それでは……
本編どうぞ!
「あの人間大丈夫ウサか……」
支離滅裂な言葉を発する
元々は鈴仙の為にと作った落とし穴だったが、見ず知らずの人間が引っかかってしまい怪我はしていなかったようだが、もしものことがある。それでお師匠である永琳に助けを求めた。てゐも薬や少しぐらいならば治療法の知識はあるものの、永琳並みの腕はない為に安全と安心を考慮して任せた。そして今は診察中のはず、お師匠ならばそこに転がっている
「姫様と出会った多くの者が辿るのは酷い結末ウサ……」
この前に永遠亭に乗り込んできた哀れな博麗の巫女達の姿を思い出す。てゐは直接その現場を見てはいないが、あの後の処理をしたのはてゐだ。最悪の気分で掃除したのを憶えている……否、忘れられるわけはない。鼻に付く匂いが充満し、キラキラ輝く液体がそこら中にまき散らされている光景に危うく自分ももらいそうになった。この状況を生んだ張本人は相変わらず今も自室で暇を持て余しているはず……気丈に振舞っている姿にどこか寂しさをてゐは覚えてしまうが、彼女には何もできるはずもない。お師匠の永琳ですらどうすることもできないのに、てゐにどうにかできるはずもないのだ。
「姫様には申し訳ないけど、あの人間が帰るまでは自室に缶詰状態ウサね。おっと、このことを姫様に伝えておかないと……また姫様悲しむかな……」
てゐは立ち上がって部屋から出て行った。目指すは永遠亭に住まう怪物と称される蓬莱山輝夜の元だ。しかしてゐは気づいていなかった。
「てゐは居る?」
てゐが出て行ってその後すぐに部屋に入って来たのは輝夜だった。輝夜がご飯を求めて既に部屋から出て行っていることに……そしててゐと輝夜は知らず知らずのうちに入れ違いになってしまっていた。
「声が聞こえたと思ったけど……あら?鈴仙どうしたの?」
「全ての生き物は愚かな存在ではあるがその中でも私は鈴仙・優曇華院・イナバである……唯一の鈴仙・優曇華院・イナバは私でありこの世でただ一人の鈴仙・優曇華院・イナバなのだ男の誘惑になど屈するこの鈴仙・優曇華院・イナバでは……ぶつぶつぶつ……」
「ほ、ほんとうにどうしたの……?」
簀巻きにされて支離滅裂な言葉を発している鈴仙にドン引きした。何の事情も知らない彼女からしたら無理もないことだった。
「永琳のお仕置きを受けてこうなってしまったのかしら?どちらにせよ今の鈴仙は使い物にならないわね。てゐもどこに居るのよ……ご飯作ってもらおうとしたのに」
輝夜の中で永琳のお仕置きによって鈴仙がこうなってしまったと解釈した。今まで何度か鈴仙がお仕置きを受けてこのような状態になったことがあったからだ(ここまで酷い状態ではない)そういう経緯もあり、自分自身で決めつけて放って置いた方が良いと考えた。しかし輝夜は困った……お腹がすいてご飯を食べようにも彼女は料理をしたことがなかった。その醜い容姿でとある場所で部屋に閉じ込められていた彼女の生活はいつも周りがしてくれていたからだ。ある理由で幻想郷へと移住した時も永琳の過保護な献身によって守られて来た。最近になってようやく永琳の過保護な献身が緩み、自分のことは自分でと教えられるようになったが長きにわたる世の中の理不尽さと異変での出来事もあり不貞腐れていた。面倒ごとも嫌いであり、人に頼ってばかりであった。
「むぅ……永琳に頼んでも自分でしなさいと言われるだけ。過保護な永琳も面倒だったけど、今の永琳も面倒なのよね。口うるさくなったし……退屈な日々を送っている私のことを思ってくれているのはわかるけど、私だって嫌になるわよ。誰も私のことなんて見てくれないこんな世の中……やる気なんて起こらないわよ」
輝夜はやるせない気持ちを切り替える為にも使い物にならない鈴仙を放って台所へと向かって行った。この時幸いにも鈴仙は無事であった。脳がオーバーヒートしていた彼女の目には輝夜は入っておらず、その素顔を認識することがなかったのだから……
「異常はなさそうね。体も特に問題ない、後は意識を取り戻してここから去ってもらうだけね」
その頃永琳はベットに寝かされた男性もとい慧吾の診察を終えた。異常が見られなかったことに安堵し、意識を戻るのを待つだけであった。
「彼が寝ている間に在庫の確認の続き……その前に少しお花を摘みに行かないとね」
永琳は席を立ち部屋を後にする。彼女の意識では数分の間だけ目を離すことになるがこれは仕方ない。けれども数分だけなので問題はないと思っていた……
「うぅ……うん?ここはどこだ……?」
永琳が出て行ったすぐ後に慧吾の意識が戻るなど予想もしていなかった。
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知らない天井だった。
俺は確か妖怪のうさ耳少女を追っていた。妹紅さんと別れたうさ耳少女は永遠亭なる場所へ帰るはずだと隠れながら後を追っていたがいきなりうさ耳少女が走り出して俺の視界からいなくなってしまった。このままでは見失ってしまうと思った俺は草むらから飛び出して追いかけようとしたんだが……そこから記憶がない。そして俺はいつの間にかベットの上で寝ていたようだ。な、なにを言ってるのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……マジでわけわからん。
慧吾は何が何だか訳もわからずに部屋を見渡した。わかるのは医療に関係部屋だと言うことがわかった。カラフルな色をした液体が入った小瓶やら道具が置いてあった。
人体実験施設とか?それはない……と思いたいな。誰かが医療施設に運んでくれたと思いたい。幻想郷にこんな場所があったか?俺は少なくとも知らない……いや待てよ、永遠亭には怪我や病気など医療に関して優れた人物がいると聞いたな。もしかするとここが永遠亭か?誰かが永遠亭に運んでくれた……もしかしてあのうさ耳妖怪さんが運んでくれたのかもな。とりあえず誰か住人を探して挨拶した方がよさそうか。
慧吾はベットから降りて部屋から出て行った。その数分後に永琳は戻って来たが当然彼女は驚いて部屋を飛び出していった。
「綺麗な建物だな」
慧吾は建物内を見て回っていた。古い和風建築だが風流で味があった。人里とはまた違う良さがあり、見ていて心躍っている慧吾であったが、何かをあさる物音が聞こえてきた。
「おっ?誰かいるのか」
丁度よかった。記憶はないがここでお世話になったはずだから挨拶はしておかないと失礼だからな。
慧吾は物音がする方へと足を踏み入れるとこちらに背を向けて探しものをしている女性を発見した。
ここは台所か、そして女性が何かしている……如何にも和風って服装をしているな。ここからじゃ顔は見えないねぇがとても長い綺麗な髪をしている。妹紅さんを思い出してしまう長さだが、艶が半端ない……トリートメントは何を使っているんだ?どうやったらここまで長い髪を維持できるのか男の俺には想像できねぇが、今はそんなことよりも一言声をかけるべきだな。後々厄介なことになったら大変だ。
慧吾は台所に入ると女性に声をかけた。
「あのすみません、ここの住人の方ですか?」
「――ッ!?」
ガシャン!と音を立てて女性が手にしていた食器が床に落ちて砕けた。急に声をかけてしまったことで驚いたのだろう……背を向けたまま女性は硬直してしまった。
慧吾の方は食器を持っていることを気づかなかった。自分が声をかけてしまったことが原因で、食器を落としてしまい割ってしまう結果になった。砕けた破片が女性の足元に散らばり動けば破片を踏んづけてしまう。慌てて女性の元へと駆け寄る。
「す、すいません!急に声をかけてしまって!!」
「あ、えっ、あ……その!」
「動かないでください!破片が足に刺さったら大変だから」
「えっ……その……」
膝をつき破片を拾い集めていく。日常的に家事をこなしていた慧吾にとってはうっかり物を割ってしまうことが何度かある。だから拾い集めるのにも手際がよく日頃の行いが功を制した。
「これで大丈夫、すみませんでした。俺のせいで食器を割ってしまう……ことに……?!!」
破片を拾い集める為に姿勢を低くしていた為に見上げる形となった。そこには驚きでこちらを見ている女性の顔があった。
俺はこの時……無意識に口にしていた。元々日ノ本に生まれた俺だが、これが『美』と言うものなのだ実感した。この世のものとは思えない程の美しさを持つ和風美人……目が釘付けになっていた。彼女の為に『美』と言う言葉が生まれたのではないかと錯覚してしまう。それ程に俺の目の前にいる彼女は……
「……綺麗だ……」
まるで星々輝く光に照らされる
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「……綺麗だ……」
「………………………………………………………………………………………………っえ?!」
何を言われたの?
私は今……この人に何を言われた?
『「……綺麗だ……」』
私は遂に幻覚を見るまでに理想の殿方を求めるようになってしまったの?いいえ、きっとこれは夢なんだわ。私は布団の中で転寝してしまったに違いないわ。それでこれは全部夢なのよ……けど、夢の中だけでもこうして『綺麗』と言われたら嬉しいものね。こんな気分初めて……
輝夜はこの瞬間が一番の幸福に思えた。今まで彼女は一度も『綺麗』などと言われたことなどないし、男性と目線を合わせることなどできもしなかった。しかし今はお互いに視線を逸らさず醜い容姿に吐き気に苦しむ様子もない。青年が見上げる形、輝夜が見下ろす形となっており自分が
……私ももうダメかも……体は永遠、魂は不滅だけれども心はボロボロなのね。嫌になるわ……夢から目覚めたら一回死のうかしら。
幸福なんて自分には存在しない……そう輝夜は決めつけて現実に戻ろうかと思った時だ。
「――ッいた!?」
無意識に動かした足に痛みを感じた。何かを踏んづけてしまったようだ……破片だった。青年が拾い集めた破片と同じやつだ。砕けた拍子に輝夜の着物の下に入ってしまい青年には見えない位置にあったのだろう。そしてそれを輝夜が誤って踏んづけてしまったわけだ。見ると意外にも深々と刺さっていまったらしく、足袋から血が滲み溢れていた。
今日の私って最悪……あ、あら?!
痛みを感じて今日は厄日だと感じた輝夜だったが違和感を覚えた。普通に痛いのだ。夢で痛いのはおかしいのではないか?夢で痛いと感じているだけなのだろうかと思ったが、この痛さはリアルな痛さだ。自分の意識もハッキリしているし、ちゃんと体が痛みを感じて血も流れた……それはおかしかった。夢だと思ったのが夢でなかったのだから。
……これって……現実!?う、うそ……そんな……だって……?!
突如脳が状況を理解しようとしても気持ちの整理がつかなかった。そして破片が刺さった足を地面に付けるわけにもいかずに片足立ちの状態であったことで、動揺したことによりバランスを崩しそうになった時に誰かに支えられる。
「大丈夫か?」
「あっ……」
夢だと思っていた青年が輝夜の体を支えていた。
「………………」
「ど、どうしたんだ?」
「………………あ、あの……………その………………」
優しく支えられながら戸惑う……輝夜は疑問に思ったことを口にする。
「……嫌じゃ……ないのかしら……?」
「?なにがだ?」
「あの……私の顔、気持ち悪いでしょ?醜いし、吐き気に襲われて脳がおかしくなって血が凍ってしまうような苦しみは……ないの?」
「……そんな苦しみは感じたくないんだが……別にどうもない。それに気持ち悪くも醜くもないぞ?」
ありえない……だって今まで一度もそんなことなかった。私を見ても無事な男性がいるなんて……!
更に輝夜は動揺した。目の前にいる青年は輝夜をしっかりと見つめていた。普段ならばこんなことはありえないことだ。だからこそ仮面を被ってまで素顔を日常でも隠していたのに……そんな動揺する輝夜に止めの一撃が放たれる。
「それに……とってもあなたは綺麗ですよ」
青年の瞳がしっかりと輝夜の素顔を映してそう言った。
『「それに……とってもあなたは綺麗ですよ」』
その言葉を最後に輝夜の心臓は停止した。後の輝夜はこう語る……
あんなに幸せな気分で死ねるなんて思ってもいなかった……っと。
青年の鋭いキューピットの矢によって