【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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「煉獄さん100億の男」Twitterトレンド入りおめでとうございます
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鬼殺の柱となれ

「賽くん、アナタの事が好きです」

 

 熱をはらんだ瞳でそう言うのは花柱こと胡蝶カナエさん。

 ただでさえ綺麗な顔をしているのに、そんな表情で迫られたら断れる男などいないだろう。

 突然のカナエさんの告白に思わず鼻の下を伸ばす俺だったが、突然誰かに腕を引っ張られる。

 

「姉さん! 賽さんは私の恋人になるんです! 誘惑するのはやめてください!」

 

 そう叫んだのは眉を吊り上げ不機嫌そうにしているしのぶだった。

 原作よりも幼いとはいえ、その片鱗は既に現れており腕に押し付けられる感触が何とも言えない。

 特にフラグを立てた覚えもないのだが、いつのまに俺は2人からモテモテになったのだろう。

 

「いいえ、いくらしのぶといえども譲るわけにはいきません。賽くんは私のものです」

「いいえ、私のです!」

 

 ふふふ、美人姉妹に取り合いをされるのも悪くはないな。

 俺がそんな事を考えているとしのぶとカナエさんが顔をグッと近づける。

 おいおい、好きになっちゃうからそんなに顔を近づけるなよ。

 

「「賽さん(くん)! どっちを選ぶんですか!」」

 

 はっはっは、いやーモテる男は辛いね。まるで夢のようだ。

 

 

 

「――――ハッ!」

 

 

 気が付くと、俺はベッドの中で横になっており見知らぬ……いや、見知った天井を眺めていた。

 ここは、俺が何度か泊まりに来たことがある蝶屋敷……胡蝶姉妹が住んでいる屋敷だ。

 何で俺はこんなところに寝ているんだろうか?

 ここに来る前の記憶がいまいちはっきりしない。

 

「それにしても……なんだかすっげぇ良い夢を見た気がするな」

 

 なんてことを考えながら起き上がると体中に激痛が走る。

 何事だと思いながら自分の体を見回せば湿布が体中に貼り付けられていた。

 特に怪我らしい怪我もしていないが異様に体が痛い。おそらくは激しい筋肉痛だろう。

 

「あ、そうだ……確かカナエさんを助けるために童磨の前に出て行ってそれで……」

 

 カナエさんを生かす為に必死こいて戦った記憶はあるのだが、どうにもはっきりしない。

 起きたばかりでまだ記憶が混濁しているのだろうか。

 俺が思い出そうとしていると、ふと横から何かの視線を感じる。

 そこには胡蝶姉妹にも引けを取らない美少女がちょこんと座ってジッとこちらを見ていた。

 彼女は……栗花落カナヲ。カナエさんとしのぶによって人買いから救われた少女である。

 基本的に無口な子で何を考えているかは分からない。嫌われていない……とは思うがいまいち確信が持てないので内心どう接していいか分からないのは秘密だ。

 

「ええと、カナヲちゃん? こんなところで何を?」

「……」

 

 俺が話しかけるが、カナヲちゃんは無表情のまま何も語らない。

 

「……起きた…………」

 

 気まずい沈黙が流れる中、カナヲちゃんがボソリとそう言うとトテトテとどこかへ去って行ってしまう。

 

「何だったんだ……? あ! ていうか、カナエさん! カナエさんは無事なのか⁉」

 

 カナヲちゃんの謎の行動に呆気にとられる俺だったが、ここへ来てようやくカナエさんの事を思い出す。

 早く彼女の安否を確認しなければ。

 俺はギシギシと痛む体に鞭をうち歯を食いしばりながら立ち上がる。

 今までそれなりに修行をしてきて鍛えてはいたが、ここまで激しい筋肉痛になったことはない。

 それだけ童磨との戦いで体を酷使したのだろう。

 むしろ、上弦と戦って無傷なのが奇跡なくらいだ。

 

「賽さん!」

 

 俺がようやく立ち上がると、息を荒くしながらしのぶが走り寄ってきた。

 一瞬、しのぶの体が透けて内臓まで見えたような気がしたがすぐに隊服を着たしのぶの姿になる。

 どうやら、体だけではなく目もおかしくなったらしい。

 

「ようやく起きたんですね。心配してたんですよ! って、どうかしたんですか?」

「いやぁ、何でもない……なんか心配かけちゃったみたいだな。……それよりもカナエさんh「私ならここです」」

 

 カナエさんの安否について聞こうとしたところで更に声が聞こえてくる。

 見れば、松葉杖をついたカナエさんと、それを支えるように寄り添っているカナヲちゃんが居た。

 ……よかった。怪我はしているようだが生きていたようだった。

 思いっきり原作を改変するような事をしてしまったが悔いはない。

 これが原因で俺が死んでしまっても構わな……いや、やっぱ死にたくない。

 プライドをかなぐり捨ててでも生き残りたい。

 

「無事でよかったです。心配してたんですよ」

「それはこっちのセリフですよ! あれだけ私が逃げてと言ったにも拘わらず十二鬼月の、しかも上弦に挑むなんて自殺行為もいいところです!」

 

 普段は温和でめったに怒ることのないカナエさんが珍しく声を荒らげてプンプンと怒る。

 怒っている顔も美しい。きっと明日も美しいぞ。なんて茶化そうと思ったが流石にふざけられる場面ではないので自重する。

 

「それでも……俺は、カナエさんを見捨てることなんてできなかったです。あそこでもし見捨てていたら、一生悔いが残りますし、しのぶ達にも顔向けができませんでした」

 

 その言葉を聞き、怒り顔だったカナエさんは少しだけ嬉しそうな顔をする。

 

「もう、無理はしないでくださいよ。賽くん、3日も寝込んでいて本当に心配していたんですから。しのぶも気が気じゃないといった感じでつきっきりで看病してたんですよ」

「ね、姉さん!」

 

 カナエさんのその言葉に、しのぶは顔を真っ赤にしながら怒鳴る。

 うーん可愛い。

 

「しのぶも看病ありがとうな。ていうか、俺って3日も寝てたんですか。もしかして、この体の痛みに何か関係が?」

「覚えてないんですか? あの上弦の鬼と戦っている時、まるで予知でもしているかのような動きで相手を翻弄していたんですよ。おかげで、日の出まで耐えることができたんです。そのあと、賽くんは昏睡して現在に至るというわけです」

 

 ――マジすか。え、何? 俺って透き通る世界会得したの?

 となると、さっきしのぶの体が透けて見えたのも錯覚じゃなかったのか。

 死の間際に居たことで、どうやら俺は天才のその先に片足突っ込んだらしい。

 ん? 待てよ……もしかしてこの技があれば累の攻撃も避けられるようになるんじゃね?

 おいおいおい、もう何も怖くないじゃねーか。

 童磨との戦いはかなり厳しかったが、その分のリターンも大きかったようだ。

 カナエさんも生存したし言うことなしである。 

 

 というか、それで俺が無傷な理由も分かった。

 回避特化の呼吸に加えて透き通る世界のお陰で怪我をせずに済んだのだろう。

 その分、筋肉痛がえげつないが。

 

「どうかしましたか?」

「あ、いえ何でもないです」

 

 俺は、透き通る世界については黙っておくことにした。

 突然、俺相手の体が透けて見えるようになったんですよ、とか言っても変な人扱いされるだけだろうし、そもそもどうやれば会得できるかとか原作でちょろっと言っていたはずだが忘れてしまったしな。

 確か、炭治郎を除いて柱で会得できたのが無一郎きゅんと悲鳴嶼さんくらいだったレベルで難しかったはずだ。

 

「俺の事よりもカナエさんは大丈夫なんですか?」

 

 ぱっと見、松葉杖をついている以外は元気そうに見えるが相手が相手だっただけに油断はできない。

 カナエさんは一瞬悲しそうな顔をした後、すぐにキリっと表情を引き締めて口を開く。

 

「私は……もう柱としては活動できないでしょう」

 

 そう言って近くにあった椅子に座ると袴をまくり上げる。

 

「っ!」

 

 カナエさんの両足は木製と思われる義足になっていた。

 

「私の両足は、あの鬼との戦いで壊死してしまっていたようで使い物にならなくなっていました。命を優先し、やむなく両足を切断。そして今は義足となっています」

 

 柱引退。命が助かったのはよかったが、カナエさんがもう戦えないと聞いて衝撃を隠せなかった。

 そうなると……やはり原作通り、しのぶが跡を継いで蟲柱になるのだろうか?

 

「賽さん、そんな表情をしないでください。上弦相手に賽さんは頑張りましたよ。貴方が居なかったら、おそらく姉さんは今頃生きていませんでした」

「そうです。賽くんは誇っていいんですよ。何せ、柱でもない隊員が柱を救ったのですから」

 

 カナエさんとしのぶの言葉に呼応するように、カナヲちゃんもコクコクと頷く。

 

「皆……ありがとう」

 

 その言葉を聞けただけで頑張った甲斐があるというものだ。

 

「それで、柱を引退するという事は定員が空いたという事で新しい柱を用意する必要があります」

 

 まぁ、そうなるだろうな。

 煉獄さんや派手柱が欠けてしまった時は特に柱を補充とかはなかったが、可能であれば次の柱を用意するべきだろう。

 鬼殺隊の士気にも関わるだろうし。

 

「新しい柱ですが……栖笛 賽くん。貴方を推薦します」

 

 

「( ᐛ )パァ」




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