【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る 作:延暦寺
プロローグ
――近い将来、俺はかませ犬のように呆気なく、無惨に殺されるだろう。
いきなり何言ってんだと思うかもしれない。だが事実である。
別に、俺が厨二病を発症してるとか、未来予知に目覚めたとかではない。
いや……ある意味では未来予知と言っても良いかもしれない。
とにかく、このままだと俺は死んでしまうのが確定していた。
俺は前世の記憶を持っている。
生まれた時、俺は最初随分昔の時代に転生したものだと思っていた。
5歳か6歳の頃には、何かおかしいぞと思い始める。
そして、父の口から時折漏れる「柱」や「鬼」という言葉。
もしやと思いつつも、子供の俺に気遣ってか情報は徹底して隠されていたので確信には至らなかった。
俺が確信したのは8歳の頃。
ある日、父から我が家は代々お館様に仕える『鬼殺隊』の家系だと知らされた。
『鬼殺隊』、それは読んで字のごとく鬼を殺すための集団。
普通の人間ならば、何言ってるんだこいつと一笑に付したかもしれないが、残念ながら俺は笑うことができなかった。
むしろ、その単語を聞いたことで全身から汗が噴き出したほどだ。
前世では『鬼滅の刃』という少年漫画が爆発的な人気を誇っていた。
優しさに満ち溢れた少年が主人公で、鬼と呼ばれる異形の存在を討ち倒すという概要だけ聞けば王道の物語だ。
だが、実際には王道と片付けていい作品ではない。
人が死ぬ。そう、とにかく人が死ぬのだ。
生き残ったとしても、かなりの重傷を負う事も多々あるほどに、人間にとって厳しい世界観である。
読者として鬼滅の刃を読んでいた時はしょせん他人事であったが、実際に自分がその世界に転生したとなればマジでシャレにならない。
しかも、我が家は代々鬼殺隊というではないか。
しょっぱなから死亡フラグ満載である。
そして、更に追い打ちとして俺の死を確定づける要素があった。
今まで、自分の顔はどこかで見たことのあるような顔だなぁという印象しか持っていなかったが、鬼滅の刃という世界に転生したという前提の下で自分の顔を見たら、俺は納得した。
曰く、サイコロステーキ先輩。
曰く、肉柱、肉の呼吸。などなど様々な愛称で呼ばれカルトな人気を誇り、公式でも累に刻まれた剣士として名を馳せる人物へと転生していた。
二次創作でも炭治郎や禰豆子に転生したり、鬼に転生したり……なんてのは見かけたことはあるが、まさか自分がよりにもよってサイコロステーキ先輩に転生するなどとは夢にも思わなかった。
ちなみに、公式でもついぞ明かされなかったサイコロステーキ先輩の名は
これは、サイコロステーキ先輩こと栖笛 賽に転生した俺が、迫りくる死亡フラグを回避する為に死に物狂いで頑張る話である。