であった。

観客は大盛り上がり。ロイは歯を食いしばり、険しい表情。そしてレッドは表情を変えてない。

口を開いていない。

そう、指示していないのだ、ピカチュウに。

ここにピカチュウが称賛されるべきもう一つの事実がある。

本来トレーナーとポケモンは頭脳と肉体の関係。トレーナーの指示があって初めてポケモンは力を発揮する。

しかしピカチュウはそれをひとりでこなしてみせる。

己で考え、己で動く。

簡単にできる芸当ではない。

今だって何度も突撃してきているゴウカザルの技を避けるのには、難しい判断を何度も正確にこなす必要があるのだ。

しかしピカチュウには出来る。

幾度となくバトルを積み重ねてきたピカチュウは、その経験によって、ベストな判断が可能なのである。

そしてそれはピカチュウだけではない。レッドのポケモンはみな、支持を必要としない。

リザードンもラプラスもエーフィも・・・。

彼らはそこまでの高みにいるのだ。

 

「ゴウカザルかげぶんしんだ!」

 

ロイは埒が明かないと見て、次なる指示を飛ばした。

するとゴウカザルは動きを止めた。次いでそっくりな分身が身体から現れる。

一体、二体、三体。

それらはやがてピカチュウを囲ってしまった。一見どれが本物か分からない。

これがかげぶんしんである。

かげぶんしんという技は、分裂体も本体同様に攻撃を繰り出すことが出来る。故に非常に強力な技とされる。しかし、少しでも分裂に攻撃を加えれば、それこそ砂が掠る程度でも直ぐに分裂は消失してしまうので、影分身をされたらすぐさま攻撃して消すべし、というのが定石である。

しかしレッドのピカチュウ。何もしない。

後ろ足で耳の裏を掻き、毛繕いする余裕すら見せていた。

 

「ゴウカザルチャンスだ!ブレイズキック!!!」

 

ゴウカザル達は一斉に飛び上がった。

そして足に炎を纏うと、ピカチュウの図上へと一気に降り注ぐ。何とも攻撃的な流れ星である。

ピカチュウには逃げ道が無いと思われた。

否、ピカチュウには必要が無かった。

ピカチュウは身体を力ませるように丸めると、電撃を自らの頭上に放出し、集めていく。

電撃がどんどんと集まる。大きく丸く。やがてそれは球体となった。

エレキボールと呼ばれる物である。

ピカチュウはそれを尻尾で勢いよく叩いた。するとエレキボールは叩かれた衝撃でいくつかに分裂。

なんとそれぞれが、向かい来るゴウカザルへと飛んで行った。

 

「なっっ!?」

 

ロイは思わず声を漏らした。そんな芸当はコンテストでも見たことが無い。

恐るべき精度で飛んで行ったエレキボールたちは見事にゴウカザルたちを迎え撃ち、分身は消滅。本体であるゴウカザルもエレキボールまともに食らって、弾き返されるように飛ばされた。

 

「大丈夫か!ゴウカザル!」

 

仰向けになっていたゴウカザルは、すぐさま起き上がり、ロイの正面まで下がった。

 

全く嫌になる。

ロイは思う。

ここまで鍛え上げてきた技であるが、まるで通用するビジョンが見えない。

ロイもそこそこにバトルを重ねてきたトレーナーであるので、なんとなくわかる。

実力差があり過ぎる。

ピカチュウは一度も本気を出していないだろう。

ゴウカザルも尻尾をパタパタと揺らしている。上手くいかなくてイライラするときによくやる癖だ。

しかしやられっぱなしではいられない。

ロイはゴウカザルに言う。

 

「ゴウカザル、あれをやろう」

 

ゴウカザルはロイに振り向き、にやりと笑みを浮かべた。

二人には作戦があった。このバトルまでに、ロイとゴウカザルが練り上げてきたものである。

相手が格上なことくらい分かっていたことだ。そしてその差を埋められるのは、綿密に練り上げられた作戦である。

何としてでもピカチュウを倒すのだ。

 

「ゴウカザル!あなをほる!」

 

ゴウカザルは両手で素早く地面を掘り、やがてすっぽりと地面に入った。

そのままモグラのように地中を突き進む。狙いはもちろんピカチュウである。穴を掘るは地面タイプの技で、ピカチュウには効果抜群な技だ。

一発でも当たればダメージは大きい。

ピカチュウはもちろん警戒した。尻尾を地面に付け、地中の振動を感じ取る。

 

「いけ!」

 

ゴウカザルがピカチュウに向けて地中から飛び出した。

しかしピカチュウには予測済みである。素早く体を捻り、飛び掛かってくるゴウカザルを避ける。

また攻撃がかわされた。

しかしゴウカザルは止まらない。

避けられた先、勢いそのままに再び地面に潜っていく。

そして再びピカチュウへと飛び出す。

ピカチュウは避ける。

飛び出す。

避ける。

先ほども見た光景だ。

繰り返しか、観客が思うのは自然なことである。しかし同じなどではない。

二人の作戦はこれからだ。

 

「ゴウカザル!もういいぞ!」

 

ロイの声でゴウカザルはようやくもぐらをやめて、地面から体を出し、地に足をつけた。

ピカチュウがゴウカザルの次の動きを見ている。

だが次の動きは予測できなかったようだった。

 

「ゴウカザル!地面に向けてアームハンマー!」

 

ゴウカザルは黒く変色した重い拳を、思いっきり地面へと振り下ろした。

すると何が起こるか。

地面がグラグラと揺れ始め、ドーム全体に地鳴りが鳴り始めた。ピカチュウが状況を把握しようと辺りをきょろきょろと見渡している。

そうしてる間に二発目のアームハンマ―が振り下ろされた。先ほどよりも力強い。渾身の拳。

 

どごおおおおおおおおおおお

 

地面が割れた。

ピカチュウのいる場所を中心として、円状に深さのある穴が開いたのだ。

ピカチュウはさすがに驚いた表情を見せた。崩壊していく足場から逃れるように、思いっきり上へと飛び跳ねた。

しかしそれは許されない。

ピカチュウは咄嗟のことで油断していた。

だから気付かなかった。

飛び跳ねたその先に、ピカチュウのその背後に、ゴウカザルのかげぶんしんがいたことに。

かげぶんしんは全て消えたわけでは無かったのだ。こっそり抜け出した分身が、ステージの岩裏に隠れ、この時を狙っていた。

ピカチュウはその存在に遅れて気が付く。

攻撃を加えようと急いで振り向く。

その瞬間。

ゴウカザルのかげぶんしんは、ピカチュウの顔の前で、両手をパチン。勢いよく合わせた。

ねこだましである。

驚いたピカチュウは身体が硬直した。力がすっかりと抜けてしまったのだ。

足場は完全に崩落していて、既に大きな穴を形成していた。

ピカチュウはそこへ真っ逆さまに落ちていく。

訪れた初めてのチャンスであった。

 

「ゴウカザル!準備良いな!」

 

ロイが声をかける。

穴の縁に立つゴウカザルは両手の拳に青い光を纏っていた。

それはエネルギーである。ゴウカザルは今までに出来た少しの隙の間に、パワーを拳に溜めていた。すべてはこの時のために。

ゴウカザルは飛び上がった。そうして勢いをつけて、身体から穴の奥へと落ちていく。ピカチュウの後を追う。

ピカチュウは未だ体が固まっていて抵抗が出来ない状況である。

そこへゴウカザルは拳を一発振り下ろす。

ピカチュウはそれをもろに腹に食らい、穴の奥の地底へと、思いっきり叩きつけられる。

しかしそれでは終わらない。

始まりに過ぎない。

ゴウカザルもピカチュウの見下ろすように降り立ち、そして拳を再び振り下ろした。

何度も何度も振り下ろした。

全ての力をぶつけるように、ピカチュウが地面にめり込むほどに。

ありったけの力を込めて。

インファイト。

パワーが落ちるというゴウカザルにとって致命的な代償を払う技。

そして一撃必殺の最強の物理技。

ゴウカザルとロイは長期戦を捨てて、ここで一気に勝負を決めることにしたのだ。

さすがのピカチュウでもこれは受けきれまい。

ゴウカザルは込めた力を全て解き放つと、連続で何度も殴りつけた。

そうしてピカチュウが動かなくなったのを確認して、ひとり、穴から飛び出してきた。

穴に背を向けて、ロイの元へと歩きだす。

その顔には確信を浮かべていた。

観客はレッドという圧倒的強者の敗北に歓声を上げ、ロイも思わずガッツポーズをしようとしたのだが。

 

だが。

 

そんな簡単にピカチュウは負けない。

 

ゴロゴロという雷の音がドームに響いた。

ロイは上を見上げた。

抜けた天蓋から覗く空。そこに浮かぶのはどす黒い雲。分厚い雲。カミナリグモ。

ロイは目を見開いた。

 

「ゴウカザル!まだだ!!」

 

ピカチュウが呼んだに違いない。

ロイは咄嗟に声を上げた。

同時に巨大な雷がドームに落とされた。

 

「ゴウカザル!」

 

ゴウカザルは気付くのが遅れた。

そしてゴウカザルは・・・しかし無傷だった。

 

「え・・・」

 

ロイは間抜けな声を出す。

無理もない。

雷はゴウカザルを貫きはせず、穴の奥へと落ちていった。そこにはピカチュウがいる筈である。

ピカチュウは自らのもとに雷を落としていることになる。

どうして。

ロイが首をかしげる間にも、雷は次々に穴へと落とされる。

どんどんと落とされる。

休みなく落とされる。

そしてやがてゴウカザルとロイは聞く。

ぱちぱちと何かが弾ける音を、穴の奥から聞く。

 

「ゴウカザル・・・気をつけろ・・・」

 

ゴウカザルが身構える。

すると穴から青い線が飛び出してきて、空気を曲がって、地面へと降り立った。

線。

それはピカチュウであった。

誰もがその目にはっきりと捕らえることが出来なかった。それほどまでに素早くピカチュウは現れた。

ピカチュウは身体が、強烈な青白い光で発光していた。

毛は逆立ち、身体の周りに時折ばちばちと青い稲妻が走っていく。

ピカチュウは雷の力を吸収していたのだ。

わざと自分に何度も放ち、そしてその電気エネルギーをため込んだ。力に変えた。

ゴウカザルの拳など喰らっていないかのようにぴんぴんしている。

ピカチュウは初めてゴウカザルを睨んでいた。

まるで今本気を出したというようであった。

間違いない、次には強烈な電気技が飛んでくる。

ロイは額から汗を流した。とにかく離れさせなければ。

 

「ゴウカザル!出来るだけ距離をt」

 

指示は途中までで終わった。

 

ピカチュウが地面を蹴った。

 

青い線が走った。

それはゴウカザルに当たって。

ゴウカザルは吹っ飛んだ。

ステージ端に吹っ飛んで。

壁にめり込み気絶した。

 

一瞬の出来事。

 

ボルテッカーの炸裂であった。

 

この瞬間、勝敗は決した。

ロイとゴウカザルの負けであった。

ピカチュウは身体をブルブルと振るうと、身体から青い光を消し去った。そうして振り返ると、レッドの元へ一目散に走って行き、肩へと飛び跳ねた。

 

ちゃぁー

 

ピカチュウは甲高い声で鳴いた。

レッドは今まで色の無かった表情を初めて崩し、優しい笑みを浮かべて、愛おしそうにピカチュウの頭を撫でた。

ピカチュウはレッドに応えるように、ほっぺたをすり寄せた。

ピカチュウはまた勝利を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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