【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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無茶しやがって……

 その後、会議の結果、狛治は俺預かりとなることになった。

 俺が発端なんだから俺が管理しろとの事だ。

 共闘するのは認めたが、極力一緒に行動したくないと言われ半ば強制的に押し付けられた形になる。

 というか、禰豆子ちゃんから始まり珠世様も蝶屋敷預り、さらには狛治と実に3人の鬼を抱えている。

 ぶっちゃけ、蝶屋敷組が今日本で一番最強なのではないかと思う。

 珠世様は戦闘向きではないとはいえ、鬼という時点でスペックが人間を遥かに超越しているしな。

 

 んで、狛治についての議題が片付いたら次は痣についての話し合いだった。

 ここは基本的に原作と変わらなかったので割愛させてもらう。

 結果だけ言わせてもらうと、炭治郎くんは原作通り痣を発現、蜜璃ちゃん、無一郎くんもそれに続いて発現した。

 ちなみに、俺は狛治に確認してみたが戦った時に痣は出てなかったという。

 他の柱には悪いが、正直俺は痣を出す気がない。

 何故かって? 死ぬからだよ!

 唯一の例外は居るには居るが、あの人は作中でも屈指のバグキャラだしそもそも長生きできる条件も分からない。

 俺としては、なんとか痣を出さずに無惨を倒したいものだ。

 

 現在の戦力は柱が全員揃っており、さらには狛治も居るという状況なので余裕だろう。

 勝ったながはは、風呂入ってくる。

 

 そして途中、言葉の足りない冨岡さんと実弥で一悶着あるが、悲鳴嶼さんの提案により合同強化訓練を行う事になったのだった。

 

 

「……というわけで、今日から鬼殺隊の仲間になる狛治です」

 

 蝶屋敷にて、昏睡状態からようやく目が覚めたという炭治郎くんの見舞いに行ったついでに、俺は炭治郎くんに狛治を紹介する。

 他の平隊士はどうでもいいのだが、炭治郎くんにだけは伝えておかないといけないだろうと思い紹介することにしたのだ。

 最終決戦の時に敵対されても困るしね。

 あとで折りを見て善逸と伊之助にも紹介するつもりだ。

 

「……え?」

 

 流石の炭治郎くんも状況がよく読めないのか、頭に疑問符を浮かべている。

 

「えーと、俺の記憶が間違ってなければ上弦の参の猗窩座、ですよね? なんで、それが仲間になってるんですか?」

「改心したからだ! そして、猗窩座の名を捨て狛治として無惨を倒したいそうなので共闘することにしたんだ!」

「なるほど、分かりました!」

 

 俺が勢いでそう答えると炭治郎くんもあっさりと返事をする。

 

「あ、いや……自分で言っておいてなんだけど、良いの? 元上弦だよ?」

「賽さんが信用して仲間にしたって言うなら、俺は信じるだけですから」

 

 俺の問いに対し、炭治郎くんは曇りなきまなこでそう答える。

 うーん、このメンタルは間違いなく主人公。

 

「それに、猗窩座……あ、狛治さんの匂いが無限列車で会った時と変わっているので大丈夫だと思いましたし。なんていうか、優しい匂いになりました」

 

 狛治の匂いを嗅ぎながら、炭治郎くんはそう言う。

 あー、匂いか。確かに、そもそもの精神構造がガラッと変わってるから鬼特有の匂いや人を喰った匂いはするだろうけど、根本が違うだろうな。

 炭治郎くんのお墨付きが貰えたのなら、ますます安心だ。

 

「炭治郎、あの時は悪かった。命のやり取りをした間柄ではあるが、今は共に無惨を倒す仲間だ。今だけは協力してくれると助かる。あと、俺には敬語は使わなくていいからな」

「分かった、狛治」

 

 ……ふぅ、どうやら上手くいったようである。

 炭治郎くんなら難色を示したりしないとは思ってはいたのだが、少しだけ不安だったのでこれで安心だ。

 

 それにしても原作では死闘を演じた2人が、この世界線では共闘するっていうんだから世の中分からないもんである。

 こうして目の前で会話をする炭治郎くんと狛治を見ても違和感しかない。

 

「玄弥もそれでいいかな?」

 

 炭治郎くんが解決したので、俺は隣のベッドで横になっていた玄弥にも尋ねる。

 

「柱である賽さんが決めたなら俺は文句ないです。……ちなみに、兄貴は何て言ってましたか?」

「俺は認めねぇ! って最後まで叫んでたね。もっとも、他の柱は賛同したから多数決という事でごり押したけど」

「あー……なるほどっす」

 

 その時の光景が容易に目に浮かぶのか、玄弥は微妙そうな表情を浮かべる。

 この戦いが終わったら、玄弥と実ちゃまの仲も何とかしてやらんとなぁ。

 流石に無惨倒したら、実ちゃまも少しは柔らかくなるべ。

 

「よし、狛治に関してはこれでいいとして、実はまだ話があるんだ」

「何ですか?」

 

 狛治との顔合わせは終わったので、俺は次に柱稽古について話そうとしたところで、それは中断される。

 

 何故なら、ガラスを盛大に突き破って伊之助が現れたからだ。

 

「ああーーーー‼ 伊之助、何してるんだ! 窓なんか割って! 賽さんに怒られるよ!」

「ウリィィィィ‼」

 

 突如窓をぶち破って現れた伊之助に怒る炭治郎くんだったが、そんなのお構いなしとばかりに伊之助はテンション爆上がりで動き回る。

 いや、俺は別に弁償さえしてくれるなら怒りはしないが……カナエさんとしのぶは怒らせると怖いぞぉ。

 

「強化強化強化! 合同強化訓練が始まるぞ! 強い奴らが集まって稽古をつけて……なんたらかんたら言ってたぜ!」

「何なんだそれ?」

「わっかんねぇ!」

 

 尋ねる炭治郎くんに対し、伊之助は自信満々にそう答える。

 ちょうど俺が話そうとしていたことなので、伊之助に代わり俺が話すことにした。

 

「君の妹の禰豆子ちゃんが太陽を克服しただろ? それ以来、鬼の出没がピタリとやんだんだ。嵐の前の静けさともいえる状況だけど、好機でもある。柱の時間が空いたから、柱より下の階級の隊士達を鍛えて戦力を今のうちに底上げしようって訳だ」

 

 そして、痣を出せる素質のある者が痣を出せたら儲けものって感じだ。

 

「そう、それだ! へっへっへ、賽! 必ずてめーより強くなってやるからな! 顔洗って出直してろ!」

 

 俺の説明を聞いた伊之助は、ズビシと俺を指さしながらそう叫ぶ。

 ……なんか使う言葉違くない?

 

「首を洗って待っていろ、じゃないのか?」

 

 俺が脳内でツッコんでいると、狛治が声に出してツッコむ。

 

「おう、そうとも言うな……って、てめぇはあの時の鬼じゃねーか! ここで会ったが100年目だ、覚悟しやがれ!」

 

 合同強化訓練にばかり気が向いていた伊之助は、ようやく狛治の存在に気付いたのかウガーと叫びながら刀を構えて斬りかかろうとする。

 怪我人が居る中で暴れるのはまずいと思い、俺はすぐに伊之助を止めようとするのだが、意外な人物が伊之助の行動を止める。

 

「これは、どういう状況ですか?」

 

 突如聞こえてくる底冷えのする声に俺達は全員ピタリと動きを止める。

 ギギギと油の切れた人形のようにゆっくりと首を動かせば、そこには満面の笑みを浮かべたしのぶが立っていた。

 だが、よく見ればあちこちに血管が浮き出ていたので俺は心の中で「ヒェッ」と叫んでいた。

 

「何かが壊れる音がしたので来てみれば……何で窓が割れているんですか? 誰が割ったんですか?」

 

 あー、ダメです。いけません。

 敬語モードなので既に怒りが有頂天です。

 

 しのぶの、そんなただならぬ雰囲気を感じたのか、あの狛治でさえ若干引いていた。

 上弦の参をビビらせるとは……しのぶ、恐ろしい子っ。

 

「それで? どなたがやったんでしょうか?」

 

 しのぶの問いかけに対し、伊之助以外のその場にいた全員が伊之助の方を向く。

 ちなみに、伊之助は青ざめ(?)ていて既にガクガクと震えていた。

 

「なるほど、伊之助君でしたか。……ちょっとお話がありますので、来ていただけますか?」

「断る!」

「まぁまぁそう言わずにほら早く」

「おい、引っ張るな! 断るっつってんだろ! おい、力強くねーか⁉ ちょ、あ……」

 

 抵抗むなしくしのぶに連行される伊之助を、俺達はただただ見守ることしかできなかった。

 伊之助、君のことは忘れないよ。

 

 

 その後、めちゃくちゃ衰弱した伊之助が発見されたとかされないとか……。

 何があったのかを聞いても、彼は決してその時のことを頑なに言わなかったという。




投稿してからまだ1ヶ月ほどなんですが、もうクライマックス間近という事実。
RTAかな?

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