遂に始まるデートだが、順調に行く訳もなく……忍び寄る影が!?
それでは……
本編どうぞ!
「………………………………………………」
「………………………………………………」
二人の男女が自然豊かな草木に囲まれて散歩に繰り出している。どれぐらい歩いただろうか?あれこれ1時間程歩いたと思われるが二人に景色を楽しむ余裕はない。それに会話と言う会話はここまで一度たりとも無かった。
デートならもっと賑やかな人里で買い物を楽しんだりした方がいいかもしれないが、これは早苗の為だ。早苗は男にトラウマがあり、練習として彼氏役を慧吾が務めることになった。二人はデートしている……はずだったが、会話一つもなく楽しんだりもしておらずに歩いているだけでお互いの表情は優れない。これが本当にデートと言えるものなのかと疑問が浮かぶ。そう思っているのは当の本人達もそうだが、それを監視している連中にも当てはまることだった。
「やっぱり早苗……嫌そうだね」
「当たり前だ。どこの誰かもわからない男といきなりデートしろだなんて諏訪子は無茶を言い過ぎなんだ!」
「神奈子だって最終的に納得してくれたじゃんか!」
「納得していない!早苗が決めたことにとやかく言えないから仕方なくだな……」
「お二人とも言い争いはやめてください、今は慧吾さんと早苗さんの動向を見守りましょう」
「天狗の言う通りだ神さんらよ、それにどこの誰かもわからない男じゃない。
「よく言った妹紅、私達の息子である慧吾をどこの誰かもわからない男なんて言わないでほしいな、早苗のことを心配するのは親として当然のことだ。私にもそのお気持ちはわかる。だからこそ今は見守るべきではないでしょうか?」
「う、ううむ……」
草葉の陰から二人を監視しているのは諏訪子、神奈子、文、妹紅、慧音の親+αメンバーだ。
最愛の娘と息子が互いに訳ありデートをしているのに自分達はのんびりとお茶など飲んでいる場合ではない。心配でこうして彼らに見つからぬよう隠れながら我が子を見守っている。文だけは乗り掛かった舟である為、途中で投げ出すことはプライドにかけて最後まで協力の姿勢を貫いてくれるようだ。今度の彼女はいつになく清く正しい射命丸のようで安心できる。
この五人で先ほどから後を付けていたが、本人達に進行度は見受けられず雰囲気も暗い様子で見ていて側としてもこれ以上無理があるのではないかと声が上がる。元々早苗の為として計画されたこのデートだが、そう簡単に解決できるものではない。
トラウマの原因は身に危険を感じるような出来事である。早苗の場合は信頼していた男から裏切り行為により心的に外傷を受けたことによって男と言う存在に恐怖心が生まれた。トラウマが突如として記憶によみがえりフラッシュバックするなど、特定の症状を呈して持続的に著しい苦痛を伴い続ければ更なるストレス障害を患うことになりかねない。
守矢神社での突然の訪問、慧吾との対面で心の準備ができていなかった早苗は男に対してアレルギー性の発作を起こしてしまう結果になった。後に永琳から妹紅を通じてその結果を報告され、その責任を感じて今回のデートで彼女のトラウマを克服とまでにはいかぬものの、少しでは緩和できればと思っていたがこのままでは平行線でタイムアップ。必死に脳内をフル回転させて案を出そうとするが、下手なことをすればトラウマを刺激してしまい逆効果となってしまう可能性もある。故に慎重かつ最適な選択を選ぼうとしているのだが、生前でもこんな状況に陥ったこともあらず、意気込んできた意思も無駄になってしまった。
遠目からでもずっと赤子の時より彼を育てて来た慧音と妹紅には理解している。慧吾は今、次の手をどうすればいいのか思い浮かばず焦っていることを。
「(お前ならその子を何とかできる。私と慧音の愛情を知るお前ならな……信じているぞ!)」
「(頑張れ慧吾……母さんが見ているからな!)」
慧吾も焦りから心臓が張り裂けそうだが、二人とも負けぬぐらい張り裂けんばかりの応援を送っていた。そして早苗の方の親二人も同じであった。
「(早苗私がついている。何かあっても私が必ず守ってやるからな!)」
「(早苗頑張れ!慧吾君ならきっとトラウマを何とかしてくれる……だから早苗も一歩踏み出して!)」
同じ親同士通じるものがあった。この場の空気は応援色に染められ熱気に包まれていた。その中で一人だけ親ではない文は肩身が狭かった。
「(あやや……皆さん熱が入っていますね。これでは私の居場所が……おや、あれは……?)」
親達は気づいていなかった。慧吾と早苗に夢中になって視野が狭くなっていたところ文が運よく気づくことができた。草むらがほのかに揺れ、そこから見知った顔が覗いていた。
「(あやや!?あ、あの方達は……!!?)」
「ねぇ、言った通りでしょ!」
「こ、この殺意の波動が目覚める光景は!!?」
「なんてうらやま……いや、けしからん!!」
『鈴奈庵』の一人娘こと小鈴、すきま妖怪の式こと藍、そして妖怪の賢者(笑)こと紫の三人が草むらから顔を覗かせ、恨めしそうに瞳に業火を燃やしていた。
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「叔母様こんにちは」
「あら、いらっしゃい阿求ちゃん」
時は遡り、ここ鈴奈庵を訪れたのは九代目のサヴァン稗田阿求。彼女は友人の小鈴から借りた本を返しに来たところだ。
「小鈴はいますか?」
「それが居るには居るのだけれど……」
「?どうかしましたか?」
「えっとね……」
叔母様が何やら浮かない顔をしていると言うことは……小鈴が何かをやらかしたかやらかそうとしているかね。この前の辻斬り騒動みたいなことはやめてほしいわ。人里を恐怖のどん底に叩き落とした事件……後で知ったけど小鈴も絡んでいたとは思ってもみなかった。小鈴だけでなく例の連中に見つかったら何をされていたか……気配を消して息を潜めて過ぎ去るのを待った。妖怪に襲われる以上の恐ろしさを感じたわ……危うく十代目になりかわるところだったんだから!
彼女は本居小鈴とかなり親しい仲のようで何かとつるむことが多い。夜の玩具や小鈴秘蔵のレア本などお世話になることもあり、逆にアガサクリスQとして幻想郷の影で密かに女性達を虜にする官能小説を提供しているエロの伝道師アガサクリスQの正体を知る仲でもあるのだ。
その親しい仲である小鈴の母親は困っている様子、事情を聞けば最近小鈴が部屋から姿を現さないのだとか。阿求からしてみれば確かに最近姿を見ていない。以前は本を借りに来た時に顔を合わせたがいつも通りだったことを憶えている。一体彼女に何があったのか?気になったので許可を貰い、鈴奈庵の廊下を通って突き当りの彼女の寝室へと足を進めた。
「小鈴、いるんでしょ?……小鈴?」
返事がないわね。部屋に居ることはわかっている……返す元気もないってことなのかしら?
「勝手に入るわよ」
無音の部屋の扉に手をかけると朝方なのに室内は真っ暗だった。アガサクリスQとして対面する際には極秘集会と称して暗がりの中でも密会をしたことはあるが、あの時と訳が違うただならぬ雰囲気に部屋に踏み入れるのを一瞬躊躇ってしまう。中は入り口の明かりのみが頼りで、恐る恐る見渡すと部屋の隅に目的の人物がうずくまっていた。いつもと様子の違う小鈴に慌てた阿求は近づいて肩を揺する。
「どうしたのよ!?何があったの!!?」
「……阿求」
ボソリと名を呟く小鈴にいつもの覇気は宿っていなかった。寧ろ虚ろに支配されたように瞳に生気は感じられない。彼女の身に一体何があったと言うのか?これほど意気消沈としている様子は今までなかったと言うのに。
「ええ、私よ。阿求よ。小鈴……どうしちゃったのよ!?いつものあなたなら暗がりの中ですることと言えば官能小説を読みながら性欲発散の時かアガサクリスQとの密会の時ぐらいじゃない。それなのに隅っこで……いつもの不埒者独特の薄汚れた瞳はどこいったのよ!?性に乱れ、変態に落ちぶれ心まで汚れきった小鈴はどこいったのよ!!?」
阿求は自分でも何を言っているのだろうと思ったが、それほど目の前の友人の姿が変わっていたのだから取り乱した。
「……阿求……聞いてくれる……」
「なんでも聞くわ!話してみてよ!!」
胸の内に秘めた恐ろしき出来事を語った。
その日は青天の空の下、性欲を持て余した小鈴は慧吾の自宅に
手紙を読んでいた慧吾は真剣な表情そのもの、それ表情が溜まらず濡れた小鈴(どこがとは言えない)だったが、傍にいた慧音に内容を伝えるために声を出してしまったことで小鈴に聞かれる結果になってしまった。中身の内容はデートの日時と場所の指定だった。
それからはほとんど憶えていない。気がついたのがたった今だ。
「ケイ君を……取られた……知らない変態女に……ケイ君を……!」
「小鈴……」
事情があるデートだと当然小鈴は知らない……しかも愛する慧吾が知らぬ女とデートするだなんて信じられない衝撃だったことは確かだ。
話を聞かされた阿求は小鈴に同情を向ける……ことはなかった。寧ろ抱いた感情は危機感である。
まずい……とてもまずい状況よ。私はなんてことをしてしまったの!?このままだとまた人里が修羅場になってしまうわ!!
恋する男が別の女に奪われる。それに悲観し、己から身を引く女……だと思うっているか?
本居小鈴を侮るなかれ。
小鈴はその程度で折れる
「私のケイ君を……奪う奴は許さない!絶対に許さんぞ!!!」
奪われるならば奪い返せばいい。
「ケイ君を奪う奴は血祭りにあげてやる!!!」
暗い部屋の中で二つの瞳が不気味に浮かぶ。意気消沈していた彼女はそこにはおらず、一匹の野獣が鈴奈庵を飛び出した。残された阿求はとんでもないことをしてしまったと後悔する。
「……あのまま意気消沈していてくれた方が幻想郷の為だったのに……ああ、大変なことになるわね……避難しておいた方がいいかもしれない」
阿求は再び起きるだろう慧吾争奪戦を予感していち早く身を隠すのであった。
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「ふっふっふ……遂にこの時が来たわね!」
無数の目が辺り一面に広がる空間に、その目が一点に集中している一人の人物……ソファに腰かけて不敵な笑みを浮かべる八雲紫がいた。
「外の世界から取り寄せた
スキマが開き、中から現れた段ボール箱は幻想郷のものではあり得ない。紫が言う通り外の世界から取り寄せたものらしいが中身は一体何が入っているのだろうか?何が入っているにせよ、よろしくないものだとわかる。喘ぐ声に笑いが止まらない……傍から見れば不気味を通り越して気持ち悪く映るだろう。そうしている内に段ボールへと手を伸ばして開封していく。そんな紫を嘲笑うようにひょっこりと姿を現したのは藍であった。
「おやおや、気色の悪いブス糞が何やらスキマで何かをしていると思ったら紫様でしたか」
「なによ、あんたは呼んでないわよ。さっさとここから出て行きなさい」
「言われずともそうします。紫様の糞まみれな顔など見たくありませんから」
「そう、ふふん♪そう言っていられるのも今の内よん♪」
「ぬんっ?」
藍はただならぬものを感じた。いつもならば言い合いに発展するはずだが今日に限っては紫が上機嫌だ。これには何かあるとふんだ藍は必然的にこの場に不釣り合いな段ボールに目がいく。当然中に何が入っているのだろうと思考を凝らす。
「(あの段ボールの中には何が……ま、まさか!?慧吾殿の下着なのでは!!?だとすれば必然的私の私物と言うことに……従者である私の私物を堂々と奪うとは許せん!!!)」
何やら藍が妄想を捗らせているようだが、その検討は違っている。紫がニッコニコの笑顔で取り出したのはド派手なガーターベルトとストッキングだった。不細工な女が決して身に付けてはならない破壊力を持った装備品、呪いが付与された負の遺産がそこにあった。
慧吾には不細工な女は美人に見える。ならばこれを身に付け、夜のベットに誘えば気分はエクスタシー!な状況へと持っていけると画策した紫がわざわざ偽名を使ってまで外の世界で注文した品物だった。
「ふっふっふ……これで慧吾をメロメロにできるわ。彼にだって性欲はあるのだから美人でスーパーウルトラロイヤルデラックスラブリーキュートプリティであるこの私が発散させてあげるからね♪」
「きっも!マジできっも!!気持ち悪いを通り越してきっもきも!!!紫様は変態ですねブスの魔神ですね汚物の化身ですねゴミ溜めの宝庫ですね存在価値のないカスですね!まぁわかりきっていたことですけど」
「ふふん♪なんとでも言いなさい。藍はこれでお終い、私の時代が来るのよ」
普段なら藍からの罵倒に反応する紫だが目の前にある秘密兵器に自信満々であり、後の展開に気分が高揚していた。これに藍は危機を感じる。
「(このままでは慧吾殿が危ない!妻である私が阻止しなくては!)紫様それをよこしてください。紫様がそれを身に付けても糞に尿をぶっかけるようなものですから。安心してください代わりに妻の私が身に付けて愛する夫と交尾しますので」
「誰があんたなんかに渡すものですか!これは私のよ!!」
「仕方ありません。これも幻想郷の平和の為……そして慧吾殿と妻である私との幸せの為……ご覚悟を!!」
人知れず幻想郷のスキマ内で起こされる
「
「「ふぁ!!?」」
スキマを引き裂いて姿を現した修羅……ではなく、小鈴が鬼の形相を浮かべ降臨した。
「ちょ、まっ、えぇ!!?」
紫には驚愕過ぎる出来事だ。スキマの能力を行使できる紫や従者である藍はこの空間に入ることは何ら不思議なことではない。だがそれに比べて小鈴は人間、力も持たず能力も文字が読める程度である。そんなちっぽけな人間が大妖怪である紫のスキマをこじ開けて入って来れる訳がない……のに関わらずここに居ると言う事実に動揺を隠しきれない。
「ど、どうなって……えぇ!?ちょっとあなた私のスキマをどうやって!!?」
「そんなどうでもいいことなどどうでもいいんですよ
「アッハイ……あら、私のこともしかして豚呼ばわりしてない?」
「黙って私の話を聞いてください
「やっぱり私のこと豚って言った!!」
「うるさい!!!」
「す、すいません!!!」
鬼の形相を浮かべて睨みつけると紫は縮こまってしまった。大妖怪の威厳形無しである。
「私にもお聞かせ願えないか小鈴殿。一体何があったと言うのだ?」
「緊急事態なんです。この事態に妖怪の賢者(笑)である
今の小鈴に対して藍は反論することはせず、大人しくしておこうと決めた。大妖怪ですら縮こませる小鈴の前では無力である。
ひとまず小鈴の話を聞くことになったのだが……二人が目が飛び出すほどの衝撃を受けたのは当然のこと。そのことを確かめる動き出しデート場所へとスキマを使い向かうのであった。
……っと言うのが三人が草むらから顔を覗かせ、恨めしそうに瞳に業火を燃やしている経緯である。
「あやや!?」
「うるさいぞ天狗」
「どうかしたのか?」
小鈴たちの姿を発見してしまった文は碌なことが起きないと予感する。慌てた様子の文に気づいた妹紅と慧音が視線を辿ると二人も発見してしまう。面倒な輩がいることを。
「おい慧音、あの変態共がいるぞ」
「ああ、私の目にもしっかりと焼き付いている。これは……」
「あやや……良からぬことが起こりますね」
「むっ、あれは……紫か?」
「どうしたの神奈子……って、あれってあれだよね?」
神奈子と諏訪子も気づいたらしい。しかし二人は幻想郷に来てまだ日が浅く、異変を起こした時に秩序と幻想郷のルールについて説明を受けたぐらいにしか会ったことがなかった。小鈴に関しては初めてである。だから危機感を抱いていない。この賢者(笑)が極度の変態であることを知らないのだ。警戒心を露わにする慧音達を不思議そうに眺めている。
「天狗、いくぞ」
「あやや、やっぱりですか?」
「当然だろ。あれは邪魔してくる……いや、邪魔するだけで留まらず慧吾を食ってしまう(意味深)かもしれないからな」
「神奈子殿、諏訪子殿……すみませんが、お二人も紫殿を止める為に力を貸していただけませんか?このままでは折角のデートが台無しになってしまいます。あの者達の性欲は大妖怪以上ですので……」
「ふむ、紫とは一度会ったことがあるだけだが……胡散臭さがあるのは感じていたが……」
「どうであれ早苗のトラウマを克服する為に慧吾君は頑張っているんだ。それを邪魔するなんてことは許さないよ!!」
「諏訪子がこう言っているし、私も早苗の邪魔をされる訳にはいかん。協力しよう」
「ありがとうございます」
慧吾達の見えぬところで繰り広げられる出来事。見守る親達と協力者、そして変態……これから何が起こるのであろうか。