【完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る 作:延暦寺
あと、皆様のおかげでルーキー日間1位になりました。ありがとうございます!
「外しますよ」
その声と同時に、俺につけられていた目隠しが外される。
長時間目隠しをされていたので差し込む日の光が眩しかったが、すぐに慣れてきた。
立ち並ぶ家屋に、どこからか漂ってくる硫黄の匂いにより温泉街を彷彿とされる。
が、当然ながらここは温泉街ではない。
鬼殺隊が擁する刀鍛冶達の隠れ里である。
原作開始後、炭治郎がやってくる頃には戦場と化すが、今は平和そのものである。
俺がここに来た理由はいくつかあるが、メインとしては装備の充実である。
まことに遺憾ながらお館様のパワハラにより柱となってしまったので、少しでも生存率を上げる必要がある。
そのために重要なのが装備だ。どっちみち俺の刀に『悪鬼滅殺』の文字を刻むことになるので、どうせなら俺専用に日輪刀をカスタマイズしてもらおうというわけだ。
構造が構造だけに直接相談しながら作った方がいいという事で、お館様から許可をもらい隠れ里へとやってきた。
「ここが隠れ里ですか、なんかいい場所ですね」
「でしょう? ここの人達も少し個性的ではあるけれど、良い人達ばかりなのよ」
俺と一緒にやってきていたカナエさんが松葉杖をつきながら近づいてきてそう言う。
今回、隠れ里へと向かうにあたってついでだからとカナエさんもついてきたのだ。
ここの温泉は様々な効能があり湯治にもいいらしい。
「あちらを左に曲がった先が長の家です」
「分かりました、ありがとうございます」
隠しの人が指を指す方向を見ながら俺は礼を言う。
そして、さっそくカナエさんと共に隠れ里の長の場所へと向かうのだった。
☆
「どうもコンニチハ。ワシ、この里の長の鉄地河原 鉄珍。里で一番小さくって一番偉いのワシ。畳におでこつくくらいに頭下げたってや」
「栖笛賽です。よろしくお願いします」
「胡蝶カナエです。両足が不自由な為、このような姿勢で失礼いたします」
ひょっとこの面を被り、こぢんまりとした老人が随分と上から目線でそう言うが、俺は素直に頭を下げて自己紹介をする。
相手の態度に言いたいことはあるが、ある意味でこの人達は俺の生命線だ。
変に怒らせて武器を作ってもらえないとかになったら俺が詰むので、素直に言う事を聞く。
「うむうむ。礼儀正しい子らやな。甘いものは好きかい? ほれ、菓子をやろう」
ありがとうございます、と軽く礼を言いながら俺達は鉄珍様から頂いたお菓子……金平糖をぽりぽりと食べる。
久しぶりに金平糖を食べたが、ほんのり甘くて美味しい。
現代でも金平糖は売っているが、中々に食べる機会ってないからなぁ。ちょっとだけ懐かしい気分になる。
「それで、そこの少年は武器についての相談で、そっちのお嬢さんは湯治だったかいね」
鉄珍様の言葉に俺達はこくりと頷く。
「それじゃ、少年は担当鍛冶師の所へ、嬢ちゃんは温泉へ案内しよう。ほれ、案内してさしあげんさい」
「賽くん。また後でね」
「はい、ゆっくり温泉を堪能してってください」
俺とカナエさんはその場で別れると、俺はそのまま担当鍛冶の所へ連れていかれる。
元々は別の刀鍛冶の人が担当だったのだが、俺が少し特殊な武器を所望したという事で、そういうのが得意な鍛冶師に担当替えとなった。
確か、名前は
「到着しました。こちらが鉄さんの家になります」
「ありがとうございます」
俺は案内してくれた里の人に礼を言うと、家の中へと入る。
そこには――
「ふんっ! はぁ! キレてるキレてる! 肩にちっちゃい牛乗せてんのかい!」
ひょっとこの面を被り上半身裸で、筋肉モリモリマッチョマンの変態が筋トレをしていた。
「む? 客人か? そうか、君が今日来ることになっていた栖笛賽殿だな!」
筋トレをしていた変態は、俺に気が付くと湯気を出しながらこちらへと近づいてくる。
「俺の名は
筋肉モリモリマッチョマンの変態は非常にさわやかな声でそう自己紹介をするのだった。
……非常に不安だ。
「す、栖笛賽です。よろしくお願いします……」
異様な光景に圧倒されながらも、俺の武器を作ってくれる人という事で挨拶をする。
挨拶は大事、古事記にも書いてある。
「うむ、それでは早速君の作ってほしい刀の構想を聞こうじゃないか! なんでも、少々特殊なんだって?」
「あ、はい。実は……」
俺は鉄さんに作ってほしい刀を説明する。
作ってほしいのはずばり蛇腹剣。
ファンタジーものでは比較的有名ではあるが、現実では実用性に欠けるロマン武器である。
簡単に説明すると、刃の部分がワイヤーで繋がれつつ等間隔に分裂し、鞭のように変化する機能を持った武器だ。
原作でも蜜璃ちゃんの日輪刀のように普通ならありえないような刀を普通に作ってしまう人達だ。
きっと蛇腹剣に関しても実用的なものを作ってくれると信じている。
そもそも、なぜ蛇腹剣にしたいかというと、単純にリーチが長いからだ。
安全に鬼と戦うには離れて戦うのがベストだ。
鬼の中には童磨のように範囲攻撃を持っている鬼も少なくはないので、こちらも近~中距離で戦える手段が必要である。
ならば、槍とかでもいいだろうと思ったがあちらは最初からリーチが長いため、敵側からも俺の攻撃範囲を悟られてしまう。
それに、懐に入られると対処がしづらくなってしまうという欠点もある。
蛇腹剣なら通常は普通の刀の形態で戦い、俺の射程距離を誤認させた後で距離を伸ばして不意打ちで攻撃という戦法も取れる。
生き残るためならば、不意打ち上等。勝てばよかろうなのである。
というか、上弦相手ならどれだけ策を弄しても足りないほどだ。
そんなわけで奇襲としても使えそうなので作れるかどうかの相談をしたというわけだ。
あと、単純に蛇腹剣が好きだというのもある。
「……どうでしょうか?」
「…………」
俺が蛇腹剣の説明を終えると、鉄さんは腕組をしながら沈黙する。
うーん……やっぱり蛇腹剣は難しかっただろうか。
俺としても作れるなら作ってほしいという程度だったので、もし無理ならば別のものを考えなければならない。
「……面白い! そのような構造の刀は聞いたことがないが、実に面白そうだ! 見ろ、俺の筋肉も未知の存在に対して歓喜に打ち震えておるわ!」
鉄さんはそう叫ぶと、ボディビルのポージングで有名なモスト・マスキュラーのポーズをしてぴくぴくと胸筋を動かす。
見た目は暑苦しいことこの上ないが、どうやらやる気になってくれたようである。
「それじゃあ、詳しく話を聞きたいのだが……時間はあるかな?」
「あ、はい。大丈夫です」
お館様には、確実に十二鬼月を倒すためですとそれっぽい事を言ってそれなりの日数をもらっている。
無理矢理柱にされたのだ、これくらいのワガママは聞いてもらう。
「うむ! では、構造についてだが……」
「そこについては……」
そして、俺と鉄さんによるロマン武器、蛇腹剣……もとい蛇腹刀制作の為の相談は夜まで続くのだった。
☆
「ふぃーさっぱりした」
鉄さんとの長時間の打ち合わせや試作の後、俺は温泉に入ってさっぱりしていた。
食事の時間という事で案内されると、その先には既にカナエさんが座っていた。
俺と同じ旅館によくあるような浴衣と羽織を着ていた。
いつもは隊服なので新鮮だし、なんだかすごく……その、あれな雰囲気である。
ぶっちゃけなんかエロい。
この人の浴衣姿が見れるならば、童磨戦で死に物狂いで戦ってよかったかもしれないと思えるレベルだ。
「賽くん、ようやく来ましたね。刀の方はどうでした?」
「俺の担当の……鉄さんって言うんですけど、その人も乗り気なので何とか形になりそうです」
「それならよかったです。……ごめんなさいね」
「急にどうしたんですか?」
「ほら、賽くんを柱に推薦したでしょう? 鬼殺隊の人は、たいていは柱になりたいと頑張ってるんだけれど……賽くんは何だか乗り気じゃないように見えたから……」
まぁ、確かにふざけんなよとも思ったし、可能ならば柱を辞退したいとも思っている。
だが、なってしまったのなら仕方ないし、カナエさんに悪気がないのも知っている。
ならば、その運命を受け入れた上で死に物狂いで生き残って見せる。
唯一の懸念点は出たが最後、25歳までには死ぬことが確定してしまう痣だが、あればっかりは自分でどうにかできるものでもないので発現しない事を祈る。
「乗り気じゃない、というか分不相応だなって思ってたんですよ。ほら、柱になる条件をどれも満たしていなかったので」
もっとも、それらの条件もお館様の力業により特例中の特例となってしまったが。
「だけど、一度柱になったのでこれからは精一杯(生き残る為に)頑張りますよ」
俺のその言葉に、カナエさんはホッとしたような表情を浮かべる。
「そう言ってもらえて嬉しいわ。今回、一緒についてきたのも湯治という目的もあったけど、賽くんとお話したいっていうのもあったの」
なるほど、彼女は彼女なりに思うところがあったんだな。
まぁ、どういう仕打ちを受けてもカナエさんを嫌いになるなんて事は絶対にないので杞憂だがな!
胡蝶姉妹を嫌いになれという方が難しい。美人は正義なのである。
その後も、カナエさんと他愛ない話をしながら夜は更けていくのだった。
蛇腹剣(刀)使いで最初に見たのは、構造は少し違いますが犬夜叉の蛇骨でした
あとはBLEACHの阿散井恋次ですね
ファンタジー武器だと蛇腹剣が一番好きです
ちなみに、鉄阿礼の体型はダンベルの街雄鳴造(マッスルモード)と同じです。