あべこべ幻想郷に落ちた命   作:てへぺろん

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試行錯誤を繰り返して内容を見直したりしていて少し時間がかかってしまいましたが今年中に投稿出来ました。


あべこべ世界で過ごして十何年……彼にも新しい出会いが存在する……そんな回です。


それでは……


本編どうぞ!




壱章
こうもり主人に仕えるメイドさん


 つい先日妖怪の山と呼ばれる天狗達の縄張りに一筋の光が差した。人里からでもはっきりとその光が見え、人々が滅びの前触れかと思われ、慧吾もこの光を目撃しており異変であることを認識していた。それが何でもその光は外の世界から引っ越して来た『守矢神社』なる建物がそこに根付いたらしい。人里に住む一般人の慧吾がその情報を入手できたのはある天狗のおかげである。

 

 

 「それでですね慧吾さん、霊夢さんたら私をボコボコにしたのですよ?酷いと思いませんか!」

 

 

 たった今、慧吾と語らいでいるのは射命丸文と言う鴉天狗だ。以前に快晴の空に紅い霧がいきなり現れて幻想郷中を覆いつくそうとしたことがあった。その時は人里に居たため何が起こったのかわからなかった慧吾だったが親である慧音から異変だと告げられ納得し、霊夢と魔理沙が解決してくれることを祈りつつ待った。そして見事に紅い霧は無くなり異変は解決したすぐ後のことであった。人里に現れたのが鴉天狗の記者こと文であった。周りに色々と取材を申し出ていたが、女性ならまだしも文が男性に声をかければ避けられていたし、冷たい視線を向けられていた。それを見ていて不憫だと思った慧吾は親切心から声をかけた。文はいきなり男性から声をかけられてビクリと大変驚いた様子をしていたが、ジャーナリスト魂なのかすぐに営業スマイルを発揮した。しかしまた驚くことになる……男性であるはずの慧吾が文を蔑ろにしなかったことは当然だが、このあべこべ世界ではそうではない。

 

 

 不細工が損をする世界で女性と違い男性は価値が高い。同じ女性であっても美人と不細工とでは更に価値が大きく違い、人であっても妖怪であってもそれは変わらない。

 

 

 文は1000年以上前の頃から幻想郷に住んでいるが彼女は妖怪であるため見た目はピチピチの女性の姿をしている。当然ながら彼女も不細工に含まれる部類だった。特に黒のフリルの付いたミニスカートから見える足が肉付きが良く、余計に不細工を引き立たせているが、慧吾には刺激が強いものであった。しかしそれは慧吾のみであって他の男性からしてみれば醜い容姿を見せびらかしている行為にしか見えなかった。だから男性に取材をしようにも舌打ちをされたり、気持ち悪がられたりもした。不細工だから取材を断られることも多く精神的にも痛い思いを何度もしたが伊達に1000年以上生きてはいない。その程度で挫けていては記者を名乗ることなど文のプライドが許せなかった。例え彼氏いない歴=年齢の文であるが、そんな時に慧吾と出会い取材を駄目もとで申し出ると今までの男性の態度と対して優しく取材を受けてくれると了承してくれた。文は今までの苦労が報われたように心が浄化されてしまった。

 

 

 「退治(と言う名の虐殺)されなかっただけでも幸運だろ?って言うか今回の異変は天狗側も大変だったな」

 

 「そうなんですよ!いきなり現れたかと思ったら『守矢神社を信仰しろ!』などと言って来た時は何考えているんだと思いました。ですが私は記者なので軽率な思い込みをせずに色々と調べると守矢神社が抱えていた問題が判明したのです」

 

 「守矢神社?巫女さんがいるのか?」

 

 「はい、東風谷早苗と言う霊夢さんの2Pカラーの色をした巫女……本人は風祝(かぜはふり)と主張していますがね」

 

 

 文と関係を持つようになってからはこうして度々慧吾の元へと訪れている。男性では慧吾以外に相手をしてくれる者などいるわけもないため日々報われぬ取材をしては慧吾の元を訪れて心を癒していた。それに異変に関わらなければ入手することのできない情報が文からもたらされるので慧吾も拒むことはしないし、人としてそのような愚行は行わない。だが、幼少期の頃の小鈴に男性の隠し撮り写真を売っていた人物がこの文であったことを知った慧吾はそれ以降関わらないようにしようとした。しかしそのことに泣きついて謝って来たので二度と隠し撮りをしない約束を誓わせたことがあった。慧吾のおかげで世の中の男性を視姦の対象から少しは守れた結果にも繋がったとか。

 

 

 「霊夢にも同業者が現れたと言う事か」

 

 「どちらかと言えばライバルではないですか?」

 

 「ライバルポジションは魔理沙な気がするんだがな……」

 

 

 何気ない異変について会話しているとドアをノックする音が聞こえてきた。直接心に響くような優しいノック音だ。慧吾はこの音に聞き覚えがある。このような上品なノックの仕方は一人しかいない……

 

 

 「咲夜か?開いているぞ」

 

 

 スッとドアが開かれるとそこには日傘を差したメイドと小さな少女が入って来た。

 

 

 「ごきげんよう慧吾」

 

 「こんにちは慧吾様」

 

 「レミリアも一緒だったか。咲夜も元気そうだな」

 

 

 真っ赤な外装の建物である『紅魔館』の主である吸血鬼レミリア・スカーレットとその従者である十六夜咲夜、特に咲夜とは度々会っている……っと言うか向こうから会いに来ることが多い。だがレミリアも一緒とは珍しいと慧吾はこの時そう思った。

 吸血鬼であるため日光が天敵であるレミリアが人里しかも慧吾の自宅を訪れるのは珍しいのだ。吸血鬼と言う生き物はお肌がスベスベで柔らかそうなプルンとした唇に当然ながら整った顔が幼い子供の姿ながらも見る者に吐き気を与えてる。腐ったみかんが子供の姿をしているようである……そのことはレミリア自身もわかっており、人里を訪れればこそこそと陰口を叩かれるのは本人も自覚している。だから自らが人里を訪れることなどほとんどなく用事があるならば咲夜に伝えているはずである。その二人が一緒に訪れたとなると何かあると慧吾と文は思った。

 

 

 「あやや、お二人が一緒とは慧吾さんに何か用事ですか?」

 

 「ええ、今日はお嬢様とご一緒に慧吾様に御用があって来ました」

 

 「ふっふっふ……このレミリア・スカーレット自ら()()に来てやったんだからありがたく思いなさいな!」

 

 「()()に?」

 

 

 日傘を畳んだメイドがスッと慧吾に近づいて一枚の紙を渡す。

 

 

 その紙には紅魔館の主レミリア・スカーレット主催のパーティーの招待状であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで慧吾と私は明日紅魔館を訪れる予定だ。妹紅も当然来るだろ?」

 

 「なんだよ私の名前でも入っているのかよ?」

 

 「ああ、妹紅さんの名も入っている。俺の親は御袋だけじゃないからな」

 

 「へっ、なら仕方ねぇな。お子ちゃま吸血鬼主催のパーティーに参加してやるか!」

 

 

 帰宅した慧音は慧吾から昼間にあった出来事を伝えられた。そして受け取った招待状には上白沢家二人の名前と妹紅の名が記されていた。上白沢家ではないにせよ、招待状に自分の名前がちゃんと入っていたのを知ると妹紅は嬉しそうにしていた。しかし妹紅には気になることがある。

 

 

 「パーティーと言うと他の奴らも来るんだろ?誰が来るか知っているか?」

 

 「この場に居た文は招待されていないけど来るなあれは……目をリンリンと輝かせていたし」

 

 「その他は?」

 

 「他は……おそらく霊夢と小鈴は来る気がしてならない」

 

 「あの二人はなぁ……」

 

 

 呆れ顔を晒して一杯の味噌汁に口を付ける妹紅。あの二人の性格からしたら慧吾をパーティーに参加させて、お酒か睡眠薬を飲ませてそのままベッドINして既成事実を作り上げるのではないかと思ったりするだろう。レミリアに限ってそんなことをするわけもないのだが、この世界の女にとって男は全財産よりも貴重である。男とヤルか永遠に金持ちになり一生不自由なく暮らすことのできる生活が保障されるのとどちらがいいかと言われれば9割方の人物は迷わず男と答えるだろう。

 特に昔から付き合いのある霊夢と小鈴は慧吾にしか目が向かない。魔理沙もだが彼女ならば慧吾に迷惑がかかるからと言って自重することもあるが、ヤンデ霊夢はそんなことするわけもないし、慧吾限定だが清く正しい射命丸(嘘)のようにどこからともなく嗅ぎつけてやって来る。霊夢が参加するなら小鈴も邪魔するために参加すると決めつけてもいいだろう。しかしそれだけで二人が警戒する理由ではない……紅魔館にはたった一人だけ人間がいる。

 

 

 昼間レミリアと共に居たメイドの十六夜咲夜だ。

 彼女は紅魔館で唯一の人間で、メイド長を務めている。銀髪のボブカット、もみあげ辺りから三つ編みを結っており、年齢とは裏腹に凛々しい顔立ちと短いスカートから見える生足には傷一つなく、スラリとした体型をしていた。慧吾にとっては美しく見えるがこの世界では不細工に見られてしまう彼女もまた一人の女性である。異性である慧吾に興味を持つことも当然であり、とあることがきっかけで知り合い咲夜の主であるレミリアと紅魔館全体を巻き込んでの関係が結ばれることになった。そのことはまた話すが、咲夜も人間であるが結婚して子供を授かり温かい家庭を築く女の夢を一度諦めたが、慧吾のおかげで再びその夢に火がついたことは言うまでもない。

 人前では凛々しく「完全で瀟洒な従者」として振舞っているが、内心慧吾のことが気になっている様子である。実際に昼間レミリアと訪れた際にずっと慧吾を視線で追っていたし、人里に買い物しに来た時には毎度慧吾の元を訪れる程だ。彼女もまた幸せを掴みたいのだろう……恵まれない女であるならば誰だってそうだ。

 

 

 そしてそのことを霊夢と小鈴が知らないわけはない……

 

 

 「ゆっくり楽しめるかわからないな……」

 

 「そうだな妹紅の言う通りだな」

 

 

 様々な問題がある中で慧吾達はレミリア主催のパーティーを楽しめるのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇレミリア……慧音と妹紅はまだわかるけど……どうして私をここに招待しようとしなかったの?ねぇ……どうして?別に食べ物をせがみに来たわけじゃないのよ?慧吾を呼ぶなら未来のお嫁さんであるわたしを呼ばなかったのはおかしいわよね……ねぇ……どうして……?ネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテネェドウシテもしかしてレミリアは私が慧吾にふさわしくないと思っているわけそんな無いわよねレミリアは私の味方よね……レミリアそうよね?ソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネソウヨネ?

 

 「え、えっと……霊夢落ち着いてくれないかしら?ここはパーティー会場なのよ……だからそのどす黒いオーラを放つのは止めてくれない?」

 

 「私を招待しなかった理由を話してくれたら考えてあげる……

 

 

 紅魔館の外野パーティーでひときわ目立つ黒いオーラを身に纏っている巫女が小さな吸血鬼に絡んでいた。巫女の手には普段ならばお祓い棒を握りしめているはずだが、今に限っては鋭利な刃物が握りしめられていたのは錯覚なのではなかった。

 

 「レミリアさん、ケイ君のためを思ってやったことかもしれませんがそれはケイ君のためになりません。ケイ君は私が傍に居てあげないと寂しくてパーティーもろくに楽しめません。呼ぶのは霊夢さんではなくこの私を選ぶべきなのですが……何故魔理沙さんは堂々と招待状を持っているのか解せませんね。どうして私と霊夢さんは仲間外れにされたんですかねレミリアさん……それに魔理沙さんも私達に黙っていたとはどういうことでしょうかね?説明を要求します。ちゃんとした理由があるんでしょうね?私達が納得できるような理由があるに決まってますよね?私達は昔からの友達ですよねそうですよね魔理沙さ"あ"あ"ん"!?」

 

 「いやこれは……フランの遊び相手になった時にお礼としてもらったもので……慧吾が出席するとは知らなかったんだぜ」

 

 「過程の話はいいんです。最初は知らなかったとしても先ほどケイ君が出席すると知ったんですよね?それならばすぐに()()()に報告してくれればいいだけの話です。それなのに草むらから様子を窺っていましたが一向に報告しようとする意志が感じられませんでした。ずっとケイ君の傍にいて楽しそうにしていたではないですか……そこのところどうなんですかあ"あ"!?」

 

 「小鈴怖いって……ってかお前見ていたのかよ!?いつからだよ!!?」

 

 「ケイ君が慧音先生達と家を出たところからです」

 

 「自宅から慧吾に付きまとっていたのかよ!?ストーカーじゃねぇか!!」

 

 「断じて違います。追っかけです」

 

 

 そして反対側では小柄な少女が金髪の白黒娘に詰め寄っているのが見える……霊夢と小鈴だ。光を失った濁った瞳でレミリアを、笑顔だが目が笑っていない視線で魔理沙をそれぞれ追い詰めていた。

 

 

 パーティー開始早々問題が発生していた。話の流れからもわかるように招待状をもらうことがなかった(=招待されていない)霊夢と小鈴がパーティー会場に乱入して来た。慧吾の不安は的中してしまい、主催者であるレミリアと密かに招待状を手に入れていた魔理沙に詰め寄っている……傍から見たらほとんど言いがかりであるが、それをも寄せ付けない圧力が周りを制止させた。

 徐々に霊夢との距離が近づいていきレミリアの間近には刃物が、魔理沙には拳をコキコキと鳴らしながら迫っている。迫られた二人は顔を真っ青にして体がブルブルと震えるしかなかった……このままだと二人に危害が及ぶのは間違いない。そんな時、二人の姿が一瞬にして消えた。消えてしまった光景にその場に居た全員が驚く様子を見せることはなかった。何故ならそんな芸当ができる人物がこの場に居るのをみんな知っていたからだ。

 

 

 「咲夜さん邪魔しないでくれませんか?今は魔理沙さんと話していたんですから」

 

 「咲夜どきなさい……レミリアと大事な話をしていたところなのよ

 

 「申し訳ありませんがお嬢様を危険に晒すことはできません。それに魔理沙も御客人なので手荒な扱いはお控えください」

 

 

 レミリアと魔理沙を魔の手から救ってくれたのは咲夜であった。彼女には『時間を操る程度の能力』で自由に時間を止めることができるため、時が止まっている間に二人を救出したのだ。

 だがまだ話は終わっていないと霊夢と小鈴は二人を庇う咲夜ににじり寄って行く……鋭い刃物を持った霊夢が近づいても咲夜は表情一つ変えることなく主人の壁となる姿は美しさを感じてしまう(慧吾の視点のみ)

 

 

 このままではパーティーが血祭りパーティーに変貌してしまいそうな雰囲気を漂わせていた。

 

 

 「おい、霊夢も小鈴もやめとけ。折角のパーティーが台無しになるだろうが……もしそうなったら一生口を聞いてやんねぇぞ?」

 

 「えっ!?そ、それはイヤ!お願いそれはイヤだ慧吾とお話できなくなるなんて耐えられないごめんなさい謝るから許してごめんなさいごめんなさいごめんなさい慧吾捨てないで!!!

 

 「NоOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!

 

 

 周りに二人の悲鳴がこだまする。女の子二人にこんな悲鳴を挙げさせるなど外道の行いだがこうでもしない限り鎮圧するのは骨が折れてしまうからだ。愛しい慧吾に拒絶されたらどれほど苦しいことか……そのことを理解できる者は霊夢と小鈴に魔理沙……そしてもう一人……

 

 

 「……」

 

 

 表情を一つを動かさずに拳を握りしめていた咲夜であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あっ!慧吾お兄ちゃん!」

 

 「フランいい子にしていたか?」

 

 「うん!」

 

 

 慧吾を見つけると目を輝かせて走り寄って来たのはレミリアの妹のフランドール・スカーレットだ。見た目は幼い人間の子供と相違ないが彼女も姉であるレミリアと同じ吸血鬼である。姉に負けず劣らずの容姿を兼ね備えた元気いっぱいの女の子だが慧吾よりも当然年上で、それなのに慧吾を『お兄ちゃん』呼ばわりするのは慧吾が慕われている証拠である。本人も『お兄ちゃん』と呼ばれるのはくすぐったいが、悪い気持ちにはなれず寧ろ邪な心が浄化されるような気がしていた。

 

 

 フランはとある理由で最近まで外に出たことすらなく箱入り娘だった。そのために自分が不細工の部類に入っているなどあまり理解していない様子で無邪気な子供そのものだった。俺もそこのところ気にすることなく接することができるため仲は兄妹みたいな関係で何か良い……無垢で笑顔が素敵で可愛らしいのに、この世界で生きる男達は損をしているな。その分、俺が得するから結果は良いんだけどな♪

 

 

 「そうか、いい子にしていたか。なら褒美に撫でてやるぞ」

 

 

 慧吾の手がフランの頭に触れ優しく撫でてやる。そうするとフランは「えへへ」と声を漏らし大変嬉しそうな笑顔を見せて来た。その笑顔はフランが幸せであることの証拠であった。遠くの席で赤と白の巫女服を着た少女が光を失った瞳でこちらをジッと睨んでいたり、小柄で鈴の髪留めをした少女がピキピキと音を立て、手に持った食器にひびが入っていく光景を見てしまったがそれはスルーした。構っているとそれだけで一日が過ぎてしまい、パーティーを楽しむことができなくなってしまう……そんなことになるのは慧吾も嫌なのだ。

 

 

 「慧吾さん来てくれたんですね!」

 

 「美鈴も元気にしていたか?」

 

 「はい勿論です!昨日もただ昼寝をしていただけで咲夜さんにナイフをもらいました(物理)」

 

 「昼寝していたら門番の意味ないだろ……」

 

 「大丈夫ですよ。やる時はやりますので!……なんなら一発()()()()()()

 

 

 中国風彼女の名は紅美鈴と言い、紅魔館の門番をしている。髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアーで妖怪である。何の妖怪であるかはわからないが、身長は高くスラリとした体に出るところは出ている……特に胸の辺りが目立っている。モデルと言われても違和感がない程に慧吾からしてみれば美人だがこの世界からしてみれば不細工なのである。しかしこう見えても彼女は武道の達人であり門番には相応しい……はずだが、居眠りが多くその隙に紅魔館に侵入する白黒魔法使いが居るとか……門番とは一体なんなんだろうかと思わせる女性である。

 

 

 そんな美鈴が最後に慧吾の耳元で呟いた言葉にどれほどの周りの人物が気づけただろうか。すぐ傍にいるフランですら聞こえていない様子……慧吾にしか聞こえないような小さい声量で呟いた言葉は誘いだった。その言葉だけが妙に色っぽく感じとれてしまい、美鈴が持つ大人の魅力が漂って来る。霊夢達には無い大人の色気に体がビンビンと反応してしまいそうだった……

 

 

 「慧吾様に妹様、お飲み物をご用意いたしました」

 

 「あれ?咲夜、美鈴はどこ行っちゃったの?」

 

 「おそらくトイレでしょう。それよりもどうぞジュースです」

 

 「やったー!」

 

 「慧吾様もどうぞ」

 

 「お、おう……」

 

 

 何故俺は歯切れが悪いのか……それはつい先ほどまで俺に誘惑の言葉をかけていた美鈴が突如として消えて、目の前に咲夜がいたからだ。俺はそれで全てを察した……美鈴は今頃どこかで寝ている(意味深)ことだろう。フランは何も知らずにのびのびジュースを飲んでいるし、咲夜は何事もなかったように対応しているからこれがまた恐ろしい……紅魔館は彼女中心で回っていると言っても過言ではない。実際に財布のひもを握っているのは咲夜らしいしな。彼女を怒らせてはいけないと改めて実感させられてしまった。しかし咲夜がどうやって美鈴を連れ出したのか……咲夜の能力で時を止めてその間に美鈴は連れていかれてしまったようだ。きっと毎度のことながら、頭にナイフが刺さっているだろう……そして俺はふっとこの場にいない連中のことを気に掛けた。

 

 

 「そう言えばあの図書館組はどうした?」

 

 「パチュリー様は外でのパーティーには興味がない、小悪魔はそのお供よ」

 

 

 この場にいる人物以外にもいるのだが、今はいないらしいな。引きこもりの魔法使いに悪魔っ子がまだこの紅魔館にいるのだ。彼女達には後で挨拶するとして……咲夜はカッコイイ女の人だ。少し俺よりも年上でキリっとしており背が高く何でもこなす完璧メイド長なのだ。まさに高嶺の花で俺には勿体なさすぎる人だ。この咲夜と出会ったのは霊夢達とは違い最近のことだったよなぁ……

 

 

 「どうかなされましたか?」

 

 

 咲夜が慧吾を覗き込む。フワッと髪がなびくと優しく甘い香りが漂って来てドキリと心臓が高鳴るのを感じた。

 

 

 「い、いや……ちょっと咲夜と出会った時のことを思い出していただけだ」

 

 「ああ……あの時のことですね……」

 

 

 照れ隠しで言ったことだったが、咲夜は空を見つめ何かを思い出しているみたいだった……

 

 

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 彼との出会いは本当に偶然だった……いえ、必然だったわ。

 

 

 お嬢様が引き起こした異変も霊夢と魔理沙に阻止されてから数週間後のことだった。私もこの幻想郷に慣れ始めたその頃に急にお嬢様の命で人里へと買い物に出かけた。その時のお嬢様がやけに私のことを注視していたのを憶えています……もしかしたらお嬢様は運命が見えていたのかもしれません。後で私が聞いてもはぐらかされてしまいましたし、結果的に彼と出会うことが出来たのですから……

 

 

 その日、咲夜はレミリアの命令でお使いに出かけていた。人里へ買い物は用事がある時に向かうのはいつも咲夜と決まっている。彼女は紅魔館で唯一の人間で人里へ入っても警戒されることはないし、凛とした態度で周りの者を寄せ付けない……寧ろ近寄りたくはないだろう。彼女もまた不細工であるためにすれ違い様に舌打ちされることなど珍しくもないことだ。しかし彼女は平然としていた……っと言うよりも慣れてしまったからだ。良いも悪くも周りから陰口を言われ続けたその結果「受け入れてしまおう」「本当の事だから仕方ない」と割り切ってしまったし、彼女と接しても悪口を言う事なく黙っていてくれる人も中にはいることがせめてもの救いである。言われたとしても本当なのだから言い返せない。自分にはもう異性と一緒に食事をするほか結婚して子供を授かるなどもう夢物語である……そう決めつけていたほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い物を済ませた咲夜は日が暮れる前に紅魔館へと帰らなければならない。待っている吸血鬼姉妹、居眠り門番、引きこもりの魔法使い&悪魔娘にその他諸々の食事の用意しなければならない。咲夜以外にも妖精メイドがいるが心もとないで咲夜がメイド長として中心に動いており、彼女は大忙しである。今回の買い物も少々時間を取られてしまい、急いで購入したためにちゃんと買い忘れがないかを確認していた。その時にうっかりハンカチを落としたことに咲夜は気づくことはなく……

 

 

 「足りないものは……ないわね。これでお嬢様も妹様もお喜びに……」

 

 

 確認し終わると早々と足を進ませてそのまま人里から出て行こうとした……その時だったのだ。運命に導かれるように出会いが待っていた。

 

 

 「そこのあんた、落としたぞ」

 

 「えっ?」

 

 

 その声は明らかに男性の声だった。しかし自分なんかに声をかけるわけはない……そう思ったが気になり振り返ってみると……

 

 

 「はいハンカチ」

 

 「……あっ」

 

 

 咲夜の諦めていた青春の花が開花した瞬間だった……

 

 

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