あべこべ幻想郷に落ちた命   作:てへぺろん

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美醜逆転のあべこべものならば欠かせないあのお姫様登場回です。


それでは……


本編どうぞ!




醜き姫

 ガサガサ……ゴソゴソ……

 

 

 草木をかき分けあえて道なき道を進んで行くうさ耳の少女達……とその一人に背負われている男性がいた。

 

 

 「鈴仙大丈夫ウサか?」

 

 「やましいことを考えるな私は男程度に屈するわけはない何故なら私は鈴仙・優曇華院・イナバなのだから肌が触れていても私は冷静だそれがこの私なんだだから落ち着け私の右腕よ今はまだ動く時ではない……ぶつぶつぶつ……」

 

 「ダメだこりゃ……」

 

 

 小柄なうさ耳少女ことてゐはため息をつく。彼女が視線を向ける先には鈴仙がおり、彼女の口から呪詛のように同じ言葉を繰り返し綴っていた。必死に理性を保とうとしている……それもそのばずである。彼女が背負っているのは男性で当然ながらのことだが鈴仙は男と触れ合ったことなどないし、今の状態は肌が密着している状態である。そしてその男性とは慧吾だった。

 

 

 慧吾は妹紅を尾行している最中に永遠亭の住人である鈴仙を発見し、永遠亭に興味を持った慧吾は鈴仙を尾行していた。すると鈴仙がいきなり走り出して見失わないように自分を後を追おうとしたところで罠にかかった。てゐが仕掛けていた罠に引っかかってしまい、水攻め&タライ直撃で不覚にも意識を失ってしまったのだ。てゐと鈴仙がすぐさま発見して永遠亭で体の状態を検査する為に運ぼうとしたのだが、意識を失っている為に誰かが運ばなくてはならない。てゐは小柄で男性一人を背負える力など持っていない。鈴仙ならば可能であったが、忘れてはいけないことがある……この世界があべこべ世界であることを。

 

 

 てゐも鈴仙も容姿は慧吾にとっては可愛い容姿にしか見えないが、この世界では逆なのである。美人が醜く瞳に映る為に男性から相手にされることはない。それに鈴仙自体人見知りな性格である為にそんな彼女が男性と密着するなんて行為ができるわけがなかったが、やらねばならなかった。このまま放って置いたらどこの誰かもわからない野良妖怪にモーレツなことをされてしまう。それに鈴仙も女、密かに隠している秘蔵本を読みながら夢の中でハーレムを作り上げた経験がある……それが経験と呼べるものかはともかく、男性に興味がないなんてことはないのだ。寧ろ興味があり過ぎて下手な既成事実を作り上げてしまいかねない。欲望を必死に抑え込んで理性を保っていた。鈴仙の中では悪魔と天子が壮絶な男を巡る争いが行われている……

 

 

 「男程度の誘惑に屈する私ではない何故なら私は鈴仙・優曇華院・イナバなのだから肌が触れ合っていてもどうってことはないのだどうってことは……!!

 

 「しっかりしなよ、あともう少しだから頑張るウサ!」

 

 「あばばばば……!

 

 「(本当に早く帰らないと取り返しのつかないことになりそう……)」

 

 

 てゐは歩く速度をやや上げて鈴仙の理性が崩れない内に永遠亭を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっと見えたウサ!鈴仙走るよ!!」

 

 「誰が何と言おうと私は鈴仙・優曇華院・イナバなんだだからこの程度で私の心が乱れる訳はないのだこの程度……この程度で……あばばばば……!!

 

 「こいつ……まったく使えない……」

 

 

 あまりにも長く男性と肌を密着させてしまった鈴仙の脳がオーバーヒートしてしまい、支離滅裂な言葉を繰り返し発するだけのガラクタと化してしまった。使い物にならなくなった鈴仙を無理やり引っ張っていき永遠亭の玄関を勢いよく開け放ち一目散に永琳がいるであろう部屋へと駆け込むと目当ての人物がそこにいた。

 

 

 「お師匠様!!」

 

 「どうしたのよてゐ?それにウドンゲ……ウドンゲ?どうしたの?」

 

 「私は鈴仙・優曇華院・イナバであり誰が見ても鈴仙・優曇華院・イナバである……誰もが恐れる軍人であり私は愚かな地上の者共を根絶やしに……あばばばば……!

 

 「……てゐ、ウドンゲに何があったのよ?」

 

 

 永琳はてゐから経緯を聞くと呆れた様子で二人に命じた。

 

 

 「てゐはウドンゲを奥へと連れて行ってくれるかしら?私は彼をベットに寝かせるわ」

 

 「わかったよ」

 

 「鈴仙・優曇華院・イナバはこの世でただ一人この私だけである……だから私は鈴仙・優曇華院・イナバなのだ誰が何と言おうと鈴仙・優曇華院・イナバなのだ!!!

 

 「うるさいウサよ!!」

 

 

 ガラクタ(鈴仙)を引きずりながら部屋から出て行くてゐを見送って、永琳は厄介なことに巻き込まれたと愚痴をこぼすのであった。

 

 

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 「さてと、まずは脳に異常はないか確認ね」

 

 

 永琳はベットに寝かせた青年のへと目を向けるとすやすやと安らかな表情をしていた。

 

 

 「どこの誰かは知らないけど、あなたは不運ね。幸運を呼ぶはずのてゐが居ながらもこんなところに連れて来られることになるんだから」

 

 

 本来ならばあなたのような人はここへは来てはいけないのだけれど、今回ばかりはこちら側の責任だから仕方ないわ。でもね、てゐやウドンゲでさえ腐ったミカンのような顔をしている子達、更に私のような醜いおばさんもいるまさに悪夢のような場所なのだから近づいちゃダメ。おそらく彼は人里の人間……彼が目を覚ましたら人里へと早急にお帰り願いましょう。そうじゃないと運悪く()()()と遭遇してしまわないようにしないといけないわね。

 

 

 永遠亭に住んでいる怪物……その正体を永琳は知っている。それもそのはず、永琳はその怪物の従者であり、何故怪物と呼ばれているのかも知っていた。

 

 

 醜いのだ。360度どこからどう見ても醜いのだ。視界に入るだけならまだしも、最悪顔を直視してしまった者は心臓をえぐられ、胃に溜まった物が逆流して全てをぶちまけ、全身の血が凍りつくような苦しみを味わう。表現は過激だがそれ程に醜く耐えられる者は数少ない……そのまま命を落としてしまう程だ……いや、この世のものとは思えない醜悪な顔面を思い出す度に吐き気に襲われずにすむのならば命を落とした方が幸運なのかもしれない。それほど言葉では醜いとしか言い表すことができない。実際に彼女を見てしまった者の多くは生きてはおらず、運よく生還したとしても一生のトラウマを植え付けてしまう……それこそが怪物と呼ばれる理由であった。

 そんな永遠亭にてゐの悪戯の巻き添えになった哀れな青年がやってきてしまった。永琳はこの青年に同情してしまう。妖怪の賢者も博麗の巫女も寄り付かないこの場所で今も目を覚まさぬ青年を見つめながらそう思ってしまった。そして永琳にできることは彼をここから遠ざけること……怪物に遭遇してしまわないようにしっかりと見張っていることだった。

 

 

 「落とし穴に落ちたショックで意識を失っているわね。脳に障害が残らないかそれが心配ね。目覚めるまではここに居てもらうしかないけど……輝夜には言っておかないといけないわね」

 

 

 輝夜自身も既に身に染みてわかっているはずだからきつく言うつもりはない。けれども念には念を入れておかないといけないわね……もしも運悪く出会ってしまって彼が死んでしまうことがあれば……輝夜の心にまた傷を残してしまうことになる……そんなことは絶対にさせないわよ。

 

 

 私達が妖怪の賢者率いる幻想郷の連中と対峙した時、連中が私の前に立ちはだかった時はまだよかった……しかし私がやられたことに我慢できなかった輝夜が姿を現し、禁断の素顔を晒した時なんか……身の毛もよだつ光景だった。全員運よく生きてはいたものの、確実にトラウマを植え付けてしまったことに変わりはない。あれ以降連中はここへ来る素振りも見せなくなった……静かなのは良いことだけれど輝夜としては複雑な心境に違いないわ。            

 自分の本当の姿を誰も受け入れてくれない……それはとても辛いことで、あの子は気丈に振舞っているけど長らく傍に居る私にはわかる。こんなことがあと何回あるのでしょうね……百?千?いいえ……『一生』と言う言葉が相応しいのかもしれないわ。永遠の時を生きる私達はどうあがいても逃れられない宿命でありこれは罰なの。特に輝夜は私以上に受け入れてもらえない……怪物と呼ばれて見る者を死に至らしめる程の醜悪さは私でもどうにもできなかった。あの子を救える人なんていないでしょう……だからこそ私が傍に居てあげないといけないのよ。不老不死でも心は違うのだから……これ以上大切な輝夜を傷つけるわけにはいかないのよ!

 

 

 知らず知らずに拳を握りしめていた永琳は我に返る。感情的になっていた自分にため息を漏らして目を覚まさぬ青年の診察を始めるのだった。 

 

 

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 昔々あるところにそれはそれはとても美しい女の子がいました。

 

 

 女の子が生まれた場所はお月様にあるとある一軒家、両親は生まれた赤ん坊を見た瞬間に将来は絶世の美女なると確信しました。そして両親の思った通りそれはそれは美しい女性へと育っていきました。

 周りからはちやほやされて甘やかされて育てられました。美しい女の子はひとたび外を歩けば誰もが見惚れる程の容姿で多くの男達の心を射止めました。来る日も来る日も求婚者があとを絶たなくて困ってしまう程です。そして両親にも大切にされた女の子は毎日面白おかしく過ごして幸せに暮らしましたとさ。

 

 

 めでたしめでたし♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とそんな夢物語など存在する訳はない。そんな夢物語とはかけ離れた存在である一人の女性がポツンと布団の中でボーっと空虚を見つめていた。

 

 

 何をするわけでもなく、昼間っから部屋の中央に引かれた布団の中で顔だけを外へと出していました。そして女性の傍にはゴミや生活用品が転がっており、その中でひときわ目立つ仮面が乱雑に転がっていた。その仮面はこの女性のものだと思われる。

 

 

 ぐぅ~ッ!

 

 

 ポツンと存在する彼女のお腹からマヌケな音が聞こえてきた。食事を要求したのにも関わらず未だに持ってくる気配すらない。そしてドタドタと走り回ったり、聞きなれた声が時より彼女の部屋にまで聞こえてくるがどうでもいいことだ。腹は減り、やる気のない表情を作っている彼女は憂鬱だった。

 

 

 彼女こそ怪物として噂されている幻想郷の汚点……蓬莱山輝夜。妹紅が嫌い、永琳や鈴仙が()()と呼ぶ人物とは彼女のことであり、彼女とは絶対に会ってはいけないと言われている。あまりの醜さに多くの命が散り、異変の時に幻想郷の賢者らにもその姿を披露したが結果は案の定とても酷いものであった。しかし久々に永遠亭外の者に姿を見せつけた彼女自身が一番心に(こた)えたものだ。輝夜の大切な永琳に酷い事をしたのだから当然の報いではあるのだが、賢者と博麗の巫女達が惨たらしく異臭を放つ輝きを秘めた液体を撒き散らしながらのたうち回る姿を見るとちょっとかわいそうに思えてくる。それと同時に彼女はこう思った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり自分の姿は受け入れてもらえない……と。

 

 

 かわいそうと思っていたことなどすぐに消え去ってしまった。彼女の心に影が落ち、屍だらけ(ゲ〇まみれ)のその場を後にする……後のことは全て永琳に任せて自身は部屋へと引きこもった。いつもの日常へと戻るだけであったが、こうして忘れようとしていた自身の醜さを見せつけられたら嫌になってしまうのも無理はない。いつもの生活に戻りつつも心はどこか遠いところにあった。

 

 

 ぐぅ~ッ!

 

 

 腹の虫がうるさく鳴り響く。何度も腹が減ったと抗議する音に輝夜の意識はようやく元へと戻って来る。

 

 

 「……お腹減った。永琳は何しているのよ?てゐー!鈴仙ー!ご飯持って来てー!」

 

 

 大声で声を届かせようとしたが一向に返答はなかった。

 

 

 「私自身に取りに行けって言うの?だらしがないですって?仕方ないじゃないのよ、やることも何もないんだから」

 

 

 グチグチ言っているとまた腹の虫がうるさく抗議してくる。徐々に輝夜の機嫌が悪くなり、腹も減っていることで苛立ちが露わになる。

 

 

 「……………面倒くさいわね、いちいち仮面なんてつけるのもごめんだわ。蒸れるし息苦しいし……家の中ぐらい素顔で出歩いてもいいじゃないのよ!」

 

 

 輝夜の姿は誰もが一度見たら忘れられない程に不細工だ。耐性無しにその素顔を見ようものならば命がいくつあっても足りない。素顔だけでなく吹き出物一つとしてない体に、シミも当然あろうはずもない。そして極めつけが、すべすべして光に照らされれば反射しているかのような素肌が更に醜悪だ。しかも幻想郷中の女性と比べても格違いで一つ……二つ……いや、それ以上ずば抜けて不細工な輝夜が仮面も付けずに永遠亭内を歩けばどうなるか、永琳は子供の頃よりの長い付き合いである為に耐性は付いている。しかし耐性がついていても慣れる訳ではない為に鈴仙やてゐには効果がある。真夜中に仮面を付けずにバッタリと素顔で出くわしてしまえば悲鳴を上げられることなどよくあることだった。

 仮面をつけての生活を余儀なくされた輝夜は自分自身の容姿をわかっていても苛立ちを覚えてしまう。こんなものを付けなければ家の中ですら歩けないなんて……この世の中は自分に対して残酷過ぎるのではないかと思ってしまう。しかしこれが現実であり、不細工として生まれた輝夜はどうあがいても残酷な運命に翻弄されるのである。

 

 

 ぐぅ~ッ!

 

 

 腹が立てば腹が増々すく……一向に届く気配のないご飯を求めて布団から起き上がる。

 

 

 「わかったよ……自分で取りにいけばいいんでしょう!」

 

 

 ぶつぶつと文句を言いながら輝夜は部屋を出て行った。その手に仮面を持つことなど忘れて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……綺麗だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………………………………………………………………………………………………っえ?!」

 

 

 その行動で運命を変えてしまうことなど輝夜は知らなかった。

 

 

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