fate/stellaris 【完結】   作:宇宙きのこ

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明らかにネメシス発売までには終わらないと確信したので
とりあえず完成した部分を投稿します。
まだまだやりたい放題していく予定。




天上戦争2

【天上戦争・2】

 

 

 

 

予兆の時点で誰もがこれは天変地異だと悟った。

青紫色の霧が惑星全土を抱きしめるように覆い尽くし、星の大気に満ちるエーテル濃度がじわじわと上がっていく。

惑星全土が異次元へと相転移を引き起こしかけ、星のあらゆる地点で時空が乱れだす。

 

 

時間の流れが歪む。

まるで超巨大な暗黒天体の近くを公転する星の様に。

 

あらゆる個所でそれぞれ独立した時間軸が誕生し、空間が乱雑に引き延ばされたり収縮したりを繰り返し続ける。

ある地点では10倍の速度に加速し、ある地点では10分の1にまで遅延が引き起こされている。

これは慈悲であった。たかが100倍程度の時間の狂いなど、これから起きる全ての事柄に比べれば微笑ましい出来事である。

 

 

 

空間の広がりが狂う。

テクスチャが根底より覆され、そこに宿っていた筈の「こうである」という定義が崩れ出す。

夜と昼さえなく空を覆い尽くすのはシュラウドの混沌とした超次元世界だ。

 

 

 

「彼ら」の一部がSOL星系に降臨しようとしていた。

慈悲深くも星系戦闘艦という端末だけを通して世界を観測していた存在は、来るべき時を迎え下位次元の存在に対して拝謁の栄誉を授けようとしているのだ。

その余波だけでSOL3の存在する宇宙がひび割れ、新しく吹き込まれた法則による宙の更新が進みだす。

 

 

コロッサスから放出されたシュラウド・エネルギーの余波は絶え間なく零れ続け天の川銀河を浸食し続けている。

かつて何処かに、または遥か未来の地にて存在しえた原初の女神の如く「彼ら」の力は宙そのものを覆い尽くして余りあるほどに大きい。

 

 

 

 

しかし、しかし───宇宙の更新など朱い月にとっては余り興味のある話題ではなかった。

確かにすさまじい力だが、ガンヴィウス達の由来を聞かされた彼にとっては予想の範囲内である。

相手は宙を支配する断絶とした天蓋。

全身全霊をかけて挑まなくてはならない完全なる格上の存在だということを朱い月は完全に理解した上で、いつも通り無邪気に振舞う。

 

 

 

 

「では、踊るとしようか。一撃(口づけ) を許すがよい」

 

 

一番初めに動いたのはやはり朱い月であった。

男装の麗人とも評せる美貌を歓喜で歪ませながら彼は新しく取り込んだ“心臓”の準備運動もかねて稼働させる。

単純な火力も大事だが、それだけではガンヴィウスの狂気的な防御を貫通できないと知っている彼は様子見として術を発動させた。

 

 

 

「メレムよ、借りるぞ」

 

 

己の()()に向けて朱い月は語り掛ける。

彼がガンヴィウスと雌雄を決するに当たって全てを使うという言葉に嘘はない。

彼は己の家臣であり最高峰の願望器としての能力を保持するメレム・ソロモンを吸血/吸収し完全に己の一部へと作り替えていた。

 

 

単純にメレム・ソロモンをガンヴィウスにぶつけた所で四大魔獣もろとも瞬時に葬られるのは目に見えている。

故に最も強い力を持つ朱い月が彼の力を取り込み己の武器へと作り替えるのは当然の判断であり、何よりメレム自身がそれを望んでいた。

そうだ、これは両者が完全に合意した上での行為であった。

 

 

その証明として願望器としての彼は完璧なまでに朱い月という存在に馴染み切り、今までにない程の精度と出力を以て主と共に戦いに挑んでいる。

まずはつゆ払いとして超級の一騎打ちに特化した“左足”を呼び出す。

エーテルがかき集められ、空想具現化と願望出力としての能力が混ざり合い空中に顕現するのは奇妙な深海生物の如き悪魔であった。

 

 

ガンヴィウスが自分を覆う影の主へと視線を向ける。

彼は自分の整えられた髭を撫でながらいつの間にか取り出した杖をクルクルと回していた。

 

 

既に鎧は装備されている。

彼の質量は5億トン×200万倍となっており「彼ら」の進んだ空間力学及び重力操作技術によってその狂気的な防御質量は周囲に一切の重力的影響を与えずにとどまっていた。

更には戦闘態勢に入った事によりサイオニック・シールドも展開され、もしもの事など起こりえない様にあらゆる視野や角度からの攻撃への迎撃、防御手段が用意されている。

 

 

対 物理。

対 重力。

対 空間。

対 時間。

対 概念。

対 偶然。

対 因果。

対 次元。

対 精神。

 

 

この星から得られた知見により必要と判断された防御手段が考案装備され、それは星を抉るコロッサスの光が深く深く掘り進むほどに随時更新されていく。

現状宇宙最強の防御能力を誇ると言っていい。

今のガンヴィウスならば太陽フレアを浴びたとしても涼しい顔をしていられるだろう。

 

 

その上で彼は悪魔と相対する。

だが青紫色の瞳は自らが絶対的上位者であるという自信に溢れてはいなかった。

彼は虫眼鏡で興味深い物質を観察する研究者の様な瞳でメレム・ソロモンの一部を見ているのだ。

 

 

そして「彼ら」は悪魔の向こう側に存在するナニカに向けて朗々と語り掛けるように口を開いた。

 

 

「“霊長”とは我々の知っている他の種と比べれば身体的能力はそこまで高くはない。

 学習能力も突出しているというわけでもなく、時には目に余るほどの凶暴性、攻撃性を発揮して同族を殺す事に躍起になる困った種だ。

 君たちという種が我々がこの地を訪れるまで生存していたという事実は驚きだと当初は思っていたよ」

 

 

 

だが、とガンヴィウスは杖先を悪魔に向けて笑いかけた。

遥か先を行く先達者として彼は語る。

朱い月と魔法使い、その先に見える時間軸関係なく集結した英雄たちに来訪者は語った。

 

 

 

「だが君たちの精神───魂の輝きは実に素晴らしい。

 想念が積み重なりこのような美麗な魔獣や神秘……「剣」を生み出したのは間違いなく君たちだ。

 神霊、アラヤ、概念、宝具……全ては君たちの心が編み上げた芸術品である。

 誇りたまえ、君たちは我らから見ても類まれなる素養がある」

 

 

だから欲しいのだよと怪物は臆面もなく純粋な欲望を見せた。

子供がショーウィンドウに並んでいる玩具を欲しがるような純粋な欲求だけがそこにはあった。

 

 

悪魔が動き出す。

この世全ての動物、獣と分類されているモノならば全ての能力と権能が振るう事が可能な思念の怪物はたった一人の存在に向けてあらゆる神話の獣の力を想起させた。

まずはこの世ならざる幻馬(ヒポグリフ)の如く悪魔は超高速であらゆる法則や重力を無視した出鱈目な動きをしつつ次元転移を行う。

 

 

転移の速度が速すぎて傍目には悪魔が大量に出現したと思えるような光景が出来上がる。

これはヒポグリフの特性である存在自体があやふやな量子的存在であるという特性を生かした疑似的な次元屈折現象であった。

 

 

宙を覆うそれぞれの悪魔が優雅に翼を広げる。

薄い翡翠色の翼膜は蝶の如き流麗な文様が刻まれていた。

翼が一度戦慄けば悪魔は望まれた通りに願いをかなえる。

 

 

 

想起 十一の魔獣(バシュム)

 

 

想起 バロールの瞳(原典・直死の魔眼 )

 

 

 

悪魔の翼が輝けばガンヴィウスを覆い尽くすように禍々しい色彩の毒息が滝の如く降り注ぐ。

これこそ原初神ティアマトの子が持つ最強の毒、かのヒュドラのソレさえも超える苦痛と蝕みの極致である。

生物であれば耐えきる事など不可能な毒は霊長はおろか神さえも苦痛に追いやる恐怖の具現だ。

 

 

ヘラクレス、ケイオーンでさえ自害を選ぶ毒の到達点だった。

そしてソレさえも霞む域の力であるのがバロールの瞳(原典・直死の魔眼 )である。

直死の魔眼という非常に珍しい存在の更に上位、これはあらゆるモノの死を内包した瞳だ。

 

 

悪魔の翼に巨大な一対の瞳が現れる。

これこそはケルト神話に伝わりし死の神バロールの瞳の再現だ。

魔法と補正式、願望器、そして朱い月という4つの規格外が力を結集させこれを作り上げていた。

 

 

これは星におけるあらゆる死を顕現させる極致である。

形あるもの、存在するもの、命あるものはいずれ死ぬ、ならば今ここで消える事もいつか死ぬ事も変わらないというこの世の摂理だ。

次元屈折を用いて確率的な猫となった悪魔たちが幾つもの視点でガンヴィウスの死を視るべく瞳を美しく輝かさせた。

 

 

毒霧に包まれながらもガンヴィウスは周囲を観測していた。

肉体だけではなく精神、魂を汚染する濃霧の中でありながら「彼ら」は心行くまでこの攻撃を読み取っていた。

神話に伝わる最強の英雄さえも根を上げる毒をあえて吸引し、身体の底から湧き上がる激痛を咀嚼する。

 

 

水滴一つまでもが蒸気を上げる毒素へと移り変わり、大地と空間を汚染している。

ガンヴィウスはサイオニック・シールドにあえて気体が通れる穴を用意しバシュム毒を味わっていた。

 

 

久しぶりの痛みである。

思えばここ1万年はこういった感覚とは縁がなかったと「彼ら」は考え、あえて受けていた。

コレクター艦隊との戦いで負った傷がこの宇宙で受けた最大の損害であり、そこから全ては始まったのだ。

 

 

適度な痛みは必要である。

自分たちが生きているということを忘れない為にも。

思えばこうして今の様な肉体を捨て去る直前までも機械化を除く様々な改良を己らの肉体に施していたが、痛覚は最後の最期まで捨てなかった。

 

 

 

───解析完了。中和終了(解毒)。レプリケーター起動。変換作業開始。

 

 

 

ガンヴィウスが一度指を鳴らす。

それだけで周囲に満ちていた毒素はレプリケーターの応用により全く違う形へと再変換された。

紫色の禍々しい濃霧は純白の花びらへと作り替えられ、次いで無数の蝶々へと変換され、それらは群れを成して悪魔たちの真横を通り抜けて飛んで行った。

 

 

 

次いでガンヴィウスは自分たちを先ほどからしつこく凝視してくる悪魔を見た。

限界いっぱいにまで開いた悪魔たちの文様は軋みながら懸命にも全身全霊で権能を行使しガンヴィウスと「彼ら」の死を理解し与えようと足掻いていた。

権能は問題なく機能している。

バロールの瞳は何とかシュラウドを認識し、そこから更に奥深く、超深奥に座する存在の死を探っているのだ。

 

 

 

 

1万年。

1億年。

1兆、1京……不可思議の果てまで時間軸を辿っていくが、まだまだ「彼ら」の死は遠く深い。

 

 

「彼ら」にも死の概念は存在はしている。精神活動と切っては離せない死という概念を「彼ら」は捨ててはいない。

ただしそれは物質的な破壊というモノではなく、概念や因果、意思という高次元の域にあるものだ。

惑星の寿命でさえ尺度の比較にならないほどに遠く、重く、強い命である。

 

 

バロールの瞳ではソレは探り切れるものではなく、10秒にも及ぶ走査の末に死の神は理解できないものを無理やり理解しようとした反動で自壊した。

血涙の様な真っ赤な光を翼から零れさせながら複数の悪魔が崩れ落ちていく。

 

 

同時に神出鬼没種を捕獲した時の知見を元に編み上げた量子と確率操作技術を用いてあやふやに相転移を繰り返す悪魔の量子を固定する。

「彼ら」の瞳が時空間の裏側に逃げようとする悪魔を捉え空間に磔にした。

ガンヴィウスが指を一本そちらに向けて、虚空をひっかくように上から下に指を動かせば悪魔は見事に両断されエーテルの泡となって崩れた。

 

 

光輝くエーテルの粒子が血しぶきの様に飛びちり呆気なく空の悪魔は葬られた。

 

 

そして「彼ら」は己らの死を探ろうとしてきたバロールの行動と概念を解析、理解し、このセキリティの穴を塞ぐ為に新しい更新を行う。

掘りだしてきた魔眼殺しという概念を応用し自らへの防御策を実行し完了する。

いたずらに人の死を観測してこようとする不埒な存在に対して一枚着込むだけで「彼ら」の死は優雅かつ慈悲深く覆われた。

 

 

 

複数の朱い槍がガンヴィウスのサイオニック・シールドに突き刺さる。

2m程度の長槍であり、強力な神秘を纏ったソレはギギギという鈍い音を立ててシールドの防御力場に諦めずに突き刺さり続けている。

奇妙なサイオニックエネルギーが因果を歪めている事にガンヴィウスは瞬時に気が付いた。

 

 

これはさしづめ必中という概念といったところか。

狙い先は槍の向きと進入角度からして心臓のようだが、あいにくガンヴィウスに心臓は存在しない。

端末の本質は「彼ら」の観測によって三次元に投影されたシュラウド世界から落とし込まれる影のようなものだ。

 

 

視線さえ向けずにガンヴィウスは力を微かに使った。

引力、斥力、重力の支配は基本中の基本である故に様々な応用が利く。

全方位から槍に圧力を込めれば2m程度の槍は一瞬でナノサイズにまで圧縮され、内側に込められた神秘もろとも押しつぶされた。

 

 

「あーあー、ぺっちゃんこじゃねーか」と魔法使いの内側で声が響く。

槍の正統なる持ち主は自身の武具が破壊された事に対して怒りなどはなく、むしろこれは駄目だなとアドバイスを魔法使いに行っていた。

魔法使いは補正式の補助を得た上で高次元の座と繋がり、その助力を得ているのだ。

 

 

「重力……厄介だな」

 

 

重力とは星の持つ力である。

どのような惑星であれ大小の差があっても保持している力だ。

この太陽系が存在しているのも太陽の持つ重力が存在するからこそであり、真の意味でこの世を繋ぐ力と言える。

 

 

故に極大の神秘を重力は宿している。

少なくとも人類が重力という概念を真に理解するのには後1000年以上はかかるのだから。

 

 

そして時間や空間、次元にさえ影響を与える規模で星の力をガンヴィウスは自由自在に使いこなす事ができるという事実は

魔法使いのガンヴィウスに対する最大値まで上がっていた筈の警戒の天井を更に幾つかこじ開けた。

 

 

ガンヴィウスが指先を魔法使いと朱い月へと向けた。

放たれるのは十八番である暗黒エネルギーを攻撃に転嫁したアーク放電攻撃である。

更にそこにシュラウドのエネルギーも混ぜればコレは対軍どころか対艦隊規模の攻撃へと威力を跳ね上げた。

 

 

重低音と共にガンヴィウスの指先から稲妻が噴き出し、大気を千切り取りながら迫る。

翡翠色の雷撃はこの宇宙における暗黒物質とエネルギーを可視可能な状態に加工したエネルギーの濁流であった。

 

 

「それは何度も見たぞ! 一度試してみたい事があったのだ」

 

 

嬉々として朱い月が魔法使いを庇う様に前面に飛び出し掌を翳す。

彼の心臓が鼓動しそれは補正式の演算補助を受けた上で高次元より一つの概念防御を引っ張り出して展開する。

 

 

神獣の裘(ネメアの鎧)と称される概念防御が発動した。

対人理とも称される、叡智より生み出される破壊を拒絶する防御式である。

高次の座の中でも飛び切りの突出した英雄が保持していた規格外の防御用の装備であった。

 

 

稲妻が獅子の皮鎧と衝突する。

厳密には人が生み出した兵器ではないアーク放電の攻撃を完全に遮る事は不可能ではあったが、それでも軽減するという効果は表れている。

本来ならばシールドや装甲と言った防御的要素を全て無視して船体に損壊を与える攻撃であったが、概念を完全に無視することは出来なかったようだ。

 

 

星の生み出した人の技術を否定する意思と遥か彼方の宙を司る法則が衝突し、余波で朱い月の腕が焼け焦げていく。

9割の威力を消し去っても残り1割の破壊力でこの月の究極生命体に損傷を与える程の威力が稲妻には込められていたのだ。

しかし瞬時に彼の損傷は回復し、朱い月は着実にガンヴィウスの放つアーク放電攻撃への耐性を得ていく。

 

 

元より彼も宇宙生物である。

ならば宙の法則を生身で浴びればソレに対して理解を得て、対応するために進化するのは道理であった。

SOL3の上ではあまりに規格外すぎて使ったことのない生物としての適応能力が長い眠りから目覚め始めている。

 

 

「ははははははっ! 魔法使いよ、私の腕が焼けているぞ!! 

 軽減に矮小化を重ねてコレか! はははは!!」

 

 

しかしブリュンスタッド王は相変わらずである。

彼は自分の身体が焼け焦げていく感覚さえも楽しみ笑っていた。

稲妻を浴びせかけられながらも彼は瞬間移動と見間違える程の速度でガンヴィウスに肉薄し、彼が展開するサイオニック・シールドに拳を叩きつけた。

 

 

かつての「女」が放ったエーテル弾でも微動だにしなかったシールドの表面が微かに泡立つ。

隕石の直撃、大陸粉砕級の破壊力がそこには込められていた。

大地が余波で隆起し地盤が歪む。地殻まで軋んでしまうほどだ。

 

 

 

ガンヴィウスが先ほどまで座っていた玉座がその下の基盤であるやぐら諸共吹き飛び、発生した衝撃が戦場どころかブリテン全土へと拡散した。

しかし神祖は微動だにしなかった。

朱い月の鬼気迫る殺意を浴びせかけられながらも彼は表情一つ変えていない。

 

 

単体で星系や星団を壊滅させる生命体など幾つも見てきた。

朱い月ほど小型でこれほどの戦闘能力があるというのは見事であったが、「彼ら」にとって脅威ではない。

 

 

「やはり硬いな。今までわが手で砕けなかったモノなどなかったのだがな!」

 

 

全身を燃え上がらせながらも連続で拳を叩きつける。

技術も何もない、ただ素早く腕を動かして殴りつけるという単純な行為でさえルキウスの奥義を超える破壊力を生み出す。

されどそれでもシールドを撃ち抜くには全くと言っていい程に火力が足りない。

 

 

拳が潰れ、腕が折れ曲がるのを黙って見つめていたガンヴィウスはため息を吐くと、朱い月に向けて指を向けた。

先ほど槍を押しつぶしたように空間を操作し自分と彼の間に強大な反発する力場を生成。

十倍。百倍。千倍。とSOL3の重力を基準として途方もない斥力をかけてやれば、朱い月は34万6220倍まで耐えたが、やがては吹き飛ぶ。

 

 

まるで子供が大人に体当たりして弾き飛ばされるように彼はクルクルと回転して遥か後方の山脈に衝突し、山の中腹辺りに巨大なクレーターが生まれた。

しかし直ぐに彼は立ち上がれば、己の乱れた髪を手櫛で梳かしてから一飛びでガンヴィウスの前へと戻ってくる。

魔法使いの非難するような視線に衣服をズタボロにした彼は咳ばらいを一度してから努めて平静に答えた。

 

 

「うむ……まぁ今見せた通りまともにやり合おうとすればこうなるぞ」

 

 

「もう少し落ち着いてやれないのか、お前は」

 

 

命がけの戦い、それも未知にして巨大極まりない存在に挑んでいる最中だというのに全く調子を変えないブリュンスタッドに魔法使いは顔を引きつらせながら体内に魔力を循環させる。

 

 

男が一挙手一動作を行うたびに周囲の量子がガンヴィウスから見ても奇妙な動きをした。

宇宙の深淵で見られるような“あやふや”な世界のように、観測者を失った様にあらゆる可能性が彼を基点に拡散と収束を繰り返している。

 

 

幾つもの並行世界に穴が開き、それらは量子とダンスを踊りながら拡張していく。

彼の身体はいわば数多くの世界を結び合わせるゲートウェイであった。

魔法使いの精神の奥底に内包する世界では鏡合わせの如く幾千幾万もの可能性が互いににらみ合い、反射しあいながら無限に増え続ける。

 

 

その無限の可能性を支配、運営するのが男の持つ魔法であった。

そうだ、彼は「彼ら」でさえ大規模な施設を用いなければ出来ない並行宇宙の観測と掌握をSOL星系の文明圏限定という条件付きではあるが可能としている規格外なのだ。

魔法使いは高次に接続し、記憶と記録を自らに落とし込んだ(ダウンロード)

 

 

 

数多くの人類史における戦争と戦闘の記録。

あまたの英霊たちが誇る殺人と戦闘を優位に進められる技能と戦術を彼は取り込む。

発生する莫大な情報の濁流と英雄たちが抱いていた感情(ノイズ)は72の悪魔たちが代わりに受け止め、ろ過して必要なものだけを魔法使いに渡す。

 

 

 

自分よりもずっと強大で、数多くの手を隠し持っていて、それでいて此方と戦いながらも他にも別の大仕事を行っている存在を倒すにはどうすればよい? 

魔法使いは英雄たちに問うた。英雄たちは答えた。

 

 

 

「そんなのは決まっている。本気を出される前に倒してしまえばよい」と。

それが出来れば苦労はしないと思いながら魔法使いは思考を巡らせる。

そもそもの話、自分たちの勝利条件とは何か、ガンヴィウスの勝利条件は何か。

 

 

魔法と補正式と星の加護、集合的無意識を形成する全ての人類の助力を得て魔法使いはただ一つの力を発現させている。

その名を極星よ我が敵を照らせ(センチネル・ステラリス)といった。

いつかどこかで、名前も判らない誰かが繋いだ縁を辿って彼はこれを使用することができる。

この力がなければ足元に縋ることさえも出来ないだろう。

 

 

 

そして自分と相手の敗北条件を彼は改めて確認した。

魔法使いはガンヴィウスから視線を逸らし未だに光を星に撃ち込み続けているコロッサスを見た。

シュラウドを理解しえない魔法使いにさえあれが想像を絶する力で守護されていることくらいは判る。

 

 

英霊と真祖の軍団は頼もしい限りだが、彼らは宇宙での戦闘は不可能だ。

唯一可能なのは朱い月くらいだが、いくら彼でも単騎でアレに向かえば瞬時に葬られるだろう。

相手は遥か彼方の宙の支配者である故に、地上での戦いよりも宇宙空間の戦闘の方が得意なのは当然だ。

 

 

 

普通に真っ向からやりあえば自分たちに勝機など殆どないことを魔法使いは()()()()()()()

数多くの並行世界はいまだに残ってこそいるが、じわじわと青紫色の霧がこの世界の可能性と未来を蝕みだしているのを彼は認識している。

何とかガンヴィウスの意識をほんの微かでもよいから自分たちより逸らさなくてはならない。

 

 

時間はどうあっても魔法使いたちに不利に働く。

コロッサスをどうにかしなければガンヴィウスを倒したところで意味はない。

 

 

だがバロールの瞳でさえ理解しきれず、この世で最も壮絶な毒を飲み干して意気揚々としている存在の注意をどうやって逸らすかが問題である。

困ったなと胸中で呟く魔法使いに数多くの勇者たちが「任せろと」答えた。

 

 

 

「彼ら」が配布したエーテルが消費され大量の空間の歪みが現出する。空を覆い尽くすように、流星の如く。

周囲に奇妙な術式の帯を纏った青白い光球が一つ現れれば、それは弾けたように膨れ上がり一人の人間の姿となった。

小柄ながらも覇気を纏い天空より威風堂々とガンヴィウスを睨みつけるのは金髪の少女、異なる歴史で皇帝となったネロ・クラウディウスその人である。

 

 

「偽りの神祖よ。簒奪者よ。我が愛しきローマを弄びし大罪を贖う時がきたぞ」

 

 

所々に豪奢な金の鎧を纏いながらも豊満な肉体を象徴するような装備──神話礼装を彼女は纏い、この場に現れていた。

翡翠色の瞳がガンヴィウスの青紫色の眼をじっと見つめている。

敵意を向けられながらもガンヴィウスこと「彼ら」は古い知人に出会った時の様に微笑みを浮かべて彼女に話しかけた。

 

 

「相も変わらず装飾過多な装備だな。違う世の身とはいえ贅沢癖は相変わらずと見える」

 

 

久しぶりだな、とガンヴィウスが優しく言葉を続ければネロの顔は苦渋に歪んだ。

この世界を観測して以来シュラウド経由で流し込まれる此方の自分の記憶は彼女を蝕みこそしないが、精神的な痛打を与えうるものであった。

此方のネロにとってガンヴィウスという存在は父親代わりともいえる存在であった。

 

 

母から解放してくれた。

父母を失い最初からやり直しとなった彼女の人生を人知れず援助してくれたのも彼だ。

金銀で身を飾った所で心は満たせないと諭してくれたのも、皇帝になったからといって誰もが無条件で愛してくれるわけではないと説いたのも彼だった。

 

 

お前にはこの距離がちょうどよいと民草と触れ合い、共に笑い合い、苦労を分かち合う世界への道を開いてくれた。

熱心に報告する自分の考えに頷き、賛同し、時には批判と手直しをしてくれたのもこの怪物と自分たちが呼ぶ存在だ。

 

 

大勢の愛と嘆きに満ちた華々しい最期を彩ってくれたのもガンヴィウスである。

張りぼての様に観客が誰もいない劇場ではなく、万雷の拍手と喝采、離別の言葉が舞い散る黄金の劇場という夢を叶えてくれたのも───。

 

 

「余は皇帝ネロ・クラウディウスである。貴様の語るネロではない」

 

 

ネロは頭を振って心を蝕むこちら側の自分の記憶を切り捨てた。

甘い誘惑を皇帝は否定する。彼女の中に宿り力を貸してくれている皇帝たちもまた同じようにして彼女の背を押した。

とても素晴らしいものだからこそ、あのような甘い世界ばかり見てはならないと。

 

 

民に見放され荒野で一人果てた最期こそが自分だ。あれこそが正しい歴史だ。

どうあっても交わることはなく、同時に存在も許されない。

確実に、必ず、絶対に切除して否定しなくてはならい。

 

 

だからこそ、彼女は炎の様な剣を空に翳し声を張り上げた。

世界全てに届くように、祈るように。願う様に。

 

 

「我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むモノ。 

 多くの知識を育て、多くの資源を巡らせ、多くの生命を流転させた」

 

 

滔々と告げられる声に多くの人が彼女を見た。

シュラウドの力によって熱に浮かされるローマも、二転三転する戦場に混乱としながらもローマとの戦を続けようとする騎士たちも。

「彼ら」でさえ高次元から落下してくる高濃度のサイオニック・エネルギーの氾濫に好奇を抱いていた。

 

 

「今、その歩みを否定せんとする者がいる。我らの歴史を無へと返さんとする者が! 

 神祖の座を奪い取り、更には我々の未来をも閉ざそうとしている! 

 その所行、決して余たちは許さぬ!」

 

 

魔法使いは僅かばかりの時間を使って対抗策を考え、朱い月は本来ならば自分が向けられる筈だった力を観察していた。

 

 

 

黎明の空に流星が幾つも飛び交う。

多種多様な英雄を始めとするうたわれるものたちが星の危機という最大の見せ場に対して駆けつけていた。

最初に侵略者に対して口火を切ったのは古代メソポタミアに伝わる女神であった。

 

 

高次元より繋げられた“道”を辿り彼女は権能をこの地へと降ろしている。

 

 

────気に入らないわね。私を差し置いて星々の支配者を名乗るなんて不遜にも程があるわ。

 

 

傲慢にして気高く、それでいて常に退屈に飢えている彼女はこのイベントを楽しんでいた。

大勢の英雄(玩具)が集い、中々に見所のある技を披露していく戦場は勝利を司る彼女にとっては社交場にも等しい。

故に最大最強最優最美を自称する彼女は最高の見せ場を奪おうと画策している。

 

 

かつて地球の全ての神話の神々を蹂躙し、メソポタミアの神々さえ慈悲を乞うしかなかった遊星の巨人の襲来。

それさえも上回る侵略者を自分が討伐すれば女神としての名は更に比類なき次元まで高まるだろうという目論見がそこにはあった。

 

 

女神が指を鳴らす。

戦女神は不埒な侵略者に対して天からの采配を与えるべく支配者としての権能を行使し、自らの忠実なる下僕を呼び出した。

大気が渦巻く。轟雷が鳴り渡り、巨大な雲が収束した後に現れるはグガランナ(天の牡牛)であった。

 

 

シュメル最大にして数多くある神話の獣の中でも最大級の巨躯と破壊力を秘めた怪物が傍から見れば緩慢に───実際は途方もない速度で───動き出す。

黄金の大蹄は大地と空との間にあるすべてを磨り潰すべく、ブリテン島そのものを吹き飛ばす勢いで落下を開始した。

正しくこれは隕石直撃に匹敵する破壊規模であった。

 

 

 

しかしながら輝く空が落ちてくる光景を見ていた三者に動揺はなかった。

ガンヴィウスは物珍しいモノを見るように、魔法使いと朱い月はこの先の展開など判り切っているゆえに自分たちさえ巻き添えになるかもしれない攻撃を見ても表情一つ変えていない。

ネロでさえ顔を顰めてグガランナの挙動を見ている。

 

 

ガンヴィウスの人差し指が落下してくる蹄に向けられる。

αクラスのエネルギーが帯電と共にそこに収束し暗いながらも透き通った青い光の線───α・エネルギーランスが発射された。

ソレは落下してくるグガランナの蹄を打ち抜き、足を貫通し、肩より突き抜けた後に空へと伸び続ける。

 

 

細長い天と地を結ぶ塔のような有様となったランスを指先で「彼ら」は手繰る。

地平線の彼方に向けて指先を向ければエネルギーの濁流にくし刺しにされたままグガランナは悲鳴を上げて暴力的な力によってその身を軽々と引きずり回される。

串にささった虫を弄ぶようにガンヴィウスはグガランナを指の動きだけで綿の様に振り回した。

 

 

 

出力とエネルギーの流れを操作すればグガランナはαエネルギーの濁流によって指が指し示す方向、大西洋側の地平線へと向けて加速しながら吹き飛び、丸みを帯びた星の構造上

当然の原理として海面に水平に突っ込んだ。

巨大な津波を発生させながらも牡牛はもがき続けながら海面をバターナイフの様に切り上げ突き進む。

 

 

ガンヴィウスが指を微かに右に振った。

10センチほど横に指を動かしただけだが地球の高軌道(35,786km)を超える長さの光槍の根元でそんなことをすれば、全体のズレは途方もないことになる。

当然の帰結として大西洋の31.7%が水深2000mより上を失った。

 

 

では無くなってしまった部分は何処に行ったか?

宇宙空間から見れば雲よりも高い位置に綺麗に整えられた青いピザが浮かんでいた。

透き通った美しさを考慮すればこれはピザというよりも人間の眼に装着するコンタクトレンズと表現すべきかもしれない。

 

 

星の表面がスライスされて切り上げられている。

太陽光を反射してヨーロッパと同じ程の大きさがあるレンズがキラキラと輝いていた。

海底の火山や山脈が一部露出し、ガラスの様に磨き抜かれた美しい切断面を晒している。

 

 

重力に従い巨大な“レンズ”が落下し始める。

グガランナの蹄が可愛く思える程の超質量の落下はブリテン島を始めとした大陸沿岸に途方もない規模の津波被害を引き起こしてしまうだろう。

「おっと」とガンヴィウスが小さく呟ければ周囲の重力と空間の連続性が操作され、このあり得ないほどに巨大な天空の海は極めてゆっくりと、周囲に影響を与えないようにそっと降ろされる。

 

 

 

グガランナは未だαエネルギーランスに突き刺されたまま、地球から遠く離れた地……距離にして約5万キロほどの地点にまで吹き飛ばされていた。

真っ暗闇な宇宙空間の中、遠ざかるSOL3を牡牛は見つめている。

「彼ら」がエネルギーランスに更に念と追加のエネルギーを送り込む。

 

 

 

青光りが一瞬だけ瞬いたかと思えば、脈打つ様に膨大な加工されたダーク・エネルギーが指先から放出され、それは超光速を以て瞬時に天の牡牛へと到達した。

悲鳴はなかった。宇宙では悲鳴は誰にも聞こえない。

グガランナの体内に送り込まれた最適化されたダーク・エネルギーは瞬時に一種の時空特異点を形成する。

 

 

極めて小さいソレの名は第一級時空特異点といった。

疑似的に引き起こされるゼロ・ポイント生成(宇宙誕生)は牡牛の内部において真空エネルギーの流転を引き起こしていた。

いわば体内でビッグバンが発生したようなものだ。

 

 

不安定な宇宙膜が誕生し、それはα・エネルギーにより膨張と収縮を繰り返す。

しかし元より安定など考慮されていないソレは瞬時に泡が割れるようにパンっとはじけた。

瞬間、グガランナを中心に何も存在しえない「α」が現出した。

 

 

重力レンズの如く周囲の色彩全てを拒絶する暗黒の欠落は音も揺らぎも量子さえもなくぴったり計算通り半径200キロまで広がった後、空間にしみ込む様に消え去った。

もうその場にグガランナは存在していない。

その身を構成する霊子の欠片一つも残さず消え去り、痕跡さえ許されていないのだ。

 

 

────よくも、よくも、よくも……。

 

 

怒りに燃えた声が天から響く。

もはや声さとさえ認識できないソレは女神の怒りであった。

面目を潰され、己の財産を消し去られた女は怒りのままに権能を行使した。

 

 

ゲートウェイが形成される。

神代に匹敵凌駕するであろうエーテルの濃度が原初の権能をそのままの形で行使することを可能とした。

向こう側に見えるのはSOL星系、第二惑星SOL2であった。

 

 

「懲りぬ奴め」

 

 

朱い月が開かれていくゲートを見て呆れたように呟いた。

惑星という概念が高密度のエーテルとして抽出され掌に収まるほどに圧縮後、天罰の如くガンヴィウスへと落ちてくる。

だがガンヴィウスはもうそちらに目線を向けてはいなかった。

 

 

眼中にない状態で彼は空間を操作する。

重力場を反転させ、加速させただけだ。一応色をつけて少々のαエネルギーも込めておいてやる。

そして理解が深まりつつある黎明の世の、彼女の部屋へと向けて扉を開いた。

 

 

SOL2は秒速60キロという速度で女神の座へと向けて「落下」した。

エーテル弾が黎明の世に侵入した時点でガンヴィウスは扉を閉ざす。

此方の世界には何の影響もなかったが、以降かの女神の声と気配がこちらに漏れてくることはなくなった。

 

 

ガンヴィウスが魔法使いと朱い月に顔を向ける。

一つの神話体系の中でも最大の獣を消し去り、最高位の女神の1柱を黙らせた後とは思えないほどに彼は全く消耗していない。

 

 

「次は何を見せてくれるのかな?」

 

 

流星の様に降り注ぐエーテル生命体(英霊たち)を背にしつつ彼は微笑みを絶やさない。

英霊たちは自分たちではガンヴィウスに敵わないと冷静に判断したのか、まずは彼の眷属であるプロメシアン達の攻撃に回っていた。

少しでも彼の尖兵を削り取り、侵攻を抑えるべく機械の軍団にあらゆる神話や伝説の英雄たちが挑みかかった。

 

 

もはや10倍以上にまで増殖したプロメシアンの軍団が真祖と英霊たちを相手取りながら戦う様は神話の光景であった。

そんな中、ネロ・クラウディウスがガンヴィウスの目前に降りてくる。

 

 

彼女は憂いと決意の入り混じった瞳でガンヴィウスを見ていた。

そんな彼女()()に「彼ら」は声をかけた。

 

 

「いやはや。本当に懐かしいものだ……まさかまたお前()()と出会う事になるとはな」

 

 

手を叩いて老人は笑う。

久しぶりに孫と再会した時の様に。

「彼ら」の瞳はネロに重なり合って彼女に力を貸している存在たちを一人一人見分けた上で分析できるのだ。

 

 

高次より引き出した情報を吟味しつつガンヴィウスは雑談を楽しむ様に声をかけていく。

 

 

「カエサル。此方のお前はエジプトの女王と正式に婚約したぞ。

 かの砂漠の地を安定してローマに組み込むために必要だったのでな。

 皇帝と女王の婚儀は盛大な盛り上がりであった────お前たちは正しく理想の夫婦だった」

 

 

数多くの子宝をお前たち夫婦は作っていたなとガンヴィウスが続ければ赤い服で着飾った精悍な男の顔が苦渋に歪む。

妻子と共にゆっくりと年を取っていき、子や孫たちに看取られる自分という夢物語は他者を翻弄することにたけていた男でさえ平常心を失いかねない甘い夢であった。

 

 

「カリギュラ。

 そちらのお前は狂ったままなのだな。

 私の知るお前は皇帝には至らなかったが、精力的に政務を遂行する優れた男であったよ。

 ネロとよく共にいた姿が記憶に残っているとも。二人ともよく私に尽くしてくれた」

 

 

野獣の様な声で男が吠えた。

月女神とは名ばかりの壊れた機械による干渉を取り除かれ、父母を失ったネロと共にガンヴィウスに仕えた記憶は男の狂気に満ちた思考の中であっても眩い程に輝かしい日常の姿だった。

 

 

更に一人一人ガンヴィウスはネロに重なる皇帝たちに声をかけていく。

自分の世界では殆どが皇帝になれなかった者たちであるが、ガンヴィウスは罵倒することも見下すこともせずに丁寧に労いの言葉をかけ続けた。

そうしてから彼は最後にあえて残していたネロへと目線を向けて笑う。

 

 

「ネロ。お前ほど民に愛された者はいなかった」

 

 

「やめよ」

 

 

感情を極力排した声でネロがガンヴィウスを遮ろうとするが「彼ら」は付き合うことなく朗々と言葉を紡いでいく。

 

 

「一度は全てを失いながらもお前はそれでも心底諦めなかった。

 自棄にならず自分が民に何が出来るかを常に考え、自分で答えに至る賢明さがあった。

 高みから見下ろす皇帝ではなく、民と共に歩む距離こそお前の最も力を発揮できる場所だと自力で気が付けた」

 

 

「っっっ! 余を惑わせるな! 貴様の語る世界など全てが過ちだ!!

 人類が作ろうとする未来を奪おうとしておきながらどの口で言うか!」

 

 

──百万を超える参列者が居た。皆が涙を流しネロの最期を悲しんでくれた。

──誰もいなかった。あれだけ自分を称えてくれた取り巻きも、家族も、自分を守るはずだった兵士たちさえも。

 

 

──老婆となり深い皺を幾つも体に刻み、かつての隆盛は見る影もない程にやせ細りながらも満足に微笑み永遠の眠りにつく女が居た。

──……手が、震えて狙いが定まらぬ。それに……誰も看取る者はいないのか? よ……余は今から死ぬのだぞっ!?

 

 

あらゆる意味で真逆であった。

愛された女と愛を理解されなかった女。

通わせる事が出来た者と、一方通行で誰にも判ってもらえなかった者。

 

 

ネロは美しい顔を堪えきれない激情で真っ赤に染め上げながらガンヴィウスを睨む。

朱い月と魔法使いはそんな彼女の両隣に歩み寄り、目線を軽く向けた。

 

 

「始めるぞ?」

 

 

 

「……口惜しいが余たちでは奴に一矢報いる事も出来ないだろう。

 権能さえ超えた力を振るう奴にはこのままでは到底届きえぬ……故に、頼む」

 

 

魔法使いの問いにネロは頷く。

彼の中に在る72柱の術式が既にネロたちという最高の媒介を元として術式を回し始めていた。

燃料には困らない。縁も全く問題なく、更にいうなれば今は世界があやふやな状態であり、何より危機が訪れている。

 

 

後は相手が答えるかどうかだけであったが、これは心配さえしていなかった。

宝石の剣が輝き、ネロを中心に人の歴史の根底たる可能性が収束した。

真なるエーテルが貪られ数多くの人々の信仰によって生じたサイオニック・エネルギーが集う。

 

 

7つの守護者にして偉大なる席さえも一つへと束ねられ、究極の一の御座が作られた。

 

 

かつて「彼ら」によるレポートにおいて多くの民たちから信仰の念を受けている自分たちが

この世界における「神」へと昇華する予兆を見せない事を疑問視していた事がある。

信仰というサイオニック・エネルギーとエーテルの化合さえあれば土地や災害という概念でさえ神へと昇華するというのに、なぜ、と。

 

 

その答えが此処にあった。

信仰は間違いなく発生していた。ただし、星はその念を別の所へと流していたのだ。

膨大な量のサイオニック・エネルギーは供給されていた……()()()()()へと。

 

 

 

青く澄んだ光の瞬きが消え去った後、ネロの立っていた場所には一人の青年が立っていた。

群青色の髪。真っ赤な瞳。褐色の肌。見る者を圧倒する途方もない存在感。

青い民族衣装に身を包む男は正しく神と評されるべき偉大なる存在であった。

 

 

そしてガンヴィウスはこの存在に覚えがあった。

たまらず彼は笑った。

本当に今日一日で何度この星は自分たちを驚かせてくれるのだろうかという喜びを込めて。

 

 

 

「そういえばお前が居たか。───奪われたモノ(クィリヌスの玉座)を取り戻しに来たか?」

 

 

「否である。私はお前に怒りは抱いていない」

 

 

嵐に紛れて抹殺し、その座と居場所を奪い取った男が奪われた者へと問う。

しかし彼───真なるローマの最高神ロムルス=クィリヌスは凪の様に静かな声でガンヴィウス=クィリヌスの言葉を否定した。

そうか、と老人が頷き、若き神が声を発する。

 

 

意外な事にロムルス=クィリヌスは敬意をもってガンヴィウスへと話しかけた。

 

 

「民を愛し、民を導き、外なる思考でありながらも紛れもなくお前はローマ(人類)を思っている。

 怒りなど抱く筈もなし。お前は間違いなくローマを愛している。故にお前もまた私(お前もローマ )なのだ」

 

 

「では邪魔をやめてもらいたいものだ。

 シュラウドの力がこの星を制し、永遠帝国がこの世を平らげ安寧と宙を駆ける時代(星間航行文明 )が訪れる。

 それは君の願いと同じものだろう。マーリンにも同じことを聞いたが───何が気に入らない?」

 

 

ロムルス=クィリヌスが頭を振った。

同じ所を見ているようでそれでいて意識にどうしようもないズレが存在する二柱のクィリヌス達は対峙し判りあえないという事を改めて確認していく。

 

 

「我が影よ。人を愛しながらも信じぬ者よ。この星に魅入られた者たち。

 遥か彼方から来たりし放浪者……どうか一度でよいから信じてやってほしい。

 この星の生命はいつかお前たちの手を借りずとも星の世界に至れると、いつか手に入れるであろうアポロンの灯(核融合技術)を必ずや使いこなせるのだと」

 

 

「それは出来ない話だ。ルキウスへの禅譲は確定事項である。アレに今後の未来図(最高効率の未来運営 )を下賜する予定に変更はない」

 

 

ガンヴィウスは淡々と返す。

ルキウスの圧倒的な力は永遠帝国が星を統一した後、人心を掌握するのに有効な道具となるだろう。

この星の霊長という根本的に攻撃的で協調性にかけた種族を纏め上げるにはあれほどの力がないと難しいという計算結果がある。

 

 

当然だが惑星統合政府、星間国家にやがて至る為の最初の一粒はとても不安定である。

周辺の星系に入植し宇宙の広大さを国民全員が自覚するまではどうしてもかつての小規模な国家という括りを意識してしまう。

 

 

かつて相手したカッツェナティグ帝国という国がいい例である。

一代で惑星を統合し銀河の支配を目論んだカイザー・カッツェンというカリスマ的存在でさえ反乱軍の発生を抑えきる事は出来なかったのだから。

ガンヴィウスとしては手塩にかけて育て上げた国家と息子が最初の一歩で躓き滅ぶ光景など見たくはない。

 

 

 

「宗教、人種、立地、埋蔵資源、文化、多くの要素を考慮した所、200と少しといった所か。

 仮に我々が手を貸さずに進んでいればこの星にはそれだけの数の国家が現れる事が判っている。

 これは余りに異常な数である。核の力を振るえるだけの国力を持つ国が1割と見ても20の国が互いに星を焼き尽くす力を向け合う事になるのだ」

 

 

 

勿論誰しも世界の破滅など望まない故に滅多なことで直接的な戦争は起こらないだろう。

だがその代わりに延々と続くのは足の引っ張り合いだ。

誰かが宙へと至ろうとしたらそれを邪魔し発展を妨げあう不毛なやり取りが続くだろうことは計算などしなくても明らかだ。

 

 

そして、ほんの小さなちょっとしたミスで星が滅ぶこともありえるのだ。

アラームやレーダーの故障や太陽風の影響などでミサイル攻撃を受けたと誤認した国家が報復攻撃を実行、等ということが実際に起きたのを「彼ら」は見たことがある。

 

 

惑星全土に広がる核爆発。

宇宙空間では大したことのない兵器だが、燃焼する大気圏内では威力が跳ね上がり、正しく地獄という有様であった。

 

 

地獄を見た。

嘆きを見た。

苦痛を見た。

悲劇を見た。

 

 

数十億の可能性が途絶える瞬間を見た。

 

 

切っ掛けから滅ぶ瞬間までを記録したデータだけは残った。

原始的な文明は我々が手を貸してやらなければ高確率で滅ぶという教訓を得た。

幾つもの惑星とそこに住まう命という対価を払って得た教えだった。

 

 

ガンヴィウスはクィリヌスに相対しながら自分を拒絶する全てに向けて口を開く。

言語で、思念で、あらゆる媒体を通して彼の問いが人類史へと送られた。

遥か先を行く者たちから、幼いながらも進む者たち、前しか見ていない者たちへと語り掛けられる。

 

 

「常々思っていた。

 お前たちは我々には無限の可能性があると祝福の様に言うが、それが意味する陥穽に気づいているのかね?」

 

 

宙を仰ぎ星を穿つコロッサスの更に先、太陽系よりも更に更に向こう側、銀河の光を眺めながら「彼ら」は言った。

 

 

「いかに選択肢が無限にあろうと、迎えられる結果は有限だ。

 行き過ぎた多様性はいずれとてつもない揺り返しを引き起こす。

 ましてや“無限の可能性”の全てが自分たちにとって都合のよい未来ばかりでないことは重々承知しているだろう」

 

 

だからこそと「彼ら」は言う。

戦いも佳境に入り、多くの手札が導入され、更なる激戦へと至ろうとしているこの局面において「彼ら」は心の底から世界へと問いかけていた。

悪意も嘲りでもない、純粋な疑問であった。

 

 

全てを間違わず正解だけを選べる存在(人を超えた神 )になれと言っているのではない。

 冒す必要のない間違いはしなくていいと言っているのだよ。

 何十という文明の最期を看取り綴られた教科書を見るのがそんなに嫌か?」

 

 

だろうな、とガンヴィウスは鼻を鳴らした。

言ってきかない事は十二分に承知している。

この手の我が強い種族はいくら道理を説こうと理屈では納得しないだろう。

 

それに何よりこれは建前である。

与えてやるのだからお前たちも寄越せという、上位者の傲慢を綺麗な理屈で覆い隠しているだけにすぎないかもしれない。

 

 

「彼らは手探りであろうとも答えを探し出して見せるだろう。

 神の揺りかごより旅立ち、いずれこの星を後にし星々に拡がってゆけると私は信じている。

 その未来を作る礎こそがローマなのだ」

 

 

クィリヌスが一歩踏み出す。彼の衣装が変わる。

青い衣服より黄金色の機械とエーテルで編み込まれた高度なバトルスーツへと。

両腕を掲げる。途方もないサイオニック・エネルギーが収束し真っ赤に輝く。

 

 

もはや今の彼は冠位という器でさえ収まり切れない巨大にして高次の存在であった。

ガンヴィウスが導き集めてきた信仰というサイオニック・エネルギーを糧に真なるクィリヌスは()をガンヴィウスへと突き出す。

真っ赤な閃光が閃き───それはサイオニック・シールドを存在しないかのように突き抜けてガンヴィウスの中性子星と同等の密度を持つ肉体を穿った。

 

 

傷の開いた胸から鮮血の代わりに噴き出るのは高濃度のシュラウド・エネルギーだ。

直ぐに身体に開いた穴は塞がれるが、傷を負ったという事実が「彼ら」の興味を惹いた。

ステラー級の演算能力と彼らの直感、そしてこの星において得た知見をすぐさま複合し仮初とはいえ答えを導き出す。

 

 

シールドが反発した形跡はなく、光を素通りさせた事実を基に「彼ら」は推測した。

 

 

「なるほど。貫通ではなく“開通”か。この星において私とお前が同じであると認識されているのも大きく作用しているようだ」

 

 

他者からの攻撃を無力化するサイオニック・シールドであるが、自分から他者への攻撃は素通りさせる性質がある。

でなければいちいち攻撃時に鎧を脱ぐという愚かな行為が必要になってしまう。

また艦載機が母艦から発艦する時や帰還する時は艦載機と母艦のシールドの波長を合わせて衝突しないようにする等がシールドを無視できる状況だ。

 

 

 

クィリヌスからの攻撃は全てガンヴィウスの攻撃であると世界が認識/定義し、彼の攻撃は自傷行為となる為シールドは機能しない。

もしくはあの光はシールドの最高でジフィ秒単位で変化を続ける波長と瞬時に同位となりシールドを無視できる。

「彼ら」は以上2つの仮説を以てサイオニック・シールドが無力化された理由を導き出した。

 

 

“開通”されたシールドを食い破るようにロムルスの放った閃光の残照が残り続け、シールドを中和し穴を拡大させていく様を見たガンヴィウスは

恐らく2つ目の仮説が有力だなと当たりをつけた。

瞬く間に今まで無敵を誇った防御力場が使い物にならなくなっていく光景を見ながらも「彼ら」は冷静に対策を講じていく。

 

 

恐らくαや、それどころかΣ級のシールドを張っても無意味だろう。

あれは防御を力技で撃ち抜くのではなく同化して無力化する類の光、アーク放電攻撃に近い本質への直接攻撃だ。

同じ原理で中性子星並の密度と質量を持つ鎧を打ち抜き、ガンヴィウスという端末を傷つけられたのだろう。

 

 

つまり、ロムルス=クィリヌスはガンヴィウスを滅ぼしえる可能性があるということだ。

その事実は「彼ら」に深い驚愕と同時に満足を覚えさせた。

文明レベル6の原始的な知性体の精神活動が生み出したサイオニック・生命体がそれほどの力を発揮できるというのは正しく精神活動の発生させる力の凄まじさの証明に他ならない。

 

 

種の割れた手品を使い続けても興ざめと判断した「彼ら」は一度シールドを完全に解除した。

 

 

 

「身軽になったようで何よりだ。では、少しばかり踊ろうか」

 

 

好機とばかりに朱い月がガンヴィウスへと飛びかかる。先ほどとは比較にならない速さだった。

人間でいう所の少し強めに踏み込んだ程度の動作であるが、彼という怪物が行えばソレはルキウスを遥かに凌駕した速度による移動となる。

軽々とこの星の定める限界数値を遥か彼方に置き去りにし、彼はルキウスでさえシュラウドの力を借りねば実現できないFTLの域へと文字通り足を踏み込んだ。

 

 

超光速で飛来する朱い月に対して当然ガンヴィウスは反応する。

指先を向け先ほど彼を焼き焦がしたアーク放電攻撃を放つ。

飛来する翡翠色の稲妻に対して朱い月はあろうことか爪を立てた。

 

 

暴れ狂う稲妻を彼はエーテルを纏った指でしっかりと握りしめて離さない。

腕が漏れ出た電流で黒焦げになろうが意にも介さなかった。

 

 

指先が焦げていく中、彼は意図して自分の体の再生能力をソコに集中させた。

徐々にではあるが彼の指は崩壊と再生を繰り返しながらも着実に再生が勝っていく。

朱い月の身体は凄まじい速度で学習を繰り返す。一度自分を傷つけたモノを理解し、吸収し、そして支配しようとする。

 

 

彼は願った。この光を理解したいと。

心臓が答えるべく早鐘をうった。

彼の脳は今までにない速度で回転し、活性化する。

 

 

「美しい光だ。あぁ、宙の法とはこのような色彩であったか……」

 

 

心臓が鼓動を早めるなか、彼は古き故郷を懐かしむような表情で暗黒のエネルギーと物質を見つめていた。

そして一言「至った」と朱い月は呟き、腕に力を込めた。

爪に翡翠色のエーテルが宿れば彼はそれを一振りした。

 

 

 

濁流の様に放たれていたアーク放電攻撃が真っ二つに断ち切られ霧散する。

周囲に拡散した僅かな破壊エネルギーの余波がブリテン島の形を少しばかり変えてしまったが、仕方ない。

放電攻撃を断ち切ってなお余りある破壊の力がガンヴィウスの身体に打ち付けられ、僅かに途方もない密度と質量を誇る彼の鎧を揺らした。

 

 

みしりと微かに中性子星の鎧が軋む。

暗黒物質/暗黒エネルギーを攻撃に応用した一撃は星さえも揺らがせる。

ガンヴィウスのそれに比べればあまりに稚拙な理解であったが、それでも朱い月は「彼ら」の足元へようやく至った。

 

 

「面白いぞ。ようやく開戦の気迫に値する結果を出せた。

 そなたの期待を裏切りなどはせぬよ、まだまだ存分に戯れる事を許せ」

 

 

艶めかしく朱い月は笑い、熱い息を吐く。

正に多くの人々を狂わせる魔性の美がここにはあった。

ガンヴィウスは自分の顔に手をやり、確かめるように触る。

 

 

自分が今どのような表情をしているか判らなかったのだ。

頬が吊りあがっている。目元に更に深い皺がある。

どうやら自分は今笑っているらしいと「彼ら」は思い至った。

 

かつて銀河を支配するために戦いに明け暮れた日々を思い出す。

幾つもの星を砕き、焼き尽くし、多くの種を浄化した時もあった。

星系を破壊したことも、銀河そのものを破壊してしまう程の天を砕く兵器を作り上げたことさえあった。

 

 

ネメシスという名前の全てを滅ぼす兵器を生み出したこともある。

知的好奇心の赴くまま、望むがままに多くの銀河を荒らしまわった過去の青い思い出を「彼ら」は想起していた。

 

 

ガンヴィウスが口を開き何かを言おうとするが、朱い月がそれを見越していたかの様にガンヴィウスが言おうとした単語を乗っ取った。

 

 

「“大変結構”……であったか? 

 ふふっ、許せ。私も一度言ってみたかったのだ」

 

 

「そうか」

 

 

子供が大人にじゃれついている時の様な笑顔を浮かべている月の王に向けてガンヴィウスは身じろぎ一つせずに佇み、幾つかのプロトコルを実行に移す。

 

 

 

 

───原始文明保護機能(対星系・対次元攻撃解放開始)、限定解除開始。




次話はネメシス発売後くらいになりそうです。ゆっくりとお待ちください。

そして少々アンケート機能を試してみました。
今後の展開に影響はありませんのでよろしければお気軽にどうぞ。

ガンヴィウスこと「彼ら」に地球と人類の未来を委ねるのは……?

  • あり。
  • なし。
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