【完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る 作:延暦寺
「さて、こんなもんでいいかな」
俺はパンパンと手をはたきながら、縄でしばられた数名の男女を見下ろす。
魘夢の罠を逃れた俺は、さぁ出発しようとしたところで彼らがやってきたので身を隠していたら炭治郎くん達を縄で何かしようとしていたので隙をついて縛り上げたのだ。
鬼ならいざ知らず戦いの訓練もしていないような素人相手なら流石に後れを取ることはない。
「……んで、なんでアンタ眠ってないのよ! 確かにあの車掌が眠らせたはずなのに!」
俺が縛ったうちの1人であるみつあみの女の子がそう叫ぶ。
「いやほら、俺って不眠症だから最近眠れなくてさ」
「ふざけんじゃないわよ! くそ、アンタらの核を壊せばいい夢を見せてもらえたのに……っ」
俺の言葉に対し、みつあみの子だけでなく他の奴らも睨みつけてくる。
まぁ、実際はどうやって魘夢の罠をかわしたかというと、単に切符のすり替えをしたのである。
俺の朧げな記憶では、魘夢は眠らせる血鬼術を使ってくる鬼だった。
トリガーが何かまでは思い出せなかったが、こちらに対してアクションを起こすことで眠らせることができるのだろうと予想を付けその中でも切符、もしくは車掌が怪しいと踏んでいたのだ。
んで、対策の一つとしてよく似た偽物の切符を用意しそちらを切らせたというわけである。
……ふぃー、俺の勘が当たっててよかったぜ。
それなら、何故全員分用意しなかったと思われるかもしれないが、敵を騙すにはなんとやらというやつと、全員が罠を回避してしまうと警戒される恐れがあったから。
それに、原作でも全員が引っ掛かっており、それでも何とかなっていたので大丈夫だろうという確信もあったからである。
「馬鹿! アホ! 童貞野郎!」
俺が自分の勘の良さに酔いしれている間も、みつあみの子は罵詈雑言を浴びせてくる。
うーん、これは少しお仕置きが必要なようだ。
あと俺はどどどど童貞ちゃうわ!
「よし分かった。そこまで言うならいい夢とやらを見させてやろうじゃないか」
「は? え、ちょっと待って。何その指の動き……やめ、やめてよ。触らないで! あ、あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉」
―しばらくお待ちください―
「も、もうやめひぇ……わ、わらひがわるかったから……」
先ほどまで暴れていたみつあみの子は、顔を真っ赤にし汗だくになりながら息も絶え絶えにおとなしくなる。
くくく、俺の手にかかればどんな生意気な奴であろうと『分からせ』られるのである。
カナエさんやしのぶなど蝶屋敷で働いている子達にも凄いと評判なのだ……俺の按摩は。
一度俺の按摩を味わえば、もうその快感からは抜け出せないと評判である。
以前、他の柱に按摩を施している時に、蜜璃ちゃんにもやってあげようとしたのだがイグッティにすげー顔で見られたので断念したこともある。
ちなみに、俺の按摩の腕はお館様のお墨付きである。
「さて……君達もこの子みたいに良い夢を見るか?」
「……っ!」
俺が、10本の指を自由自在にグネグネと動かしながら尋ねると残りの奴らは顔面蒼白になりながら無言で首を横に振る。
ちっ、チキン共め。他人を犠牲にしてまで自分の幸せを手に入れるくらいの強欲さがあるならもう少し粘ればいいものを。
やっていいのはやられる覚悟があるやつだけだって教わらなかったのか。
「……まぁいい。ここで大人しく捕まっているならこれ以上は俺も何もしない。……が、もし、少しでも逃げたり彼らに危害を加えようとすれば……」
「す、すれば……?」
「あの子より凄い事をします」
「「「絶対に大人しくしています‼」」」
もし自由に腕が使えたらビシッと敬礼をしているであろうレベルで声をそろえて誓う彼らだった。
俺はもう大丈夫だと確信すると、箱の中から禰豆子ちゃんを出してあげる。
「禰豆子ちゃん。お願いがあるんだけど、もう少ししたら君のお兄さんを起こしてやってくれるかい? 大事なお仕事があるんだ。できる?」
「む!」
俺がそう問いかけると、禰豆子ちゃんはキリっとした表情で頷く。
俺が起こしてやってもいいのだが、ぶっちゃけどう起こせばいいのかも忘れてしまったのでここは原作キャラに任せることにする。
本当はこのまま俺が対処しても良いのだが、今後の為にも炭治郎くん達には場数を踏んでもらい強くなってもらわないといけない。
「よし、良い子だ。いいか、おまえら。絶対に大人しくしてろよ」
「「「了解です!」」」
禰豆子ちゃんの頭を撫でながら魘夢の手先共に念を押すと、俺は魘夢の下へと向かうことにする。
「んひー……おっかねぇ……」
俺は無限列車の屋根の上に登ると足を震わせる。
ちょっとでもバランスを崩すと今にも落ちてしまいそうだ。
……この状態で蛇腹モードは使えそうにないので通常モードで戦うしかないだろう。
まったく、鬼は唯でさえ理不尽なんだからせめてまともな地面で戦わせてほしいものだ。
「あれぇ、何で寝てないのかな? それとも自力で起きたの?」
俺がおっかなびっくりで先頭車両の方へと向かっていると、悠々と立っている魘夢がこちらを振り向いて不思議そうな顔をする。
「悪いな、俺は不眠症で眠れなかったんだよ」
「ふーん、あっそう」
俺の答えに対し魘夢は興味なさげに返事をする。
おかしい、俺の自信のあるボケがさっきと合わせて2回も流されてしまったぞ。
「それで、これからどうするつもりなんだい?」
「今からお前を斬らせてもらう」
「ふふ、そんなことができると思っているの?」
「あぁ、思ってるさ。だって……もう斬り終わったからな」
チン、という鍔鳴りと共に魘夢の首がぐらりと落ちる。
列車の上という不安定な場所だったが、何とかいつも通りに動けて良かった。
対して魘夢は何が起こったか分からないという表情を浮かべるが、すぐに己の首から気味の悪い肉塊を生やすと列車の屋根に根を張り口を開いた。
「はー、凄い速いね……あ、分かった。君でしょ、あの方が言っていた得体のしれない柱ってのは。なるほどなるほど。確かにあの方が警戒するだけはある。直に見ても意味が分からないや」
「……」
え? まじ? 俺って無惨に警戒されてんの?
もしかして全力で引きこもった方がいい?
あ、いやダメだ。絶対に十二鬼月送り込んでくるわ。
万が一にもお労しいお兄様が来たら絶対詰むわ。
マジかよー戦果的には他の柱と変わらないはずなのに何で俺だけ警戒するんだよーおかしいだろうがよー。
頼むからお兄様だけは派遣しないでほしい。なんでもしますから勘弁してください。
そんな風に考えていると、魘夢は何を勘違いしたのかニヤニヤしながら口を開く。
「ふふふ、驚いているようだね。何で頸を斬ったのにどうして死なないのか教えてほしいかい?」
「いや、それは別にいいや……」
「え?」
この無限列車と融合してるってのは分かりきってるしな。
流石にそれくらいは覚えている。
俺は別に魘夢を倒せると思ってここに来たわけでは無い。
あくまでメインは炭治郎くんであり、俺はサポート、裏方である。
ならば何故ここに来たかというと、炭治郎くん達が目覚めるまでの間、魘夢の目をこちらに引き付けようと思ったからだ。
「い、いやほら知りたいよね? だって頸を斬ったのに死なないんだよ?」
流石の魘夢も予想外の反応だったのか少しだけ狼狽えている様だ。
「だってお前って本体じゃないんだろ? お前からは特に殺気も感じなかったしあまりに弱すぎるからな」
「じゃ、じゃあなんで……」
「さてここで問題です。俺は他の仲間を起こして来たでしょうか、眠らせたままでしょうか?」
「っ! まさか……まさかまさか!」
「いいねその顔。分かったかな? つまり俺は……囮だよ」
瞬間、ドン! という雷のような轟音が聞こえ列車が揺れる。
おそらくは善逸だろう。いいタイミングで目覚めてくれたようだ。
……というかちゃんと目覚めてくれてマジでよかった。
これで実は起きてませんでしたとかになったら恥ずかしいにもほどがある。
先ほどの言葉も別に確信があって言ったわけではなくただのハッタリだ。
言葉の駆け引きというのはハッタリが重要なのだ()。
「まさか柱が囮をやるなんて思わなかっただろう? さて、今列車の中には柱の中でも最強格の男が一人、そして将来有望な平隊士が3人。そしてもう1人の柱がここに居ます。さて、お前は無事に自分の頸を守り切れるかな?」
「……っ!」
俺の言葉を聞くと、魘夢は先ほどまでは余裕たっぷりだった表情を歪ませつつ列車の中へと潜り込んでいく。
それを見届けた俺は、すぐさま声を張り上げる。
「炭治郎くん! 鬼は列車と融合してる! 奴の頸がどこかにあるはずだ! それを探せ!」
俺がそう叫べば、どこかで小さく「分かりました!」と聞こえてきた。
あとは炭治郎くんに全てを任せればいい。
俺は煉獄さんを手伝うことにする。
煉獄さんの性格からすると乗客を守る方に専念しているだろうし、少しでも彼の負担を減らす必要がある。
猗窩座と真正面からやりあえるのは彼くらいだろうしな。
今後の予定を決めるとここからは、乗客を救うために列車の中へと向かうのだった。
もしも主人公が夢を見ていたら、柱を引退して胡蝶姉妹とイチャイチャしている夢を見てました。