お話が途中で止まっていたので投稿した次第です。
それでは……
本編どうぞ!
場は混乱に満ち溢れていた。永遠亭に突如として起きたハプニングで怪我を負ってしまった一人の青年上白沢慧吾はここへ運ばれて来た。輝夜は慧吾が来たことに喜びを感じて出迎えたがそこには頭から血を流して意識を失った愛する人の姿。一瞬思考が真っ白になり、何が起こったのか理解できなかった輝夜に神奈子達が事情を説明した。当然事情を聴いた輝夜の怒りは爆発し、鈴仙が輝夜を宥めようとしてもそれでも収まらなかった。自分を見てくれたたった一人の男性なのだ。永遠の時間を生きる輝夜にとって最初で最後の恋となるだろう。その慧吾に手を出した連中を彼女が許すわけはないのだ。しかし愛する慧吾を傷つけられた彼女の怒りの矛先は当事者達に向くはずだったがここにはいなかった。
紫達は別の場所でお仕置きを受けている。元博麗の巫女である霊香の手によって……当然その娘である霊夢が鬼の形相で永遠亭を訪れた。彼女は今も目覚めない慧吾の傍にいる。輝夜も怒りはあるが今は慧吾の傍にいるのが先だ。後で原因を作った愚か者共を血祭りにあげればいい……
煮えたぎる思いを抱きながら駆け足で病室へと入れば、そこにはベットに寝かされている愛する人。傍には親の慧音がその手を握りしめている。因縁の相手である妹紅も今は輝夜に興味も示さない。輝夜もまた同じであった。
妹紅は子育ては上手くなかったし、いつもは慧音の方が面倒を見ていることが多かった。自分は知り合い程度に認識されているぐらいだと思っていたが、慧吾はそんな自分のことを親だと認めてくれた。親だと言ってくれた時は嬉しかったのだ……生きていて良かったと思えた。その慧吾が怪我をして意識を取り戻さない……今日ほど自分を恨んだことはなかった。あの場にいながら助けることができなかった。守ることができなかった自分に反吐が出る。慧音も同じだった。我が子を危険な目に遭わせてしまった自分が許せなかった。
しかし一方で一触即発の空気が漂っていた。早苗の胸ぐらを掴んで今にも眼力で射殺してしまいそうな霊夢が守矢の二神に止められていた光景だった。
「博麗よ落ち着いてくれ!!」
「お願い早苗を離して!!」
「うるさい」
「「ひぃっ!!?」」
神奈子と諏訪子が霊夢を引き離そうとしても微動だにしない。一人の人間相手に神様二人がかりの力を持ってしても今の霊夢に手だしすることなどできない。霊夢が睨みつけると二人は腰が抜けてしまう。
輝夜は見た。霊夢の瞳の中には自分と同じく愛する人を傷つけたことへの怒りを孕んでいた。別の誰かが怒っている姿を見れば人は冷静になれる……輝夜も同じく目の前に怒りに飲まれている霊夢を目の当たりにして、そこにはまるで自分が映し出されているかのようで気持ちが少し落ち着くことができたのが幸運だ。誰か霊夢を止める人物が必要だからだ。
「やめなさい博麗の巫女」
「邪魔をする気?」
「一度冷静になりなさいな、私が言うのもなんだけどね。それにその子は加害者じゃないわよ」
「あんたならこっちの味方になってくれると思ったのだけれど?」
「確かに慧吾を傷つけられて怒らないなんてありえないわ。私を見てくれた唯一の大事な人だから……でも今回の事件は彼女のせいじゃないわ。慧吾は優しい人よ、だからその子を助けただけなの。あなたなら彼の気持ちがわかるでしょ?それに彼が目を覚まして今のあなたの姿を見れば……どう思うかしらね?」
「……」
霊夢は手を離した。霊夢自身もこれは八つ当たりだとわかっていた。だから何も言わずにこの場から出て行こうとする。
「あら、慧吾の傍に居なくていいの?」
「今は慧音と妹紅がいるわ。私だって傍に居たいけど……この煮えたぎる怒りをぶつけたい相手がいるから。そちらを先に済ませるわ」
「そう、なら私の分もぶつけておいて。それと手加減する必要はないわよ」
「言われなくてもそうするわよ。それと……早苗をどうにかしておいて。見てらんないから」
そうだけの言葉を残して霊夢は出て行ったのは頭を冷やす為でもあるだろう。向かう場所はもうわかっているから言わないでおくとしよう。その彼女が気にかけていたのは掴みかかっていた早苗だった。今の早苗は混乱していた。
わからない……拒絶していた相手が何故自分を助けてくれたのか?命を懸けてまでどうしてそこまでして……早苗の心に染みついた男性像が乱れ定まらなくなっていた。醜いから騙され捨てられてしまったはずなのにどうしてこの青年は自分に構ってくれたのか?理解できない彼女の精神は狂いそうになっていた。
「……ちょっとあなたいつまでそうしているの?」
「……あなたは……?」
「私は蓬莱山輝夜、ここの主人よ」
「……どうして仮面を……?」
「これが無いと死人が出るのよ」
「……そう……ですか……」
この場に一人だけ仮面を被った女性が現れても反応を示さない早苗は慧吾のことでいっぱいだった。確かに霊夢の言う通り見ていられなかった。病室に漂う沈黙……それを破ったのは一人の目覚めからだ。
「う……ううん……」
「「「「「――ッ!?」」」」」
「慧吾!?私、輝夜よ!!?」
「慧吾無事か!?お前の大好きなお母さんだぞ!!!」
愛する人の目覚めに涙無くしてはいられない。元々醜い顔が涙でぐちゃぐちゃに更に醜く仕上がり、他人がこの光景を見れば地獄絵図、阿鼻叫喚の嵐となるだろう。その証拠に背後で神様二人がもがき苦しんでいるようだが気にも留める必要すらない。大事なのは慧吾なのだから。
「……輝夜に御袋?」
「ええ!輝夜よ!生きていてくれて……よかった!」
「よかった……本当によかった……またお前の声が聞けて私は嬉しいぞ!」
「輝夜……御袋……」
涙に溺れる母親と輝夜の姿、その背後でもがき苦しんでいる二神の姿に慧吾には状況がわからないが、頭には包帯が巻かれており、どうやら意識を失っていたと理解できた。そして気づく……輝夜の背後にどす黒いオーラを纏わせた不死鳥が彼女を睨みつけていることを……
「………………………………………………感動の場面のところ悪いんだがよ、輝夜」
「なによ、今こっちはいそがしk」
「てめぇ!!なにしてくれとんじゃぁああああああああ!!!」
「――ぶべぷぅ!!?」
妹紅の鉄拳が輝夜の顔面を陥没させて壁を突き破って飛んでいった。バキボキと何かをへし折りながら騒音は遠ざかっていく。きっと竹林がへし折られたのだろう。何の罪もないのに……可哀想な竹林達。
「はぁ……はぁ……糞が、私と慧吾との再会を邪魔しやがって……はぁ……」
「あの……妹紅……さん?」
「――ッ!!慧吾大丈夫か!!?
「落ち着いてくれ妹紅さん、俺は大丈夫だ。だが、この壁どうするんだよ……」
「んなぁもん
「そうはいかないわ」
「誰だよ邪魔すんのは……って、げぇ永琳!!?」
慧吾が目を覚まして自分が感動の再会を果たすはずだったのに輝夜に邪魔され、今度こそ感動の再会になるはずだった妹紅が不機嫌に声がする方へ振り返れば、そこには永琳が凍てつく瞳で妹紅を見つめていた。病室でこれほどの騒ぎを起こして彼女が来ない訳がない……そして怒っていらっしゃった。壁に穴開け、耐えられなくなった二神からの
「大きな音がしたから来てみれば案の定……でも壁まで壊してくれるなんてねぇ……どう責任とってくれるのかしら……あなたは?」
「あはは……いや……その……」
汗水ダラダラの妹紅は視線を逸らして慧吾と慧音に助けを求めて瞳で訴えかけるが、現実は非情である。
「これは妹紅さんが悪い」
「妹紅……私でも擁護できん」
「慧吾!?慧音まで!!?」
「これで問題ないわね。さぁ……ちょっとお話しましょうね?」
「いや私は慧吾と……あっ!?お、おい今なにをした!!注射したよな!!?」
「はて?ナンノコトカシラ?」
「おいとぼけるな……って、あれ……なんだか意識が……」
永琳が一瞬で妹紅に注射を打ち、おそらく麻酔だろうその効力が聞いたようで、バタリと妹紅が倒れた。運悪く神様達の
後から入って来た鈴仙とてゐが何事かと驚くが、永琳の命により二人は悪臭を放つ屍を片づけさせられる羽目になり、こちらもお気の毒であった。
「さてと、散らかりものは片付いたわ。一応検診と脳に異常が無いか判断する為にいくつか質問するわ。構わないかしら?」
「はい、構わないですが……永琳さん」
「わかっているわ。そこでいつまで呆然としているつもりなの?」
「……」
先ほどからずっと一言も喋らず隅っこでずっと茫然と慧吾を眺めていた早苗。
「……」
「早苗、お前は何か慧吾に思うことがあるのか?」
「……」
「早苗……何故なにも言わないんだ?」
「……」
慧音が聞いてもうんともすんとも言わない。これには永琳も慧音もお互いに顔を見合わせどうしたものかと困ってしまった。
「……早苗、もしかして俺と二人っきりで話がしたいのか?」
「――ッ!?」
早苗は周りの目が気になっているようだ。色々と彼女の心は整理がついていない状態であることは誰の目にも明らかであった。驚く早苗ではあるが、首を縦に振って意思を示す。簡単な献身について調べてもらった後、二人には悪いが退室してもらうことにした慧吾は早苗と二人っきりの空間に滞在することになった。
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「すみませんでした」
早苗の謝罪から始まった慧吾と早苗との二人だけの空間は、甘い雰囲気とか一切なく重苦しいものだった。
今日で2回目だな早苗とこうして二人っきりになったのは……どちらも嫌な空気になったが。そしてこれだ。謝罪されることは何もしていないはず、心当たりはある。俺が彼女を助けたことだ。そのことで俺に負い目を感じている……だけではなさそうだな。おそらくだが……
「なぁ」
「――ッ!?」
「そう怯える必要ないぞ。ただ聞きたいことがあるんだ」
「……なんですか?」
「……男に助けてもらったことに疑問を感じているんじゃないのか?」
「なんでそれを!!?」
「諏訪子さんから話は聞いていたからな。それで男に酷いフラれ方をした……それで男に不信感を抱くようになるが、俺が助けたことで訳がわからなくなっているんだろ?なんで自分を助けてくれたのかってな」
「……」
慧吾の言葉は的中していた。早苗は押し黙ってしまう。
初めてがあれじゃ全ての男が敵に見えるのは仕方ないよな。だが、俺はそんな男と一緒にされる方が不快だ。だから早苗にはちゃんと話さないといけない。
「俺は……ちょっと変わり者なんだ」
「……変わり者……ですか?」
「ああ、簡単に説明すれば世間一般的に不細工扱いされている女の子は俺にとって不細工じゃないと言うことだ。つまり……早苗のことは美人に見えているわけだ」
「……嘘ですね」
「嘘じゃないさ。何故嘘をつく必要がある?」
「……わかりません」
「まぁ、普通はそう思うよな。でも違う。俺は真面目だ」
「……もし嘘じゃなくても……それが何なんですか!私に関係あるとでも言うのですか!?もしそうだとしても私に優しくする必要なんてあります?ありませんよね?こんなグチグチしている女うざいでしょう!?あなたは聞いたと思いますけど、外で私は神様を信仰するヤバイ奴だって思われていたんです!影で私だけじゃなく、信じてもいないのに神奈子様や諏訪子様の悪口を言う同級生達や異物を見るような目で愛想笑いで私がいじめられているのを見て見ぬふりをする大人達!そんな連中から守ってくれる男性が現れたと思ったらそいつも私をバカにする奴だったんですよ!?信じろと言う方がおかしいんですよ!!!」
早苗の怒号が永遠亭に響き渡る。きっと永琳さんや御袋に聞こえてしまっただろうが、そんなこと今はどうでもいい。俺はただ彼女の胸の内を黙って受け止めるしかできない。散々辛い思いをしてきてそれを胸の内に貯め込み過ぎていたようだ。次から次へと口からは積もりに積もった早苗の本音だった。
今まで溜め込んでいたんだろうな。無理もないか、誰にも言えない秘密はある。俺にも転生したと言う秘密が当然あるしな。早苗はずっと苦しんでいた……ならば俺にできることはその苦しみを聞いてやることだ。
慧吾はただジッと早苗の怒号を受け入れていた。外の世界での出来事は慧吾は何の関係もない。しかし今までの鬱憤を慧吾にぶつけていた。彼女は心のどこかで助けを求めていたのかもしれない……いや、求めていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ!!」
全てを吐き出した早苗は自分でも訳が分からない程に疲労していた。だが、どこか気持ちが軽くなった気がしていた。誰かに聞いてほしかったのだろう。神奈子と諏訪子には伝えられないこともあったはずだ。それをずっと受け止めてくれた慧吾に対して今更ながらではあるが、申し訳ない気持ちになっていた。
「落ち着いたか?」
「はぁ……す、すみませんでした。あなたのせいではないのに八つ当たりしてしまって……」
「いや、いいさ。誰にだって鬱憤を吐き出したい時がある。それが今だっただけだ」
「は、はぁ……」
早苗にはよくわからなかった。男性である慧吾に優しくされている……あれほど傍に居るだけで気分が悪くなっていたのに今ではどうもそんなことは感じられない。今までの鬱憤を吐き出したからだろうか?
「少なくとも俺は早苗を振った男とは違うろくでなし野郎ではないとわかってくれればいい。今は信用できなくても少しずつ知って貰えればいいだけだ」
「……あの、慧吾さん……」
「慧吾でいいって言ったろ?俺達は
「……」
ハプニングはあったが、早苗の顔は見ていて辛いものではなくなっていた。寧ろ清々しい顔になり、これが本来の彼女の素顔なのだろう。デートとは程遠いものとなってしまったが、慧吾はこれで自分の役目は終わったものだと決めつけていたが……
「……慧吾、一ついいですか?」
「ん?なんだ?」
「私達……まだ
「はっ?いや、俺はもうお役目御免……」
「違います」
グッと今度はなんと早苗の方から慧吾に近づいてきた。これには慧吾も驚きの表情を浮かべてしまう。
「信用して……いいんですよね?あなたを」
「あ、ああ……」
「……そうですか。あの……私、あなたをもっと知りたいです。だからまた……私とその……デートしてくれませんか?」
「……ああ、望むところだ」
「ありがとうございます……慧吾♪」
この笑顔は反則だぞ……男として生まれたならば、この笑顔を守らないといけなくなっちまった。それに彼氏ならば尚更か……俺の役目はまだ終わりなさそうにないな。
慧吾は見た……まるで夜空に輝く星のような素敵な笑顔を。