それでは……
本編どうぞ!
「魔理沙いつまでここに居る気だい?」
「いいじゃねぇか、私が居て何か困ることがあるのか?」
「ここはお店だよ?」
「誰も来ないのにか?一応私が居るから客はいることは居るな」
「商品を買わないでいつまでも居座っているのはお客とは言わないね」
「へへっ、そう言うなよこーりん。いつかは買うかもしれないだろ?」
「そうなったら嵐が来るね」
「ひでぇ、私をなんだと思っているんだよ?」
「一人の青年に恋するけど、周りとの関係を気にして中々告白できないで今日も悩みを抱え込んでやってきた生娘君」
「――ぶふっ!?か、揶揄うなよ!!!」
「僕が魔理沙を揶揄わないとそれは僕じゃないよ」
香霖堂内でムスッとした少女こと魔理沙は霖之助に揶揄われて不機嫌なご様子。今日も今日とて霖之助に悩み事を聞いてもらうつもりだったが、相変わらずの対応に帰ろうと香霖堂の扉を開けた時だった。
「ん?なんだあれは……?」
「どうかしたのかい?」
「いや、空から何か……物体が落ちてった」
「落ちた?どこにだい?」
「人里」
魔理沙は人里の方に空から落ちていく物体が目に入った。霖之助の問いに応えるも意識は謎の物体に惹かれていた。それが何なのか非常に気になった彼女の予定は急遽変更された。
「こーりん、私は行くぜ」
「興味を持ってしまったようだね。残念だ、折角の話し相手が居なくなるのか」
「どうせ私を揶揄うだけだろう?」
「いいや、ちゃんと悩みを聞いたうえで揶揄う気だったよ?」
「へっ、そうかよ。それじゃまたなこーりん」
そう言って魔理沙はさっさと謎の物体の下へと飛んでいった。
「魔理沙、昔からの付き合いである僕にはわかるよ。その物体は人里に落ちたのだろう?人里に落ちた物体に興味が湧いたのは事実だろうけど、話の種として彼に会いに行く口実にもなる。人見知りで自分に自信がなかった君が普通の女の子のように恋をしている。僕にとって君は妹みたいな存在なんだ。そんな君を見ることができて僕は安心するんだ。」
香霖堂の扉を見て霖之助はふっと笑った。
「僕は応援しているよ。まあ、君の反応が面白くて揶揄うのはやめるつもりはないけどね♪」
香霖堂を後にした魔理沙は人里に向かった。空からの謎の物体が落ちた辺りを上空から箒に乗って探していると見つけ、彼女は驚いた。
「――あいつはあの時の!?霊夢と慧吾!?待ってろ今行くぜ!!」
親友の姿、密かに恋心を向ける慧吾の姿、そして謎の第三者を見つけ空気抵抗などお構いなしに急降下。そのままの勢いで地上に飛び降りた際に受け身を取り、すぐにポケットから魔理沙ご自慢の八卦炉(彼女の愛用の道具)を謎の第三者に向けた。
「おいお前!慧吾と霊夢に手を出したら……ってなんだよ、この有様は?」
「魔理沙?どうしたんだ?」
「いや、どうしたって……慧吾これはどうなっているんだぜ?」
「いやぁ、俺もよくわかっていない。簡単に説明するならば……」
魔理沙は困惑した。何故ならお祓い棒を持った霊夢、その足元にボロボロ状態の謎の第三者の姿があったからだ。その経緯について慧吾が説明した。
買い物中に空から謎の物体が降って来る→謎の少女現る→霊夢キレる←今ここ
「あ、うん、そういうことになったいたのか……って!?要石(謎の物体の名)に誰かが下敷きになってる!!?」
なんとなく視線を下げた先に何者かの足が見えた。上半身が要石の下敷きになっており、魔理沙は驚愕した。
「お、おいおいおい!これやばいんじゃ……!!?」
「下敷きにされたのは小鈴だ」
「なんだ小鈴かよ、なら大丈夫だな」
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
要石の下敷きになっていたのが小鈴だと知れば魔理沙は安堵した。この程度で死ぬなど
「天子の奴、どうせ暇だからって地上に降りて来たんだろうな。まぁ自業自得だろうけどな」
「魔理沙、あの子を知っているのか?」
「ああ、比那名居天子って言う天人なんだ。暇だから異変を起こしたヤバい奴なんだけど、博麗神社が倒壊したって知っているか?」
「知っている、文が教えてくれたからな」
「そうか、それで霊夢と霊香さんが住むところがなくて困っていたんだが、誰かの家に泊まることになったって聞いたんだけど霊夢の奴教えてくれないんだぜ。慧吾は知っているか?」
「知っているもなにも俺の家だからな」
「……はっ?はは、悪いよく聞こえなかったぜ。もう一度言ってくれ」
魔理沙は聞き間違いではないかと思った……いや、そう思いたかった。だからもう一度違うと願いを込めて聞き直したが帰って来たのは同じ答えだった。それを知った時から意識が朦朧とした。慧吾が何かを説明しているようだが、今の魔理沙には届かない。次第に唖然としていた表情に乾いた笑みが浮かび、唇を噛みしめる。そのことを悟られないように彼女は帽子の
「そ、そうか……わ、私はお邪魔虫なようだな」
「魔理沙?」
「わ、悪い。私は帰るぜ!!!」
「お、おい魔理沙!?」
慧吾の制止も振り切り空へと逃げ出してしまった。彼には後を追うこともできずにその場に立ち尽くすしかなかった。
「慧吾どうしたのよ?」
「いや、たった今魔理沙が居てな」
「魔理沙が居たの?それなら話しかけてくれればよかったのに。それで慧吾、様子が変だけど大丈夫なの?」
「……ああ、なんでもないさ。それよりも買い物の途中だったから行こうか」
「?まぁいいけど」
霊夢は謎の第三者である天人に構っていて気づかなかったようだ。それでも慧吾の様子の変化には気づいたが、それ以上の追及はしなかった。何故かそれ以上追及してはならないと巫女の勘が訴えたからだ。慧吾も魔理沙の変化に気づかない朴念仁ではない。後で会いに行こうと決めたのだった。
「あの魔法使い、自分に自信がないようだな。あの男と巫女の関係も気になる……もしやこれは俗にいう三角関係と言うものか!?ふ、ふーはっはっは!これは実に面白そう!!そうとわかればあの魔法使いに会いに行かないと♪」
ボロボロな天人は満悦な笑みを浮かべて走り出す。向かうその先に何が待っているのだろうか?
「くぁwせdrftgyふじこlp!!(早くこの邪魔な岩をどけなさいよこんちくしょうー!!!)」
要石の下敷きとなっている哀れな小鈴の雄叫びは誰の耳にも届かなかった。
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魔法の森にひっそりと佇む家の主は悲しみに彩られ、電気も付けずにベットの中。箒も無造作に置かれて八卦炉も床に転がっている。
魔理沙は胸が締め付けられる痛みを感じた。ズキズキと針で傷口をえぐられているような感覚に陥り、留めなく目から水のようなものが溢れ出ていた。
恋する乙女は強いと言うが必ずしも当てはまるとは言えない言葉だ。現にこうして傷ついている子がいる。
「……慧吾のバカ野郎」
私達は昔から幼馴染じゃないのかよ?霊夢の方が先かもしれないけど、お前を思う気持ちは霊夢にだって負けてないはずだ。一緒にいると楽しい気持ちになれるし、慧吾の優しさを知っている。今でも小さい頃に立ち寄った場所だって憶えているんだ。それなのに霊夢ばかり構いやがって……私はいつも霊夢に負けている。
スペルカードだってそうさ、霊夢にいつも負けて、新しく考えた技も一発で攻略されて努力が水の泡になったことだってあったぜ。でも霊夢に負けたくないから努力して来たし、置いて行かれたくなかったから頑張った。なのにまた私は負けるのか?置いて行かれるのか?いやだ、霊夢も慧吾も私はおまけ程度の存在なのかよ……?
ライバルだと思っていたのは自分だけだったのか?慧吾にとって自分は小さい存在なのか?そう思わずにはいられない。魔理沙だって女の子、容姿を褒めてくれたたった一人の男の子だった慧吾を好きになった。しかし彼を狙い輩は大勢いる。その内の一人であるが、幼い頃より好いていた。いつかは告白しようとしたが友人関係が壊れるのを恐れてやめた。そしたらいつの間にかその友人と彼の仲は想像を超えて深まっていた。魔理沙にとってこの事実はショックだった。
しかしこれには訳があるのだが、あまりのショックから意識が朦朧と混乱して内容が入っていなかったので肝心な部分が抜けている。恋とは盲目とはよく言ったものだ。結果、勘違いしている魔理沙だが本人は気づかずネガティブ思考が止まらずにどんどん泥沼に落ちていく。
……ははっ、何やってんだ。私は何をやっても霊夢には勝てないんだ……ならいっそもう頑張らなくていいかもしれないぜ。
【諦める】努力家の魔理沙には最も相応しくないものが彼女の心を支配しようとした時だ。
「ふーはっはっは!この私、比那名居天子が来てやったわ!!!」
ドガシャン!と盛大に音を立て、扉が吹き飛ばされた。その拍子に部屋の物が幾つか巻き込まれて壊れたが、今の魔理沙には気にも留めないことだった。折角盛大に登場したのは比那名居天子と言う天人、先ほど霊夢にボコボコにされ服装がボロボロのままだがこちらも気にも留めていない様子。それよりも魔理沙の反応がないのが気にくわなかったのか地団駄を踏み出した。
「ちょっと無視!?折角私が来てやったのに常識を考えなさいよ!!」
扉を吹き飛ばして登場する人が常識を語るなと思うが、幻想郷では常識に囚われてはいけない。
……うるさいな。ほっといてくれよ。
「ちょっと起きなさい!起きろ起きろ起きろ起きろ起きろー!!!」
ドタドタと勝手に家の中に入り込み、わざわざ近づいて来た。それでも不貞腐れて無視を続けようとする魔理沙に対して強硬手段を発動する。一気に布団をひっぺ剥がした天子。布団の守りがなくなったことで無論魔理沙の姿が露わになった。
「……なんだよ、笑いたきゃ笑えよ……」
その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。これには破天荒な天子でさえ無言を貫く。
「そんなに悲しいなら私が手を貸してやる。行くぞ魔法使い!!!」
「ちょ、おまっ!!?」
無言どころか絶好調の様子の天子に手を引かれて魔理沙は天子と共に空へと飛び出した。これには魔理沙も悲しさも忘れ去り驚きしかない。
「な、なにすんだよ!?」
「遠慮するな、私がお前に自信を持たせてやる!」
「何言っているんだ訳が分からないぜ!!?」
「ふん、この比那名居天子には
「……」
沈黙が答えだった。大切な幼馴染だったが次第に男女の関係に悩まされていた。友達か恋か、悩みに悩んでも答えは出ずに明日も変わらない日々を送るのかと気にしなかったが、それは唐突に終わりを告げた。親友に負けた、恋する彼を取られた。自分には勇気がなかったと。流した涙は悔しさか自分自身への不甲斐なさか、どちらにせよ指摘されたことで魔理沙は言い返すことは出来なかった。
「ふふん、安心しろ。あの男が誰かは知らないけど、今のお前は自分に自信を持てていないだけだ。自信を持てば何かが変わるかもしれないぞ?」
自信がない?そうかもな、自信を持てば……変われるのか?
天子の言葉に魔理沙は小さな期待を抱いた。
「……本当か?」
「知り合ったばかりだが、私は天人だぞ?この比那名居天子に全て任せておけばいい!ふーはっはっは!!!」
……本当にこいつに任せて大丈夫なのか?
天子に手を引かれ、魔理沙は天高く雲の上へと消えていった。