【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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お待たせしました、おばみつ回です。(ただし伊黒は出ない)
時系列は無惨討伐前となります。





恋愛のすゝめ

「賽さん……大事なお話があるの……」

 

 ある日の事、柱としての仕事を終えひと段落していると、蝶屋敷にやってきた蜜璃ちゃんが潤んだ瞳でこちらを見ながらそんな事を言いだした。

 

 上気した頬、潤んだ瞳、そして相談したいこと。

 あーはいはい、ピンときたよ、お兄さんすぐにピーンと来ちゃいましたよ。

 そこらのラブコメ主人公のような朴念仁であれば気づかないだろうが俺は違う。

 大事な話、というのはつまりは告白である。誰にって? 俺に決まってるじゃないか。

 

 何せ、蜜璃ちゃんが入隊した時から彼女の面倒を見てきたのだ。

 武器が似ているというのもあり、俺が戦い方を教え、見事柱となったのである。

 そんな師弟の垣根をついに越え、俺に愛の告白をしようというわけだ。

 いやー、モテる男はつらいね。

 だが、俺は心を鬼にして断らねばならない。

 何故なら、俺には既にカナエさんとしのぶという女性が居るのだ。(Not恋人)

 どこぞの祭りの神ならまだしも、俺は3人も器用に愛せる自信がない。

 彼女には申し訳ないが、傷つかないように丁重にお断りするしかない。

 

 まぁ、とにかくここで話すのもあれなので、俺は蜜璃ちゃんと共に人気のない裏庭へとやってくる。

 

「それで……話って?」

 

 俺は、さも気づいていませんよという風を装って尋ねる。

 

「えっと……その……こんな事、賽さんに言うのは凄い恥ずかしいんだけれど……」

 

 対して、蜜璃ちゃんは体の前で手を組みながらもじもじくねくねする。

 うーん可愛い。

 こんな子が今まで見合いに失敗してたとか、この時代の野郎どもは本当に見る目がない。

 だが、俺も断らねばならないので心が痛い。

 

「えっとね……伊黒さんともっと仲良くなりたいんだけど、どうすればいいのかしら!」

「ごめん、蜜璃ちゃん。君の気持は嬉しなんだって?」

 

 俺は精一杯の決め顔をしながら断ろうとしたところで、なんか思っていたのと違う事に気付く。

 

「だから……伊黒さんとどうすれば、もっと仲良くなれるのかなって。もちろん、今は無惨を倒さなければならないし、そんな事に現を抜かしている場合じゃないというのも理解しているわ! だけど、いつ死ぬか分からないこの職業だからこそ、悔いのない人生を送りたいの!」

 

 蜜璃ちゃんは、真剣なまなざしでこちらを見つめながらそう力説する。

 

「こんな事、他に相談できる人も居なくて……賽さんにしか相談できなかったの。ご迷惑だったかしら?」

「い、いやそんなことないよ! むしろ、俺にそんな大事な事を相談してくれて嬉しいなうん!」

 

 俺は、先ほどまでのこっぱずかしいセリフをなかったことにし、そう答える。

 いやー、あぶねぇあぶねぇ。危うく大恥をかくところだった。

 誰だよ、俺に告白するとか抜かした奴は。

 ……俺だった。

 

「ありがとう! 流石は賽さんね!」

 

 うーん、笑顔が眩しすぎて俺の穢れた心が浄化されそう。

 とりあえず、イグッティはもげてくんないかな。

 

「それで、どうすればいいのかしら……」

「そうだなぁ……」

 

 と、顎に手を当てて悩んだフリをしてみるも、特に何も思いつかない。

 正直、恋愛関係に関してはからきしなのだ。

 だが、折角蜜璃ちゃんが俺を頼ってきてくれたので、何も思いつきませんでしたと返すのは可哀そうだ。

 

 ぶっちゃけ、蜜璃ちゃんがこうやって悩む事もない程に伊黒は彼女にべた惚れだ。

 直接イグッティから聞いたわけでは無いが、なんというか彼の態度を見れば明らかである。

 俺と蜜璃ちゃんが談笑してると、めっちゃ睨んでくるし。

 ちなみに、柱の中でそれに気づいてるのは、俺と宇随だけである。

 他の奴らはほら……ね?

 

 蜜璃ちゃんのこの様子からすると相思相愛なんだろう。

 それを素直に伝えればいいだけではあるが、それだと面白くないし、イグッティにはもっと悶々としてほしい。

 

「まぁ、無難なところで一緒に出掛ける、くらいかなぁ。甘味処にでも一緒に行くと良いよ」

「で、でも迷惑じゃないかしら……」

 

 迷惑? は、イグッティならむしろ何を置いても優先して出かけることを選ぶだろう。

 

「大丈夫大丈夫、イグッティ……じゃなかった伊黒なら必ず、蜜璃ちゃんの誘いに乗ってくれるよ」

「そうなの?」

 

 なおも不安そうにする蜜璃ちゃんに対し、俺は力強く頷く。

 

「賽さんがそう言うなら……うん、私……勇気を出して誘ってみるわ! ありがとう!」

 

 蜜璃ちゃんは嬉しそうに笑うと、唐突に抱き着いてくる。

 うほほほーい!

 

「やっぱり賽さんに相談してよかったわ!」

「そう言ってもらえると、こっちも嬉しい……よ……」

 

 俺は、自身に当たる豊満な感触に表情が崩れそうになるのを耐えながらそう答える。

 唐突なスキンシップは非常に嬉しいが、このままでは賽さんの賽さんがチンチロリンしてしまうので離れてほしい。

 

「あ、ごめんなさい。つい、嬉しくて……」

 

 蜜璃ちゃんも抱き着いてしまったのはマズイと感じたのか、申し訳なさそうに離れる。

 ……ふぅ、危なかったぜ。

 

「俺は平気だけど、あんまり他の人にはやっちゃだめだよ。蜜璃ちゃんは可愛いんだから、普通の男は勘違いしちゃうから」

 

 この俺のようにな!

 

「か、可愛くなんてないわ! だって、今までもお見合い失敗しちゃったし……」

「それはクソ男どもの見る目がなかっただけだ。蜜璃ちゃんは可愛いからもっと自信を持って」

「は、はい……」

 

 俺の台詞に蜜璃ちゃんは顔を赤くしながら俯いてしまう。

 うーん、蜜璃ちゃんは何しても可愛いな。

 マジで、イグッティもげないかな色々。

 

 その後、イグッティの好きそうな場所を伝えたり、デートの際の注意点などを伝えてお開きとなる。

 俺からの一通りのアドバイスを受けた蜜璃ちゃんは何度も何度も頭を下げながら、嬉しそうに駆けていくのだった。

 

 そんな蜜璃ちゃんを見送った後、俺はぽつりと呟く。

 

「はぁーあ、羨ましいもんだぜ」

「何が羨ましいの?」

「うっほほーい⁉」

 

 俺の独り言に対し、唐突に返事が返ってきたので俺は思わず驚いてしまう。

 後ろを振り向けば、そこにはいつの間にかしのぶの姿があった。

 ……前からちょいちょい思ってたんだけど、俺の索敵能力をかいくぐるとかちょっとチート過ぎないかい?

 全然気配感じなかったんだけど。

 

「それで、何が羨ましいの?」

「い、いやなんでもない! 何でもないから気にしないで」

 

 俺の言葉に対し、しのぶはフーンと軽く返した後、「それで」と口を開く。

 

「さっき、貴方に甘露寺さんが抱き着いていたことについて聞いてもいいかしら?」

 

 

 

\(^o^)/

 

 

 

 

 その後、何とか誤解を解いた俺は何故かカナエさんとしのぶと一緒にデートに出かけることとなった。

 それを知った善逸に鬼の形相で「もげろ!」と言われたので、しばいておいた。




書きたいネタを書いてるだけなので、整合性とかは気にしない。
気にしてはいけない。いいね?

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