【完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る 作:延暦寺
鬼になると知性デバフ説は、実際に記憶を失ったり明らかに知性が下がっている下級鬼も居たので割とアリなんじゃないかと思います。
俺が考えたことにしますね。
「さて、それじゃあ諸々と話を聞かせてもらおうか。まず、なんで蝶屋敷を見つけられた」
蝶屋敷から離れた場所で、俺は猗窩座に尋ねる。
隠れ里ほどではないとはいえ、それなりに隠蔽工作をしており鬼からは分からないようにしていたはずだ。
少なくとも、俺が蝶屋敷に来てからは一度も鬼による襲撃はない。
流石に敵意はないとはいえ流石に蝶屋敷に招き入れる訳にもいかなかったため、人気のない場所まで移動したのだ。
万が一のことを考え、もし俺がこのまま戻らなかったら全てを投げうってでも逃げろと蝶屋敷の皆には伝えてある。
正直、今の俺では抵抗する間もなく猗窩座に殺されるだろう。
俺にできることは、こいつの機嫌を損ねないように話をすることだけだ。
「……鬼舞辻無惨が貴様を警戒していた。貴様を脅威だと認識していた奴に、居所を突き止めよと命令されたので探っていた。俺も、丁度貴様を殺してやりたかったし……、まぁ、丁度良かったんだ。もっとも、奴は情報が確定しないうちから嬉々として報告しようとするなと言っていたから、まだこの場所は奴には知られていないがな」
……まーじでー? 俺って、そんなに無惨に警戒されてたの?
いやまぁ、よくよく考えると上弦3体相手にして生き残っている時点で警戒対象になるっちゃなるか。
居場所が割れたことに関しては、つい先日も安全だと思われていた隠れ里が発見されたことを考えると納得である。
無惨の頭が無惨だったお陰で命拾いしたので内心ほっとする。
もし、無惨がもう少し狡猾であれば、今頃蝶屋敷は地獄絵図になっていただろう。
ちなみに、先ほど猗窩座がサラッと無惨の名前を言っていたが、実は俺との戦いの後にどういうわけか呪いが外れたという。
鬼舞辻無惨という男は酷く臆病で、配下の鬼から自分の名が漏れることを極端に恐れる。
故に、自身の名を外で発することを禁じ、もし言ってしまえば体に刻まれた呪いが発動し、その鬼はたちどころに死んでしまう。
だが、目の前の猗窩座は死ぬ気配がまるでない。
呪いが外れているというのは確定と見ていいだろう。
「ちなみに、この後報告でもするつもりか?」
「ふん……奴にわざわざ報告する義理などない。むしろ、俺は奴をぶち殺してやりたい気分だ……」
猗窩座はそう答えると、無惨の事を思い浮かべているのか殺気を漲らせる。
「――ずっと、頭の中には霧がかかっていた。何故強さを求めているのかもわからず、俺はひたすらに強さを極めようとしていた」
そして、自分を落ち着かせた猗窩座はポツリポツリと語り始める。
「賽、貴様の戦い方を見ても、何故こんなに腹が立つのかと思っていた。その理由も分からない自分にもイラついていた。だが、貴様と戦った時、どういうわけか人間の時の記憶を唐突に思い出し、得心が行った。貴様の卑怯な戦い方は、忌まわしいあいつらを彷彿とさせたんだ」
そして、猗窩座の口から原作でもあった悲しい過去が語られる。
自分の生い立ちや父親の事、そして恋雪との出会い……悲しい事件、無惨との出会い。
こうして、本人から聞くとほんとに悲しくなってくる。
……ていうか、猗窩座の昔話を聞くと俺って思いっきり地雷踏みまくってんな。
そりゃ猗窩座も切れるわ。
恋雪が死んでしまったというのは覚えていたが、流石に細かい部分は覚えていなかったので申し訳なくなってくる。
「えっと……なんかすまん……」
「後で思いっきり殴らせろ。そうしたら許してやる」
やめてください、死んでしまいます。
いや、比喩とかじゃなく上弦パワーで殴られたらマジで死ぬ。
「冗談だ。全てを思い出したと同時に、よくも思い出させてくれたなと貴様に殺意も沸いた。だが……それよりも無惨にまんまと踊らされた弱い自分に腹が立った。潔く死を選ぼうとも思ったが、それよりもまずは、俺を鬼にしあの人達との約束を長い間破らせた無惨を殺したい!」
語気を強めながらそう語る猗窩座……いや、狛治はこちらへと顔を向ける。
「だが、俺だけでは奴を殺すことは無理だ。こんな事を頼めるのは貴様しかいない。頼む、俺に協力してくれ」
狛治はそう言って頭を下げる。
もしかしたら、これは演技かもしれない。人間の記憶を取り戻しただけで、本性は猗窩座のままかもしれない。
油断させて俺を隙あらば殺そうとしているのかもしれない。
疑いだせばキリがないが……俺は、狛治が嘘を言っているようには見えなかった。
「勿論、人間の時にも幾人もの命を奪い、記憶を失くしていたとはいえ、鬼になってから何人もの人間を殺してきたから許されようとは思っていない。目的を果たした後は、俺も殺せ」
その言葉を、俺は信じたかった。
勿論、狛治の過去にも同情するし可哀想だとは思うのも事実ではあるが、人間の感性を持ちながらほぼ不死身のチートスペックという現状での最高戦力を手放すのは惜しいという打算もあった。
まぁ、そういった考えから俺は狛治に協力してあげたい。
「ちなみに……なんで俺なんだ?」
「俺と2度も戦い生き残った貴様を認めたからだ。俺の知る限りではお前は間違いなく強い。そして……俺のような悪鬼羅刹相手でも公平に判断してくれるだろうと思ったからだ」
そう言われると、否とは言えなくなるなぁ。
「話は聞きました!」
「どわっ⁉」
俺と狛治が話していると、どこに潜んでいたのかカナエさんとしのぶが唐突に現れる。
俺と狛治の気配察知能力をすり抜けるとは、中々やるな……。
「猗窩座……いえ、狛治さん! 苦労されたんですね! 大丈夫です、私はアナタの味方です!」
カナエさんは先ほどの狛治の過去話を聞いていたのか、ダバダバと涙を流しながら狛治の両手を握る。
狛治はカナエさんの行動に困惑しながら、俺の方を見て助けを求めてくる。
カナエさんはそういう人なんだ、諦めろ。
「ていうか2人とも何でここに……?」
「何でここにじゃないわよ。警邏から帰ってみれば屋敷が何やら慌ただしいし、理由を聞いてみれば賽が逃げろって指示したっていうし、心配だから追ってきたんじゃない」
俺の問いに対し、しのぶが憤然としながら答える。
「それで、足手まといになるかもしれないけれど、私でも力になれるかもってついてきたのよ。そしたら狛治さんの悲しい過去! これはもう協力するしかないって思ってね」
「……私は納得してないけれど、姉さんと賽がやるっていうなら、仕方ないけど協力してあげるわ」
「……ねぇねぇ、賽くん。これって賽くんが前に言ってた……」
「ええ、ツンデレですなカナエさん」
「誰がツンデレよ! 姉さんも、賽の変な言葉に毒されないでよ!」
俺とカナエさんがしのぶの反応を茶化しているとしのぶが怒鳴る。
「とても鬼殺隊には見えないほどに賑やかな奴らだな」
そんな俺達の様子を見て狛治が話しかけてきたので、俺は「だろ?」と自慢気に答える。
「賽……貴様は、大事な人を守り抜け」
「あたぼうよ」
かくして、偶然に偶然が重なり狛治という最高戦力が仲間になる事になった。
だが、彼を完全に仲間に迎え入れるためにはとある高すぎるハードルを越えなくてはならない。
俺は、これから参加しなければならない柱合会議のことを考えるだけで胃が痛くなってくるのだった。
狛治さん味方ルートはどうしてもやりたかった展開です
こればかりは誰にも譲れません(`・ω・´)
好きなんです、狛治さん……