【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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猗窩座殿と心刃合錬斬の人気に嫉妬

史上最強の弟子ケンイチは名作ですので余裕がある方は「戦え!梁山泊史上最強の弟子」からぜひ読んでみてください(さりげないステマ)

主人公である賽もバイブルにしており、特訓に梁山泊式を採用するほどです。(後付け)



ドキッ鬼だらけの隠れ里~  ポロリもあるよ~ その参

「ここで会ったが100年目だな。貴様を縊り殺す日が来るのを今か今かと待ちわびていたぞ……」

 

 突然の来訪者にガチビビリしていると、猗窩座はそれはもう嬉しそうに血管をビキビキさせながら話しかけてくる。

 鬼が100年目、とかいうと比喩に聞こえないな。

 

 ……じゃなくて、少し待ってくれ、俺の記憶の中じゃこの里に来るのは玉壺と半天狗だけだったはずだ。

 いくら俺の記憶があやふやとはいえ、流石にそれは間違いない。

 原作介入している自覚はありまくりだったが、まさか今このタイミングでしわ寄せが来なくてもいいのにと神を恨んだ。

 

「……なんでアンタがここに居るのか聞いてもいいかい?」

 

 俺は、先ほどのガチ悲鳴をなかったことにしながら少しでも時間を稼ごうと話しかける。

 

「おっと、それ以上近づくな。貴様の戦い方は分かっているからな。何かやらかされてはたまらん。俺が来た理由だが……貴様らの命綱であるこの里を潰せとあの方から命令されてな。本来は玉壺と半天狗だけで良かったのだが……それほど大事な場所なら貴様が居るのではないかと思ったので同行することにしたのだ。案の定、貴様は此処に居た。俺の勘も捨てたものじゃないというわけだ」

 

 なんて嫌な信頼のされ方なんだ。これが美少女ならうっひょひょいと喜んでいたのに。

 

「玉壺と半天狗がどんな奴かは知らないが(という事にしておく)、3人で攻めてくるなんて随分と舐められたもんだな」

 

 嘘です。1人でもお腹いっぱいなのに上弦が3体とか今すぐ全面降伏して鬼になりますと懇願したい。

 

「そちらこそ舐めるなよ。3人とは言えこちらは全て上弦。その全員がお前ら人間より遥か高みに居る。貴様らが束になった所で勝てる道理はない。それだけ、人間と鬼には差があるのだ」

 

 ぃよっし! 襲来してきたのは鬼3人というのが確定した。

 ここで、さらにおかわりで童磨やお労しいお兄様まで来ていたら完全に詰みだった。

 

「でも、そんだけ差があるはずなのに撤退しましたよね?」

「俺の意志ではない! それに、貴様相手には微塵も油断はしない。全力をもってすりつぶしてやろう!」

 

 猗窩座はそう叫ぶと、構えを取り始める。

 

 今回は囮もとい盾……でもない。頼れる仲間達が居らず、俺1人で戦わなければならない。

 炭治郎くん達も今頃は玉壺や半天狗とバトっているはずだ。

 本来ならここでは誰も脱落しないはずだが、もしここで俺が猗窩座を仕留められなければ、どういう結末になるかは分からない。

 ならば、死ぬ気でこいつを止めるしかない。

 

 『影の呼吸・弐の型 写身(うつしみ)

 

 殺気や闘気に反応する猗窩座の血鬼術を逆手に取り、俺は猗窩座に向かいながら殺気のみを飛ばし相手に攻撃を誘発させる。

 

「ちっ、相変わらず掴みどころのない奴だ」

 

 猗窩座は、まんまとデコイに引っ掛かり攻撃を空振りさせると舌打ちをする。

 俺はその隙を逃さず、懐から赤い液体の詰まったガラス瓶を取り出すと猗窩座に向かって放り投げる。

 が、すぐさま体勢を立て直した猗窩座はそれをそのまま地面へと叩きつける。

 

「もしかして、攻撃のつもりか? どういう訳か知らんが、こんなもので俺……に……?」

 

 俺の投擲をあっさり弾いたことでどや顔を披露する猗窩座だったが、急に呂律が回らなくなりフラリとよろける。

 所謂、酩酊状態という奴だ。

 

「これは……なんだ……! 何をしたぁ……!」

「クックック……フハハハハ……ハァーッハッハッハ! 何をしたかだって? それを素直に言うわけないだろうがぁ! 前回の反省を生かして直接液体に触れないようにしたみたいだけど、無駄だったなぁ!」

 

 鬼同士の情報の共有を防ぐため、俺はそう叫ぶ。

 情報は共有できるが、基本的にどういう性質のものかまでは分からないはずなので、わざわざ教える道理はない。

 

 まぁ、ネタバレをしてしまえば柱である実ちゃまの血である。

 鬼にとっては至上の餌である稀血の中でもさらに特別製のものを珠世様の協力で少しばかり拝借させてもらったのだ。

 最初は嫌そうにする実弥であったが、特製おはぎを交換条件に血を頂いた。

 まぁ、普段から血が有り余ってそうだし少しくらいいいだろう。

 

 さらに、そこへ珠世様の特殊ブレンドのダメ押しである。

 実ちゃまの血が上弦に効くというのは原作でも実証済み。

 案の定、猗窩座は完全にふらついていて足取りが覚束ない。

 

 昔の偉い人は言いました。

 「相手が勝てないほど強いなら弱くすればいいじゃない」と。

 突然のエンカウントで柄にもなくクソビビってしまったが、何とかハマったようである。

 ちなみに、原作よりも早く珠世様をお迎えしたのも、対上弦用の特殊武器が欲しかったからだ。

 薬や毒の効能テストも兼ねているのでWinWinである。

 いつの時代も、知識、情報は最強の武器なのだ。

 

「貴様は……どこまで……どこまで卑怯なんだ!」

「それを鬼が言うのもどうなんだろうって思うんだ俺は。そもそもスペックに差がありすぎるんだから人間側にももう少しハンデがあってもいいと思わない?」

「訳の分からん事を……!」

 

 猗窩座は激怒しながら攻撃を繰り出しているが、酩酊状態であり精細を欠いた攻撃が当たるはずもない。

 俺は透き通る世界と流水制空圏を使い、あざ笑うかのように攻撃を紙一重で避けていく。

 

「く、そ、があああああああああ‼」

 

 そんな俺を見て益々怒り狂う猗窩座。

 いいぞ、その調子でもっと怒れ。

 怒り、というのは肉体の枷を外し、強くなる手っ取り早い手段だ。

 しかし、デメリットとして怒れば怒る程に冷静さを失い、周りを見る余裕がなくなる。

 つまり、扱いやすくなる。

 別に俺は好き好んで相手を挑発しているわけでは無い。

 俺は平和主義者なのでこうやって相手を馬鹿にするのは不本意なのだ。

 

「何故だ! 何故、貴様のその戦い方を見ているとこうも腹が立つ!」

「いや、それは知らんよ……っと!」

 

 猗窩座の攻撃を避けながら、俺は再び実ちゃま爆弾(仮)を猗窩座に向かって投擲する。

 が、流石に猗窩座も学習したのか今度はそれに触れず首だけをわずかに動かしそれを避ける。

 だけど、まだ俺というものを理解していない。

 

「えい」

 

 俺は、隠し持っていた苦無を投げると、猗窩座が避けたガラス瓶にあてる。

 バリンとガラス瓶が割れれば、先ほどの特製稀血が猗窩座に降りかかった。

 匂いだけでも酩酊状態になるのに、直にそれを浴びるとどうなるか?

 

「あ……が……?」

 

 はい、答えはデロッデロになる、でした。

 すまんな猗窩座。卑怯だというのは重々承知してるんだ。

 だけど、上弦はクソゲー難易度なのでこれだけしないと勝てる気がしない。

 俺の未来の為にここで死んでくれ。

 フラフラの状態になっている今がチャンスとばかりに俺は刀を構え、影の呼吸を発動し頸を斬ろうと――。

 

 ガサリ。

 

 ――した所で茂みから人が出てくるのを見て一瞬止まってしまう。

 ひょっとこの面を被っているので、おそらくはこの里の職人さんで里の方から逃げてきたのだろう肩で息をしていた。

 しかし、それがいけなかった。

 

「ガァァァ!」

「ひいいええええええ⁉」

 

 酩酊状態にもかかわらず、猗窩座は新たに現れた人物に目を向けるとそのまま雄たけびをあげながら襲い掛かる。

 そして、職人さんの方は戦いに関してはズブの素人なので避けれるはずもない。

 気づけば俺は駆け出し、猗窩座の前に飛び出していた。

 

「貴様なら必ず助けに向かうと信じていたぞ! 攻撃が当たらぬなら当たるようにすればいい! ――破壊殺・乱式」

 

 邪悪な笑みを浮かべながら、広範囲にわたる攻撃を繰り出してくる。

 最初はその全てを刀で弾く俺だったが、無理な体勢で間に入ったため刀に亀裂が入り、砕け散ってしまう。

 

「ははは! ついにその忌まわしい刀が壊れたな! 死ねぇ!」

「――いつから、武器がもう無いと錯覚していた?」

 

 とどめの一撃と言わんばかりに拳を放つ猗窩座だったが、おそらく誰もが「あ、そんなのもありましたね」と言うであろう両手に装着した籠手から刃を飛び出させ、猗窩座の胸を貫く。

 が、それでも勢いを殺しきれなかったのかビキリと胸に痛みが走る。

 おそらく猗窩座の攻撃により肋骨が露骨に折れている。

 

「次から次へと……貴様は吃驚箱(びっくりばこ)かぁ!」

 

 自身の胸に突き刺さった2本の刃をへし折ると、俺を職人さんごと蹴り飛ばす。

 

「ガハッ⁉」

 

 職人さんを庇うのを優先したため、俺はもろに木にぶち当たってしまい吐血する。

 あーくそ、めちゃくちゃ痛ぇ……なんで俺がこんな目に遭わんといけないんだ。

 それもこれも、全部無惨って奴の仕業なんだ……おのれ、ゆるせん……。

 などと、痛みのあまり思考がまとまらない。

 このままでは殺される。

 死を覚悟し始めた時、ついに(・・・)猗窩座に変化が訪れた。

 

 病的なまでに白かった肌には血の気が戻り肌色に……桃色だった髪の毛は黒へと変化していく。

 これぞ、特製稀血爆弾の真骨頂である。

 珠世様の特製ブレンドとは、つまりは人間化薬だ。

 効果が出るまで時間がかかったが効いてくれたようで何より。

 

 もちろん、まだ試作の段階なので効果も長続きせず一時的なものだ。

 それでも、相手を弱体化させるという点においては間違いなく最強の効果だろう。

 

 ここで、先ほどの言葉をあえてもう一度言わせてもらう。

 「相手が勝てないほど強いなら弱くすればいいじゃない」と。

 人間化する時間はさほど長くない、すぐに効果が切れるだろう。

 ならば今のうちに頸を斬らねばと、俺は痛みに耐えながら立ち上がる。

 妙に体が熱くなってきているような気がするが、たぶん怪我の影響かなんかだろう。

 

「ぐ、あ、が……あ、頭が割れそうだ……。くそ、誰だ……俺の頭の中に居るのは……」

 

 俺が立ち上がり態勢を整えていると、何やら俺の予想していなかったリアクションを取る猗窩座。

 

「やめろ……! そんな目で俺を見るな……俺は……俺は……恋……っ」

 

 その後、空に向かって吠えたかと思うと猗窩座は、里から離れるように逃げ去っていった。

 先ほどから聞こえてくる戦いの音とは別の方向に逃げたので、おそらくは戦場から離脱したのだろう。

 

「なんかよくわかんないけど……助かったのか……?」

 

 痛みで思考が纏まらないが、ひとまず助かったとみて間違いないだろう。

 どうして猗窩座が急に逃げ出したのかは分からない。

 もしかしたら無惨からクソリプでも飛んできたのかもしれない。

 

「あ、そうだ……職人さんも安全な場所に、連れ……連れれ……?」

 

 倒れている職人さんの所へ向かおうとしたところで、目の前の視点が暗転しそのまま意識を手放してしまうのだった。




この展開をどうしてもやりたかったので、薬関係はご都合主義という事で一つ……(丸投げ)

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