潮風に舞う桜の誓い   作:SUPA

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 はじめまして、今回が初投稿となります。自己解釈などがありますが、温かい目で見ていただければありがたいです。


プロローグ
盲目の青年と忠実なる少女


ーーー江ノ島鎮守府。

 

多くの軍服を着た人間達が歩いている広い廊下を、白い軍服を羽織った小柄な少女が歩いていた。

揺れる長い銀髪を靡かせ、その少女に気付いた軍人達は進める足を止め、一様に横に逸れて道を開ける。

少女はその廊下の真ん中を平然かつ堂々と歩いて行く。

一見して異様な光景ではあるが、ここ江ノ島鎮守府では毎日見る普通の光景である。

「なあ……何で艦娘に道を開けるんだ?」

恐らく配属されたばかりなのであろう一人の軍人が、この異様な光景に流されるまま、呆然としながら隣に立っている軍人に尋ねる。

「ん?あぁ……。お前は、ここに来たばっかだから、知らないのか。ほら、数年前に艦娘も俺達と同じ人間として扱う通達が来たろ?」

尋ねられた軍人が説明を始めると、配属されたばかりの軍人がこくりと頷いた。

艦娘は【兵器】である前に、人間と同じように感情を持ち合わせている。

【兵器】としてではなく、人間として接する事によって、連携を密にするという意味合いも兼ねており、正式に定められた規則である。

「大本営に所属する一部の艦娘に、軍の階級を与える事になっただろ?そしてあの方がその一人、『駆逐艦』響少佐だ」

「しかし、中佐以上の方々も同じように道を開けてるぞ?」

「そりゃ…まぁ、あの『桜吹雪』に所属する艦娘だから当然だろ。普通の艦娘とは別格の扱いをされる。その中でも、響少佐はあの波切中将の秘書艦だし、有事の際の代理を努める程だ。表向きは少佐でも実際は中将と同等の権限を持ってるらしいからな」

『桜吹雪』。

大日本帝国海軍を支える機関であり、構成人数等は極秘扱いとされている。

そのため、大日本帝国海軍においても、ほんのひと握りの者達にしか存在が明かされていない。

「中将と同等……か」

そう呆然と呟く軍人の目の前を響が通り過ぎる瞬間、彼女の胸元で輝く桜の花弁を型どった桃色の階級章が軍人の目に映り、その美しさに息を呑む。

しかし、そんな軍人など気にも止めずに響は廊下の奥にある大きな扉の前へと到着すると、ノックもせずに扉を開いて中へと入っていった。

 

ーーー江ノ島鎮守府司令室。

「やあ、おかえり響」

響が扉を閉めると、部屋の奥の椅子に座っていた黒髪青年が、後ろの窓を向いたまま優しい声で言った。

「レ級はどうだった?」

「かなり弱っていたから、苦戦する事は無かった。ただ、あれほど深手を負って、よくあの包囲網を抜け出したものだね」 

青年の言葉に響がそう返すと、青年は一度、深い溜め息を吐いてから響の方を向いた。

青年は、物静かな顔立ちをしており、仏のような雰囲気を放っていた。

「舞鶴の一件を見ていた菊月の報告によれば、今回のレ級に深手を負わせたのは艦娘ではなく、一人の人間だそうだ。そして…その人間はレ級をわざと逃したように見えたとも言っていた」

青年の言葉に、響は思わず口を噤んだが、言葉を続ける。

「レ級と渡り合えるのは、艦娘でも限られているのに……それは本当に人間なのかい?」

響がそう尋ねた理由。

それは戦艦レ級が、どのような存在か知っているからだ。

深海棲艦の中でも、化け物と揶揄される。

にわかに信じ難い事だ。

「さあ?どちらでも構わないさ。私にとって重要なのは…この国にとって敵か、そうでないかだけ。その人物がどんな人間であれ、この国に仇なす存在というのなら…」

青年は、微妙に視点が合わない瞳を響に向けた。

 

「消すだけだ」

 

優しい口調のまま静かに告げた青年から感じた一瞬の殺意。

それは、レ級や姫級などと何度も戦ってきた歴戦の艦娘である響ですら恐怖を感じるものだった。

「まぁ、一応その人物の事を調べたほうがいいだろうね。響、先生に電話を繋いでくれるかい?」

青年がそう言って受話器を取ると、響は静かに頷いて電話のダイヤルを回した。

「もしもし……大和かい?綾人だけど、先生はいるかい?」

待つこと、数秒。

先生が電話に応対すると、綾人は言葉を続ける。

「どうも、綾人です。はい、今回の件は有難う御座いました。先生が色々と手を回してくれたおかげで、スムーズに事が進みました」

 

「…はい、予定通り戦艦レ級の討伐は響一人で…はい、目撃者はいません。大きな被害にならずに済んで良かったと思います」

 

「…ええ。彼女にも尋ねましたが、やはり別の勢力のようです」

 

「ところで、ご相談が…実は佐世保にいる、例の人物なのですが…はい、彼です。そこで、こちらから人を派遣しようかと…。はい、あの人にお願いしようかと…」

 

「有難う御座います。それではまた…」

 

「有本元帥殿……」

青年は、電話の受話器を置く。

 

彼の名は、波切綾人。

大日本帝国海軍において、【守護神】の異名を持ち、桜吹雪に所属する艦娘を束ねる提督である。

 

綾人は響に指示を出して、また他の場所に連絡を取るのだった。




読んで頂きありがとうございます。これから不定期で投稿していきますので、よろしくおねがいします。
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