あべこべ幻想郷に落ちた命   作:てへぺろん

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初めましての方は初めまして。てへぺろんと申します。


以前にあべこべものを投稿していましたが、懲りずにまた投稿し始めてしまいました。それぐらいあべこべものが好きです。それと転生ものも好きです。


今作品であべこべの良さを知らしめるつもりですが至らぬ点もあると思いますのでご承知の上で読んでいってください。


それでは……


本編どうぞ!




序章
異端児生誕


 いきなりだが『愛』とはなんだろうか……

 

 

 それは科学では証明できず定められた形は無い。しかし我々はそれが存在していることを頭で理解しており時には『愛』に悩み苦しむことがあるだろう。相手のことを思うと胸が締め付けられ鼓動が高鳴りいつもその相手のことを考えてしまう……そして『愛』の形は一つにあらず……

 

 

 親子、兄弟姉妹、祖父母と孫など肉親同士を思う心……『家族愛』

 

 

 社会的な人間にとって根源的な形態の一つで自分自身を支える基本的な力……『自己愛』

 

 

 本能に基づく性的な欲求から生まる……『性愛』

 

 

 『愛』という言葉一つでも様々な意味合いがあり、形がある。そして生き物全てに共通するものでもあり、人間の男女の関係に深い関りを持つものである。

 しかし何故今このような話をする意味があるのかと言うと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ……なんで昨日会いに来てくれなかったの?ねぇ……なんで?どうして?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは一人の青年と彼によって人生が変わった一人の巫女とその他大勢が繰り広げる普通の世界とはこと離れた物語である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り……とある人里での出来事であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「せんせいってなんでそんなにブサイクなの?」

 

 

 一人の男の子が大人の女性に対して素朴な疑問をぶつけた。それは失礼極まりないことだったが、大人の女性は怒ることもせずにこう答えた。

 

 

 「それは()()()()()()()なんだ」

 

 

 ()()()()()()()だと女性は男の子に対して答える。男の子が言うようにこの女性はこの子の担任の先生なのだろう。傍にいた男の子の母親も他の人々も叱ったりはしなかったし、担任の先生も何度目かわからない程に子供達から同じ質問をされた経験があった。その経験はいつしか当たり前となり、いつも通りに男の子に説明していた。

 

 

 男の子の担任の先生はとても不細工だった。

 

 

 整った顔にすべすべした肌、指の先から足の先まで細く胸は大きかった。目元も口元もしっかりとしており、不細工選手権を始めたならば代表にまで選ばれるだろう。男の子が言ったことは事実だったために先生は怒ることはせずにその言葉を飲み込むことにした。その後、母親に連れられて男の子は我が家へと帰って行く後ろ姿に手を振りながら見送り、後は寺子屋で明日の課題についてまとめ上げるいつも通りの日常生活を送るはずだった。

 

 

 寺子屋の一室で机に向かって課題をまとめている女性は上白沢慧音と言う。とても不細工と人里では知らぬ者はいない。彼女は人里でも変わった存在で、ワーハクタクと呼ばれる半獣人。元々は人間だった後天性の妖怪でありながらも受け入れられた。今では寺子屋の教師をしている。

 ちなみに白沢とは、中国に伝わる聖獣のことで、牛のような体に人面を持ち、人語を解し、白沢に遭遇するとその家は子々孫々まで繁栄するといわれている。

 

 

 しかし自身には効果がないのか、慧音は今まで恋人も子供もできたことなどない。その前に自身の容姿を直さなければどうしようもないことなのだが……

 

 

 「ふぅ……これで半分か。残り半分も休息後に作ってしまわないとな」

 

 

 一息入れようとした時に廊下から足音が聞こえてきた。その足音は慧音がいる部屋の前で止まり戸を開けた。

 

 

 「おい慧音はいるか?」

 

 「妹紅か、どうしたんだ?」

 

 

 白髪のロングヘアーに大きなリボンが一つと、毛先に小さなリボンを複数つけたこれまた不細工な女性が寺子屋を訪れた。慧音の古くからの友人である藤原妹紅。彼女は色々と複雑な過去を持っているがそれを語るには時間が短すぎる。ただ一つ言えることは、友人である慧音に頼みごとをしに来たと言う事だ。

 

 

 「慧音に頼みがあるんだ。この後、人里の巡回をする予定だったんだけど別の要件が入っちゃって……」

 

 「代わりに私にしてくれと?」

 

 「わるい!必ず埋め合わせはするからさ!」

 

 

 両手を重ねてお願いのポーズを取る。慧音はため息をつきながら妹紅の頼みごとを聞き入れることにした。

 

 

 「ありがとう慧音!絶対埋め合わせはするからまたな!」

 

 

 急ぎ足で寺子屋から去って行く。やれやれと思いながらも慧音は休息をやめて人里の巡回へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人里に月の明かりが差し込む。もう夜になり手に持った提灯(ちょうちん)の明かりを頼りに慧音は人里を巡回していた。人々が寝静まり辺りには虫の奏でる音色と獣の遠吠えが時々聞こえるだけであった。

 

 

 「異常なしだな」

 

 

 人里は人間が暮らし、唯一人間の安全が確保された場所であるがそれでも警戒は怠らない。この世には飢えた獣だけでなく醜き妖怪達が目を凝らして人里を睨んでいるのだから。

 腹満たしの為の餌を探すためだけではない。快楽を求め、種の繁栄を狙う輩もいる。知性を持たない妖怪は特にそうだ。自制心の欠片もなく襲い掛かろうとする。だからこうして人里の安全性を確かめながら人間達の安全を守るために巡回しているのだ。

 

 

 慧音は一通り見て回り異常がないことを確認すると課題のために寺子屋に戻ろうとした……その時だった。

 

 

 「……ぎゃ……

 

 「ん?」

 

 

 聞こえた。何かの音が……虫の音色でも獣の遠吠えでもない。人里に住んでいるならば時々聞くことがある声だった。

 

 

 「……ぎゃ……おぎゃ……おぎゃ!!」

 

 「赤ん坊の……声?」

 

 

 確かに赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。人里なのでどこかの家の赤ん坊が泣いているのだろうと思う……とは慧音には思えなかった。何故ならそれは門の向こう……すなわち人里の外から聞こえてきたのだから。

 

 

 「外から赤ん坊の声が……妖怪か?!」

 

 

 その泣き声は人間を惑わすために妖怪が出しているものではないかと疑った。それもそのはず、夜の人里外がどれほど危険か人里の人間はわかっているはずなのだからこんな時間に外に出たりはしない。しかもご丁寧に門のすぐ近くからその泣き声は聞こえてくる。すぐそこに赤ん坊がいると思わせて外に出てきた人間を襲うつもりなのだろう……見え透いた魂胆だと慧音は思った。

 

 

 「おぎゃあ!お、おぎゃ!?おぎゃおぎゃ!おぎゃぎゃぎゃ!!」

 

 「……?」

 

 

 しかし慧音は不審に思った。赤ん坊の泣き声がどこか驚愕しているように聞こえたのだ。不自然過ぎる泣き声……これでは疑われてしまうのがオチだ。だが、慧音は何故驚愕しているのか気になった。

 慧音はこう見えても人里で数少ない妖怪に太刀打ちできる実力を持っている。決して強いわけではないが、そこら辺の妖怪に惨めに負けてしまうことはないだろう。例え妖怪が襲ってきても戦うことが慧音にはできる。

 

 

 慧音はゆっくりと門に近づき慎重に扉を開く。目を凝らし、暗闇が広がる空間に提灯(ちょうちん)の明かりを照らし出す。するとそこには布切れに包まれた赤ん坊がこちらを見て驚いた様子で固まっていた。慧音もその赤ん坊と目があった瞬間に驚いてしまった。慧音にはわかってしまった……その赤ん坊は妖怪の子でもなく、妖怪が化けた姿でもない……正真正銘の人間の赤ん坊だとわかってしまったのだから。

 

 

 「こんなところに赤ん坊だと!?一体誰が……」

 

 

 辺りを見回しても赤ん坊と慧音以外の誰も存在しない。一体この赤ん坊は誰の子なのか……何故こんなところにいるのだろうか?疑問が生まれるがそれよりもこの赤ん坊を人里に入れるのが先だった。このままだと赤ん坊が妖怪に見つかりひどい目に遭うのは目に見えていたからだ。

 

 

 「と、とにかくこの赤ん坊を置いておくわけにはいかないな!」

 

 

 慧音は赤ん坊を抱っこした。人里で何度か目にした光景だが、慧音は一度も赤ん坊を抱っこした経験はなかったため、資料で知っているぐらいだ。記憶を頼りに思い出しぎこちない形でも何とか抱っこできた。手に伝わって来る温かい感触が慧音にとって忘れられないものになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「慧音が赤ちゃんを産んだ!!?

 

 

 夜遅くに寺子屋を訪れたのは用件を済ませた妹紅だった。戸を開けた妹紅の目に飛び込んで来たのは赤ん坊を抱っこした慧音の姿……妹紅の口から驚愕の言葉が飛び出したのだった。

 

 

 「わ、わたしは産んでない!!拾ったんだ!!!」

 

 「ヴぇ!?ど、どういうことだよ!!?」

 

 

 慧音は妹紅に語った。巡回をしていたら赤ん坊の泣き声を聞いて門を開けたらそこに赤ん坊がいたことを伝えると妹紅は口をぱっかりと開けて唖然としていた。

 

 

 「この子が人間の赤ん坊であることは間違いない。半妖である私がそう言うんだ。間違いないさ」

 

 

 慧音はワーハクタクと呼ばれる半獣人であるため、妖怪が出す妖気を感じ取ることができる。しかし慧音に抱かれている赤ん坊には一片の妖気も感じなかった。一体誰があんなところに赤ん坊を置いたのか……どうしてこの赤ん坊を置き去りにしたのか……慧音には考えることばかりだった。

 

 

 「そ、そうだったのか……酷いな。赤ん坊を人里の外に放置するだなんて……それも()()()を……」

 

 「ああ、そうだ。こんなに()()()()()()なのにな」

 

 

 赤ん坊には小さな男である象徴がついていた。すぐに男だと二人にはわかり、そしてとても可愛らしかった……もしこの赤ん坊が()()()であったならば()()()とは呼ばれなかっただろう……

 そして赤ん坊の方は今だ目をキョロキョロさせて黙り込んでいた。先ほどまで泣き声を上げていたにも関わらず今は大人しい……と言うよりかは困惑しているようにも見えるが今の二人にはただ()()()()()()としか映らなかった。

 

 

 「いい子だなぁお前は。大人しい子だなぁ♪私達のように()()()じゃないし、お前が羨ましいよ」

 

 

 腕の中で優しく慧音は赤ん坊に対して語り掛ける。傍から見る慧音の姿はとても上機嫌で赤ん坊に夢中のようである。しかしそんな慧音とは裏腹に妹紅の様子がおかしかった。なにやらうずうずした様子でずっと慧音に抱っこされた赤ん坊を見続けていた。口を開こうとしても閉じてしまい、また開いたと思えば閉じてしまう……そんな妹紅に気がついた慧音。

 

 

 「ん?どうしたんだ妹紅?金魚の真似でもしたいのか?」

 

 「ち、ちがうわ!な、なんだ……その……」

 

 

 頬をほんのりと赤色に染めて何かを口に出そうとするがすぐには出て来ない。そんな様子をせかすこと無く慧音はジッと待っている……深呼吸をし、意を決した様子で慧音に向き直る。

 

 

 「な、なあ……慧音、私にも抱っこさせてくれ!!」

 

 

 慧音に懇願した。どうやら赤ん坊を抱っこしたかったようだ。言った後に恥ずかしくなったのかサッと視線から逃れるように目線を逸らした。

 

 

 「妹紅、照れることはないぞ?赤ん坊を抱っこするなんて私も初めてなんだからな。あの時は咄嗟のことで頭がいっぱいだったが改めると今、とても幸せな気分だ」

 

 

 抱きたいと思っても抱くことは出来なかった。不細工な顔で寺子屋の教師であったとしても他人の子を抱っこする気は起こらなかった。抱きたくないわけではない……赤ん坊に怖がられたり、親から非難の目を向けられたくなかったから。不細工な慧音に我が子を抱かれたいとは思わないからだ。触れてみたいと思ってもそれは叶わない……慧音は自重して遠くでいつも母親に抱かれる赤ん坊を眺めているだけだったが、今では赤ん坊を抱いていた。赤ん坊も慧音を怖がったりせずに素直に抱かれていた。まだ赤ん坊で純粋故にわかっていないだけだろうと慧音は思っている。妹紅もだ。しかしその内にこの赤ん坊も歳を取り、美意識が芽生えた頃には唾を吐かれたり、舌打ちされることになるだろう……不細工な女は皆そうだ。二人共経験したことを思い出す……嫌な思い出だ。

 しかしそれでも今は赤ん坊を抱いてみたい。これから先に一生訪れることはないだろうと思う……まずは男に抱かれたいのに。そして女であるならば誰だってお腹を痛めてでも子を産み、我が子を抱きたい。しかし二人には巡って来ない……不細工に現実は厳しすぎるのだから。

 

 

 「……すまない妹紅、酔いに浸ってしまった。ほら、優しく抱いてやるんだぞ」

 

 「わ、わかっている……あっ、とっと……ふぁあ~!これが赤ん坊を抱く感触かぁ……!か、かわいいよなぁ~♪」

 

 

 妹紅は赤ん坊を抱くと頬がたるみだらしない笑みを浮かべていた。彼女の性格からは想像もつかないだらしない表情に慧音は貴重な光景を見たと思った。しかし、そうなってしまうのも無理はないだろう。彼女達は赤ん坊を抱く女の夢を叶えてしまったのだから。

 

 

 「はふぅ……いいよなぁ……赤ん坊は……あっ」

 

 「どうしたんだ?」

 

 

 ふっと妹紅は一つの疑問が浮かび、だらしない顔から真剣な表情となった。不思議に思った慧音は妹紅に問いかけた。

 

 

 「なあ……慧音、もしこの赤ん坊の親が見つからなかったらどうするんだ?」

 

 

 この赤ん坊は門の外、人里の外に捨てられていた。慧音は明日この赤ん坊の親を探すだろう。しかし自ら捨てたのであるならば名乗り出ることなどしない。その場合この赤ん坊は一体どうなってしまうのだろうか……妹紅は不安そうに慧音を見つめる。

 

 

 「……」

 

 

 慧音はジッと赤ん坊を見つめる。赤ん坊も慧音をジッと見つめ沈黙がしばしの間流れていた。すると慧音は立ち上がり宣言する。

 

 

 「もしその時は私がこの子の親になろう!」

 

 「本気か!?私達のような()()()が母親になったらこの赤ん坊が可哀想じゃないのか!」

 

 「本気だ!しかし妹紅のいう通り自分の親がこんな()()()な母親だったら嫌かもしれない。だがな、この子が捨てられたのならば誰かが世話をしてあげなければならない。それにな妹紅……これは私の身勝手な思いなんだが……」

 

 

 慧音はばつが悪そうに告げる。

 

 

 「……私も……その……母親ってのを……経験してみたいのだ……」

 

 

 不細工に訪れることはないだろう。母親になるこのチャンスを慧音は失いたくない……慧音にも寺子屋の教師以前に一人の女、この世界に生きる者であるため欲もちゃんとある。今の慧音は赤ん坊の温かさを受け、母親としての母性に目覚めてしまった。逃れることのできない欲に負けてこの赤ん坊の親になりたいと言った。

 その慧音の欲は妹紅にも理解できる。二人は不細工で誰も相手にしてくれない……慧音は寺子屋の教師であるため何度か男性を相手にすることがあるがそれでも相手は良い思いはしない。妹紅ならば尚更だった。

 

 

 不細工な女に未来はない……これが現実だ。不細工が男と結婚し、子供を授かることなど滅多にない……ないわけではないが、望みは薄い。しかも慧音や妹紅のように質感のいい肌を持ち、髪も光沢が出てスタイルも抜群だ。不細工の中でも上位のところにいる。だから欲の一つを持っていてもおかしいことなど何もないのだ。

 

 

 だからこそ妹紅も慧音の言葉をしっかりと受け止めることにした。

 

 

 「わかった。私は何も言わない。私だって本当は子供が欲しい……けど、私が母親になったら子供に迷惑がかかる。それに比べて慧音ならまだマシだろう。私のように化け物なんかじゃないんだから」

 

 「妹紅……」

 

 「悪い……でも本当のことだから……それはともかく、親が名乗り出なかったら慧音、しっかり面倒見てやるんだぞ?」

 

 「ああ……わかっているさ。妹紅の分までしっかり面倒を見てやる!」

 

 「わ、わたしも手伝いたいから私の分まで取らないでくれよ……でも私達本当にこの子の面倒が見れるだろうか?」

 

 「不安になるな。私だって経験したことのないことなんだ。資料ならあるし、経験者に聞いてみるのも一つの手だ。だが、まずは親を探すのが先だ。見つかってくれるならばそっちの方がいいからな」

 

 

 そして慧音は翌日、言葉通りに赤ん坊の母親になったのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし疑問に思うことがある……何故彼女達が不細工と言われるのか?

 

 

 それの答えはこの赤ん坊とこの世界【幻想郷】にあった……

 

 

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 う……うぅん……ん?あら……とっても暗い……闇が広がっているみたいだ。どうなってんの……ん?んんん?!肌寒いしなんだ……なんだか体に違和感を感じるぞ!?

 

 

 そう疑問に思う誰かさん。その誰かさんは意識が目覚めた様子だったが、覚ますなり現在の状況に異常を感じ取った。

 

 

 映る視界は星々が輝く夜空が映っており、外にいることがわかる。それと何かに体がすっぽりと包まれていたことが判断できた。そして傍には星明りに照らされる()()()()()()()があり、……首を少し持ち上げて目玉をそちらの方へ向けるとそれは門であることがわかる。その門は人が通れるだけのそこまで大きくない裏手の門であり、()()()()()()とは言えないだろう。しかしその誰かさんにとってはとてつもなく大きく見えていたのだ。

 

 

 視線が妙に低い位置にある気がするのは気のせいか……いや、気のせいなんかじゃねぇ!?それにこの体……

 

 

 自分の手を見て血の気が引く。そこには小さな可愛らしい手があった。そう……自分の見慣れた手ではないものがあったのだ。そしてその小さな手で視界に入らない自分自身の顔、鼻、耳、口などを確認していった。感覚で自分が今、どういう状態なのかわかってしまった誰かさんは驚きの雄たけびを上げてしまった。

 

 

 「おぎゃ!?(赤ん坊の体になってやがる!!?)」

 

 

 おいおいおいおい!!?どうなってやがるんだよ!?しかも……言葉が喋れないだと!?赤ん坊の体になっちまったからなのかよ!?おい誰でもいいから答えてくれよ!!!

 

 

 赤ん坊になっていた。意味がわからないし、誰かに助けを求めて言葉を出そうとするが出てくるのは全て「おぎゃ!」で変換される。それでも喚いていたのだが、声が届いていないのか何の反応も返って来ることはなかった。

 

 

 俺はどうなっちまったんだよ!?た、たしか俺は……そうだ、後輩のミスで居残りさせられたバイト帰りにたまたま見つけた抜け道を通ったら、偶然にも女性が通り魔に襲われている現場に遭遇したんだった。それでその女性を助けようとして……刺された。

 

 

 「おぎゃ……(俺ってもしかして……死んだか?)」

 

 

 自分自身に聞いてみた。答えは記憶が蘇ることによって返答が返って来た。

 

 

 女性が悲鳴を上げて近くにいた他の人達が通り魔を取り押さえたんだっけな。それで薄れていく意識の中で救急隊の人達が俺を見ているのを最後に見たんだっけ……ははっ、俺はおっちんだわけかよ。まあ、女性が無事でよかったのが幸いか。

 

 

 今思えば納得がいった。深々と包丁が腹に刺さった感触と痛みが思い出されて気持ち悪かった。自分はあの時に死んだんだと……しかしここで再び疑問が浮かぶ。

 

 

 ……なんで俺はここで赤ん坊になって生きているんだ?

 

 

 死んだはずの人間が生き返る……おとぎ話やファンタジー小説でもない限りあり得ない。ましてや現実の世界ではあり得ない事だった。しかしこうして今、赤ん坊となって夜空の星々を眺めている。

 

 

 ……これは後輩が言っていた『転生』ってやつか?そんなことが起きるわけがない……そう言いたいが何故かそれで納得している自分がいるのが怖いな。俺はファンタジーとか興味なかったんだが、今まさにファンタジーな出来事を体験しているんだよな……

 

 

 そんなことをしみじみ思っているその時だった。門の扉が音を立てて開いたのだ。その予想もしていなかった出来事に体が自然と跳ね上がり、門の方に視線を移すと提灯(ちょうちん)を手にした女性と目が合った。

 

 

 誰だよ!?まったく見たことねぇ人だ……変わった服装をしているな。日本人か?外国人ではなさそうだが……一つ言えることがある。こんな美人は今まで見たこともねぇってことだ!!

 

 

 上からボンキュッボンのスタイル抜群の女性に目が釘付けにされてしまう衝撃を受けた。

 

 

 「こんなところに赤ん坊だと!?一体誰が……」

 

 

 女性は辺りを見回して探している様子だった。

 

 

 俺の親を探しているってところだろうな。赤ん坊がこんなところに放って置いたら衰弱死してしまうだろうし警察に届けるだろうな。

 

 

 予感は当たっている。女性は辺りを見回して気にしているようだった。このまま保護されて警察か幼児施設に預けられてしまうのではないかと思っていた。

 

 

 「と、とにかくこの赤ん坊を置いておくわけにはいかないな!」

 

 

 はぁ……俺、施設に預けられてしまうのだろうか……

 

 

 赤ん坊となってしまった誰かさんは女性に抱っこされ、その肌の温もりを感じながら自分は何故こうなってしまったのかと言う不安を抱きながら嘆くしかなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうなってんだよ……ここは現代日本じゃないのかよ……わからん。取り合えず状況を整理しよう。まず俺を見つけて保護してくれた女性は慧音と言う人らしい。そしてその知り合い(?)である妹紅と言う白髪で髪がもの凄くなげぇ人……これまた美人だ。二人共いい人そうで安心した。この二人に関しては安全が保障されそう……しかし問題はここが現代ではないと言う事だ。

 

 

 ここに来る途中でチラっと街並みを拝見した。街というのは間違いだな、村……里と言った方が適切だろう。木造建築作りの建物に時代劇を思い出させる町並みだった。家の中も電子機器一つ置いておらず、囲炉裏が置かれてかまどが奥に見えた。見渡せば時代劇に出てくる私生活にそっくりだったのだ。俺はタイムスリップでもして昔の時代に飛ばされてしまったのだろうかと思っているところだ。まぁ、こればかりは後々わかるだろうが……

 

 

 それともう一つ……慧音が俺の親になりたいとか言っているんだ。親が名乗り出なければであるらしいが……おらんだろ多分。俺は『転生』とかでここにいるようだし……でも今の赤ん坊状態でできることが限られている。寧ろこの人が俺の親になってくれるなら安心できそうだ。それに美人の人が親なら更にいい。

 前の生活には不服はなかったけれど、何となく生きていた毎日だった。バイトしてお金ためて、目的もなく夢もなく、ただ生きているだけだった。つまらなくないが、面白くもない生活だったのが今や困惑の現状だ。これから経験したことのない未知なる体験をするかもしれないと思うとこれで良かったのかもと思ってしまう。もう後戻りもできないし、赤ん坊から人生を新しくスタートできるなんて嬉しい限りだから俺はこの状況を受け入れることにする。

 

 

 赤ん坊となった誰かさんは今までの自分を捨て、新しく人生を歩もうと決意したのだった。

 

 

 しかし先ほどからこの二人は自分自身に自信がないのかよ?一体どこが()()()なんだ?

 

 

 赤ん坊は今はまだ知らない。

 

 この世界のことを何一つも理解していない。

 

 女と言うのが如何にこの世界じゃ残酷な運命に縛られているのかを……そして今ここにこの世でたった一人の異質な男の子が存在していると言う事を慧音と妹紅はまだ知らずにいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤ん坊にとって美醜逆転している世界だと言うことを知るのはもう少し経ってからのお話だ。

 

 




追記


ヤンデレ文章をフォントを変えてみました。病み具合が増したでしょうか心配です……


読みにくいとの指摘があったので少々変えてみました。
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