あべこべ幻想郷に落ちた命   作:てへぺろん

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最近あべこべ小説が増えて嬉しいですが、お気に入り登録していたあべこべ小説が消えてプラマイゼロの気分です。そんなことよりも本編ですね!


それでは……


本編どうぞ!




天界よこんにちは

 ここは雲の上、そこには天人達が住まう天界が存在している。天人は一日中をのんびりと過ごすマイペースな日常を送っており、争いごととは()()()()。その展開の一角に視点を当ててみよう。

 

 

 豪華な外装に大きな建物、その庭に一人の女性天人……ではなく、天人に仕える竜宮の使い(妖怪)である永江衣玖と言うものが居た。衣玖は庭でオシャレな椅子に腰かけ優雅に紅茶を一口、誰にも邪魔されず静かに紅茶を飲むのが彼女にとっての至福のひと時であった。いつもは()()()()()が煩く我が儘ばかりな行動を起こしている為に彼女のストレスはマッハに溜まっているが、今日に限り姿が見当たらない。これはチャンスとばかりに至福を楽しんでいた。

 

 

「総領娘様のお姿はお見えになりませんし、また地上で好き勝手にやっているはず、帰って来るのは夜か明日か、いずれにせよ今日は静かな一日になりそうですね♪」

 

 

 衣玖の気分は良好な様子である。しかし世の中これをフラグと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衣玖ー!!!面白い輩を連れて来たわー!!!

 

ぶふぅー!!?

 

 

 庭の一角をぶち壊して登場した天子に衣玖は紅茶を盛大に噴き出した。至福のひと時もこの瞬間に散りと消えた。

 

 

「ゴホッゴホッ!?そ、総領娘様!?お、お早いお帰りですね?地上は飽きたのでしょうか?」

 

「地上は下々(しもじも)の輩がうじゃうじゃ蠢いていて蟲みたいで面白いぞ?」

 

「それでしたらもう少し楽しんできたら良かったと思いますが?天界は総領娘様にとってお暇でしょうに……」

 

 

 衣玖の言葉には「至福のひと時を邪魔しやがって。こんなに早く帰って来てんじゃねーよ!」と隠された意味なのだが天子には全く通じない。当然のことだ、彼女には常識が通用しないのだ。

 

 

「そんなことよりも衣玖、面白い()を連れて来たぞ!」

 

「面白い()()ですか?地上の道具かなにかでしょうか?」

 

「何を言っている衣玖?どこからどう見ても下々(しもじも)の輩つまり()の方だ」

 

下々(しもじも)の輩?はて?そのような方は何処(いずこ)に……?」

 

 

 衣玖は首を傾げた。天子がハチャメチャな行動と言動は今に始まったことではない。しかし今日の天子はいつにも増してハチャメチャだ。彼女の言っている「下々(しもじも)の輩」が見当たらない。天子の周りには彼女しかしないのだ。

 

 

「何を言っているのだ?そこにいるじゃない」

 

「そこにって……えっ?」

 

 

 天子が指さした先には庭の噴水。そこから突き出ていた異物……人の足が生えていた。

 

 

だ、大丈夫ですか!!?

 

 

 その光景に絶句しつつも、すぐに我に返った衣玖はすぐさま人命救助に動いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、死ぬかと思ったぜ」

 

「申し訳ございません。総領娘様には何度もご忠告しておきます……言うことを聞くかは別ですが」

 

「あんた保護者だろ?あの天人様にはもう少し厳しくしてほしいぜ」

 

「総領娘様に厳しく言いつけて直るのであるならそうしております。でも……もう諦めました」

 

「おい諦めんなよ」

 

 

 ベッドに腰かける魔理沙は出された温かい紅茶を一口飲む。すぐに状況を理解した衣玖によって一命をとりとめた彼女は衣玖に謝罪されていた。噴水にもうスピードで突っ込み打撲や打ち身、全身ずぶ濡れで意識を失っている間に魔理沙は見た。そこら中に彼岸花が咲き、目の前には大きな川のその先が霧で見えず何故自分がここに立っているのか理解できなかった。しばらく待っていると霧の先から誰かが船に乗ってこちらに向かって来るのが見えたが、衝動的に怖くなって逃げていると急に光が差し込み、気がつくとベッドの上だった。

 危うく本当にあの世へと渡る寸前だったのだ。命を救ってくれた衣玖には感謝し、自分をあの世へと送りかけた天子には殺気を込めた視線を向けるようになった。それでも天子は気にしてもいない様子だ。そのことに内心魔理沙は更なる殺気を込めたことも仕方ないことだった。

 

 

「ふっふっふっ、諦めそうになっていた輩が何を言う」

 

「べ、別に私は諦めた訳じゃ……」

 

「総領娘様?魔理沙様は何かあったのでしょうか?」

 

「詳しくは知らないわ。でも何やら恋の悩みがある様子だったからな、衣玖のところへ連れて来た」

 

「こ、恋ですか!!?」

 

「そっ、恋だ!」

 

「お、おい天子お前勝手なことを言って!?」

 

 

 胸を張って(胸はない)ドヤ顔を披露する天子にハッキリと恋だと言われて焦る魔理沙の顔は赤い。

 

 

「こ、こい……恋ですって……!!?」

 

「衣玖どうし……ああ忘れてた」

 

 

 異変に気付いた天子はしまったと言う表情を露わにした。真っ赤になっていた魔理沙も異変に気付いた様子で、わなわなと震え始めた衣玖を凝視してしまう。

 

 

「うぅ……こんなに若い子が恋しているのに……それに比べて私なんか……私なんかにいい人が現れる訳がないですよねそうですよねどうせ私はいつもしっかりしているように見えて実はだらしない女ですよ初めはちゃんとしていましたよ外見がこれだから中身ぐらいはちゃんとしようと心掛けていましたけど月日が経つにつれて男性から見向きもされなくなると嫌でもそうなってしまいますよええ悪いですか悪いですねこんな不細工でしかもだらしない女なんて誰も嫁になんてもらってくれませんよね知ってましたよ!!!」

 

「な、なぁ、あれはどうしたんだぜ?」

 

「衣玖は昔から男に恵まれなくてね。初めは真面目でできる女感を出していたけど、もう投げやりになったって。でも諦めきれなくて自分とは無縁となった恋愛話や恋バナに対してネガティブ思考になっちゃうわけ」

 

「そ、それは……大変なんだな」

 

「衣玖もそんなんだからモテないのよ。私みたいに天人の見本となる生き方をしていれば世の中の男は私に首ったけよ!」

 

「そう言っているがお前……モテているのか?」

 

「――ギクッ!?ま、まぁ……天界の男共は私のような高貴な思考は理解できないようだったらしいわ!」

 

「……」

 

 

 魔理沙は何も言わなかった。天界も地上と変わらぬ場所らしい。天子も衣玖も不細工な顔をしているし、他の天人がどうかは知らないが、少なくとも彼女達を嫁にしたいとは思われていないはずだ。もし慧吾に出会わず、男共に見向きもされない人生なら自分はここまで楽観的に行動できるのだろうか?そう感じた魔理沙はポジティブ思考に至れる天子をちょっと羨ましく思った。

 

 

「そ、それはそうと!衣玖帰って来なさい。これから魔法使いを使って面白いことをしましょう」

 

「おいお前面白いことって……」

 

「それじゃありがたく家に入れてあげるわ。下々(しもじも)の魔法使いが比那名居家に足を踏み入れることを光栄に思うがいいわ!!」

 

「お、おい!?」

 

 

 魔理沙の手を取り、建物へと入って行く。こうなってしまった天子は止まることも止めることもできない。あれこれ言いつつも渋々連れて行かれる魔理沙と落ち込んだ衣玖であった。

 

 

 ★------------------★

 

 

「……」

 

「ど、どうした慧吾?何を悩んでいる?ほら、お母さんに言ってごらん?」

 

「……」

 

「ど、どうしよう霊香殿!?慧吾が口を聞いてくれない!!?も、もしかして慧吾はグレてしまったのか!!?もう『ママ愛しているよ❤』と言ってくれないのか!!?」

 

「落ち着け慧音、それと慧吾君はそんなこと言わないだろう?」

 

「いや、私の夢の中で『ママ愛しているよ❤』とほっぺにチューしてくれているんだぞ!?」

 

「なんて夢見ているのよ……はいはいわかったから慧音は黙っていてくれ。それで霊夢、外で何があった?買い物から帰って来てから慧吾君ずっとこの上の空だけど?」

 

「私もおかしいと思っているの。でも何が原因か……そう言えば天人に出会ってから慧吾の様子がおかしかったわ」

 

「天人と言えば例のあの子か、今回もあの子が関わっているのね」

 

「それと魔理沙も居たみたい。私が気づいた時には居なかったけど」

 

「う~ん、魔理沙ちゃんも関係しているんだろうな。しかし何があったんだ?」

 

 

 買い物から帰って来てからと言うもの、慧吾君の様子が変であることは一目瞭然。また霊夢が面倒な事を起こしたのかと思ったけど、少し違うようだ。彼がここまで思い詰めるのには何かそれ程の理由があるはず……天子ちゃんとは関係がありそうであまり縁がなさそうだが、やっぱり魔理沙ちゃんかな。

 

 

 霊香は慧吾を取り巻く関係を理解している。娘の霊夢、幼馴染の魔理沙と小鈴、その他の子達が彼を求めてそれが幾多の出来事に繋がっていたこともあった。そうなると今回も同じように彼が関係していることは間違いない。それに霊香の巫女としての勘が告げていた。

 

 

 私はともかく、霊夢が慧吾君とこうして屋根の下で過ごすのはまずかったかしら?霊夢はこのことを魔理沙ちゃんには伝えていないだろうし……これが原因だったりして。もしそうなら私はどうするべきかしらね……?

 

 

 男の家に女が招かれる、共に過ごすと言うことはこのあべこべ世界では意味合いが異なり重くなる。「モーレツ(意味深)な出来事が起きてもいいよ❤」と言う合図であり、恋人同士に許されることであった。今回は事情が事情である為、仕方なくだが恋人同士以外で家に泊める行為はまずしない。慧吾の感覚がおかしいこともあって霊香は「箱入り息子なんだなぁ」と改めて実感させられた。

 このことを知ったら多くの者が霊夢に嫉妬するのは間違いない。霊夢だってこんな幸福な現状を知られたくはないと思っているはずだ。現に小鈴が嫉妬に狂って実力行使に出た程なのだから面倒事は避けられなくなってしまうだろう。結果、霊香の推理は的を射抜いていた。

 

 

 推理を元に自分はどう行動するべきか悩んでいると慧吾はスッと立ち上がった。

 

 

「どうした慧吾君?」

 

「霊香さん、俺ちょっと出かけてきます」

 

「行くってどこへ行くのかな?」

 

「魔理沙の家です」

 

「魔理沙の家に行くの?なら私も行くわ」

 

「いや、霊夢は――『霊夢はここに居なさい』……霊香さん」

 

「母さんなんでよ?」

 

「なんでもよ、それに今は魔理沙ちゃんには会わない方がいいわ。友達としてここは我慢しなさい」

 

「……」

 

 

 霊夢は霊香の瞳が何かを訴えていることを読み取った。慧吾と一緒に居たいけどそう言われてしまっては母親の言う通り我慢するしかなさそうだ。

 

 

「霊香さん……」

 

「行っておいで。詳しいことはわからないけど、慧吾君なら大丈夫だと思うわ。何かあれば私達が手を貸すから心配しないで」

 

「ありがとうございます。御袋、ちょっと出かけてくるぞ」

 

「あ、ああ……」

 

 

 慧吾はそのまま早々と出かけていった。慧音は何のことかよくわからない様子で呆然としていたが、霊香は気にも留めずお茶を一口すする。

 

 

「……母さんどういうことなの?」

 

「モテる男は大変ってことよ」

 

「はぁ?」

 

「いいわね霊夢、あんな素敵な子と巡り合えたんですもの。羨ましいわ」

 

「……うん、慧吾に出会えて良かったと思うわ」

 

「ふふふ、流石は私の息子だ。だが慧吾はそう簡単には渡さん。慧吾は私と妹紅のものだ!!!」

 

「慧音、少し慧吾君に対して過保護過ぎる気がしてならないけど、あんな子が息子なら無理もないか」

 

「ど、どうしたのだ霊香殿?もしや熱でもあるのか?」

 

「熱なんてないわよ。慧音、それよりも慧吾君が帰って来るまでやることやっておきましょう」

 

「ちょっと母さん結局意味わかんないんだけど?」

 

「もうちょっと大人になったらわかるから心配しないの。さぁ、料理作るから二人共手伝って」

 

 

 霊夢、まだ若いあなたにはわからないと思うわ。霊夢のように誰もが自分の胸の内を曝け出せるなんてことはできないの。それに友達の立場は複雑なものなの。そこに男が加われば余計にね、魔理沙ちゃんはきっと悩んでいるのよ。

 霊夢も慧吾君とも友達関係のままでいたいけど、恋はその関係を壊してしまうかもしれない。二人を傷つけたくない彼女の優しさがあの子自身を悩ませている原因になっていると思うわ。霊夢あなたでは解決することのできない恋の悩み、慧吾君なら魔理沙ちゃんを何とかしてくれると私は信じているわよ。

 

 

 頭にクエスチョンマークを浮かべる霊夢と慧音を余所に支度を始める霊香には全てがお見通しのようだ。流石は先代と言えど博麗の巫女であった。

 

 

 私にも慧吾君みたいな人と出会えていたら、霊夢にきっと妹か弟が出来たのになぁ……霊夢達が羨ましい。あ~あ、若いっていいわねぇ。

 

 

 娘である霊夢のことを大変羨ましく思うまだまだ若い先代巫女であった。

 

 

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