【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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武装錬金は結構前の漫画ですが、知っている人が多くて嬉しいです
自分はパピヨンがダントツで好きです


やったね賽くん、フラグが増えるよ!

「ぐおおおおお! なんでだ! 何で当たらねぇ!」

 

 晴れ渡る青空の下、男の声が蝶屋敷に響き渡る。

 声の正体は伊之助なのだが、何故こんな叫んでいるかというと……。

 

「はっはっは、そんな攻撃ではまだ当たってやれんなぁ」

「くそがぁ!」

 

 彼の攻撃を、俺が悉く紙一重で避けているからだった。

 炭治郎くん達がやってきてしばらく経ち、怪我も治ってきたので機能回復訓練へと入っていたのだ。

 カナヲちゃんやアオイちゃん達による初級の訓練で既に躓いており炭治郎くん達以外はやる気がなかったのだが、しのぶによる個々に合わせた応援という名の煽りにより見事に突破した。

 んで、最後は軽く体を動かして戦闘の勘を取り戻させようと思い俺が相手を務める事になったのだが、攻撃を避けている内に伊之助がどんどんムキになってこの様子である。

 

「くそ……結局、かすりもしやがらねぇ……!」

 

 それから数十分が経過し、結局一度も攻撃が当たらないまま体力を使い果たす伊之助。

 

「俺は……やっぱり弱いのか……」

 

 いやー、良い線行ってると思うんだけどね。

 山育ちということもあって型にハマらない動きは中々に奇抜でそこら辺の鬼なら難なく狩れるだろう。

 が、俺相手では意味がない。

 奇抜な動きとはいえ、それはあくまで人間の範疇から外れてはいない。

 流石に関節を外して射程距離を伸ばしたのにはビビったが、鬼はもっと理不尽な攻撃をしてくるのだ。

 生き残る為に全てを回避力と奇襲に極振りした俺の敵ではない。

 もっとも、おかげで火力に関しては柱の中でも下の方になるが。

 ……まったく、それなのに何で俺が最強という不名誉(・・・)な称号をもらっているのか不思議でならない。

 原因の大半はお館様な気がするが、おそらくこの事について言及してもはぐらかされるだろう。

 

「やっぱあの人人間じゃないよ……あれだけ動いたのに、音がほとんど聞こえないんだもん。息も切れてないし、きっと本当は死体が動いているんだよ……」

 

 俺が伊之助をフォローしていると、見学していた善逸が失礼な事をのたまう。

 

「失敬な、俺はちゃんとした人間だ。ただ、人より臆病なだけだ」

 

 生き残る事だけを考えて努力してきた俺をなめんなよ。

 

「でも……本当に不思議な動きですよね。なんかこう舞を踊っているような……。確かに目の前に居るのに存在が希薄というかふとした瞬間に目の前から幻のように消えたり……」

「まぁ、それは今までの経験からより生き残る為に研鑽してきた俺独特の動きって奴だな。鬼相手に常識は通じないから、こちらもそれに対応せざるを得なかったんだ」

 

 特に、むかーし童磨と接敵してからはより一層死に物狂いで頑張ってきた。

 あの血鬼術はほんとチートやでぇ。

 多少なりとも対策は考えてるから、今度会ったときはもっと余裕をもって逃げれるはずだ。

 

「それって……俺達も頑張ればできるんでしょうか?」

「そうだ! あのへんな動きを教えやがれ! そうすれば、すぐにでもてめぇを倒してやるぜ!」

「あーもぅ、何でこんなに皆やる気なんだよ。頭おかしいんじゃないの。はぁ、平穏に暮らしたい……」

 

 妙にやる気のある炭治郎くんや伊之助に対し、善逸は表情を曇らせながら陰鬱な溜息を吐く。

 うむ! その気持ちよーくわかるぞ!

 鬼を倒すために強くなりたいという気持ちは俺もさっぱり分からない。

 あいつら、ホント頭おかしいわ。

 

「で、何の話だったか……あ、そうそう。俺の動きだったな。申し訳ないんだが、教えることはできないんだ」

「あ゛あ゛⁉ けちくせーこと言ってんじゃねぇぞ!」

 

 俺の言葉に対し、伊之助はぷんすかぽんと怒る。

 

「いや、別に意地悪して言ってるわけじゃない。いわば、俺の呼吸は静の究極形なんだ」

「静の究極形、ですか?」

 

 オウム返しに言葉を発する炭治郎くんに対し、俺は頷きながら説明をする。

 

 静タイプは、常に心を静め、冷静に戦局を見極めながら戦闘を制する。

 動タイプは心のリミッターを外す事で、爆発的な気とパワーにより戦闘を行う。

 俺の見立てでは3人とも動タイプ寄りだ

 

 基本的に正反対のタイプの技というのは習得が難しいのである。

 稀に、その両方を使いこなせるチートみたいな存在も居るが、あれらはいわゆる公式チートと呼ばれるようなキャラなので普通は無理だ。

 ――というようなことを嚙み砕いて説明してやる。

 特に伊之助は動タイプ中の動タイプなので、俺の動きは絶対に覚えられない。

 炭治郎くんは、性根は静だが戦い方は思いっきり動タイプだから、やはり難しいだろう。

 善逸も、リミッターを外すという意味では動タイプである。

 

 

 柱の中だと冨岡さんと無一郎くんが静タイプだろうか。

 

「ま、そんな訳だから君達は君たちなりの戦い方を身に着けて強くなるといい。(俺のうっかりで)君達に同行するし、道中もできる限り助言はしてあげるから」

 

 炭治郎くん達が強くなってくれれば、必然的に俺の生存率も上がるしな。

 俺が生き残る為の糧になってもらうでぇ……くっくっく。

 

「栖笛さんの技を覚えれないのは残念ですが、ありがとうございます。……あ、そうだ。さっきの舞で一つ聞きたいことを思い出したんですが、ヒノカミ神楽って聞いたことないですか?」

「(単語は知ってるけど詳しい事は分からないから)知らないな」

 

 その後のやり取りで、実は自分が助ける直前にその事を思い出したということが分かった。もっとも、使う前に俺が助けたので使わずじまいだったらしいが、気にはなっていたということだ。

炎の呼吸は火の呼吸と呼んではならない事や、火に関係するなら炎柱の煉獄さんが何かわかるかもしれないと、至極さりげなく巻き込んでおいた。

 どっちにしろ、煉獄さんは煉獄さんで彼の死亡フラグを乗り越えさせないといけないのでちょうどいい機会だ。

 蜘蛛山の件で分かったが、俺がどういう風に原作に介入しても、おそらくはそのキャラにとって重要となりえるイベント自体は回避できない。

 胡蝶姉妹に関しては、カナエさんというキーパーソンを助けたことで既に回避済みなので心配は要らない。

 しのぶの全身毒化計画だけは全力で阻止したのでこちらも大丈夫だ。

 あとは童磨関連のイベントだが……こちらもかなりの終盤なのでしばらくは安心だろう。

 

 煉獄さんはほぼ間違いなく猗窩座に遭遇する。

 ならば、原作と違う場所で遭遇させるよりも原作の流れにこちらから乗せることで知っている展開に持っていこうというわけだ。

 正直、猗窩座を相手にするのはおっかないが煉獄さんが居るなら大丈夫だろう!

 

 ……もっとも、これらはあくまで俺の予想なので全て間違ってたら台無しだが。

 まぁ、そういう意味でも煉獄さん関連のイベントは重要だ。

 細かい部分は覚えていないが、重要そうなイベントは朧げに覚えているので、思い出せる限りはこの路線で行くことにする。

 

 その後、鴉に伝言を頼みお館様経由で煉獄さんと落ち合う約束を取り、いよいよ運命の無限列車へと向かうことにするのだった。

 くくく、覚悟しろよ煉獄さん。救ってやるからなぁ?




今回の静と動の説明はまんまケンイチから持ってきています。

静動轟一はロマン

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