【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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感想で指摘されましたが、確かにタコと無惨様を同列に語るのは失礼でしたね
タコに
誠にごめんなさい

無惨様はどういうムーブかましても無惨様だからで済むのが書き手にとって非常に楽です(無慈悲)


風雲!無限城ー童磨篇ー

 俺は走っていた。

 鳴女に落とされた後、すぐさま目的の為に走り出す。

 

 先ほどの事を思い出すと、未だに心臓がバクバクする。

 

「……っぁああああああ! くっそビビったわ! あんなんチートやろ! 速過ぎて見えなかったわ!」

 

 悲鳴嶼さんを守る為に前に飛び出したが、無惨の攻撃が全く見えなかった。

 偶然にも刀で弾くことができたので事なきを得たが、少しでも防げなければミンチになってたと思うと笑えない。

 だが、現実は生きている。

 今のところは予定通りに進んでいるし、問題ない。

 

 ここまでの流れを俺は思い返す。

 以前、耀哉には絶対に死ぬなよと釘を刺しておいた俺だったが、それを無視して死にそうな予感がしたので、珠世様に何かあれば伝えるようにと言い含めておいた。

 そして、訓練も終わりに近づいたあたりで、やはりというか耀哉は爆死の道を選んでいた。

 そして、その隙に無惨へ薬を打ち込むようにと珠世様に打診していたのだ。

 耀哉は俺に止められると思って隠していたようだったが、すでに珠世様を抱き込んでいたとは知らずに情報が筒抜けだったのだ。

 それすらも見越して罠を張っている可能性もあったが、俺はその情報を信じることにした。

 実際、マジで爆薬なんか仕掛けてやがったからな。

 回収するのにかなり手間取ってしまった。

 その後、愈史郎の血鬼術で姿を隠し、無惨を奇襲。

 あわよくばとも思ったが失敗したので、当初の予定通り俺が煽って注意を惹きつけ、珠世様に薬を打ち込んでもらったのだ。

 

「珠世様、大丈夫だろうか」

 

 そこまで思い返したところで、無惨と共に落ちていった珠世様の身を案じる。

 俺としては彼女をあの場で取り返したかったのだが、そうすると無惨がすぐにでも薬を分解して逃げてしまう可能性があった。

 故に、断腸の思いで原作通り珠世様は無惨にくっついててもらったのだ。

 本人もそれを望んでいたしな。

 だが、このまま死なせる気はない。

 さっさと、残りの上弦を倒して珠世様も救うのだ。

 

 狛治からの情報提供(という体)で、柱と他の隊士達にも無限城の事は伝えておいた。

 必ず複数の人間で組んで行動するようにし、柱以外は無惨を見つけたら場所だけ伝えてすぐに撤退するように命令してある。

 もちろん、耀哉には内緒である。俺に隠し事してたんだから、俺にだって隠し事をする権利があるのだ。

 

 完全に死者を0にする、というのは難しいが少しでも犠牲者を減らすことはできるだろう。

 俺と狛治が情報を伝えたことである程度の心構えは出来ているだろうしな。

 

 んで、俺達が素直に無限城に落ちた理由としては残りの上弦だ。

 無惨をその場にとどめることに集中しなければいけないのに、他の上弦に奇襲でもされたら目も当てられない。

 故に、あえて無惨の策にハマった振りをし、先に上弦をぶっ飛ばして後顧の憂いを失くした後に、皆で無惨をボコろうというわけだ。

 確定している上弦は、お労しい兄上、童磨、鳴女。

 ここに本来なら獪岳が加わっているはずだったが、俺の洗nもとい説得のお陰で綺麗な獪岳になったのでそれは無い。

 原作にはない他の鬼が上弦になっている可能性もあるが、狛治曰く上弦になったばかりの鬼は大した脅威ではない(鬼基準)との事なのでそう警戒することもないだろう。

 大丈夫だよな?

 ふと脳裏に不安がよぎり心配になっていると、角の方から鬼の気配を感じる。

 

「っ! って、狛治か」

「賽……驚かすな」

 

 刀を振り被ろうとした瞬間、向こうからも拳が眼前に迫り、そこで寸止めされる。

 よくよく見れば狛治であった。

 望み通り無限城にやってきたとはいえ、1人で寂しかったので非常に心強い。

 

「他の皆は?」

「知らん。俺は血鬼術の対象外だったから適当な入口に入ったのでな。今のところ、誰とも合流はしていない」

 

 そりゃ対象外だろう。

 無惨としても、呪いが外れたのは把握しているがまさか鬼殺隊の仲間になってるとは思っていないだろうし、こちらも全力で秘匿したから当然である。

 

「よっし、それじゃ俺についてきてくれ」

「分かった。……何かアテでもあるのか?」

 

 狛治のその問いに対し、俺は意味ありげに笑みを浮かべる。

 アテ? そんなもんねーよ!

 原作でも内部の詳しい描写はなかったはずだし、あったとしてももう完全に覚えていない。

 俺が覚えているのは、あくまで鬼に関連する事だけである。

 とりあえずは……しのぶと合流したい。

 割と原作ブレイクをしてきたが、俺が累と出会ったり、煉獄さんが狛治、派手柱が堕姫と鬼いちゃんというように大元は変わらないというのは確認済みだ。

 結果こそ変えられるが、介入をしなければ変わらないだろう。

 

 原作ではしのぶは、童磨に殺され吸収されてしまう。

 それが結果的に童磨の敗北に繋がるのだが……もちろん、俺がそんな事をさせるはずがない。

 この戦いが終わったら俺……カナエさんとしのぶに求婚するんだ……。

 一夫多妻制だとかそんなのは関係ない。俺は2人が好きなんだ。

 宇髄に嫁が3人居るんだから2人くらい許されるだろう。

 そして、炭治郎くんと禰豆子ちゃんも迎えて蝶屋敷のみんなと仲良く暮らすんだよ。

 

 だから、意地でも死なせねーんだよ!

 

 

「ねぇ、そろそろ諦めなよぉ。苦しいでしょ? 痛いでしょ? 俺が救ってやるって」

「ほざけ……!」

 

 見た目は心配しているように見せかけながら、殺気を感じにくい言動で上弦の弐である童磨が話しかけてくるので、私はそれを冷たくあしらう。

 

 体が軋む。腕から先の感覚が寒さで無くなりつつある。

 こいつの情報はあらかじめ姉さんと賽から聞いていたので、ある程度の心構えはできているつもりだったが、奴の実力は私の予想以上だった。

 賽の開発したガスマスク? のお陰で奴の血鬼術を吸わずに済んでいるけれど、周りの気温が低くなっているのだけはどうしようもできない。

 だが、ここで折れるわけにはいかない。

 奴は……私の姉さんの足を奪った存在なのだから!

 

「もー、なんでそんな怒ってるのさ。俺だって残念なんだよ? 君の姉さん、だっけ? 彼女を救えなくて中途半端に苦しめる事になっちゃったんだから。あの、えーと賽だっけ? 彼が居なければ確実に救えたと思うんだけどね。むしろ、恨むなら彼女が苦しむ原因を作った彼を恨むべきなんじゃないかな?」

 

 ふざけるな。私が賽を恨む?

 感謝をすればこそ、恨むなんて言うのは私にはない。

 ――基本的に、鬼というのは私達人間よりもはるかに肉体の性能が優れている。

 それが上弦ともなれば、災害といっていい程の理不尽さだ。

 出会えば確実に死んでしまうだろう。

 姉さんは、確かに両足を失ってしまい柱を引退することになってしまった。

 だけど生きている。そして、それは賽のお陰だ。

 彼は、臆病で何を考えている分からず、馬鹿で、間抜けで、鈍くて、あんぽんたんで……でも、私の好きな人だ。

 そして、姉さんの好きな人でもある。

 最初は、恩人という贔屓目もあったかもしれない。

 でも、彼と共に過ごしている内に惹かれている自分に気づいた。

 

 だからこそ、私は彼を侮辱する童磨が許せない。

 一緒に戦っていた伊之助君は自身の母のことを聞かされ放心状態、カナヲは健闘したが満身創痍。

 まともに戦えるのは私だけ。

 だけど、肝心の毒が悉く効かない。理不尽にもほどがあるわよ!

 伊之助君とカナヲの回復を待っている余裕もないし……どうしたものかしらね?

 

 私は鬼の頸を狩れるほどの力がない。だから、鬼を殺せる毒を作り出した。

 その毒すら効かないとなると万事休すだ。

 

「他の2人も辛そうだし、見てるこっちも辛いよ。大丈夫、俺はこれまで何人もの人を救ってきたんだ。怖くないよ」

「はっ! 感情なんかないくせに感情がある振りをして同情して……おかしいったらないわね」

 

 その言葉に、先ほどまでいやらしい笑みを浮かべていた童磨は途端に真顔になる。

 

「……俺はせっかく君達を救ってあげようとしているのに、なんでそんな意地悪を言うのかな?」

 

 ビリビリと伝わってくる奴の殺気に、体が震える。

 先ほどまでのふざけた様子とは違い。おそらく、これが奴の本性なのだろう。

 

「もう遊ぶのも飽きちゃったし……一思いに救ってあげるよ」

 

 血鬼術・冬ざれ氷柱

 

 奴が扇子を振るうと、頭上に広範囲にわたる巨大な氷柱が現れる。

 まずい! 私はまだ避けられるが、このままだと伊之助君とカナヲが巻き込まれてしまう。

 

「賽……!」

 

 絶望に呑まれようとした瞬間、脳裏に浮かぶのは好きな人の顔。

 普段は頼りないくせにいざとなると馬鹿みたいに頼れるあの人の名を、私は無意識のうちに呼んでいた。

 

「おーれーのー……大事な人を傷つける馬鹿はどこのどいつじゃああああああ!」

 

 その声と共に粉々に砕け散る頭上の氷柱群。

 

「へぁ⁉」

 

 それは童磨にとっても予想外だったのか、先ほどまでの奴からは考えられないほどの間抜けな声。

 そして、目の前に降り立ったのは……。

 

「大丈夫だったか?」

 

 狛治だった。

 助かったには助かったけれど、先ほどまで賽の事を考えており、賽の幻聴まで聞こえていたので何だか気まずくなる。

 

「あ、ありがとう狛治」

 

 だが、助けてくれたのは事実なのでとりあえず礼を言う。

 鬼……それも上弦を仲間にするなんて、とは思っていたけれどこの結果を見ると間違っていなかったんだなと思う。

 

「礼なら奴に言うんだな。あいつが、「しのぶの気配がする!」と言ってここまで俺を連れてきたんだ」

 

 そうして狛治が指し示した先には、童磨に斬りかかっている賽の姿があった。

 

「しのぶ! 大丈夫か! 死んでないか⁉」

「……遅いわよ、馬鹿」

 

 彼の姿を見た瞬間……とてもそういう雰囲気ではないのに安心できる私が居るのだった。




こういうベタな展開……好きなんです
ヒロインムーブが足りなかったしのぶさんに思いっきりヒロインムーブさせてみました

ガスマスクは、賽が童磨対策に鍛冶師の人達に作ってもらいました
賽の記憶の元に作ったなんちゃってガスマスクなので現代程のクオリティはありません。

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