【完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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大正コソコソ噂話

無惨は賽がどう厄介かは伝えず、ただ注意しろとしか言ってないらしいよ!


無惨「賽っていう地味目な柱が居るけど注意しておいてね。下弦も2人、やられてるからさ」
十二鬼月「了解っす」


筋肉痛は翌日にこないと危機感を覚える

「ぐお……おぉぉ……っ」

 

 ――男の低い唸り声が蝶屋敷に響く。

 屋敷内にある一室で柱の癖に全身が重度の筋肉痛で動けず、蝶屋敷で働く少女達に甲斐甲斐しく世話をしてもらっている恥知らずな男の姿がそこにあった。

 というか俺だった。

 

「賽さん、大丈夫ですか?」

 

 三つ編みが特徴的な女の子、なほちゃんが心配そうに尋ねてくる。

 

「心配してくれてありがとう。安静にしていれば治るから、それまで苦労かけると思うけどよろしくね」

 

 俺は体中がバッキバキなのを耐えながら笑みを浮かべそう答える。

 猗窩座との戦いの後、全員が生存できたのは良いが戦う際に発動した『透き通る世界』の反動で尋常じゃないくらいの筋肉痛に襲われていた。

 例えるなら、両腕両脚がポキッと折れてそこに肋骨にヒビが入り、ちょっと痛くてうずくまった所に小錦がドスンと乗っかったくらいだろうか。

 正確には、透き通る世界を発動して、猗窩座の攻撃を避けまくった事による反動だが……まぁ似たようなものだろう。

 そんなわけで、体が微塵も動かせないので、きよ、すみ、なほちゃんの3人娘にお世話をしてもらっているというわけだ。

 炭治郎君たちも、魘夢戦で大怪我をしているので休養するにはちょうど良かった。

 報告は煉獄さんが取りまとめてやってくれているので、安心して休めるというわけだ。

 

「おい、そこの三つ編みぃ! 掃除をサボるんじゃないぞ! あ、ちがうよなほちゃんの事じゃないからね」

 

 三つ編み、と呼んだことでなほちゃんがびくっと震えるがすぐにフォローする。

 俺が言っている三つ編みというのは、無限列車にて俺に分からせ(・・・・)られた女である。

 

「分かってるわよ! そんな怒鳴らなくてもいいでしょう! くそ、なんで私がこんなことを……」

 

 三つ編みは、ぶつくさと文句を言いながらも俺の部屋の掃除を続ける。

 なんでこの女がこの屋敷に居るのかというと、早い話が懲役というか罰である。

 他にもあの列車で魘夢に協力した人間達はこの蝶屋敷で労働をしている。

 鬼に協力したというのは実際の法で裁くことはできないが、許されることではない。

 間接的に殺人を犯そうとしたわけだしな。

 無罪放免というわけにもいかないので、こうやって労働をしてもらっているというわけだ。

 蝶屋敷だけでなく他の柱の屋敷などにも派遣し雑用をこなしてもらっている。

 本来の名前は名乗ってもらったのだが、「贅沢な名だねぇ」とどこぞの魔女のようなことを言いながら本来の名で名乗ることを禁じた。

 まぁ、罪を償っているという自覚を持ってもらうというのもある。

 ちなみに、名前は今目の前にいる女は『三つ編み』。結核にかかっていた青年は『病弱』、お嬢様っぽい女は『お嬢』、あとはモブっぽい少年の『モブ』である。

 安直だとも思われるかもしれないが、罰の意味もあるのでこれでいいのだ。

 

 病弱に関しては事情が事情なので労働の代わりに、人体じ……じゃなかった、治験もとい病気を治すための治療を受けてもらっている。

 流石にこの時代で結核を治すのは難しいが、とりあえず進行は止めることができている。

 

「ほら、掃除終わったわよ!」

「ご苦労様、次は厠の掃除を頼むよ」

「な……⁉ 厠ですって!」

「あれあれ文句あるの? やるぞ? あれを」

 

 俺がそう言うと、三つ編みはあの事(・・・)を思い出したのか、ヒッと短く悲鳴をあげるとそそくさとトイレ掃除へと向かうのだった。

 

 

「たのもう!」

 

 それから数日後、俺の筋肉痛も全快したので禰豆子ちゃんと遊んでいると明朗快活な声が聞こえてくる。

 玄関の方へと向かえば、そこには煉獄さんが立っていた。

 頭に包帯を巻いてはいるものの元気そうである。

 ……カナエさんの時も思ったが、本来は死ぬはずだった人を救えて本当に良かったと思う。

 俺の生存の為という打算はあったものの生きていてくれて素直に嬉しい。

 カナエさんの時は残念ながら重大な怪我を負わせてしまったが、煉獄さんはそういうのはなく、軽い怪我はしているものの柱としての活動に支障はなさそうである。

 

「煉獄さん、何か用事でしたか?」

「うむ、賽か! 元気そうで何よりだ! 竈門少年に用事があってな、彼は居るかな?」

「いますよ、今呼びますね」

 

 煉獄さんの用事というのは、どうやらヒノカミ神楽についてのようだった。

 猗窩座戦の後、歴代の炎柱が残した手記があるのを思い出し、そこに何か書いていないかと煉獄さんなりに調べたらしい。

 もっとも、その肝心の手記は煉獄父によってボロボロになっており、ほとんど読めずじまい。

 仕方がないので、煉獄父から丁寧(・・)に聞き出したとの事だ。

 

 丁寧の部分で少しだけ雰囲気がヒヤッとした煉獄さんを見てチビりそうになったのは内緒だ。

 んで、分かったのは日の呼吸と呼ばれる原点にして頂点の呼吸がある事、今の呼吸は全て日の呼吸を猿真似し劣化したものということだった。

 

「――と、俺の話は以上だ! もったいぶった割にたいした情報を持ってこれず申し訳ない!」

「ありがとうございます。煉獄さんのその気持ちだけでも嬉しいです。とりあえず……今は鍛錬して強くなろうと思います。舞の手順を知っているヒノカミ神楽ですら使った後は体が動かなくなりますので、まずは使いこなせるようになってから謎について探ろうかと」

「うむ、良い心がけだ! とりあえず、俺の方でも手記は修復を試みてみるが……まぁ、期待せず待っているといい」

 

 そう言うと、煉獄さんは話は終わりだとばかりに立ち上がると部屋から出ていこうとし、立ち止まって振り返る。

 

「竈門少年! 裁判の時は君達を認めないようなことを言ったが、あれは撤回させてもらう。俺は君の妹を信じる。そして、君を鬼殺隊の一員として認める。精進するんだ!」

「はい、ありがとうございます!」

 

 炭治郎くんがお礼を言うと、今度こそ煉獄さんは部屋から出ていき帰っていく。

 

「……賽さん! 俺、強くなりたいです! なので、俺に稽古をつけてください!」

 

 煉獄さんを見送った後、炭治郎くんはグリンとこちらに顔を向けると鼻息を荒くしながらそんなお願いをしてくる。

 正直、俺は人に何かを教えられるほど器用ではないが、先ほどの会話を見て無下に出来るほど空気の読めない男ではない。

 それに、主人公である炭治郎くんが強くなってくれれば、それだけ俺の生存率も上がるので損はない。

 

「……よし、分かった。あまり教えるのは得意じゃないが、それでも良ければ稽古をしてあげよう。善逸や伊之助もこの際だから面倒を見てあげるよ」

「ありがとうございます! 頑張ります! むん!」

 

 俺の返事に炭治郎くんは嬉しそうに笑いながら、両方の手を拳にして気合を入れる。

 うーん、原作を読んでる時から思ってたけど、本当に話していて気持ちのいい少年だ。

 流石、優しい主人公は伊達じゃない。長男なだけある。

 こうして、俺はかまぼこ隊に訓練をすることとなるのだった。

 

 

 ――あれから4ヶ月。

 特にイベントらしいイベントも起きず、平穏な日々が過ぎていった。

 かまぼこ隊に鍛錬をしたり、簡単な任務をこなしたり、蝶屋敷の住人達に按摩を施したりと実に平々凡々とした毎日だった。

 無惨に警戒されているというので、もしかしたらお労しいお兄様とか派遣されるかもと不安だったが、そういう事もなかった。

 正直、無惨は小者過ぎてどういう風に行動してくるかがまるで予想つかない。

 まぁ、もしもお兄様とかに会ったら全力で逃げることにしよう。

 

 そんな事を考えながら毎日を送っていたある日、任務を終えて帰る途中、炭治郎くんと合流したので一緒に帰っていると何やら蝶屋敷の方が騒がしかった。

 嫌な予感がしつつも炭治郎くんと顔を見合わせお互いに頷くと、急いで蝶屋敷の方へと向かう。

 そして、そこには蝶屋敷の皆に群がられている祭りの神が居た。

 ……あー、それかぁ……そのイベントかぁ……。

 彼を見た瞬間、俺は次のイベントを思い出し鬱になる。

 この4ヶ月が割と平和だったので忘れていたが、宇髄が関わるイベントも中々にハードである。

 本当ならばこのまま見なかったことにしたいところだが、このままだと宇髄もリタイアしてしまうので残念ながらスルーは出来ず参加決定である。

 前回の猗窩座は、まだストレートな戦い方なので十二鬼月の方でもマシだが、次はお労しくない方の鬼いちゃんと堕姫である。

 2人同時に頸を落とさないといけないし、毒を使ったり飛び道具使ったりと非常に面倒な戦い方をしてくるのだ。

 

 という事を考えながら、とりあえず今の状況を何とかする為に何も知らない体で宇髄に話しかける。

 

「宇髄、一応聞くけどなにやってるの?」

「賽さーん、人さらいです~っ。助けてくださぁい!」

 

 俺が宇髄に尋ねると、きよちゃんが泣きながら助けを求めてきた。

 

「宇髄お前……嫁さんが3人も居るのにそれじゃ飽き足らず小さい子まで……まきをさん達に言わないと……」

 

 まきをさんというのは宇髄の嫁で、他にも須磨さんと雛鶴さんという美人な嫁が2人居る。

 もげればいいのに。もしくは爆発すればいいのに。

 俺は宇髄の嫁トリオとも顔見知りでたまーに按摩をしてあげたりしている。

 ……ちなみに3人の中だとまきをさんがドストライクなのは内緒である。

 

「え、奥さんが3人も居るんですか……その上、小さい女の子にまで……」

 

 と、炭治郎くんも俺の言葉を信じたのか、宇髄を毛虫のごとく見つめる。

 

「ちっっげーよクソが! 何でそんな発想になるんだ、脳味噌爆発してんのか⁉」

 

 と怒鳴る宇髄。

 

「いいか? 俺は任務で女の隊員が要るからコイツら連れて行くんだよ! 継子じゃねぇ奴は許可を取る必要もない‼」 

「いやー、任務なのは分かるけど彼女達は勘弁してくれない? 彼女ら、戦いには向いてないんだよね」

 

 そもそも次の任務の難易度的に、彼女らは絶対に連れていけない。

 

「いくら貴様の頼みでも聞くわけにはいかん」

「嫁さんズはどうしたのさ、ついに呆れられて出てった?」

「派手にぶっ殺すぞ。……俺の嫁達はこれから行く場所で潜入任務を行ってる。詳しい話は部外者には教えてやれんが、そういう訳で人が足らんから連れて行かないという選択肢はないんだ」

「なら、アオイさん達の代わりに俺達がいく!」

 

 俺と宇髄が話していると炭治郎君がそう叫ぶ。

 気づけば、任務帰りなのか善逸と伊之助もすぐ傍にいた。

 

「今帰った所だが俺は力が有り余っている。行ってやってもいいぜ!」

「アアアアアアアオイちゃんを放してもらおうか。たとえアンタが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひ引かないぜ」

 

 うーん、セリフはかっこいいんだが肝心の本人が震えているから台無しだ。

 

「……あっそォ。じゃあ一緒に来ていただこうかね……日本一、色と欲に塗れたド派手な場所、鬼の棲む遊郭によ」

 

 




今回、炭治郎は猗窩座に刀を投げていないのであの人は襲来せず万死に値しませんでした、やったね。
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