fate/stellaris 【完結】   作:宇宙きのこ

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型月世界をSF的な視点から書いて見たかったので書きました。


発見

【未知なる叡智を求めて】

 

 

 

我々の帝国は繁栄を極めた。

暗黒物質、エネルギーを支配し、大いなるシュラウドの謎も解き明かした。

そればかりか、全銀河においても類を見ないであろう偉大にして巨大な建造物を幾つも作り上げた。

 

 

だが足りない。この程度では我々は満足しない。

停滞とは衰退であり、それは死に至る病なのだ。

我々は没落しない、我らはかのものと同じような怠惰に満ちた生に堕ちない。

 

 

 

宇宙には文字通り光の数だけ星があり、その一つ一つに可能性は眠っている。

何処かにあるはずだ、我らを更なる高みへと至らせる叡智が。

理論上存在しえる、シュラウドさえも超えた大いなる座へと至る鍵を探すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

途方もなく巨大な物体が宇宙の闇夜を切り裂きながら光を超えた速度で進んでいる。

ソレが動くだけで天文単位で空間に振動が走り、星々が震撼する。

ギィィィンという甲高い波を発しながらソレは光速など遥か過去に置き去り飛翔していた。

 

 

完全に管理された重力操作の技術により本来起こりうる星系範囲規模での重力変動は抑え込まれ星々の海を支配者の如く、この馬鹿げたほどに巨大で狂気的な艦船は進んでいる。

いや、これは「船」という括りにはもはや収まり切らない。

 

 

 

要塞でもないし、ましてや移民船などという落ちぶれた者たちの棺桶でもない。

これは……星……「星系」だった。

信じられないかもしれないが、これは複数の星系を文字通り物理的に混ぜ合わせて作り出された人工物だった。

 

 

 

メインリアクターとして丸ごと放り込まれたのはO型恒星である。

直系数億キロという規模の恒星は帝国の偉大なる技術力に覆われた状態で強制的に圧縮され、たった10万キロ程度にまで押しつぶされ、更に異次元の技術によって「種火」とされていた。

いうなれば巨大な山火事を起こすための最初の一本目のマッチである。

 

 

 

加工された恒星という空前絶後の点火装置を元に内部に形成されているのはあらゆる宇宙のあらゆる法則を破綻させる特異点であった。

第18級時空特異点を形成し、内部では無数の相転移が完全に制御された状態で発生し続けている。

そこから供給される次元違いのエネルギーはこの星系全体に過剰なほどに行き渡らされていた。

 

 

捕らわれた恒星を覆うのは複数の惑星だ。

それぞれが直系1万5000キロほどの大きさの固形型惑星が7個、更にはそれらを連結させるための補助として3000キロ程度の月を13個。

それらがメインリアクターの周りに無造作に連結させられていた。

 

 

 

5次元工学という人智を超えた哲学によってそれらは重力崩壊もせず、互いに干渉することもなく纏め上げられていた。

ステラー級・星系戦闘艦。それがこの星系の名前であった。建造において無造作に星系複数を食いつぶした怪物である。

 

 

 

そんな怪物染みた巨船が、その脅威を存分に振るおうとしていた。

惑星サイズの超巨大演算装置がステラー級の脅威となる対象を認識、解析し最適解を導き出す。

内部に格納された造船施設に火がともり、護衛として展開していた艦隊を更に更に精強に補充する。

 

 

 

敵性存在を感知。

情報収集続行。

造船施設及び全武装稼働。

 

 

 

幾多の銀河を超え、宇宙を超え、シュラウドの導きによって天の川銀河にたどり着いた怪物はこの世界においても戦いという概念からは逃れられなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【文明の蒐集者】

 

 

その存在に気が付いたのは特異点を超え、この次元へと侵入して直ぐだった。

ステラー級に搭載されていたセンサーはすぐにその存在を捕捉することができた。

余りに異質なエネルギー反応、複数の種類の違うエネルギーが入り混じり、反発しあいながらも動き続けている異常な存在。

 

 

セントリーアレイが観測したソレの形状はまるで涙する瞳のようだった。

小衛星サイズの巨大な、未知の船である。

それも一つではなく、数百といる。

まるで外界からの来訪者を待ち構えているように、それらはステラー級へと群がり始めていた。

 

 

スラスターの類は存在せず、どうやらそれらは空間の物理法則を書き換えて推進力を得ているようだ。

 

 

現存する全ての技術を用いた通信は全てが無意味に終わった。

返信はなく、代わりに送られたのは膨大なエネルギー出力の上昇……戦闘態勢に入ったという事実だけ。

 

 

 

スキャンの結果、それは複数の小舟を内包した存在であることが判明した。

サイオニックな視点で見れば、それらには多種多様な種族の生体エネルギーがたっぷりと保存されている。

恐らくだが、これらは未知の文明が作り出した一種の蒐集装置なのだろう。

 

 

何も珍しいことはない。

優れた存在が劣った存在を滅ぼし、見どころのある“美味い”部分だけ奪い去るのはそう珍しいことではないからだ。

彼らの蒐集品を頂戴するとしようか、と誰かが言った。

 

 

 

 

戦術分析・当該敵対存在及び創造文明の予想値算出。

 

 

 

敵勢存在 暫定名称「コレクター」予想数値算出完了。

 

 

艦隊戦力 現状 劣等 現在確認できた限りではコレクターの戦力は我々と比較して劣等である。

 

技術段階 暫定予想中 現状 劣等 同上。

 

経済数値 予想不可能

 

 

 

最終通達。

サイオニック・リンクによる通信接続を試行。降伏勧告を行います。

 

 

 

ステラー級から放出されたサイオニック・リンクがコレクターの艦隊へと通信を繋げようとしたときにソレは起こった。

けたたましく響く警告音。コレクターの艦隊の内側に存在するナニカは、伸ばされた念力による精神接続を触媒とし、ステラー級の、正確にはソレを運用する乗組員へと浸食攻撃を試みたのだ。

一気に流し込まれる凄まじい量の汚染ミーム、それは今まで彼らが蒐集してきた夥しい数の星の悲鳴。

 

 

 

数百億、いや、数兆、数京にも及ぶ生物種の断末魔とお前も我々に加われという地獄からの呼び声が濁流の様に注がれる。

 

 

悲鳴が溢れ、苦痛と絶望の声が漏れ出るが、こういった攻撃に対する対処など、彼らが物質や法則による支配を超越した時点で検討されつくされている。

演算装置は淡々と過去の事例を参考にし、今起きている現象を分析しながら自らの札を切っていく。

 

 

リンク切断。

ファイアー・ウォール展開。

バックアップ起動。

防御プロトコル「ゴースト・エコー」を開始。

 

 

不可視の壁により浸食は食い止められ、残留した浸食箇所は速やかに修復、または隔離、もしくは物理的にパージが行われる。

お返しと言わんばかりにカウンターのウィルス・ミームがコレクターたちへと送り込まれれば、甲高い女性の様な悲鳴が虚空を揺らした。

流し込まれた膨大な自壊/自殺/自滅ミームは速やかに効力を発揮したらしくコレクターの艦隊の一部が砕け、爆散を開始していく。

 

 

 

 

 

コレクターの戦闘能力数値上昇修正。最適な攻撃を算出完了、実行。

製造及び起動が完了した艦隊がステラー級から次々と発艦し、この途方もなく巨大な母船の周囲をまるで虫の群れの如き規模で飛び交い、キラキラとしたイルミネーションを宇宙の闇へと付け加えた。

 

原始文明でよくみられる武器───「弓」にも似た形状をした小型のエスコート級は小型という名前に反する様に、全高2キロはある。

 

 

それらに取り囲まれた戦闘艦も順次発進され、後詰として巨神級とも称される一隻で星系を支配さえ可能な怪物までが展開された。

 

 

 

星系戦闘艦の内側に展開される特異点がその規模を膨らませていく。

戦闘状態へと移行したソレは第20級にまで規模を増大させた特異点である。

彼らの元いた世界で最もよく行われた挨拶であるタキオン・ランスの一斉掃射から始まるコンタクトはここでも変わらない。

 

 

まずは様子見として今なお増殖を続けるエスコート艦隊の洗礼が始まる。

「弓」の上下の淵が一瞬だけ瞬いたと思えば、青白い「槍」が秒速数十という欠伸の出るような遅さで吹き荒れた。

小さな衛星程度なら容易く球体から輪っかへと変貌させられる規模のエネルギーが湯水の如く放出され、一斉にコレクター艦隊へと突き刺さらんと迫った。

 

 

 

青白い光の「槍」は超光速で飛翔し、一瞬で星系複数分の距離を詰め、当然の様に展開された防御壁によって阻まれる。

十、二十と防がれるが、やがては彼らの張る「膜」が撓み始め、一部だけではあるが、小さな穴が開き始めた。

もちろんコレクターの艦隊もただで攻撃を受け続けているわけではない。

 

 

彼らには彼らの戦い方がある。

既にコレクターの艦隊は眼前……数十万キロほど離れた位置に座するステラー級を中心とした艦隊を敵だと認識していた。

同時にかつてない程に得難い、貴重で重要な蒐集物になるということも。

 

 

数百の船が同時に戦闘態勢に入る。今まで蒐集した品を全てここで使ってもいいという気概さえそこにはあった。

 

 

 

彼らの展開したシールドは守る為のものではない。元よりこの船に直接戦闘能力は皆無である。

こういった周囲に「餌」がなく、なおかつ戦闘になった場合、効率的に食事を行うための蜘蛛の糸のようなものだ。

防御膜に触れたエネルギーが瞬時に彼らの活力へと変化し、それらは圧縮された後に内部に格納した尖兵たちへと注ぎ込まれる。

 

 

子宮とも、四次元を立体化させたキューブとも見える摩訶不思議な物体が発光し、休眠状態であった尖兵たちが目を覚ました。

 

 

動き出したのは巨人たちだった。

それらはガイア型惑星と呼ばれる大気を保持するだけの重力をもち、少なくとも飲める程度の温度の水や、奇跡的なバランスで保った酸素などを所有する星によくみられるヒューマン種に似ている姿をしていた。

即ち手足があり、胴体があり、頭がある。そしてある程度の自我があり、決して覆せない命令がある。

 

 

 

彼らへの命令はとても単純である。

 

 

殺せ。

壊せ。

奪え。

集めろ。

 

 

 

空間に漂う熱量が減少する。

この世の絶対数が消され続ける。

どのような形であれ、均一化され減る事はありえないはずの世界が消えている。

 

 

真っ白な巨人たちが一挙手一動作をするたびに、この宇宙の大きさはなくなり続けていた。

複数の銀河にまたがる文明らを抹殺してなお余りあるだけの戦力がここにはあり、それらがたった一つの星系へと向けられている。

 

 

 

ほぉ、とステラー級に宿る意思たちは観測データを見て頷いた。

このような存在を前にしていても、彼らの本質は探究者であり、興味深い存在を目にすれば思考は何よりも冷たくなる。

だが、だがしかし、確かに珍しいが……こういった手合いを見るのは初めてでもなかった。

 

 

次元、概念、物質を破壊吸収、同化し強大化していく戦闘兵器?

そんなもの、幾つも葬ってきた。

 

 

 

データ参照。

強力なサイオニックを検出。

及び次元の浸食、空間の欠落を確認。

タキオン・ランスの吸収を確認。

 

 

 

類似存在データバンク検索。該当。

アンビデン種、アベレント種、ベヘメント種に類似。

 

 

戦術修正。脅威度上方修正。

ステラー級、損傷63%までは許容。

武装変更、小型兵装は全て換装。Xクラス、Tクラス武装を主戦力とし、最大火力の投射を実行。

 

 

 

承認。

 

 

 

ロック解除、ステラー級主砲起動準備。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【同族嫌悪】

 

 

 

戦いの始まりは宇宙が引きちぎられる悲鳴から始まった

左右に一門ずつ、中央に一門。惑星を丸ごと砲口へと作り替えて完成した狂気の産物は口径2万キロという想像を絶するサイズを誇る。

 

第20級時空特異点により生成される膨大なヒッグス場が完全に制御された相転移を起こし、疑似的なインフレーションを特異点反応炉の中で繰り返した。

 

 

無限に加速し巨大化する「真空の泡」はこの天の川銀河の保持する全てのエネルギー総量を鼻で笑うだけの桁をたたき出し、その力を惑星を連結して作り出された砲塔へと流し込む。

 

あいさつ代わりに放たれたステラー級の主砲は時空の基礎構造を貫き、平均的な恒星2000億個が50億年かけて放出するエネルギーをコレクターの艦隊に撃ち込んだ。

もはや色さえなく、世界がどのような形でこれを表現すればいいか判断が出来ない膨大な「力」の流出は超光速で高次元をねじ切りながら突き進み、その残影は真っ白な尾の様に見えた。

 

 

 

音はなかった。

ただ、明らかにこの世界の最も根底にある何かが揺さぶられる振動と、時間と空間が崩れ、漏れ出たエネルギーの余波がコレクターたちを過去、未来、現在で同時に消滅させ続ける特異点が生成。

サイオニック技術により「滅ぼす」という明確な方向性を与えられた主砲のエネルギーは文字通り一種のエネルギー生命体と化し、あらゆる可能性の中で永遠にコレクターを貪り続ける。

 

 

今にもパーセク単位にまで膨らまんとする漆黒の特異点の中では無限の滅びがあった。

超速で素粒子単位にまで分解消滅させようと蠢くエネルギーはあらゆる概念的、因果的、物理的、法則的な終焉をコレクターらに賜している。

 

 

 

 

だが、彼らもまたこの銀河の覇者である。

数万もの文明を滅ぼしつくし、幾つもの技術を接収した巨人たちはとてつもなくあきらめが悪い。

母船である遊星と尖兵たる巨人たちは素粒子より小さく分解し、それよりも細かく、この宇宙から消滅し続けているというのに、未だに生存と勝利を諦めていない。

 

 

 

むしろこちらの方が好都合であると判断し、彼らは「結合」を開始した。

元より彼らの計算ではばらけた状態では幾ら尖兵を送ろうと勝機は薄かったのだから。

粒子が結合し、分子となり、それらは更に更にとくっつきあい細胞への回帰へ成功する。

もちろん全てではない、むしろ全体の殆どは膨大な押し付けられた「死」によって無へと帰ってしまったが、その分残された細胞らはとてつもない強靭さを得ることに成功した。

 

 

彼らは細胞単位でエネルギーを吸収する。

許容量を遥かに超えるだけの力を取り込んだ細胞は幾度も幾度も変異を繰り返し、最終的には癌化するがそれさえも気には留めなかった。

そして十分なだけの活力をため込んだ癌細胞らは互いにくっつきあい、やがては一体の途方もなく巨大な人型へと変貌を遂げる。

 

 

 

惑星サイズの白い巨人だ。

ヒューマノイド種の女性に近しい姿を取っているそれはこの銀河に配備されていたコレクター全ての集合体であり、今や完全な一つ、即ち完璧なる一へと至っていた。

破滅の女神と称しても許されるであろう存在は、虚空へと手を伸ばすと自らを滅し続ける特異点の境界線を引きちぎり、通常次元へとその巨躯を復帰させ、ステラー級と相対した。

 

 

 

 

ぎょろりと巨人は星系戦闘艦を、正確にはその内部に宿る「彼ら」を睨みつける。

肉体という領域を超過し、今や意思の時代に指を届かせかけている別次元からの来訪者を。

この存在は彼女が、彼女たちを作り上げた存在達が望んでやまない存在であった。

 

 

 

物質の支配を超え、時空間を超え、因果を超え、やがては意思のみで全てを支配する認識の世界、新たな神へと至る道、それが彼らの創造主の求める理想であった。

至高の域に至る為に、その因子を集めるための収集装置が彼らであった。

星々を観測し蒐集する衛星も、それらを刈り取る巨人も、全ては自らの糧を求めるだけの作業でしかない。

 

 

 

そうだ、ある意味では「彼ら」と巨人のルーツは全く同じ───偉大なる域を求める探究者なのだ。

 

 

 

故に、この衝突は致し方ないものである。

なぜならば、至高の御座は一つしかなく、譲り合うつもりも毛頭ない以上、食い合いは起こるべくして起こるのだ。

 

 

 

 

 

 

【シュラウドの徒】

 

 

天の川銀河において、史上類を見ない規模の戦いが巻き起こっていた。

一つ、また一つとエスコート艦隊が落とされる。

巨人は全身より青紫色の光を放ちエスコート艦隊を叩き落し、削り取った空間を十万キロ程度の剣として振るい戦闘艦を両断、はたまた周囲の空間を汚染しながら着実にステラー級へと迫る。

 

 

 

 

 

 

青白い光が一つさく裂するたびに一つ一つが原始文明が数百万年かけても消費しきれない莫大なエネルギーが発散し、宇宙の温度を僅かに上げた。

膨大な量のタキオンランス、ダークマターランスが巨人へと突き刺さり、その身体を削り取るが、癌化しリミッターの外れた細胞は途方もない速度で再生し続ける。

だが、構わない。所詮これらは時間稼ぎなのだから。

 

 

 

エスコート艦隊が壊滅するまでの間にステラー級は主砲を換装し、主砲に比べれば多少は威力の劣るモノではあるが、この巨人に対しては有効であろうと判断した武装へと入れ替わっていた。

 

 

Σシリーズ・ウェポン。

誰も見たことのない技術体系で構築されたすさまじい威力の兵器である。

暗黒物質及びエネルギー操作を極めた結果得た技術であった。

命、意思、精神活動が全宇宙を支配するという考えは狂信的な精神主義者である彼らにとっては当然の事ではあるが、これはその結果の一つ。

 

 

極限にまで恒星を理解、解明した彼らは恒星に命を見出したのだ。

恒星は、星は生きている。

ならば、その命を使おう。

サイオニック技術の延長戦、シュラウド操作技術さえも込められて作り出された恒星兵器は今、その真価を発揮しようとしていた。

 

 

 

星系戦闘艦の表面にびっしりと、最低でも億単位で拵えられたΣブラスターが巨人を捉える。

特異点リアクターは宇宙の誕生を操作し膨大なエネルギーをブラスター全てに送り込む。

相転移技術によって砲のチャンバー内部で星が生まれ、熟成し、死ぬ。

 

 

発生する膨大なガンマ線バースト、ただそれだけでも凶悪極まりない破壊力を持つというのにソレは加工され概念的、因果的な性質さえ付与された上に増幅し射出される。

 

黄金色の線がステラー級より幾重も放たれ、巨人へと突き刺さり、抉り、貫通する。

超新星さえもやすやすと上回るエネルギーと、収束された分主砲よりも貫通力を上げた惑星の滅亡創生輪廻は巨人を軽々と吹き飛ばし、その右腕をちぎり取ってしまう。

 

 

 

ぐるぐると星系単位の距離を弾き飛ばされた巨人は、がばりと大口を開けて刻一刻と消滅へと近づく自分を認識しながら叫んだ。

身体にいくつもの虫食いを作られ、更にその傷口は再生さえ許されず燃焼を続け、彼女は死へと落下を続けている。

 

 

─────あ、あぁぁ、AAAAAAAAAAAAOOOXOXOXOXOXOO!!!!

 

 

 

言語という機能さえそぎ落とし、戦闘へと特化した巨人の口から出るのはおおよそ知的生命体が発するには相応しくない不気味な絶叫。

放出された星の残照を元来所持していた収奪能力を以てかき集め、新たな右腕を光輝く形で再構築する。

太陽さえ軽々と握り潰してしまいそうな熱量を以た拳を彼女は憎悪と共に開閉させた。

 

 

重力子を支配し、力場を作って態勢を整えた女神はおぞましい表情で星系船を睨む。

 

 

 

新たに生まれ変わった右腕をステラー級へと向けて翳せば、その腕は幾つもの四角いブロックへと変わり、膨大なエネルギーの相転移を支配し、収束させた。

濁ったオレンジ色の濁流が一瞬だけ煌めけば、あまりに稚拙ではあるがΣを模倣し再現されたレーザーが煌めく。

空間を焼き、因果を焼失し、先のステラー級主砲の如く次元を捩じりながら超光速で飛翔する殺意は下位の3次元においてはまるで星雲ガスの様に見えた。

 

 

 

光を置き去りにしたそれは疑似的な因果逆転現象を引き起こし、着弾と軌跡の発生はあべこべと化している。

当たった瞬間に、どうやって当たったかという要因が発生しているのだ。

何兆にも展開されていた星系戦闘艦のシールドが軋む、遮断しきれなかった一部のエネルギーが装甲をも貫通し、この怪物の船体そのものを軋ませる。

 

 

連結されていた月に亀裂が走り、惑星の一部が砕ける。

 

 

 

 

大変結構。よろしい、問題はない。

 

 

 

自らと同化している巨船が崩壊しようとしているのに彼らに焦りはない。

かつてここではない世界を支配し、敵という敵を葬り続け、探究の果てに没落しかけたこともある彼らにとってこれはむしろ心地よいことだった。

刺激、死への恐怖、戦いの高揚、ボタン一つで星雲を破壊しうる武器を行使する愉悦、そして痛みと好奇、大変よろしい。

 

 

 

 

 

彼らは己らの内側からあふれ出る精神活動の全てを受け入れた上で分析する。

時には他者からみて非効率で、愚かと思える感情の奔流でさえ彼らにとってはとても重要なモノであり、根幹なのだ。

なぜならば認識こそがこの世界を作り替えるものであり、この世の全ては何かの意思によって変動するものなのだから。

 

 

 

そうだ、認識だ。

あらゆる世界において「絶対」というモノなどない。

宇宙が現実ではなく、自分たちという存在もまた夢の様なものなのではないかと気づいた者らがいた。

今から行使される奇跡は、そんな先駆者の遺物を解析し、作り出されたこの世を捻じ曲げるおぞましい法則の流出であった。

 

 

 

 

 

 

【ヴルタウムの現実穿孔機】

 

 

 

 

ステラー級の内部で輝いたのは奇妙な白濁色の球体であった。

まるで氷河期の惑星の模型のようなソレは直系10m程度でありながら、信じられないほどに重く、それでいて彼ら以外のどんな組織のどんなセンサーでさえ観測不可能な奇妙なオーブである。

 

これこそ、かつて彼らの出身銀河で栄えしとある種族の叡智の結晶を元に更に次元を上げて作られた装置。

 

 

 

宇宙という「現実」を穿孔し、上位でも下位でもない「何もない」世界を穿つ禁忌。

そこには可能性や因果さえ入力されていない正真正銘の「無」のみが広がる。

残念ながら彼らが目指した、自分たちを観測する存在を見つめ返すことは叶わなかったモノの、この現実穿孔機の能力はこの宇宙においては余りにも噛み合っていた。

 

 

 

現実……この宇宙においてはテクスチャとも称される星々の世界に穴が広がっていく。

宇宙の闇よりも、暗黒の天体よりも更に濃い「黒」がステラー級を中心に世界を蝕み始める。

秩序が崩れ落ちる。この世界においてはありえない、あってはいけない事象を否定しようとするソラを現実穿孔機は一方的に食んでいく。

 

 

 

何者かの懇願を彼らは聞いた。やめろと正す誰かがいた。

紅い何かの影が叫んでいる、5色の何かがあった。その存在を彼らは見つめ返し、分析/解体していく。

非常に興味深いと判ずる。以前の世界とは違う地での現実穿孔はどのような影響を世に齎すか不祥な点が多いが、この宇宙においてはとても特別な意味をもつらしい。

 

 

 

いずれそれらも含めて蒐集してやると思いながら彼らはステラー級を駆り、巨人へと現実穿孔の出力を収束させる。

並行してもう一つの兵器の準備も勧める。

もはや呼吸よりも容易くシュラウドへと意識を向け、その中に安置していた兵器を取り出すのだ。

 

 

 

 

 

────────ッッッッッ■■■■!!!

 

 

 

 

巨人の姿が変わる。

内部で今なお残留し彼女を焼き続けるΣシリーズのエネルギーを段階的に吸収し、全身の癌を更に悪化させながらもその威容はより神々しく変貌を遂げる。

頭部の上に存在する光輪、崩れ落ち続けながらも発光する神体、恒星の生命を凝縮して作られた右腕、真っ赤な瞳。

 

 

 

巨人が右腕を一振りすれば、一つ一つが新星並の熱量を孕んだ火種が振りまかれる。

とてもささやかで小さい、小石程度の大きさのソレはステラー級へと迫りながら一瞬で巨大ガス惑星並みの大きさにまで膨らみ、さく裂する。

ステラー級の船体に数えるのも億劫なほどに備えられた迎撃装置が稼働する。

穿孔された空間に新たな法則を書き込みながら発射されたΣの恒星生命エネルギーは容易く惑星規模の爆弾をより強い破壊力で吹き飛ばす。

 

 

巨人は重力子を制御し、足場……道を作りながら星系戦闘艦に迫る。

一歩進むごとに数万キロを飛び越えた彼女はヒューマノイド種の格闘家がそうするように、腰を落とし拳を胸の前で構えながら突貫。

 

 

吹き荒れる迎撃攻撃を巨人は無視する。身体の至る所が欠落し、再生を繰り返す。

自らの背中に作成した4点の穴から惜しみなくガスを噴出し、加速をつける。

 

後9歩、8歩と突き進み、ステラー級の目と鼻の先、威嚇し睨みあえるだけの距離まで詰めた彼女は渾身の正拳突きを放った。

膨大な質量と光に迫る加速、更には保有する全てのエネルギー/霊子を攻撃に注いで放たれた一撃は正に全身全霊と呼ばれるもの。

 

 

銀河同士の衝突にも匹敵する、絶句するほどの破壊が星系艦を走り抜けた。

 

 

ステラー級の船体に途方もない激震が走る。

シールドが砕け、装甲は剥離し、船体の基礎構造そのものに重大な痛撃が走る。

音などない宇宙の中で、怪物は確かに崩壊を感じさせる悲鳴を上げた。

 

 

 

だが。これで終わりだ。

続いて仕留める為に二撃目を放とうとする巨人の前で掘削された世界が縮む。

絨毯の様に広げられた「無」が彼女を包み込むように収束しつつある。

 

 

先ほど特異点を切り裂いた様に、指を伸ばすが触れられない。

そこには何もないというのに圧だけが巨人を襲い、空間、次元ごとこの世界から欠落していく。

確かに「無」はそこにあり、彼女を包み込み、ステラー級より引きはがされる。

 

 

 

それでも諦めず手足を振り回し、ため込んだ膨大な霊子を吐き散らし、体を崩壊させながらも女神は最上の獲物へと手を伸ばそうとする。

だが……吠える女神の動きが止まる。彼女は見た。そして見られた。

紫色の霧……不可解な要素だらけの宇宙にあっても一層理解を拒まれる瘴気の様なものが周囲をいつの間にか覆っている。

 

 

 

この世界を覆い隠す薄いながらも絶対的な膜が引きはがされ、途方もなく巨大な歯車が回りだす。

それはこの世の全ての隣にあるもの、全てを繋ぎ合わせ、結び合わせ、そして覆い隠す慈悲であり、裏側でもある。

 

 

 

シュラウド。

この宇宙においても当然存在するソレは、この宇宙膜が誕生してから150億年余り誰にも接続されたことのない域の力。

その脅威がたった今振るわれようとしている。

 

 

 

 

 

シュラウド・リンク完了。

システム準備完了。

代替消費物捕捉完了、銀河中心核暗黒天体捕捉。

 

 

対象因果指数演算終了。

代価消費絶対質量計算完了。

サイオニック増幅物資ズィロ消費。

 

 

 

因果地平追放攻撃【シュラウドの瞳】実行。

 

 

 

いつの間にか青紫色の巨大な瞳が巨人を見つめている。

女神の持つ全てのセンサーに反応しない未知の存在である。

 

 

一度、二度、瞳は瞬く。“我々はお前を見ない”と彼らは言った。

ただそれだけ。たったそれだけの動作で、巨人は自らを包む「無」諸共に消え去った。

彼らの研鑽、彼らの収集、彼らの紡いできた歴史もろともあらゆる物事の連続性が途切れ果て、終わった地へと送られたのだ。

 

 

シュラウドの奇跡を行使する代償として天の川銀河中心核の質量が1万年分ほど削られたが、些細なことである。

 

 

 

宇宙に静寂が訪れる。

あれだけの規模の破壊を打ち合っていたとは思えないほどにあっけない幕切れであり、勝利者が全てを総取りする時間の始まりだ。

 

 

この宇宙に開いた穴が修正されていくのを観測しながら、ステラー級のセンサーは先ほど千切れた巨人の右腕を捕捉する。

白亜のデブリは所々が焼け焦げ、Σクラス兵装の影響で今なお燃焼を続けているが、これだけの量があれば解析は容易である。

 

 

 

さて、始めようかと彼らは言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【銀河座標・SOL】

 

 

 

コレクターの巨人の解析は我々にとって非常に大きな収穫と知見を与えるものであった。

彼らの細胞から疑似的に記録を読み取ることに成功したのだ。

 

 

まずコレクターの巨人とは何かであるが、彼らは言ってしまえば人工生命体である、それもとても効率的に戦闘、収奪に特化した形で作られた。

彼らは知的生命体のサイオニックエネルギー、つまり生命力を吸い取り巨大化し、強くなる。

 

 

惑星の文明を破壊しながら吸収し、収奪。

それらのデータを本体である母星に送ることで星々を食いつくしてきたのだろう。

我々の知見の中では、アンビデン種やスカージ種に近しい。

 

 

そして食料である知的生命体がなくなれば彼らは文字通り「餓死」することになる。

我らから見ても、兵器の使い捨てとは、これはとても面白い発想である。

巨人は非常に高度な知性を保持しており、蹂躙対象の文明の命乞いを受けて攻撃を停止したこともあるらしく、恐らくこれは反逆防止のための措置なのだろう。

 

 

さて、ここからが本題となる。

我々と交戦する直前にコレクターたちはとある星に巨人を投下していたらしくその座標を我らは手に入れた。

彼らが目を付けた、とても興味深い収奪対象はまだ健在の可能性があり、それは現在地点から見ても非常に近しい位置にある。

 

 

 

どのみち、船の修理が必要であり、別宇宙へのジャンプなども不可能な現状、その星にいくしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

【星の聖剣】

 

 

 

その惑星はすぐに見つけることができた。

ステラー級は虚数空間に潜航し、僅かな覗き穴から星々を眺めている。

 

 

生命を抱く事の出来る平均的な大きさの恒星に、複数の星を結び合わせたなんとも面白みのない星系である。

だがしかし、精神のざわめきを彼らは抑えることが出来なかった。

 

 

第六感、超直感が彼らに訴えかけてくる。

この地こそが重要な場所であり、特異点なのだと。

こんな一見すれば何も存在しない、ありふれた星が。

 

 

何だ、この星は? 

ここには何がある? 

もしかしたら、この地こそが我らの求めたものなのか? と。

 

 

ちょうどコレクターが投下した巨人と、現地の原始的な文明の戦闘が行われているのを彼らは見ていた。

彼らが倒したものと比べれば細胞一つにも満たない脆弱な巨人ではあるが

それでも文明レベル7の最低レベルの技術では打倒はまず不可能だというのがステラー級のはじき出した演算結果である。

 

 

途中までは全て計算通りであった。

現地に存在するサイオニック的な存在が何とか巨人を抑え込みつつも、巨人の性質が発揮され強化が始まれば一転して不利へと追い込まれていく。

 

 

生命が死に、星は焼けただれ、全てが終わろうとしている。

きっとこのままではこの先には何も残らないだろう。残るのはありふれた死の星だけだ。

それでは困ると彼らが救援のための艦隊及び地上軍の編成を始めようとした時にソレは現れた。

 

 

 

それはこの星の現地住民のようで、特に何か大きな力を持っているわけではなかった。

生命としての強さで言えば、先ほど巨人が打倒したサイオニック生命か、もしくは何処からか流れ着いた人型戦闘兵器の方が遥かに上だろう。

 

 

だが、彼らはこの存在から目を離せずにいた。

この存在……現地では人類と呼ばれる存在が放つ精神の煌めきは彼らの眼を釘付けにした。

精神主義であり、その手の探究では超深奥へと限りなく近づいていると自負している彼らからしても、その存在は美しい魂の煌めきを放っていた。

 

 

黄金であり、更に純化した煌めく白金色の魂の光。

 

 

いつの間にか握りしめられていたのは「剣」という四肢を持つ種族がよく扱う最も原始的な武器。

しかし、その剣は信じられないほどに膨大なサイオニックなエネルギーに満ち溢れている。

精製こそされていないが、内包するエネルギーだけならばΣシリーズに匹敵、凌駕する可能性さえある。

 

 

 

 

 

文明レベル7の種族が持つには過剰すぎる力。

いや、恒星間航行が可能になった文明でさえこれだけの力をあんな剣一本で生み出すのは難しいだろう。

どこからこれだけのエネルギーを? いや、どうやって? なぜ? なぜ? という疑問が浮かぶが、それ以上に彼らは見惚れていた。

 

 

何て、素晴らしい。

正に奇跡、正に神秘。

あの輝きこそ精神の尊き光、自分たちの正しさを証明する光だ。

 

 

知識の探究者であり、妙に面倒な言い回しをすることも多い彼らが、何の装飾もつけず、ただ一言「美しい」と呟いた。

巨人が剣とその使い手によって打倒される、たった一振り、それだけでコレクターの放った怪物は致命傷を負い、少しばかり放浪した後に動かなくなった。

使い手も同じように力なく倒れる。恐らく先の一撃で全ての生命を使い果たしたのか、もう動く事はない。

 

 

その掌から役目を終えた剣が零れ落ち、さらさらと砂の様に消えていく。

 

 

あぁ、何と勿体ないのだと彼らは思った。

我々ならばあの存在を導けたのに。もしかしたら、偉大な指導者になれたかもしれない。

あれほどの存在が、こんな辺鄙な星で終わってしまうなんて、不幸でしかないのだと。

 

 

そして何より彼らは既に決断していた。

あのコレクターを葬った剣、途方もない純粋なサイオニックエネルギー、あれらを解析し、なんとしてもモノにしてみせる。

この星の者が使ってあれなのだ、我々が手に入れれればどれだけの力を発揮できるか、想像を絶する。

 

 

 

 

───スペシャルプロジェクトが発令されました。

 

 

 

 

【神秘の探究】

 

 

かくして我々はこの星を拠点とすることが決定された。

美しい剣の所在は未だ判らず、破損したステラー級の修復、該当惑星の文化や文明の消極的観察の後に介入行動が決定された。

 

 

数千、数万年単位での長い作業になりそうだが、大変結構。

 

 

慎重に、丁寧に、この星を我々は知らなくてはならない。

全てを知り、全てを手に入れる。

そのために必要なのは不断の努力と忍耐、そしてチャンスを絶対に逃さない判断力なのだ。

 

 

 

 

 

スペシャルプロジェクトが実行に移されました。

 

 

 

SOL星系所属第三惑星における超長期的な研究が開始されました。

 

 

 




ステラリスをやっていてふと思いついたので投稿しました。
面白いと思ってもらえれば幸いです。
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