あべこべ幻想郷に落ちた命   作:てへぺろん

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彼の周りで起きるありふれた光景の平凡(?)な日常回。


それでは……


本編どうぞ!




彼の日常

 「霊夢さんって前々から思っていましたけど、ケイ君を私物化していますよね?それはいけないと思いますよ?霊夢さんのモノじゃないんですから……ケイ君は私のです!」

 

 「自分が同じ人里に暮らしているからって勝ち誇ってんじゃないわよ……この糞尿顔!

 

 「霊夢さんなんか脇を見せびらかして、それを見てしまった者の脳を犯す腋臭巫女のくせに!」

 

 

 博麗神社の一角で熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられていた。

 

 

 「腋臭なんかじゃない!慧吾私は腋臭じゃないよね?私の脇のにおいを嗅いでみてよ慧吾ならいい匂いって言ってくれるそうに決まっているそうじゃなかったらこんな脇なんかいらない早く私の体から切り離さないと慧吾に嫌われちゃう慧吾が私の元から離れてしまうそれは絶対ダメそんなのイヤ慧吾どこにも行かないで!!!

 

 

 慧吾の元にこの世の終わりのような表情で縋り付く。この場でもし「嫌い」と言ってしまったら霊夢は絶望して自らの命を絶ってしまうだろう。しかしこんなやり取りも繰り返して来たために対処法を知っている慧吾は優しく霊夢の頭を撫でた。すると霊夢も落ち着きを取り戻して猫のように顔を埋めて甘え始める。

 

 

 「霊夢大丈夫だぞ。お前は腋臭なんかじゃないからな。こら小鈴、かわいそうだから霊夢をいじめてやるな」

 

 「にゃ~ん♪」

 

 「うぐぐ……霊夢さんばっかりいい思いしているの腹立たしいです。ケイ君はいつも霊夢さんばかり相手にしているのは不公平ですよ」

 

 「この前一緒に買い物に行っただろ?」

 

 「この前はこの前、今は今なんです!」

 

 「はぁ……」

 

 

 ついついため息を吐いてしまう慧吾。鈴奈庵で小鈴と出会いそれから交流を持つようになった。慧吾は鈴奈庵にある本に興味があって寄ることが多々あった。そして初日に霊夢と小鈴の因縁が始まり、度々慧吾を巡っての争いを行うようになっていった。霊夢の独占欲が表立って現れるようになり、慧吾も魔理沙も初めの頃はドン引きした。しかし小鈴は霊夢から溢れ出るどす黒いオーラをものともせずに対抗していった数少ない強者であった。

 鈴奈庵に親にも内緒の秘蔵の品(エロ本)を子供の頃から嗜んでいた小鈴の性欲は霊夢の嫉妬のオーラに対抗できる程の力を身に付けていた。何を言っているのかわからないと思うが、ヤンデ霊夢に対抗できる存在が小鈴なのであるということだけ頭に入れて置いたらいいだろう。そしてこれが普通の光景となっている辺り、慧吾の周りは混沌としていると言えるだろう……魔理沙の存在が輝いて見えていると思われる。

 

 

 「ふん!嫌われるかもしれないと思うならそんな脇出し巫女装束なんか着なければいいんですよ。脇なんか見せびらかすような巫女装束を着ている人の気が知れませんね変態ですね」

 

 

 お前が言うなと思った慧吾……幼い頃からエロ本を隠し持っている小鈴に呆れた視線を送る。小鈴の方は今も慧吾に甘えている霊夢を睨んで鼻を鳴らて機嫌が良くなさそうだ。嫌味を言うのは小鈴も同じように霊夢に嫉妬しているからだ。決して霊夢のことが嫌いなわけではない。昔からいがみ合うことになった結果であるが……背後で霊香が霊夢と同じ巫女装束を着ているのでショックを受けていたことは誰にも気づかれなかった。そんな時に新たな訪問者が現れる……

 

 

 「永遠の若き17歳ここに推参♪愛しの慧吾君ゆかりんがあなたのハートを射止めに来たわ♪」

 

 「紫様は相変わらず登場の仕方も気色悪いですね尊敬しますよ……ぺっっ!」

 

 「藍はついてくるなって言ったでしょう邪魔なのよ!それに主人である私に唾吐いたわね!?」

 

 「なんのことだかわかりかねますね。私は慧吾殿に会いに来たのです。邪魔なのは紫様の存在自体の方ではないですか?」

 

 「本当に相変わらず口の悪い式ね!あんたなんか油揚げと間違えてガマガエルを食って食中毒になって死ね!」

 

 「紫様は便秘で出すモノも出せずにそのまま腹が耐えきれなくなって破裂して惨めに死んでください。しかしご安心ください紫様が死んだら私が賢者の後を継ぎますので」

 

 「私が死んでもあんたには賢者の座は渡さないわよ!」

 

 「寧ろ紫様は賢者などではありません。賢者(笑)が正解です」

 

 「なんですって!?もう怒ったわよ!今日こそその腐った性根を叩きなおしてあげるんだから!!」

 

 「ブーメランとはこのことですね。腐っているのは紫様の顔ですよ」

 

 「女狐がぁぁぁっ!!!ぶっ殺す!!!」

 

 

 ゴンッ!ゴンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あんたら醜い争いを見せるためにわざわざここに来たのかしら?」

 

 「「滅相もありません……」」

 

 

 紫と藍に霊香の鉄拳制裁が下された。タンコブを生やした二人は共に正座で説教を受ける羽目となった。この光景も何度も見ている。慧吾にとってこのやり取りも特別なことなど何も感じない。いつも通りの漫才を繰り広げる妖怪の賢者(笑)とその式は今日も元気である……そして実はこのお笑いコンビにもう一人新しく真面目で頼りになる子が現れた。

 

 

 「紫様、藍様大丈夫ですか……?」

 

 「やぁ橙、相変わらず苦労しているな」

 

 「どうも霊香さん、慧吾お兄さんも霊夢さんも小鈴さんもこんにちわ」

 

 

 丁重にお辞儀をするのは橙と言う小鈴と同じくらいの背丈の見た目は人間の子供変わらないが、帽子を被った茶髪のショートヘアーに猫耳と2本の尾っぽが彼女を妖怪であることを表している。藍の式神つまり式神の式神で紫はその上司に当たる。

 

 

 橙は紫さんや藍さんの唯一の良心だ。そして一番の苦労人……この場合は苦労妖怪か?どちらにせよ苦労しているのは間違いねぇんだ。そこんところ同情できてしまう……初めて会った時はビクビクしながら挨拶して俺にすら近づかず臆病な性格であった。橙もかわいいから他の男から嫌な顔をされたりして怖がっていたようだったが、優しく接していると次第に柔らかくなっていった。今ではお兄さんと呼ばれ心にグッと来るものがある……俺は決してロリコンではないが妹的存在がいるのは嬉しく思っていたりする。

 

 

 「……慧吾……なにを考えているの……まさか橙の方が私よりも良いの!?

 

 

 ギリッと唇を噛みしめて橙をもの凄い眼光で睨みつけると、その眼光に睨まれたら誰しもが生まれたての子ヤギのように足を震わせる……ヤンデ霊夢に睨まれている橙は今にもちびりそうに怯えていた。やはりこの人を視線で殺しせそうな眼光に耐えられる小鈴は只者ではない。

 

 

 「霊夢やめろ、橙が怖がっているだろうが……我が儘言うと一生相手にしてやらないぞ?」

 

 「え!?そ、それは嫌!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

 何度も懇願するように謝る霊夢の姿を見ると心が痛む……しかしあまりにも霊夢を甘やかし過ぎるとかえって霊夢のためにならないと心を鬼にしていた。

 

 

 ちょっと意地悪かもしれないが、強硬手段も辞さない。あまりにも甘えさせ過ぎると度が超えてしまうからこれは長年の経験がものを言う……こんなことに慣れてしまった俺も霊夢や小鈴のこと言えないな。まぁそれはおいといて構わない、いつものことだからな。橙は何か用件があるのだろうか霊夢を気にしている様子だ。霊夢が怖いのもあるだろうが、だいたいこう言った行動を橙が起こす時は何か話したい合図だ。ならば俺の取るべき行動は決まりだな。

 

 

 「橙、霊夢に何か用件があるんじゃないか?」

 

 「そ、そうなんです!実は()()が起こりまして……ひぃ!?」

 

 

 幻想郷で度々起こる通常でない異常な現象や状況のことを『異変』と呼ぶ。博麗の巫女は幻想郷のバランスを保つために『異変』を野放しにはできないため霊夢は異変解決へと乗り出さなければならない。しかしそれは慧吾とのしばしの別れを示す愚かな行為で、報告しに来た橙を射殺す勢いで睨みつける。慧吾との時間が少なくなってしまうため霊夢は『異変』を好き好んで仕出かす連中は許さない。

 

 

 「それで今度の異変はどんな感じなのよ。さっさと教えて橙」

 

 「にゃにゃあ……そ、それはですね……」

 

 

 イラつきを見せながら事の内容を橙は話していく……今回の異変は小規模の異変のようだが、博麗の巫女である以上解決せねばならない用件だった。そのことを橙は恐る恐る伝えている姿が健気に見えて霊夢が悪者に見えてしまう。霊夢自身は他人の視線など気にしている素振りもなく、それよりも慧吾との時間を奪ったまだ見ぬ異変の首謀者をどのように痛めつけるかあれこれ内心で考えていることを慧吾にはお見通しでこれから尊い犠牲となるであろう首謀者に対して心の中で合掌しておく。

 

 

 「ああもう!母さん私出かけて来るわ」

 

 「そうか、気をつけるのよ」

 

 「うん、所詮雑魚妖怪の集まりよ。それよりも……慧吾すぐに蛆虫共を血祭りにあげてくるから待っててね♪」

 

 「ほどほどにしておけよ?」

 

 「うん♪」

 

 

 慧吾に見送られて笑顔のまま空へと舞い上がり異変解決へと向かうのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待たせ慧吾♪」

 

 「早すぎだろ」

 

 

 異変解決に出発してから3分程度しか経っていないと言うのに慧吾の目の前には霊夢が笑みを浮かべて立っていた。カップラーメン一つ作っている間に異変を解決してしまうとかどんなんだよと思ったが、今の霊夢を阻むことのできる壁など存在しなかったということだけだ。しかしそんな霊夢でも出発する前と後では変わった個所があった。いつもの赤白の巫女装束が真っ赤に染まっていることだ。どこからどう見ても誰かの返り血で顔にも血が飛び散っていたが、それでも気にする様子もなく笑みを浮かべていた。粛清された返り血の持ち主がどうなったかなど容易に想像できてしまう。その結果、傍に居る橙はこの光景に怯えて慧吾の影に隠れてブルブルと震えている。

 

 

 あまりにも早い帰宅は今回ばかりのことではない。慧吾が訪れているのと訪れていないのとでは異変解決の速度に天と地ほどの差があり、霊夢のやる気も断然違いが生まれていた。一秒足りとも離れたくないと思う一心で血は流れた(一方的)が無事(?)異変を解決した。しかしそれ故に早く帰って来たのを不服に思う小鈴は鼻を鳴らして不満を表す。

 

 

 「ふん、もう帰って来たんですか……ゆっくりと異変解決を楽しんでいればいいものを」

 

 「慧吾と一緒にいる方が楽しめるからいいのよ」

 

 「私は霊夢さんがいると楽しめないのですけどね」

 

 「抜け駆けは許さないから」

 

 「それはこっちのセリフです!」

 

 「喧嘩している間にお茶でも貰おうかな」

 

 

 慣れた光景をスルーして居間にある茶菓子を摘まむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ついたぞ」

 

 「あ~あ、折角ケイ君と二人っきりの時間がこんなにも早く終わりを迎えるなんて……小鈴寂しい……」

 

 「結構長い時間二人っきりだっただろうが……早く離れてくれ歩きづらいんだ」

 

 

 人里へ帰るため博麗神社を後にし、道なき道を歩いて人里まで帰って来た慧吾と小鈴。二人とも人里で暮らしているために帰路も当然ながら同じであった。

 血染めの巫女装束から予備の巫女装束(全く同じ巫女服)に着替えた霊夢を交えて博麗神社でのんびりと時間を過ごそうとしたがそうはいかない。テーブルを囲うなら慧吾の両隣に誰が座るかの争いがあった。しかし当然ながらのように霊夢が紫と藍を下して隣を会得する。戦闘が不向きの小鈴も片側に座り、二人に挟まれながらくっつかれつつ他愛もない話で時間を潰し時間が経っていった。それぞれ帰路につく頃合いとなり、ボロボロになった藍と紫をスキマに強引に放り込んで律儀に別れの挨拶をして帰る橙は立派だなと慧吾は思いつつ見送り、慧吾と小鈴も人里へ帰ることに。

 ここからがまためんどくさいこの上ない……必然的に小鈴と帰ることになって二人っきりの状態になる。それを霊夢は毎度恨めしそうに輝きを失った瞳で睨みつける。親の霊香が居る為に下手なことはできないがいなければ闇討ちぐらいしてきそうな恐ろしさを感じてしまう……背中に視線を感じながら博麗神社を後にする。博麗神社が見えなくなり感じていた視線がなくなると小鈴はさっと近寄って来て慧吾の装備品に早変わりした。呪いの防具のように外せなくなった腕に抱き着いた小鈴を装備したまま無事に人里へと到着したのであった。

 

 

 名残惜しそうな腕に抱き着いた装備品である小鈴を取り外す(呪いは解除した)ブーブーと文句を吐くがいつも通りの事だから慧吾は華麗にスルーする。

 

 

 「小鈴、もう遅いから早く帰りな。親御さんが心配するだろ」

 

 「ええ~このままケイ君とプロレスごっこ(意味深)したかったのに……」

 

 「はいはい……一人でやっていてくれ」

 

 「むむむ……今日も一人で寂しく()()ことになるんですね……」

 

 「卑猥な発言やめろ」

 

 

 それを別れの挨拶として慧吾と小鈴は我が家へと足を踏み出した。おかしな挨拶だが、これも慧吾達にとって慣れ親しんだ挨拶なのだ。

 

 

 まったくあいつは外見はかわいいのにこの発言と来たものだ。慣れとは恐ろしいものでこの会話も今や別れの挨拶並みに定着している。知らぬ間に自然とそうなってしまっていた。そうなってしまったのも俺に個性豊かな友人が出来たことが原因だ。しかし後悔はしていないし、寧ろ今ではこれが俺の日常になっている。密かにこの日常を楽しんでいる自分がいるのは内緒だ。できればこの日常がいつまでも続きますようにと願うばかりだが……現実はそう甘くないんだよ……

 

 

 ポリポリと頭を掻きながら小さな不安を心の底へとしまい込んで親が待つ我が家の扉に手をかける……

 

 

 「おかえり慧吾」

 

 「ただいま御袋」

 

 「よっ!やっと帰って来たのか。また霊夢の奴か?」

 

 「ああ、毎度のことながら恨めしそうな瞳で見送られた。小鈴とはここまで一緒だった」

 

 「モテモテだな慧吾♪まぁそれよりも今日は慧音じゃなく私が作ったご飯だ。腹いっぱい食べろよ」

 

 「妹紅さんのご飯はうまいから楽しみだな」

 

 「それじゃ私のご飯がまずい言い方みたいじゃないか?母親である私の料理はもう食べたくないのか……?」

 

 

 妹紅の料理がうまいと言う慧吾の発言にちょっと嫉妬してしまう慧音。自分よりも妹紅が作った料理の方がいいのかと不安げに問いかける。

 

 

 「そんなことない、御袋の作る料理はうまい……息子の俺が言うんだ間違いないさ」

 

 「ふふ、そう言ってくれるか……ありがとう慧吾」

 

 

 息子の言葉に元気が湧いてきて笑顔になる。傍に居る妹紅も自然と笑顔になり、慧吾も頬が緩む。

 

 

 家に帰ると出迎えてくれる家族がいる。毎日子供相手で疲れても家では笑顔を絶やさない慧音とこうして時々泊まりに来るようになった妹紅と共に慧吾の日常が過ぎていく……この世界では不細工と扱われる彼女達も慧吾と出会って笑顔が増えていった。上白沢慧吾と言う一人の人物によって大きく人生が変わった者達も中にはいる……この幻想郷で度々起こる『異変』を通じて不細工と呼ばれる少女たちはあべこべ世界の概念に囚われることのない一つの希望()と出会って来た。

 

 

 近々語られるであろう異変の数々……幼い吸血鬼に亡霊やら月の姫様等々関わって来た。そのことを語るのはまた次の機会で語ろう……

 

 

 今は彼の日常をそっと見守っておこう……

 

 




読みにくいとの指摘があったので少々変えてみました。
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