それでは……
本編どうぞ!
上白沢家と博麗家
幻想郷では今は暑い夏が訪れている。空に昇る太陽がいつも以上に生き物たちを照らし、その熱気を地上へとお裾分けしている季節。それでも変わりようのない日々を過ごしていたある日のことである。
「なに?今なんと言った?」」
「もう一度言いますよ。博麗神社が倒壊しました」
ここ人里の一角、上白沢家の玄関先では世帯主の慧音が来客の対応をしていたところで、その相手は鴉天狗の文であった。上白沢慧吾を知り、それからよく癒しを求めてここを訪れている彼女が今日来たのには訳があった。
文が訪れた訳とは博麗神社倒壊とのご報告であった。現在慧吾が調理場で腕によりをかけて昼食を用意していた。我が子が振舞う料理にワクワクさせていたら文が訪れ、途端に不機嫌になった慧音であったが文からもたらされた報告に少ながらず驚いていた。
「一体何があったんだ?いや、その前に文、一度家に入れ。立ち話はあれだろう?」
「あやや、これはこれはどうも。それではお邪魔します」
「おう御袋、昼食できたぞ……んっ?来客は文だったのか」
「お邪魔していますよ。あやや!慧吾さんの手作り料理ですか!?いいタイミングに訪れてしまった射命丸文、丁度お腹も空いていたところですし、これは戴かなくてはなりませんね♪」
「おい文、これは私と慧吾の分だ」
「あやや?二人分にしては食器と量が1セット分多いみたいですが?」
「これは妹紅の分だ。だからお前のではない」
「あやや、それは残念です……」
ガックリと肩を落とす。慧吾の料理が食べれると期待したが残念なことに文の分は無かった。だがここで何もしない慧吾にとっては男が廃るというもの。
「文、簡単なおにぎりであれば作るぞ?」
「あやや!?戴けるのですか!?」
「おにぎりだが?」
「是非ともお恵みをください!」
慧吾がおにぎりを握る、それ即ち直接肌で触れたおにぎりを食べれるというもの。文だって女、男性が直で握ったおにぎりを食べれるとわかればテンションアップは避けられない。調理場に引き返して見えなくなった頃合いにはガッツポーズを取っていた。それを驚愕の表情でわなわなと震えていたのは慧音だった。
「私と妹紅以外におにぎりを出す……だと!?慧吾の手汗がついたおにぎりを食べれるのは親の特権だろう!?」
などと狼狽えている慧音を余所に出されたおにぎりを一口入れた文は幸せに包まれていた。親の特権を奪われたことで絶望の淵に落とされた慧音は、慧吾のご飯を楽しみにやってきた妹紅に助けを求めた結果、危うく彼が止めなければ焼き鳥が完成していたところだった。
それからしばらくガンを飛ばす妹紅にビビりながら慧吾の影に隠れる文は不憫としか言いようがない。結局慧吾に怒られてシュンとする妹紅であったが、本題はここからだ。
「それで?博麗神社が倒壊したって話は本当なのか?」
慧吾は初耳だった。ついこの前に博麗神社を訪れたばかりだった。その時はいつも通り甘えん坊霊夢に凛々しい霊香が居たが、倒壊するほどにおんぼろ神社ではない。いきなり倒壊したと言われても違和感しかないのだ。
「地震が起きたのですよ」
「「「地震?」」」
「はい、地震です」
「おい文、おかしいぞ?博麗神社は確かに人里より遠いが神社を倒壊させるほどの地震が起きればここにも被害が出るはずだぞ?」
慧吾の指摘は最もだった。建物が倒壊するほどの地震なら人里にも影響を及ぼしてもおかしくない。なのに慧吾達、そして人里の人々はそんな振動など感じてはいなかった。話題にすらあがっていないのだから。
「いや、それがですね……異変なんですよ」
「ああ、異変なのか」
異変と言われて納得できるようにまで幻想郷に馴染んだ慧吾。異変ならば何かしらおかしな点があっても不思議ではなくなってしまうのが不思議なことだ。そして文が話した内容はこうだ。
なんでも空の上にある天界と言う場所には天人が住んでいるそうだ。天人達はのんびりとした生活を送っており地上と比べると刺激がないらしい。そんな中で一人の天人が不満を抱いていたそうだ。退屈な生活に嫌気が差して幻想郷に異常気象による異変を起こし、犯人を突き止めて自分の元を訪れた者たちと戦うことで、退屈しのぎをしようと試みたそうだ。その過程で博麗神社(博麗の巫女)がターゲットに選ばれてしまい、局所的な地震を発生させ神社を倒壊させたとの報告だ。
結果的に言えば天人はボコボコにされた。霊夢の怒りを買い、おふざけた理由で神社を倒壊させたことは割りと洒落にならないほどの出来事だ。神社は博麗大結界の基点となっていて幻想郷を危機に陥れたことから、紫が直々に異変解決に自ら乗り出した。珍しく紫がブチキレた場面を見たと言う。
これを聞いた慧吾達は「まぁ、そうなるな」と納得した。悪意がないとはいえ、幻想郷を知らず知らずのうちに危機に晒していたのだから当然の結果と言える。
「ほぅ、それで文屋のお前がわざわざここまでそのことを伝えに来てくれたってか?」
「清く正しい射命丸の私として当然のことをしたまでです!っと言いたいところですが、実はですね困ったことになりまして」
「困ったことだと?」
妹紅は首を傾げた。慧音と慧吾も同じように首を傾げる。
「霊夢さん、それに霊香さんは神社が倒壊してしまって家がありません」
「「「ああ……」」」
理解するのには簡単なことだった。それはそうだ、神社が倒壊したら住んでいる場所が無くなってしまったのも同然である。補足説明をすると、紫は現在天人と
「なるほど、霊香殿が困っているのか。ふむ、考えなくてはな」
「どうするよ慧音?人里に貸してくれる空き家なんかあればいいがあったか?」
「いや、確かなかったはずだ。しかし困ったぞ、霊香殿と霊夢には少なくない恩がある。個人的にもなんとかしてやりたいのだがな……」
「う~ん」
色々と模索しているであろう慧音と妹紅だが、それをキョトンとして眺めている慧吾に気づいた文は気になり聞いてみた。
「慧吾さん、なにをキョトンとしているのですか?」
「いや、何故御袋と妹紅さんが考える必要があるのかと思ってな」
「どういう意味です?」
慧吾の言った意味が理解できなかった文は再度質問してみた。
「どういう意味だと?空き家が無ければ仕方ない、
「「「………………………………………………」」」
「えっ?なに???」
慧吾は真顔で見つめられている意味がこの時わからなかった。
「不束者ですがよろしくお願いします……慧吾❤」
頬を赤らめた霊夢に呆れた様子の霊香が上白沢家へやってきた。
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今日はいつになく部屋が綺麗だ。いや、綺麗にしたと言った方がいいな。何故なら今日からしばらくお客っと言うよりも友人とその母親がこの家、上白沢家へと泊まりに来る。汚いなんて思われでもしたら流石に傷ついてしまうし、御袋の顔に泥を塗る。まぁ、そんなこと微塵も気にしない二人だから大丈夫なんだが礼儀だから掃除をして当然だ。
しかし妙に落ち着かないのは事実。やはりいつもと違う日常へと変化するその第一歩だからなのかもしれない。俺も俺で緊張しているのがわかる。何故なら来るのが幼馴染の霊夢、そして霊香さんだから。まぁ、幼馴染とその母親が泊まりに来るのは別におかしなことではないと思うだろう?しかしそうではないらしい。
女性が男性の家に泊まりに行くと言うことはつまり「モーレツ(意味深)な出来事が起きてもいいよ❤」と言う合図でもあるらしい。御袋から聞かされた時は驚いてしまったが、確かに元の俺基準なら男が女の家に上がり込むことになる。この場合、期待している(何がとは言わない)と思われても文句は言えない。まぁ、今回は事情が事情だけに男と女の二人だけの共同生活ではないのが救いだな。だがそれが落ち着けない理由ではないんだよ、俺の中ではな。
あの霊香さんが泊まりに来るんだぞ?あの美人でカッコイイ大人の女性とはこの人だ!と代表する巫女様だぞ?緊張して当たり前だ。霊夢の親でなかったら正直本気で恋していたと思う。えっ、霊夢はどうなのかって?あいつは……良い子なんだよ。けどな、どうしてああなった?あっ、俺のせいだったわ。まぁあいつとはいつも通りだから気にしてはダメだ。
……っとまぁ、色々と語ったがそろそろ来る頃だ。
「不束者ですがよろしくお願いします……慧吾❤」
開口一番にそれかよ……まぁそんなことだろうと思ったけどよ。
上白沢家の玄関では困惑した様子の慧音と呆れた様子の霊香、そして全てを悟った慧吾はいつもの巫女装束ながらも色っぽい化粧をした霊夢の姿があった。それはまるで花嫁姿を連想させる……いや、花嫁姿だった。
「おいおい、なんでそんな恰好を?しかも化粧まで?」
「化粧をしたら普通気持ち悪がれる。だけど慧吾はそんなことないって知ってる。慧吾どう?私のこと綺麗って言ってくれる?」
「あ、ああ……まぁ、普段もいいが、今の霊夢はとても……き、綺麗だ」
「慧吾❤」
不細工が化粧をしても余計に不細工になるが、慧吾が特別であることは霊夢は知っている。幼い頃から共に時間を過ごして来た幼馴染が今の姿は麗しき花嫁であり、彼でもその姿に珍しく照れていた。
「すまない、霊夢を止めることができなかった」
「いや、霊香さんが謝ることはありません。それにその……霊夢の普段見られない姿を見ることができて俺は良かったと思います」
「いやん♪もう慧吾ったら❤」
慧吾に褒められてくねくねと嬉しさで踊り出してしまう。その姿に頭を抱えていた霊香。
「まぁ、霊夢が幸せそうでなりよりだが、そろそろ花嫁
「
「まったくこの子は……すまない、霊夢はこんな調子だがしばらくすれば元に戻ると思う。これから慧吾君と慧音には迷惑をかけるだろうが親子共々お世話になります」
「霊香殿、遠慮はいらない。我が家だと思ってくつろいでください」
「御袋の言う通りです。さて、挨拶はこれぐらいにしておいてだ、霊夢のことは俺に任せてください」
「本当にすまない」
頭を下げる霊香は全てを慧吾に任せてしまって申し訳なかったが、幼馴染の暴走を止められるのはやはり彼のみ。花嫁モードを堪能する霊夢としばし新婚ごっこに付き合うこととなったが「いつもの霊夢が好きだったのに非常に残念だな~(棒読み)」と愚痴をこぼしていればあら不思議。霊夢は元通りとなった。
このような出来事が明日もあるかもしれないし、ないかもしれない。だが一つハッキリしていることはいつもの日常と少し違う明日が来ると言うことだろう。それが良い日となるかは全くの別物であるのだが、それは明日になってみないとわからない。
これが上白沢家と博麗家が一つの屋根の下での交流物語である。