とりあえず切りの良いところまでは投稿する予定ですので。
それでは……
本編どうぞ!
「魔理沙、いるか?」
慧吾は魔理沙の様子が気になり、魔法の森にある彼女の家へとやってきた。
「……いないのか」
しかし返答はない。
里で出会った時の魔理沙の様子がおかしかった。いや、正確には慧吾が霊夢と一緒に過ごすことになったと話した後からだ。慧吾は馬鹿ではない。魔理沙が心に秘めたる想いを知らない訳ではない。あの時、話してしまったことが彼女の想いに傷をつけたのではないかと彼は思ったのだ。
友達としての関係が崩れるかもしれない。魔理沙は優しい子だと彼は知っている。霊夢や一応小鈴の為に友達で居ようとする想いと慧吾を好いている想いが複雑に絡み合い、答えを出すことに戸惑いと恐怖、そして友達との関係が崩れてしまったらと思っているのだろう。
そんな想いを抱えている魔理沙は霊夢と慧吾が同棲していることを知ればどう思うだろうか……
魔理沙があの時見せた行動……帽子の
悪意なくとも魔理沙の心に傷をつけてしまった慧吾はこうして彼女の下にやってきたが留守だったことに対して不安を宿す。
「魔理沙……どこに行ったんだ?」
魔理沙の行方を心配しながらもここに長居は無用だと来た道を戻ろうとした。
「待つがいい!!下々の輩よっ!!」
天より聞こえてきた声、その声に聞き覚えとこの展開を見たことがあった。
辺りには大きな音と衝撃が慧吾を襲う。砂埃が舞い、咄嗟に目を庇う。舞った砂埃が収まった後の光景を見た彼にはどこかで見たことのある大岩に仁王立ちで現れた天子の姿があった。
「お前は確か……」
「ふふん♪私は比那名居天子!!ひれ伏すがいい!!」
「なんでだよ」
自信満々にドヤ顔でふんぞり返る天子にツッコミを入れる慧吾。博麗神社を倒壊させた張本人と聞いていた彼はあまり関わらないようにしようとそのまま大岩の横を通り過ぎようとした時にニョキっと羽衣が見えた。大岩の陰に隠れて見えなかったが誰かいるようだ。覗いてみるとそこには羽衣を着た女性ともう一人……
「……魔理沙?」
「――ひゅっ!!?」
魔理沙を発見した。しかし小さな変わった悲鳴を上げて覗き込んだ慧吾の視線から身を羽衣を着た女性の陰に隠れてしまう。一体どうしたのだろうか?そう思う彼に天子は高らかと宣言するかのように言い放つ。
「安心するがいい。その魔法使いは自信がなくてな、私が自信をつけさせてやったわ!!しかし妙な輩も居たものだな。不細工に見える見た目が良いとは……お前は変態なのだな」
「(なんで俺は変態扱いされたんだ?)」
「しかしその姿は魔法使い自身が望んだことだ。下々の輩よ、思う存分に魔法使いを見てやるよいいぞ!!ふーはっはっは!!!」
「(この子が何を言っているのか訳がわからないんだが?)」
慧吾は天子の言う意味がわからない。自分達だけ理解した状況に置いてけぼりの慧吾だったが、誰かに服の裾を掴まれている感覚を感じた。振り返るとそこには……
「……な、なんとか……言えよ」
豪華なドレスと宝石を身に着けて、化粧と口紅で彩られたまるで物語に登場するお姫様のような魔理沙が頬を赤色に染めながらも答えを求めていた。いつもとは違い、着飾らない彼女とは対照的な姿に慧吾は唖然としてしまった。
慧吾と魔理沙の間に沈黙が流れる。それはどれほどの時間だったのかはわからないが、我に返った慧吾は何か言葉を返さないといけないと思ったが、出た言葉はただ一言だけ。
「……綺麗だ」
「――ッ!!?そ、そう……か」
たった一言だけだった。その言葉に魔理沙の頬は赤から真っ赤に、顔全体を覆いつくした。視線も定まらず、手先は落ち着くことなくもじもじと動いていた。
「なんだ?抱かないのか?」
「――ぶふぅ!!?だ、抱くとか何言ってんだぜ!!?」
そこからまた沈黙が流れ始めようとした時だ。この甘い雰囲気を壊すのはこの天人しかいない。天子の発言に魔理沙は真っ赤に顔で反論するが、どこかそこには浮かれた感情が混じっている気がした。
「私は見たことがあるのだ。こういう展開の後にはお決まり事があるとな!!さぁ抱くがよい下々の輩よっ!!」
「いや、その理屈はおかしい」
これには慧吾はツッコムしかなかった。天子のおかげで雰囲気が緩んだのが良かったのか悪かったのか、沈黙が流れることはなさそうだ。
「それにしても、魔理沙はどうしてこんな格好をしているんだ?説明してくれ」
「そ、そそ、それは……」
「私が説明してやる。この魔法使いは自信がなかったのだ!!」
「さっき言っていたな。どういう意味だ?」
「そこの魔法使いは下々の輩、お前に恋をしているのだ!!」
「――ちょ、ちょちょちょ!!?天子お前ぇぇぇええ!!?」
天子は爆弾発言を繰り出した。これに黙っていられない魔理沙だが、普段の服とは違い、ドレス姿にシンデレラを想像させるガラスでできた靴。その為に足がもつれてあわや倒れそうになるが、それを支えたのは慧吾だった。
「大丈夫か?」
「……うん」
小さく消え入りそうな返事しか返せなかった。でもそれでも魔理沙は今の瞬間を決して忘れないだろう。
「………………………………………………」
「………………………………………………」
「……ふっ、天人の中でもより高貴な私はこの場には不似合いのようだな」
見つめ合う二人に言葉はなかった。ただこの時間は二人だけのもの。
天子は大岩(要石)と共に何も語らず、その場をクールに去った。
「………………………………………………」
「………………………………………………」
「………………………………………………は、離してほしいんだぜ」
「あっ、わ、悪い」
どれぐらいの時間が経っていたかなんてわからない。わからないが終わりは来てしまう。再び二人の間に沈黙が流れるが、先に言葉を発したのは魔理沙の方だった。今の状況を理解して慌てて謝罪と彼女から離れる慧吾は、落ち着きがなくソワソワしていた。彼の胸の鼓動はせわしなく脈打っていたことを知るのは彼自身だけだが、魔理沙も同じだったことは言うまでもないだろう。
「……え、えーと、それで……なんで私の家の前に居たんだ?」
「そ、それはな、魔理沙を探してたんだ」
「そ、そうなのか。わ、私に用があるのか……な、なんだ?」
「魔理沙の様子が気になって……それで心配だったんだ。だからここに来た」
「そう……なのか。わざわざ来てくれたのか」
「ああ」
「妖怪に出会うかもしれないのに一人で来るなんてバカな奴だぜ」
「それでも
「(
魔理沙は
「(これでいいんだ。そもそも私は欲張っちゃいけなかったんだ)」
しかし、魔理沙は胸の内にある想いを飲み込んだ。
「そうだぜ、この魔理沙様と慧吾は
まるで自分に言い聞かせるように、自分を納得させるように笑顔を振りまきながら家に入ろうとした時だ。
「俺はそうやって、大事な仲間達の為にも自分の意思を後回しにし、明るく振る舞おうとする魔理沙のことは嫌いじゃないからな」
「――ッ!!?」
魔理沙の背にかけられた言葉……それは彼女を救う言葉となった。
「……そっか。上がれよ、今日は特別なお茶を出してやるぜ!!」
明るく振る舞おうとした笑顔はその言葉のおかげで作り物ではなくなっていた。
「ふっ、私ってばカッコ良すぎなのでは?そう思うだろう衣玖……どうした?」
「うぅ、羨ましい……何ですかあの甘ったるい雰囲気は!?魔理沙さんから聞いていましたけどそんなことありえないと思いつつももしかしたら本当に?って思っちゃっておとぎ話みたいな私みたいな不細工な女性を見てくれる人がいるだなんて!!私もあの甘ったるい雰囲気に流されて空気に徹してしまいました。あそこで自己紹介の一つでもしていれば私にもチャンスが……」
「いや、衣玖にはチャンスなんてなかったと思うわ」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあん!!総領娘様の意地悪!!やっぱり私にはいい男なんて見つからないだぁ……!!」
「ふむ、まぁ衣玖のことはいつもの事だから良いとして……中々楽しめたぞ魔法使い。あの男も下々の輩にしては面白い!!ふっふっふ、また会う時はもっと面白いことになるやもしれないな。今後が楽しみだわ、ふーはっはっは!!!」
ネガティブ思考に陥る衣玖とは対照的に、面白い玩具を見つけた子供のように天子は高らかに笑いながら天界へと戻っていった。