【完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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潜影蛇手で料理?と思って検索したらクソほどに笑った


最終話 そして、これからも

 ――それからの話をしよう。

 無惨を倒した俺達は、ひとまず騒ぎになる前にその場を撤収した。

 その後、産屋敷の名を借り、街の復興に協力する有志として鬼殺隊全員で作業にあたった。

 大変な作業ではあるが、隊士達は皆不平不満は言わず、それどころか晴れ晴れとして働いていた。

 長年の因縁だった鬼と、その元凶である無惨が滅んだのだから当然と言えば当然だ。

 俺も痣と残りの寿命について気になるものの、いったん痣の事は置いておいて働くことに専念した。

 

 ていうか、主に無惨が破壊しまくったのに何で俺達がその尻ぬぐいをせねばならんのだ。

 おのれ無惨。どこまでも人間に迷惑をかけていくな。

 そんな、何とも納得いかない感情を抱えたまま、復興作業をしていった。

 ちなみに、狛治の処遇は一旦保留にし夜間の作業を手伝わせた。

 人手は少しでも欲しいからな。

 

 それから3ヵ月後。街もほぼ復旧し、鬼殺隊のメンバーの手が必要なくなり始めた頃、俺達柱は久しぶりに産屋敷邸へと呼ばれた。

 到着すると、俺が一番最後だったようで他の柱達が待機しており、上座にお館様が座っている。

 無惨を倒してからは病気の進行も止まり、完全に快復……とまではいかないがそれなりに快方に向かっているそうだ。

 正直、無惨が原因で短命というのは考え過ぎで血筋による何らかの病気かなと思っていたのだが、どうやらマジで無惨が原因だったらしい。

 おのれ無惨め。(2度目)

 

「……全員揃ったね」

 

 柱が全員揃った事を確認すると、お館様が口を開く。

 

「街の復興作業お疲れ様。上の人達からは非常に助かった、感謝していたと伝えてくれと言っていたよ」

「うむ! 俺達が暴れまわって壊してしまったからな! 後始末をするのは当然のことだ!」

「無惨の尻拭いをせねばならんのが納得いかないがな」

 

 煉獄さんがそう言うと、イグッティがそれに続けるようにネチネチと話す。

 相変わらずのネチネチっぷりではあるが、この3ヵ月でだいぶ険が取れてきたように思う。

 まぁ、そうなった理由は最近、蜜璃ちゃんとの仲がさらに進んだせいだというのは俺だけが知っている。

 何故知っているかって? 蜜璃ちゃんから報告を受けているからだ。

 イグッティと仲良くしたいけどどうすればいいか分からないと蜜璃ちゃんから相談されたので、デートの指南や男女間での仲良くする方法を教えていたら、報告してくれるようになったのだ。

 それらの事は、俺のイグッティ弄り帳に逐一記録し、タイミングを見計らってちょくちょく弄っていこうと思う。

 

「……街に関することはこれくらいにしておいて、本題に入ろう。今日が最後の柱合会議だ」

 

 最後、か。

 本当に終わったんだな。

 何度か会議はやってきたが、その度に胃を痛めていたんだけれども……いざ最後となると少しばかり寂しい気分にもなるから不思議なものだ。

 

「行冥、義勇、杏寿郎、実弥、天元、蜜璃、小芭内、無一郎……そして賽。今まで本当にありがとう。まさか、柱が全員揃ったままこの日を迎えられるとは思っていなかった」

 

 俺が何年もかけて理想のハッピーエンドを迎えようと努力したんだから当然だ。

 これで、もし誰か1人でも欠けていたら俺は一生後悔していたと思う。

 平隊士達に関しては……残念ながら何人かは死んでしまったが、それでも原作よりは多くの人達を救えたはずだ。

 

「――鬼殺隊は今日で解散する」

 

 ……あぁ、本当に終わるんだな。

 ようやく柱から解放されるという嬉しさと、これで終わってしまうという悲しさが俺の胸中をぐるぐると渦巻く。

 

「長きに渡り、身命を賭して世の為人の為に戦って戴き、尽くして戴いたこと……産屋敷家一族一同、心より感謝申し上げます」

 

 お館様……いや、鬼殺隊はもう解散だから耀哉だな。

 耀哉と奥に控えていたあまねさんや子供達も同時に頭を下げる。

 

「顔を上げてくださいませ!」

「礼など必要御座いません! 鬼殺隊が鬼殺隊で在れたのは産屋敷家の尽力が第一です!」

「……ありがとう。義勇、実弥。そう言ってもらえると私も救われる」

 

 冨岡さんと実ちゃまの言葉に耀哉が微笑んだ……と思ったら、こちらをちらりと見ると不敵な笑みを浮かべる。

 ……なんだろう。すっごく嫌な予感がする。

 俺の本能が、今すぐここから逃げろと告げている。

 

「さて……湿っぽいのは苦手だから俺はこれで失礼させてもらう」

「おっと、失礼すんじゃねぇ」

 

 俺がさりげなく立ち去ろうとすると、隣に座っていた実ちゃまが俺の腕を掴む。

 

「行冥」

「御意」

 

 耀哉が悲鳴嶼さんの名を呼ぶと、何故か彼は俺を後ろから羽交い絞めにする。

 純粋な力比べでは俺は悲鳴嶼さんには敵わないので、こうされると動けなくなってしまう。

 

「もしもし耀哉さん? これはいったい何のつもりでしょうか?」

「おい、賽! お館様を名前で……」

「良いんだ、実弥。鬼殺隊は解散だしね。それに、彼とは親友だから私が許している」

「え、ちょ親友ですか⁉ おい、賽! ずるいぞ貴様!」

 

 俺と耀哉が親友であることを耀哉があっさりバラすと、実ちゃまがものすごい形相で睨んでくる。

 

「おい、派手に話がズレているぞ。今は、そんな話をしている場合ではない。お館様に話をさせろ」

 

 宇髄が窘めるようにそう言うと、ぐぬぬという表情を浮かべながら実ちゃまが座る。

 

「私はね。ずっと考えていたんだ。この数年で最も功績をたてたのは誰かと。そして、誰のおかげで柱が全員無事に生き残れたのかと。それはね、全て賽。君のお陰なんだ。本当にありがとう」

「お、おう」

 

 あの耀哉から素直に礼を言われると何だか気恥ずかしい。

 だが、それとこうして俺が捕まっている状況がいまいち分からない。

 

「だけど、残念ながらそんな賽にどうすれば恩を返せるのかが分からなかった。そして、考えた結果……君を幸せにすることが恩返しになるのではないかと結論付けた。胡蝶カナエと胡蝶しのぶ。彼女ら2人と君を産屋敷家の力を総動員させて正式に結婚させたいと思う。そのために、君を除いた他の鬼殺隊全員に協力を要請したんだ。いやぁ、君に悟られないようにここまでこぎつけるのは苦労したよ」

 

 

 

 

 

「( ᐛ )パァ」

 

 

 

 

 それからはまさに怒涛の展開であった。

 急展開過ぎて思考がオーバーフローしている俺を柱全員でどこかへ運び込み、狭い部屋に押し込まれあれよあれよという間に結婚式でよく見る和装の紋付き羽織袴に着替えさせられる。

 

「いやいやいや! どういう事⁉ 状況が飲み込めないんだけど!」

 

 ようやく再起動したときは、すでに着替え終わり呼ばれるまで待機という状態だった。

 

「よく似合っているぞ」

 

 と狛治。

 なんでも、俺が逃げ出さないための見張りとして呼ばれたらしい。

 いやまぁ、確かに何にも備えが無いと元上弦の狛治には勝てないし、最強の見張りだとは思うんだけどさぁ?

 

「狛治も知ってたのか?」

「あぁ、耀哉に言われてな。賽と胡蝶姉妹を結婚させたいから協力してくれと。貴様の事だから2人と結婚する、というのに遠慮してるだろうからとな」

 

 うぬぬ、流石は親友……見透かされてやがる。

 確かに俺は、カナエさんとしのぶと結婚したい! と最終決戦前に決意したものの、冷静に考えると2人の奥さんを迎えるのはどうなんだろうと現代人的価値観がふつふつと湧いてしまったのだ。

 宇髄というハーレムクソ野郎の前例はあるものの、いまいち踏み切れなかった。

 それに、大きな問題として俺の寿命もあるしな……。

 25で高確率で死ぬかもしれない人間が美人2人と結婚して束縛してしまっていいのだろうかとも思ってしまったのだ。

 

「ちなみに、この話にはカナエとしのぶも協力している。つまり、知らなかったのは文字通り貴様1人だけなのだ」

 

 えぇ、カナエさん達も協力してんの……?

 マジで俺なんかと結婚していいのか?

 

「賽、お前は2人が嫌いなのか?」

「いや好きだよ? 大好きだ。あの2人が他の人にとられると考えるだけで腸が煮えくり返る」

 

 そんな奴が居たら、俺があらゆる手を使ってでも闇に葬る。

 

「ならいいじゃないか。中には結婚したくてもできない奴もいたんだ。素直に今の状況を受け入れろ」

 

 むぅ、流石に狛治にそれを言われると何も言えなくなってしまう。

 この状況を打破できないかと悩んでいると、ついに呼ばれてしまう。

 

「ほら、呼んでいるぞ婿殿」

「あ、ちょ押すなって! 心の準備がぁ!」

 

 と、抵抗してみるも鬼の力に人間が抗えるはずもなくそのままズルズルと連れていかれる。

 そして、仰々しい扉を開けると広大なホールがあり、ワッと歓声が上がる。

 よくよく見ればどいつもこいつも鬼殺隊所属の奴らであった。

 

「お義兄ちゃん、待ってたよ」

 

 目の前にはめかしこんだ禰豆子ちゃんが立っている。

 すっかり人間に戻り、今では蝶屋敷で共に暮らしている。

 

 そうそう、炭治郎くんと禰豆子ちゃんの義兄弟の件だが、とりあえず俺の義理の弟と妹にはなったものの、苗字は彼らの意向もありそのままだ。

 炭治郎くん曰く「竈門という名前は残したい」との事であった。

 

「……禰豆子ちゃんも関わってたかぁ」

「そりゃ、賽お義兄ちゃんとカナエさん、しのぶさんの幸せの為だもん。お兄ちゃんもすっごく張り切ってたんだから」

 

 禰豆子ちゃんはそう言いながら手を差し伸べてくる。

 ここまで来てごねるのもあれなので、俺は観念し禰豆子ちゃんと手を重ねるとそのまま中央へと案内される。

 

「もうすぐでお兄ちゃんが、カナエさん達を連れてくるから待っててね」

 

 禰豆子ちゃんはそう言うとぺこりと頭を下げて隅の方に移動する。

 その言葉通り、少しすると再び扉が開き、まずは炭治郎くんが先導しそのあとをカナエさんとしのぶが入ってくる。

 

「――」

 

 言葉を失う。というのはこういう事を言うのだろう。

 2人はとても……綺麗だった。

 俺が和装だったので、てっきり白無垢かなんかだと思ったら白いウェディングドレスであった。

 俺が言葉を失っていると、やがて炭治郎くんに連れられ2人がこちらへとやってくる。

 

「義兄さん、おめでとうございます」

「はは、ありがとう。炭治郎くん」

 

 カナエさんとしのぶを連れてきた炭治郎くんと軽く言葉を交わす。

 

「ふふ、驚きました?」

「いやまぁ、驚いたというかなんというか未だに現実感がないよ」

「これは紛れもなく現実なんだからしっかりなさい」

 

 俺とカナエさんが話していると、しのぶがそう言い放つ。

 

「2人は……本当に俺が相手でいいのか? 聞いてるだろ? 痣が出ると25歳までには死ぬって……。死ぬのが分かってるのに2人を縛るわけには」

 

 俺がそう言うと、カナエさんとしのぶはお互いに顔を見合わせた後、

 

「「それがどうかしたの?」」

 

 と、同時にあっけらかんと言い放つ。

 

「それがまず賽らしくないのよね。いつものアンタなら痣が出たからなんだ! 俺は最後まで生き抜いてやる! 言いそうなもんじゃない」

「そうですよ。それに、25歳を過ぎても生き残る可能性も0じゃありませんし」

 

 確かに前例はあるっちゃあるけど、その前例が特殊過ぎてなぁ。

 

「それに……私達が、ただ黙ってアンタを死なせると思う? 私は薬学の専門家よ? 珠世さんも協力してくれるっていうから、アンタが嫌だって言っても絶対に死なせてやらないんだから」

「ふふ、私だって貴方に助けてもらってからずっと恩返しをしたいと思ってたんです。今度は私達が貴方を……賽さんを助ける番なんですからね?」

「……」

 

 俺は、2人のあまりにも頼もしすぎる言葉に何も言い返せない。

 

「ちょっと、私達にここまで言わせてるのに何か言えないの?」

 

 と、睨んでくるしのぶ。

 ……そう、だよな。俺らしくなかったよな。

 出す気がなかった痣を出しちゃったせいで、らしくもなく落ち込んでいた。

 そうだ。俺は生き残る為にハードモード過ぎる戦いを生き抜いてきたんだ。

 たかが痣くらいで死んでたまるかってんだ!

 

「そう、その顔よ。私達が好きになった人の顔は」

 

 俺の心情を察したのか、しのぶが嬉しそうにフワリと笑う。

 

「カナエさん、しのぶ」

「何ですか?」

「何?」

 

「2人とも……大好きだ」

「「知ってる」」

 

 たくさんの笑顔に包まれながら、たくさんの人に祝福されながら俺とカナエさん、しのぶは無事に夫婦となった。

 正式な婚姻関係を結べるのかと不安ではあったが、そこは耀哉が何とかしたらしい。

 詳しい事を聞こうとしたら闇の深い笑みを浮かべられたので、俺は深くツッコまないことにした。

 触らぬ神に祟りなし。長生きの基本である。

 

 そんな一部不穏な空気を漂わせつつも結婚式を滞りなく終わらせた翌日の夜。

 俺は狛治に呼び出される。

 

「狛治、なんか用か?」

「ふん、だいたい察している癖に白々しいな」

 

 俺の言葉に対し、狛治はフンと鼻を鳴らす。

 

「目的であった無惨を倒し、街を復興させ、お前の結婚式も見届けた。俺にはもう未練はない。頸を斬ってくれ」

 

 狛治はそう言うと、俺の日輪刀を投げ渡してくる。

 俺はその刀を受け取り、しばらく眺めた後ポイっと地面に投げ捨てる。

 

「いや、今更頸を斬ったりはせんよ」

「何?」

「そもそも鬼殺隊はもう解散して、俺も柱じゃないしな。鬼を狩る理由がない。……狛治、お前は人間に戻れ」

 

 そもそも、実を言うと狛治の頸を斬る気などさらさらなかった。

 なんだかんだ理由を付けて人間に戻すつもりであった。

 狛治は、それこそ数えきれないほどの人間を殺してきたが人間時代のは情状酌量の余地があるし、そもそも時効もいいところだ。

 鬼になってからは、鬼になったのが無惨のせいだし、鬼の間は正気でなかったので俺裁判で無罪である。

 もし、これが半天狗とか玉壺みたいなクソ野郎だったら問答無用で斬っていたが、狛治は救われるべきなのだ。

 

「そして、人間に戻ったら殺した分だけ人を救うんだ。死んだら確かに楽になれるかもしれないけど、罪を償った事にはならない。これからの人生を誰かの為に尽くして……」

 

 そして、来世では幸せになってほしい。

 鬼のままでは救われないしな。

 

「……馬鹿だな、貴様は」

「知ってる」

「俺は鬼だぞ」

「知ってる」

「たくさんの人間を殺してきたぞ」

「よーく知ってる」

「それでも……人間になって生きろと言うのか?」

「あぁ。それが今の狛治にとって一番辛い罰だろうからな」

 

 俺のその言葉に、狛治は「ハッ」と短く笑う。

 

「貴様はどこまでも卑怯な奴だな。そう言われたら、従うしかないじゃないか」

「そうやって俺は生き抜いてきたんでね。俺は、自分の為ならどこまでだって卑怯になれるぜ」

 

 そんな会話をし、俺達はお互いに笑い合う。

 

「賽ー?」

「賽さーん、どこですかー?」

「おっと、俺の嫁さんが呼んでるわ。ほれ、狛治。行くぞ」

「あぁ」

 

 俺達は、皆が待つ蝶屋敷へと向かっていく。

 

 

 

 これからも時代は進み、様々な事が起きるだろう。

 だけど、皆とならきっと乗り越えられる。乗り越えてみせる。

 

 サイコロステーキ先輩に転生したけれど、俺は全力で生き抜いた。

 そして、これからも俺は皆と一緒に生き抜いていくのだ。

 




これにて本編は終幕となります。

色々描写が足らない部分もあるかと思いますが、そこら辺は皆様の想像の数だけ展開が云々(丸投げ)

現代編や番外編は思い付いたら書こうと思います。
一応、主人公と胡蝶姉妹のその後だけちらっと書きますと、痣による短命を何とかする為に珠世様と研究した結果、短命を克服。
その副次効果で『栖笛製薬』を立ち上げ現代まで続く世界でも有数の財閥となります。
隙あらば社長や会長職を引退したがっていたという逸話が現代の教科書に載っているとか載っていないとか……


サイコロステーキ先輩を主人公にした話は、以前から書きたいと思っていたのですが中々に機会がなく、鬼滅の刃ブームが来たことで乗るしかない、このビッグウェーブに!という事で書き始めました。
実を言うと、最初の1、2話を書いた辺りで満足してしまいエタりかけたのですが意外と好評の為にモチベが上がり書き切ることが出来ました。
というか、ブクマが5桁超えるとか完全に予想外でした。
皆様の感想から着想を得たものもあり、ある意味で皆様と一緒に書き上げたとも言えます。
その設定の少なさゆえにオリキャラ状態でしたが、皆様から受け入れられて大変嬉しかったです。
この1ヶ月弱、本当にありがとうございました。
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