fate/stellaris 【完結】   作:宇宙きのこ

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「選ばれし者」

ステラリス世界における統治者のスキル。
この存在はシュラウドと強く同化しており
文明レベル1(銀河を支配する超大国)からみても信じられない程に強大な超能力を行使でき、また死という概念を超越しているため幾つかの例外イベントを除けば不滅の存在である。


この設定を考慮してガンヴィウスの戦闘シーンを書いてみました。

そして最後の方に文字化けしてる個所がありますが、仕様です。



天上戦争3

【天上戦争・3】

 

 

 

シールドという鎧を脱ぎ去り、無敵とも思える中性子星の盾さえも貫通される危険性を認識した事によって「彼ら」は本格的に戦闘態勢を取り始めた。

元より全ては想定通り、という訳でもないがこの星の勢力の全身全霊の抵抗が発生することは大前提であった為に「彼ら」は前もって用意しておいた戦闘プランを実行に移すことにした。

つまり原始文明相手に掛けていた手加減を部分的にであるが、やめるということだ。

 

 

残念ながら英霊たちのアドバイスを実行することは出来なかった。

さて、「彼ら」の思考をあえて言語化すればこのような単語が並んでいることだろう。

 

 

 

『知性体保護機能限定解除』

 

 

『敵味方識別完了』

 

 

『ローマ防衛措置完了』

 

 

『惑星破壊防止用安全装置 一部解除』

 

 

『星系破壊防止用安全装置 一部解除』

 

 

『コロッサス護衛艦隊 攻撃態勢』

 

 

『テクスチャ干渉開始』

 

 

『ヴルタウム起動準備』

 

 

『ミニチュア銀河 展開準備開始』

 

 

『リアクター出力増大許可 第18級時空特異点安定。相転移反応数増大』

 

 

『シュラウド・エネルギー出力上昇許可』

 

 

『惑星解放装置 執行率46% 全シークエンス問題なし』

 

 

 

『“戦場”の構築を開始』

 

 

 

 

多種多様な加減が取り払われていく。

急速に膨れ上がり、やがては()()()()()()()()()()()ガンヴィウスの気配に対して彼と相対する三者はこれからが本番なのだと察した。

ガンヴィウスが片手の指先を魔法使いたちに向けた。

その瞬間、ソレを向けられた全員が死を予感した。

 

 

 

桁が違うなどという次元の話ではなかった。

どれだけ力が大きくなったかさえ判らない。

増えた桁の数さえ認識できない域になったと魔法使いたちは悟った。

 

 

放たれたのは先ほどまで彼が愛用していた稲妻ではなく、青紫色に輝く光の渦だ。

シュラウドの力を破壊に向けて直接的に振るった結果生じるシュラウド・ストームである。

SOL3の未来において登場する超能力の派生の一つである歪曲の魔眼に似通った能力をコレは持っている。

 

 

否。かの魔眼と根底こそ同じであるが規模、精度、威力、射程、全てにおいて比ではなかった。

三次元で生じる全ての()()を内包したシュラウド・エネルギーはいわば空間をぐちゃぐちゃにするミキサーだ。

全ての物質的、空間的、強度的な要素を無視して巻き込まれた一切合切全てを蹂躙する破壊の嵐といえよう。

 

 

 

 

 

星を削り取りながらシュラウド・ストームは魔法使いたちに迫る。

しかし暴虐の前にロムルスが立ちふさがった。彼は両腕を大きく空へと掲げ、全身を煌めかせる。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

神が吠える。両腕が輝き、彼の背後において巨大な魔術陣が輝く。

多くの願いの光が瞬いた。

そしてロムルスが持つ国を作り守護するという権能が行使された。

 

 

真なる神祖が輝きを纏った腕を突き出せば放たれた黄金色の輝きとシュラウドの力が衝突した。

 

 

無限の歪曲と究極の貫通がぶつかりあえば、耐えられない周囲の空間に罅が入る。

結果、シュラウド・ストームは軌道を逸らされて軌道にある全てを消し去りながら宙の向こうへと消えていく。

何人か英霊が巻き込まれてしまい、不幸な彼らはエーテルの粒子一つ残さず消滅してしまった。

 

 

朱い月が駆けだす。

もはや彼は笑いさえもせず一切の表情を消した顔でガンヴィウスへと挑んだ。

翡翠色の輝きを纏った爪がガンヴィウスの身体に迫る中、神祖は青紫色の瞳で朱い月を見返した。

 

 

 

彼の掌に力が集う。

シュラウドとリアクターから供給される力を惜しみなく使って彼は事象崩壊という現象を呼び寄せた。

空間という容量の在る“場”をシュラウド・エネルギーが飽和させることにより超極小の特異点を形成し、あらゆる物質的防御を無効化する攻撃だ。

かの「女」でさえも一切の抵抗を許されずに葬り去られた技である。

 

 

半透明に輝く青紫色の光を手に宿し握りしめる。

拳を引き、勢いよく叩きつけるという原始的な攻撃をガンヴィウスは行う。

宙の力を纏った朱い月の爪とこの世ではありえない法則がぶつかった。

 

 

みしり、と世界に敷かれていたテクスチャそのものが本来あってはいけない規模の力が衝突することにより軋み、亀裂が走る。

莫大なエネルギーと法則が微かな時間、拮抗した。

勝負を分けたのは支配し出力できるエネルギーの絶対量の差であった。

 

 

簡単に言ってしまえば朱い月は惑星一つ分が精々だが「彼ら」は文字通り無限である。

朱い月の宿す翡翠色の力が残さず崩壊させられ、腕が消し飛ぶ。

そのまま肘、肩へと事象崩壊は連鎖していく。

 

 

ガンヴィウスが更に力を込める。

シュラウドの力が更に勢いを増して空間を飽和させ特異点を連続で形成した。

数限りなく発生する特異点を操作し束れば事象崩壊はもう止まらない。

 

 

 

虫食いの如く朱い月の身体が青紫色の光に飲み込まれ血液さえ残さず消滅していく。

脚を失い倒れかけようとする彼の胸に手をそっと添えた。

暗黒エネルギーが輪を描いて収束し、強力なエネルギーの濁流となって彼の身体を丸ごと飲み込んだ。

 

 

 

先にグガランナを消し飛ばしたαクラスのエネルギーランス攻撃である。

最低でも木星に大穴を穿ち、ガスを霧散させる程の力が月の王を消し去らんと輝いた。

余波で地軸が歪み、惑星の公転軌道が徐々にずれ始めた事を認識したガンヴィウスはエネルギー放出を停止する。

 

 

3秒間にも及ぶα・エネルギーランスの放流の後には何も残ってはいなかった。

朱い月が居た空間は沸騰しテクスチャさえもなくなり黒い穴が開いている。

修正力が働き、景色が縫い合わせる様にふさがっていく。

 

 

月の王は跡形もなく死んだ。

それは確かな筈だったが……。

 

 

「……」

 

 

ガンヴィウスは妙な引っ掛かりを覚えた。

余りに簡単に行き過ぎる。

確かに力の規模こそ上げたが、これは余りに順調に過ぎる結果だ。

 

 

朱い月の耐久性能がいかに高かろうと巨大ガス惑星を蒸発させるつもりで打ち込んだα・エネルギーランスを受ければこうなるのは必然だが

それでも妙な違和を「彼ら」は感じとり、やはりというべきか奇妙な量子のもつれを感じた。

シュラウドが力を行使する際に感じ取れる、世界が歪み、捻じれていく感覚にこれは近かった。

 

 

宙は既にシュラウドの力が覆っている。

星々は見えず、この世の法則は限りなく崩れ続けていた。

流れ星の様に輝く英霊たちの攻撃は未だに留まらないが、戦況はこちらが優勢だ。

 

 

 

そして「彼ら」は魔法使いを見て、その隣に当然の様に無傷で佇んでいる朱い月の存在を認めた。

たった今、間違いなく殺した筈の月の王は変わらずガンヴィウスを熱く見つめ返してくる。

驚愕はなかった、やはりなという直感の正しさを改めて実感する感慨だけがあった。

 

 

「…………」

 

 

理屈はまだ判らないが、どうやら朱い月は再び現れたらしいと「彼ら」は確認する。

蘇生した、再生した、はたまた攻撃を実は回避した、ではなく“現れた”という部分が重要だとガンヴィウスは考えた。

 

謎を解くために「彼ら」は認識できる範囲を広げた。

ヒントは揃っている、ピースは手の中にある。ならば繋げ合わせるだけだ。

星系一つ分から、複数の星団クラスタを掌握できるほどまでにセントリー・アレイを収束させ、更には当初の予定通り戦場の構築を速めた。

 

 

面白い。

「魔法」というのは決して名前負けしていないということか、と。

 

 

薄い霧が周囲を覆えば空間の連続性が歪む。

SOL星系全土の力場が狂わされ、それは魔法の齎す無数の可能性の同時運営と奇妙な反応を引き起こした。

星々が通常の宇宙よりはじき出され、時間軸から切除された星系(半径二光年)が丸ごと特異点と化す。

 

 

SOL星系全ての歴史が崩れ、浸食された。

もはや単一の惑星の話どころではない超巨大な歪みが現出する。

 

 

ここに人理は崩れ落ちた。もはや「点」ではなくこれは「孔」である。

存在するだけ多くの歴史を飲み込み可能性を収束させるビッグ・クランチであり、人類の可能性全てを蒐集しながら拡大する暗黒の星であった。

 

 

人理定礎値 観測及び表現不可能。 

 

 

前後の流れはここには存在しない。

ここで起きた事が基点となりえる。伸び続ける帯の始まりがここにはあった。

もしも未来か違う世界からコレを観測するレンズがあったとしたら、観測した瞬間に粉々に砕けてもおかしくないほどの規模の特異点であった。

 

 

既に正しい基準は何処にもない。

魔法使いたちか「彼ら」か、勝った方が全てを手に入れ、基準を作り上げる事が許されるのだ。

治すも乗っ取るも自由である。

 

 

 

一方的に潰される原始文明の劣等存在ではなく、欲しいものを手に入れる為には全力で排除しなくてはならない脅威と認識せざるを得ない

魔法使いたちに対してガンヴィウスは憎悪も嫌悪もなく純粋な感想を述べた。

 

 

「素晴らしい。全くもって判らないな(楽しいな)

 

 

魔法使いは答えなかった。

彼は光り輝く宝石の剣を翳し、無数の並行世界から瞬時にかき集めた魔力を以て極大の砲撃をガンヴィウスへと撃ち込む。

だが虹色に輝く光の濁流はガンヴィウスの眼前で停止する。

 

 

見ればガラス細工の様に空間がレンズと化しており、光は無茶苦茶に引き延ばされ歪曲させられた空間の中を乱反射している。

やがて歪曲は無数の渦を巻きながら一点に収束し、多面体と化した後は空間に黒い穴をあけて消え去った。

空間という概念に最も詳しい魔法使いはそれが先に見せたシュラウド・ストームの様な空間歪曲能力の応用だと瞬時に気が付き、思わず悪態をこぼした。

 

 

光速で飛翔する魔力砲撃に瞬時に対応して空間を歪めて防御力場を形成?

しかもそれを片手間かつ初見で行う?

なんてふざけた話だ、と。

 

 

「次から次へと新手を出しやがって……」

 

 

「君たちがそれを言うのかね……さて、戦場も問題なく構築できたようだ」

 

 

 

ガンヴィウスが周囲を見渡す。

星系が丸ごと特異点と化し、この中での破壊は通常空間に戻った際、ある程度はなかったことにできる。

つまり、戦いは更に激しくなるということだ。

 

 

英霊たちの攻撃はしつこく続いており、それらは真祖との連携によって着実にプロメシアン達を無力化させ始めている。

殺しきれないのならば封じればよいという考えの元、多くの機械兵たちは真祖が共同して作り上げた隔絶した空間の中に英霊たちによって押し込まれ、封じ込められ始めている。

 

 

アーサー王とルキウスの戦いは未だに続いており、現時点では結果はまだまだ先だろう。

両者の戦いは更に勢いを増しており、英霊たちでさえ手だしはできない域の争いであった。

コロッサスは順調、進捗は60%を遂に超え、星の攻略までもう半分は超えていた。

 

 

演算完了。

暫定的危険度把握。

優先排除対象設定。

 

 

「彼ら」はまずは邪魔な英霊を片付けることにした。

どうやら英霊たちはコロッサスの存在する宇宙空間までは行けず、直接惑星解放装置の妨害はできないようだが、それでも無視はできない存在達だ。

試しに撃ち込んだレールガンの攻撃が効果を発揮していないところを見るに、実弾や爆発系の兵器は殆ど無効化する性質がある事は確かだ。

恐らくはサイオニック・エネルギーを宿したレーザー系の兵装でなければあまり傷もつかないであろうしぶとい敵である。

 

 

 

 

そして何よりアレらは英雄にして革新者たちなのだ。

一人一人が世界を変える程の強い精神力の持ち主であり、決して油断はできない。

下手に時間などを与えたら思わぬ手を考え付く可能性がある故に早めに消しておくのが正解だ。

 

 

 

地上戦における効果的な戦法を「彼ら」は知識の奥底より引っ張り出す。

この星に存在する全ての者の根底に刻まれた「恐怖」を利用してやるべきだと判断した。

「彼ら」の故郷において恐怖戦術と呼ばれる戦法を選択。

 

 

抽出されたデータを見てガンヴィウスは懐かしいものを見るように目を細めた。

慈愛さえ感じる程に優しく彼はソレに呟く。

 

 

「思えば始まりはお前だった。ならば閉幕の瞬間に立ち会わせてやるのは道理だ」

 

 

全グレイ・ナノマシンデータ送信。変身と結合を許可。

ベースはサイブレックス地上根絶体を選択。

該当データ名「コレクター(グレイ・セファール)」の模倣を実行せよ。

 

 

戦場で活動していた全てのグレイ・ナノマシンことプロメシアン軍団が停止する。

英霊たちと熾烈な戦いを繰り広げていた者も、ブリテンの騎士たちを容赦なく引き裂いていた個体も、全てがぴたりと静止した。

暗号化されたとてつもなく複雑で強力な量子信号のもつれが全てのプロメシアンに例外なく指令を送り込めば一斉に彼らはその身をナノマシン状態へと変化させた。

 

 

 

莫大な灰色の粒子が渦を巻きながら一点に集中する。

霊子データ再演、プリントアウト開始。

 

オリジナルには及ばないがそれでも英霊の群れくらいならば蹂躙できるスペックを与えられ、ソレは形作られた。

グレイ・ナノマシンはエーテルとシュラウド・エネルギーを吸収しその肉体を与えられたデータと寸分たがわない姿へと整える。

 

 

青みがかった白すぎる肌。体の至る所を走る黄金色の光のライン。

両手の掌と腹部にぽっかりと開いた穴。

そして人間の女の様な顔。星の悪夢はここに帰ってきた。

 

 

64m程度のかつて遊星の巨人と呼ばれた怪物が2体、戦場に誕生した。

存在するだけで周囲のエーテルは彼女へと向けて落下し吸収される。

シュラウドはそんな巨人たちにさえまとわりつき加護を与える。

 

 

 

一体のセファールの掌にシュラウド・エネルギーが収束し、上空に腕を掲げれば膨大な破壊の力が宙へと放たれた。

ブリテン島の上空全土を何億というアーク放電による稲妻が埋め尽くし、黎明の世から次々と現れる英霊たちを虫の様に叩き落さんと猛った。

お返しとばかりに多種多様な宝具と呼ばれる破壊が巨人に撃ち込まれるが、オリジナルには劣るとはいえ優れた変換能力で巨人はそれらを貪り、巨大化を開始した。

 

 

 

残りのセファールは重力など無視した動きで軽々しく跳ねて戦場を横断し、ガンヴィウスの背後で停止した。

まるで彼からの指示を待つように知性を感じられない無機質な瞳で立ちすくんでいる。

魔法使いが巨人を睨みつけているのを認めたガンヴィウスは口を開いた。

 

 

「これらを知っているようだな魔法使いよ」

 

 

「……そいつは最も古く大きな分岐を齎す存在だ。

 大昔の御先祖様が神様に頼らないでソレを倒せるかどうかで世界は大きく枝分かれするんだよ……お前こそ、どこでそいつらを知った?」

 

 

ガンヴィウスは頷く。

もしも仮に神と呼ばれるサイオニック・生命体たちがかの「剣」とその所持者の力を借りずにコレを倒していたのならば、ここまでこの星に執着は抱かなかっただろうと「彼ら」は認めた。

 

 

 

「この存在と出会ったのは我らがこの宙に侵入して直ぐでね。

 我々の技術と力を収集しようと襲ってきたのだよ。

 そして返り討ちにした、それだけの話である。

 更に言うならばこの星を見つけたのもコレらから得られたデータを解析した結果だ」

 

 

「災いがより大きな災いを連れてきたってわけか……」

 

 

 

ふざけた連鎖だと魔法使いは愚痴り、ロムルスと朱い月は静かに構えた。

 

 

「我が父達が対峙した巨人であるか。我が全霊を以て相手しよう」

 

 

「確か巨人らの源流であったか。

 私よりも過去にこの星に訪れた者……図らずもこの場に全ての異邦人が揃うとはな(月・シュラウド・遊星・機械神)

 ……これは地球代表として気張らなくてはなるまいて、魔法使いよ」

 

 

「全員元の星に帰れ」と零しながら魔法使いも二者に並び立ち構える。

神祖と月の王に勝るとも劣らない規格外は外宇宙の怪物を睨みつけた。

 

 

先手を打ったのはガンヴィウスだった。

彼は思念で息子に「戦場」の構築が済んだ旨と、これからは()()()()()()()に力を使い戦うと通達する。

これは万が一にでもアーサー王とルキウスを巻き添えにして、失わない為の保険であった。

 

 

ガンヴィウスが思念を送る。

まずは小手調べとしてSOL3の現在位置より概算として1,58光年に点在し星系を球の様に囲んでいるアステロイドフィールドを認識し、ゲートウェイを開く。

約1兆個ほど存在する小惑星や天体の全てを瞬時に把握し、直系数キロ程度のとても扱いやすいサイズのデブリを数万ほどまとめてゲートの中に引き込む。

 

 

ステラー級内部のレプリケーターがエネルギーを貪りながら起動し、与えられた設計図と資源を基に多種多様な兵器を瞬時に製造する。

無数のエスコート、バトルクルーザー、ハイペリオン・スーパーバトルクルーザー等の戦闘船団が産声を上げた。

出力を絞り、貫通力を重視するモードに変更されたタキオン・ランスが虚数の奥深くよりガンヴィウスの指示の元、魔法使いたちを照準し……発射。

 

 

 

英霊たちが現れる時の美しい青光とは正反対に、幾つもの暗黒色の穴が虫食いの様に宙に開いていく。

黒点の中央が瞬く。あまりの発光量に一瞬だけ虹さえも浮かんだ。

つまらない物理法則による光速などという枷を遥かに超過した超速の暴力が蒼く瞬き、SOL3の大地に降り注いだ。

 

 

瞬間、魔法使いたちの存在していた空間が途方もない熱量により空間諸共焼け落ち、超超高濃度に圧縮されたエネルギーは暗黒の天体さえも部分的に創造する。

ダメ押しと言わんばかりに臨界直前の縮退炉が内蔵されたダーク・マターミサイルが複数撃ち込まれ、それは有効範囲内における全ての物質、空間、粒子を引きずり込み、この宇宙の絶対量を減衰させた。

発生した衝撃波がシュラウドで保護されたローマ領土とブリテン以外の全ての大地を襲う。

 

 

ヨーロッパは旧サーサーン朝から更に東側……ローマに組み込まれていない故に保護されていない地が“消えた”

それらは西より殴りこんできた衝撃波により薄皮をはぎ取るように惑星から引っぺがされ、第二宇宙速度で星の重力を振り切って飛翔しようとして、ガンヴィウスの「念」に捕まった。

同じように弾けたオーストラリア大陸等も「彼ら」に摘ままれるように捕獲され、それらは重力と空間操作の御業を以て固定され浮かんだままだ。

 

 

表皮を無理やりはぎ取られた星が軋み、震え泣いた。

勘のいい英霊たちならば星の苦しむ声が聞こえただろう。

 

 

浮遊大陸が急激に音速の33倍(秒速11キロ)から0へと速度を落とした結果

慣性保護など考慮されていなかった故にその上に存在していた全ての家屋や命が秒速11キロで宇宙空間へと向けてゴミでも捨てる様に放り投げられる。

ローマの民ではない故にたかが1POPにも満たないこれらに対してガンヴィウスは配慮などしてはいなかった。

 

 

既にあれらのデータは採集済みであり、必要であればまた作り直せばいい程度にしか思っていない。

不幸な命たちの幾らかは更に不幸な事に宇宙空間で待機していたコロッサス護衛艦隊のシールド圏に触れてしまいパチパチという小さな音の後に電子の欠片も残さずに弾けてしまった。

 

 

 

衛星軌道にまで浮かび上がった大陸の質量が少々拝借される。

その上に住んでいた中華文明を始めとした全ての文明の残骸諸共渦を巻きながら形を整えようとする念の刃によってバラバラになっていく。

青紫色の薄い刃が数十キロ単位で岩盤をカットし、完成したのは全長10キロぴったりの螺旋槍が10本だ。

 

 

 

青紫色の光を纏い、クェーサーの如く超高速で回転するソレらを空にたたずむガンヴィウスは軽々と操る。

まずはお試しとして一本。

本来ならば先の攻撃で蒸発しているハズであろう魔法使いたちがまだ生きていると仮定し、彼らが最後に存在していた空間へと向けて加速させて投下。

 

 

 

ギィィィイというエネルギーが加速回転する不気味な音を伴いロンディニウム近郊はおろかブリテンを吹き飛ばす勢いで槍が落下する。

数多くの英霊たちを纏めて葬れるルートを計算し投下されたソレに落下を阻止するべく多くの英霊たちが逃げもせずに群がり数々の能力を披露する。

 

 

身を振り絞る勢いで魔力を炎へと変換し叩きつける英霊がいた。

競う様に掌に出現させた光球を槍へと投げつけ大爆発を引き起こし槍の破壊を試みた英霊がいた。

赤髪の少年の頭上で高速で回転する剣が転輪を描き、ダイアモンドリングの如き様相となって槍へと飛翔する。

巨大な大砲を担いだ大男が地上より槍の迎撃を試みるべく、砲身から莫大な威力の魔力砲撃を行う。

 

 

その他さまざまな英霊たちが槍の着弾を阻止するべく動く。

鬱陶しいと感じたガンヴィウスはセファールの一体に改めて英霊たちの排除を命じ、残りの一体を常に傍に控えさせて事の推移を見守った。

槍は全体の半分ほどを損壊させながらも目標地点へと向けて着弾しようとし、砕けた。

 

 

 

ガァンという重低音が最初に響いた。

途方もなく高密度の物体にドリルをあやまって突き刺してしまったようであった。

槍の穂先が火花を散らしている。硬すぎる物体を削ろうと足掻いているようだった。

 

 

 

槍の穂先を掴んでいる男がいるのをガンヴィウスは観測した。

ロムルスである。彼は超速で回転するエネルギーを纏った大陸槍を片手で握りしめ、持ち上げていた。

かつてヘラクレスと呼ばれる英雄が大地を持ち上げた様に、彼もまた落下してきた大陸を受け止めている。

 

 

 

ロムルスの腕が深紅の光を纏う。

真なる神の槍が大陸の槍と真っ向から衝突し、軽々と突き破る。

真っ赤な閃光が槍を内側から貫いた上でガンヴィウスへと迫るが、偽りの神祖はソレを身を翻して躱した。

 

 

『■■■■縺�◆縺■�€€■縺�◆縺�€€縺�◆縺�€€!!』

 

 

理解不可能の絶叫を上げて代わりにロムルスへと躍りかかるのはセファールだ。

掌の内に開いた大穴の中に小型の時空特異点が発生し、それは直接彼女の腕に莫大な破壊のエネルギーを供給する。

青紫色の光、事象崩壊現象を纏った拳でセファールは黄金色に輝く神祖を叩き潰さんと迫る。

 

 

迎撃の為にロムルスが腕を掲げればその隣に朱い月が並んだ。

少し後方で魔法使いは72柱の助力の元、異なる可能性の世界の観測と運営を開始している。

セファールがこれからどう動くか、どう変化するか、どのような最期があるのかさえ魔法使いは瞬時に観測し、一言二言、仲間たちに囁きかけた。

 

 

「遊星の巨人……話には聞いていたがこうして見てみれば中々に愛い姿をしているではないか。

 惜しむべきは()()が伴っていない事であるか」

 

 

魔法使いより与えられた可能性を独力で更に拡大観測し、セファールと呼ばれる少女を垣間見た朱い月は憂う様に巨人を眺める。

己の使命と心の狭間に葛藤する美しい有様が異なる世界ではあった。

しかし眼前のコレはあくまでも戦闘能力だけを模倣したいわば人形だ。

 

 

だからこそ残念で仕方ならない。

我が領土である月に突き刺さった事に対して文句を言ってやろうと思っていたのに、と。

 

 

 

「高度な精神活動……強い願いこそが強大な力を産むと語ったのは他ならぬそなた等である」

 

 

故に、この結果は当然だと胸中で続けて朱い月は美しい爪に暗黒のエネルギーを宿した。

翡翠色の宙の力は徐々に蒼く染まり出す。

αクラスの暗黒エネルギー支配に朱い月は足を踏み込み始めていた。

文字通り死ぬほど身体に撃ち込まれたのだ、覚えて当然であった。

 

 

ガンヴィウスに比べれば稚拙極まりない力場操作能力と理解ではαの力は安定せず朱い月の身体を巻き込んで今にも暴発しそうであるが

朱い月は背後に控える魔法使いに対してウィンクした。はじけ飛ぼうとする可能性の安定を任せると。

魔法使いが刀身に朱い月の姿を映しだした。宝石のカットの様に様々な場面がそこに浮かび上がった。

 

 

その中からαの力を制御しきれずに己の身を吹き飛ばした朱い月の映像を探し出し、消去する。

幾つも幾つも浮かぶ自滅の未来を丁寧に消し去り、後に残るのは常に自滅の可能性と向き合いながらも必死に制御するブリュンスタッドの姿だ。

 

 

そしてαの力を宿した月の王の艶爪とセファールの拳が衝突する。

ブリテン全土が跳ねる程の衝撃が生まれ、またもや星の地軸が少しだけ変わった。

 

 

『縺�◆縺�€€縺九↑縺励>縲€縺上k縺励>縲€繧�a縺ヲ────!!』

 

 

 

事象崩壊現象を宿し、この世に物質として存在するならば必ず穿孔するであろう拳が朱い月の爪に打ち破られはじけ飛ぶ。

純粋なエネルギーの奔流同士の殴り合いで負けた結果である。概念の上書きに失敗したと言ってもいい。

宙の力はこの世の根底を敷く力である故に、あらゆる神秘や概念よりも数段上の域にあるのだ。

 

 

そしてαの力をこのセファールは吸収できない。

オリジナルならばいざ知らず、ガンヴィウスが使う個体においては主の振るう力に耐性(反乱防止策 )などあってはならないからだ。

 

 

大きく仰け反るように体勢を崩した巨人にロムルスが迫る。

深紅の光を纏った掌をセファールに翳せば、巨人の胸部を特大の深紅の光が貫いた。

巨人の身を覆うのは太陽フレアさえ想定した装甲であるが、ロムルスにとっては紙細工にも等しい。

 

 

「ローマッ!」

 

 

神祖の口より偉大なる祖国にして人類の可能性を体現した言葉が放たれる。

ロムルスは拳を縦横無尽に振るった。

真っ赤な拳閃が空間を埋め尽くし、一筋放たれる度にセファールの身体が削り取られ、巨人はたまらず片膝をついた。

 

 

『縺、縺カ縺吶€€縺! 、縺カ縺吶€€縺薙! m縺吶€€縺上◎!! 繧�m縺�€€縺カ縺。縺薙m縺�!!』

 

 

眼を回しながらロムルスを叩き潰そうとがむしゃらに暴れ回るがロムルスは迫りくる巨人の腕に対して避けようともしなかった

むしろ待ち望んでいたとばかりに真っ赤に輝く拳を叩きつけ、巨人の白亜色の腕を木っ端みじんに粉砕していく。

息つく間もなく途方もない乱打が巨人を襲う。手足が砕かれ、胴体には何本もの深紅の槍が突き刺され、セファールはスクラップへと作り替えられていく。

 

 

「ロォォォォマァ!」

 

 

神話におけるヘラクレスの如き戦闘法で彼は苛烈に父である軍神の如く暴れ狂い、セファールの顎を叩き上げる。

巨人の身体そのものが顎を基点に跳ね上げられ、全身を痙攣させながら空高く打ち上げられてしまった。

 

 

黄金のアーマーの背中が開き、真っ赤なブースターが現れる。

莫大な魔力を噴射するソレを用いてロムルスは空中を自由自在に、あらゆる法則を無視して飛翔した。

セファールが藻掻くように何とか再生させた腕を振り回し、ロムルスを捉えようとするが今度は蒼い閃光によって手足が綺麗に切り分けられる。

 

 

グレイ・ナノマシンの再生能力を発揮して結合を試みる四肢であるが、突如青白い光の奔流が迸り、それらを飲み込めば巨人の手足は分子一つ残さず消し去られてしまった。

 

 

「手筈は整えてやったぞ。見事な技を見せてくれた礼だ」

 

 

エーテルとαクラス暗黒エネルギーを混ぜ合わせた砲撃を行った朱い月が囁く。

軍神の子はかつての父と同じように臆することなく遊星の巨人へと突き進む。

真っ赤な光を宿し、自分自身が「槍」となって突貫してくるロムルスを認めたグレイ・セファールの口が裂けながら大きく展開し、膨大なエーテルとタキオンの輝きを発した。

 

 

 

放たれるのはタキオンランスであった。

青光りと共に超光速に加速されたエネルギーの青い槍が深紅の槍と衝突する。

拮抗は僅かであった。直ぐに赤が青を切り裂きながら突き進むことになった。

 

 

 

『ァ』

 

 

そしてグレイ・セファールの身体を巨大極まりない深紅の槍が飲み込んだ。

巨人の全身は億年単位の経年劣化を経たかの如くとてつもない速度で崩れていく。

微かに視界の端に見えたガンヴィウスに対して助けを求めるように手を伸ばすが、その手も消えていく。

 

 

一泊遅れて発生したのは大爆発だ。

無数の断片として散り散りになりながら巨人は砕けて消え去った。

白亜の欠片が輝きながら地表へと降り注ぐ。

英霊たちが喝采を上げ、次は我々の番であると意識も新たに残りのセファールへと挑みかかる。

 

 

 

 

そして───数多くの英霊たちが認識さえ出来ずに、簡単にねじ切られた。

ぶち、っという肉が絞られる音がした。

骨が無理やりずらされ、外され、すりおろされる奇怪な音があった。

 

 

血が噴き出て、幾つもの武器が主の手から零れ落ちた後のカランという軽音が鳴った。

臓腑が飛び散り、多くの英雄たちは驚愕を顔に張り付けたまま落ち、エーテルの残滓へと帰っていく。

何十という人類史に名を刻んだであろう勇者たちはガンヴィウスを見た。彼は英雄たちを見てさえいなかった。

 

 

彼が見ているのは精密な直角軌道で空を自由自在に舞い踊りながら自らに迫ってくるロムルスであった。

 

 

だが見てはいないが、何処に誰がいて、どう思い、どう動くかは知っていた。

グレイ・セファールは思っていたよりも手こずっているらしいので、少しばかり己の戦いをする片手間に相手してやった程度の認識である。

何のことはない、未来において存在したかもしれない「歪曲の魔眼」と同じことをしただけだ。

 

 

100を超える英霊たちの居場所を瞬時に把握し、彼らが持っている防御手段を無視し、空間ごと同時に捻ってやった、ただそれだけである。

あえて全員を一気に片づけるような真似はしない。

一定時間が経過するごとに、ランダムに殺害していくと決めていた。

 

 

宙に青白い光体が現れ、その中よりいま殺された英霊たちがエーテルを用いて再度この地に乗り込んでくる。

果敢にセファールに挑みかかるが、何処かガンヴィウスの動きを気にしている様が見て取れた。

 

 

これは恐怖戦術の一環であった。

もしかしたら勝てるかもしれないと士気が微かに上昇の傾向を見せた瞬間に叩きおってやれば、それは最大の効果を発揮する。

いかな英霊たちといえど、いつ、どこで、予兆もなく自分が殺されるかもしれないという恐怖はたとえ表面には現出せずとも、少しずつ着実に精神を蝕んでいく。

 

 

「お前に我が愛を示そう! 今!! ここで!!」

 

 

ロムルス=クィリヌスがセファールを葬った勢いのまま、輝きながら自らに迫ってくる光景を見てガンヴィウスは両手に新たな力を現出させた。

朱い月がそうした様にαクラスのエネルギーを拳に宿し、ロムルスの深紅と対になるような薄暗いながら蒼い輝きを握りこむ。

自分の身体を動かして戦うなど本当に久しぶりではあるが「彼ら」の中には地上戦に従事し続けた猛者も大勢いる故に問題はなかった。

 

 

 

存在しない筈の血液が沸騰するような感覚を味わいながらもガンヴィウスは冷静に処理した。

息子に発したはずの忠告が自分に帰ってくるなど冗談ではない。

 

 

「ォォォォォォオオ!!」

 

 

「…………」

 

 

ロムルスの真っ赤な右腕()とガンヴィウスのαクラスのエネルギーを宿した拳が衝突する。

世界を開拓し可能性を広げる為の道を敷く力と、宙を広げ維持するための力の激突は想像を絶する余波を周囲へとばら撒いた。

奇しくも根底では似通った性質の力は互いに反発し合い、削り取り続ける拮抗状態を作り上げるに至った。

 

赤と青の稲妻が拡散し、ブリテンの山々に着弾してその山頂を吹き飛ばす。

海洋に着弾した稲妻は海底まで一瞬で到達し、そこにあったプレートを数キロ単位で大きくずらしてしまい、海底火山が溜まらず赤い悲鳴を山頂から勢いよく吐き出した。

海洋が蒸発し、膨大な量の溶岩がブリテン島に流れ込み始める。

 

 

 

それでも深紅と蒼の力は互いに一歩も譲らない。

先に根を上げたのは星のテクスチャである。

ありえるはずがない力の衝突は特異点の中であっても更に秩序の崩壊を誘発し、互いの拳の衝突地点に更に幾つもの特異点(時空崩壊)を発生させた。

 

 

 

力が完全に拮抗した結果、両者の中央で余りのエネルギー集中の結果として疑似的な重力崩壊が発生しガンヴィウスとロムルスは拳を弾かれて半歩分だけ後退した。

当然であるが両者は無傷であった。煙を上げる己の拳をガンヴィウスは黙って見つめていた。

 

 

「セプテム!」

 

 

ロムルスが再度迫る。彼もまたFTLの域に突入し光に迫り、光を超える速度を得ていた。

ならばと、ガンヴィウスはシュラウドの力を大きく引き出し、自らの身体に纏う。

どうやら英霊や魔法使いたちは何か勘違いしているようだが、FTLなど出来て当然の基礎なのだ。

 

 

シュラウド・ジャンプドライブ起動。

 

 

先達としてその先を見せてやる必要があると「彼ら」は思い、実行する。

三次元という低すぎる次元においては表現できない“軸”を認識し、時間連続体の一部をシュラウドの力を以て切り取り、穴を開ける。

そしてガンヴィウスは自分自身を瞬間的に特異点と変貌させ、己の身を()()させた。

 

 

「彼ら」の端末は高次元に跳躍し、三次元を内包する時間軸の外側に飛び出た。

 

 

因果が逆転する。

あまりに埒外の現象ゆえに詳細の説明は不可能である。

ガンヴィウスは高次元を経由しシュラウドの影響で発生した惑星上の別の時間軸へと跳躍し、その時間軸を僅かに遡った後、ロムルスの()()()()()()()()を攻撃した。

 

 

過去のロムルスは重大な損傷を与えられ、未来が追いついた結果として彼の攻撃は()()()()()()になる。

 

 

全ては一瞬の出来事である。

はた目から見ればガンヴィウスは何も動いてさえいない様に見えた。

可能性を可視できる魔法使いだけが更に予想を超えた力を行使するガンヴィスに対して冷や汗を垂らし歯を噛み締めた。

 

 

SOL3に存在する斬り抉る戦神の剣(フラガラック)という宝具とコレは酷似していた。

違う点はガンヴィウスはコレを乱射できる上に、相手の迎撃に合わせて発動しなくてはならないという縛りも存在しないことだ。

思うがまま、望むがままにガンヴィウスは他者の可能性を殺す事ができる。

 

量子かく乱を始めとした時間軸攻撃への対策など文明レベル1の段階では大前提ゆえに、防げない方が悪いのだ。

 

そして攻撃と同時にこれは一種の実験であった。

「彼ら」の推察が正しければこれを続ければ答えが出るはずだ。

 

 

「─────ぐ、ヌゥゥゥ!!」

 

 

瞬間、ロムルスの顔面に巨大な衝撃が走る。

彼の顔に深々とα・エネルギーを宿した一撃が突き刺さっていた。

発生したα・エネルギーによる莫大な衝撃は神祖の正真正銘神の肉体にさえ凄まじい痛撃となった。

追い打ちとばかりに一撃、二撃とガンヴィウスの拳は時間逆行/因果逆行を引き起こし神祖の身体を打ち据えていく。

 

 

「──────ッッ!!!」

 

 

ロムルスがガンヴィウスへと殴りかかる。真っ赤な光を宿した拳はガンヴィウスの肉体を穿つだけの力が宿っている。

だがガンヴィウスの拳は攻撃を行おうとした数秒前のロムルスを捉えて十数回にも及ぶ殴打を叩き込み、彼の右腕を叩き負り、左の足を捻じ曲げた。

当然またしても彼の攻撃は()()()()()()になった。

 

 

 

黄金の鎧の所々に罅が入る。

深紅のエーテルが血液の様に漏れ出し、ロムルスの身体は欠け落ちていく。

ガンヴィウスはロムルスの顔面を鷲摑みにし、そのまま飛翔した。

 

 

ロンディニウム近郊から少しばかり離れた大陸とブリテンを隔てる海域まで瞬時に到達する。

拘束から逃れるためにロムルスが深紅の光を次々とガンヴィウスへと撃ち込み、彼の身体を抉っていくが「彼ら」は気にも留めなかった。

所々に開通した穴はすぐさまに塞がれ、老人は冷ややかな笑みを浮かべたまま宥める様な口調で若き神へという。

 

 

「落ち着きたまえ。直ぐに終わる」

 

 

 

光速の半分程度というあまりに遅すぎる速度で偽りの神祖は真なるクィリヌスをドーバー海峡へと叩きつけた。

海水が跳ね上がる。

数多くの魚や鯨などの海洋生物たちが成層圏まで跳ね上げられ、海峡を満たしていた海水は全てが膨大な量の水しぶきとなり吹き飛んだ。

 

 

 

水深46メートル程度のあまりに見すぼらしい海水の量ではこの速度によって発生した衝撃を逃しきず、ロムルスは露出した海底へと深々と埋め込まれる。

「彼ら」は重力操作技術を用いてガンヴィウスという端末に施していた偽装を部分的に解除し、ロムルスの胸を踏みにじる。

途端にロムルスに襲い掛かるのは5億×200万という埒外の質量による圧力であった。

 

 

惑星並みの質量が神を圧壊せんと猛威を振るう。

ロムルスの肉体は徐々に軋みはじめ、岩盤を砕きながら更に更にと星の内部へと撃ち込まれ続ける。

海底にあった火山が押しつぶされ、外に放出を望む噴火を真っ向から切り裂きながらロムルスは沈んでいく。

 

 

「ッ……ぐォォ……ッッ!!」

 

 

苦悶に歪む真なるクィリヌスの姿を見つめながらガンヴィウスは右腕を大きく天へと掲げ、指先よりα・クラスエネルギーランスを放った。

宙へと向けて無造作に放たれた暗く澄んだ蒼い光は、いきなりその切っ先を変える。

空中の至る所に計算の上に発生させられた「歪曲」はエネルギーランスを縦横無尽に望む方向へと飛翔させる切り替えポイントとして機能する。

 

 

突如空間で予兆もなく鋭角に曲がったランスはロムルスを救援すべく駆けつけようとしていた朱い月へ空中で襲い掛かる。

しかし月の王は慌てることなくこれに対処した。

 

 

「器用なことをッ……!」

 

 

手に宿した同種のα・エネルギーを用いてランスの相殺を試みる。

しかし彼のどの様な武具よりも鋭く強い爪先に当たる直前にランスは突如として消え去った。

月の王は虚空に小さな空間の孔があることに直ぐに気が付いた。

 

 

神代の魔術師や古き神が使う空間転移に近い術であると瞬時に見抜く。

瞬間、頭の中に魔法使いの言葉が響いた。

「右に飛べ」と指示され、彼は迷うことなく全力で空想具現化によって重力を操作し、右へと落下した。

 

 

一瞬前まで彼が居た空間をエネルギーランスが穿ち、それは設置された「歪曲」へと侵入し、また次の「歪曲」へと飛び込む。

一つ、二つ、三つと鋭利で無機質な軌道修正が行われる。

機を狙う様にジグザグに空間を飛び回った後で魔法使いが遠距離より発生させた空間転移に飲み込まれ、エネルギーランスは消え去った。

 

 

はぁ、と朱い月は荒い息を吐く。

一瞬たりとも気が抜けない。こんな事は初めてであった。

攻撃が無力化された事を察したガンヴィウスは最後に一度大きくロムルスを踏みつけて大地の底に沈めてから偽装を再展開し飛翔する。

 

 

 

虚空に浮かべられた大陸槍に念が送られ、3本が動き出す。

1つはガンヴィウスと入れ替わるようにドーバーに巨大な影を落とし、そのままロムルスを貫く様な軌道で落下した。

 

 

2つ目は当然として朱い月に向けて落とされる。

どうなるかなどは判っているが、ほんの手慰みとして使用されていた。

やはり月の究極生命体はαを宿した拳の一突きで槍を粉々に砕いてしまった。

 

 

 

3つ目は意外な事に今まで眼中にない態度を見せ続けていたブリテン軍へと向けて落下した。

ギャラハッドが展開する領域を粉々にする勢いで空が落ちていく。

魔法使いは数百の並行世界よりエーテルをかき集め、巨大な収束魔力砲撃を放ちブリテンの上空に落ちようとしてきた大陸を食い止め、その間に100を超える英霊たちが数々の宝具を開帳していく。

 

 

 

 

 

ロムルスは立ち上がった。

己に影を落とす巨大な槍を見据え、彼は息を吐いて吸う。

父の如きヘラクレスと軍神の血が彼をどこまでも素晴らしい戦士として高めてくれる。

 

胸に入った罅がふさがり、全身の輝きは再び戻る。

この星に存在する全てのローマの民の願いが彼に無尽蔵の活力を与えていた。

そうだ、残念な話になるが永遠帝国の民がガンヴィウス(クィリヌス)の勝利を願うたびに力を増すのはロムルス(クィリヌス)なのだ。

 

 

「大地が空より降るか。ならば私はアトラスとなろう」

 

 

ロムルスの手に槍が現れる。

これこそ権能を超えた大権能の象徴である。

今の彼は冠位さえも束ねて超えた唯一無二の存在である故に、不可能などないのだ。

大地に突き立てられた槍が変貌し、巨大な樹木となった。

 

 

落下してくる大陸槍さえも凌ぐ威容を誇る超巨大樹は何億という枝葉を伸ばしてガンヴィウスが落とした槍を絡めとっていく。

超速で回転するエネルギーの螺旋と衝突し、大樹は軋むがそれでも何とか大陸槍を抑え込むことが出来ていた。

ビシッ、ビシッという枝葉に亀裂が入る不気味な音こそすれど10キロにも及ぶ巨大な槍は樹木に埋もれ、落下の勢いを完全に奪い取られる。

 

 

だが虚空から老人の声がロムルスの耳へと届く。

 

 

「これは(クィリヌス)をくれた君への礼だ。遠慮せず受け取ってほしい」

 

 

ガンヴィウスは穏やかにロムルスへと告げ、更に大陸槍を操作した。

追加で4本が動かされ、それらは無理やり1本へと統合される。

たりないと判断された質量は先ほどからあてもなく空を漂うオーストラリア大陸が更に分割され補充のための材料となる。

 

 

先とは比べ物にならないほどに巨大な超・大陸槍が墜ちてくる。

コロッサス護衛艦隊が宇宙空間より斥力を操作し恐ろしい程の加速をこの加工された大陸へと与えた。

星を完全に壊さない様に配慮された結果、光速の1%の速さで全長80キロを超える超・大陸槍はドーバーを纏めてすり潰す勢いでロムルスへと落下した。

 

 

 

最初に食い止められていた大陸槍が絡みつく大樹もろとも爆散し、飛び散った枝葉も大陸槍に纏わされた乱回転するエネルギーに巻き込まれ、葉っぱ一枚も残さず消え去った。

ロムルスは真っ向から槍を受けた。

全身が軋み、あまりの負荷に魂にさえ断裂が奔った。

 

 

両手に光を灯し、彼は一瞬だけ瞑想し、瞼を開けた。

彼は軍神の子である。彼自身もまた至高の戦士としての側面を持つ荒神である故に、これは当然の話であった。

 

 

射殺す百頭・羅馬式(ナインライブズ・ローマ)

 

 

瞬間、放たれるのはルキウスが円卓を崩壊させた技である。

完全同時に放たれる9つの拳撃だ。

惑星で最も信仰を受けている神に不可能はない故に、ロムルスの拳は一撃一撃がαを宿した朱い月に匹敵、凌駕するほどの破壊を宿している。

 

 

大陸槍の至る所に亀裂が走り、赤黒い光の線が浮かび上がれば、槍は打ち込まれた時の倍にも迫る速度で空へと押し上げられた。

粉々に総体を崩壊させながらも轟音を上げて空へと叩き返され、鬱陶しいとばかりに軌道上に待機していた艦船のうちの一隻から放たれた魚雷で木っ端みじんに粉砕されてしまった。

惑星の至る所に赤黒く燃え盛りながら槍の残骸が降り注いでいく。

 

 

 

 

ロムルスがブースターから真っ赤なエーテルを噴き出しつつガンヴィウスへと迫り、全てを開通するという能力を応用し空間を穿って潜航する。

ちょこまかとテクスチャの裏側を飛び続けるロムルスを捕捉したガンヴィウスは自分を中心に半径10キロ圏内を覆い尽くす様に「歪曲」を発生させた。

大小様々の「歪曲」は空間どころかテクスチャさえもねじ切りながら増え続けていく。

 

 

 

1ミリ秒ごとに空間に設置された「歪曲」の個数は1000個ずつ増えていく。

能力を発動させて3秒が経ったころには3000ミリ秒が経ったということであり、ロムルス個人をテクスチャの裏より引きずり出すために発動された「歪曲」の個数は300万にもおよんだ。

 

 

それはそうとして、定めておいた時間が経過したので戦場に存在する英霊たちの群れから無造作に三人ほど選んでロムルスを攻撃するついでにそちらにも「歪曲」を送り付ける。

哀れにも犠牲になったのは白髪の鉄球を振り回す女、竜の如き角と尻尾の生えた少女、二振りの長槍を振り回す顔に黒子のある槍兵だった。

一切の予兆なく慈悲もなく胸の中央で発生した「歪曲」はこの三者の全身を反応する猶予さえなく飲み込み、後に残るのは夥しい量の血しぶきと飛び散った臓腑に、主を失った武器たちだけだ。

 

 

英霊たちの怨嗟の視線を感じながらもガンヴィウスは眼中にないという態度を崩さない。

後で思う存分相手をしてやる(解体/解析/蒐集)のだから、少しだけ待っていてろと「彼ら」は思っていた。

 

 

 

周囲の景色は気が付けばぐしゃぐしゃになってしまっていた。

重力レンズの如き空間の歪みがそこら中に生まれてしまい、真っすぐに光が通れない影響であらゆるものが酷く不気味に映っている。

合わせ鏡の様に歪んだ空間に無数に自分の顔を浮かばせたガンヴィウスが虚空を見つめながら指先を手近な「歪曲」へと向けた。

 

 

「拡散」という意思を宿したα・クラスエネルギーランスが発射される。

澄んだ蒼い光は歪曲した空間を通り抜けようとして有らぬ方向へと折り曲げられて突き進み、次の歪曲に侵入し、同じように折り曲がって進む。

これを60万回ほど繰り返した後に残るのはびっしりと隙間なくα・エネルギーが充填し圧壊しかけた空間だけだ。

 

 

ロムルスは未だしぶとく世界の裏側に深く潜航し出てくる気配を見せない。

つまり予想通りである。排除の為のプランは既に実行に移されている。

 

 

「彼ら」は十分に空間に「α」が浸透したことを把握してから、念を送った。

薄く広く、満遍なく配布されたα・エネルギーはシュラウドの力と化合する。

宙の全体を100とするならば26.8%を構築する暗黒物質と、68.3%を占める暗黒エネルギーがここにはあるのだからこれは当然であった。

残りのたった5%に執着したかつての物質主義者たちの何と愚かなことか。

 

 

ガンヴィウスは空間転移をし、これから形作られ放たれる技の影響範囲より離脱する

95.1%もの原材料が揃っているのだ、当然作れる。

「彼ら」にとって世界とは整えられるのを待つ芸術品の材料のようなものだ。

 

 

地でも天でもない、これは遥か彼方の宙の理である。

汎人類史と呼ばれる基準軸となる世界でさえ未だに仮定に仮定を重ねる形でしか認識できていない神秘の究極ともいえるモノを「彼ら」は自由自在に行使できる。

あぁ、そういえばかの王は世界開闢を引き起こす杖を振るう時はこのような事を言っていたなと「彼ら」は思いおこした。

 

 

古き王に敬意を表しその祝詞をガンヴィウスは引用して言祝いだ。

掌をα・エネルギーが充満しきった空間に翳す。

 

 

「原初を語る。色彩は混ざり、固まり、万象織り成す宙を産む」

 

 

空間が翡翠色交じりに蒼く輝きだす。

美しいながらも恐ろしい光景であった。

一部の英霊たちでさえ戦う手を止めて呆然と眺めてしまっていた。

 

 

きっと世界の開闢前夜はこんな世界があったのだろう。

ならばこの先に訪れるのは夜明けである。

無からの誕生という御業がここに明かされた。

 

 

「さらばだロムルス=クィリヌス。

 安心したまえ、ローマは間違いなく永遠に繁栄し星空に導かれるだろう。

 その事実だけを慰めに消え去るがいい」

 

 

お前の名前だけは永遠に私のモノとして残しておいてやろうと慈悲深くガンヴィウスは続ける。

翳した手を握りこみ「彼ら」は極限まで高まったα・エネルギーの方向性を支配し解放した。

 

 

瞬間、先にグガランナを葬り去った時に発生した様なゼロ・ポイント生成(宇宙誕生/真空流転)が発生した。

先ほどと違うのはこれが制御されているという点だ。

膨張が操作され1キロの小さな宇宙が作り出され(ビッグ・バン)次に収縮が引き起こされる(ビッグ・クランチ)

 

 

三次元空間内に0次元という別の次元が形成された。

直系10キロの産声を上げたばかりの宙であった。

そして意図的に影響を及ぼす範囲をガンヴィウスは引き延ばした。

シュラウドを経由し() ()にまで波及させていく。

 

 

発生する真空エネルギーの流転と重力変動は空間と確率の壁を突き破り、数多くの平行を纏めて飲み込みながら形成された第十級時空特異点の中に飲み込み、消し去るのだ。

可能性の中でさえ逃げられない。

予想通りロムルスが「もしも」を利用して戻ってくるというのならばあらゆる可能性諸共残らず消し去ってしまえばいいという力技であった。

 

 

しかしロムルスもただでやられはしない。

彼は深紅の光を纏った腕を高らかに掲げ『我らの腕はすべてを拓き、宙へ(ペル・アド・アストラ )』を発動させて自らの身を守っていた。

黄金色に輝く陣の輝きは人の願いの光であり「剣」と同種の力である故に、世界の無慈悲な圧壊に耐え忍ぶだけの力を誇っている。

 

 

だが出力の差は歴然故に徐々にロムルスの黄金は0へと還ろうとする次元の壁に押し込まれ始める。

拮抗が失われればこの新しい宇宙はロムルスという存在をそれこそ高次元に存在する本体共々新世界の創世滅亡の渦に引きずり込んでしまうだろう。

 

 

 

拙いと吐き捨ててて魔法使いが剣を構えて可能性に接続する。

ロムルス=クィリヌスが生きている、この攻撃を受けていない等の可能性を拡大解釈し

この地へと引っ張り出そうと運営を試みるが次々とそんなものはないと言わんばかりにあらゆる世界におけるロムルスが宙の法則に呑まれて消え去っていく。

 

 

過去を見渡した。

生まれたばかりの宙にそんなものはない。

 

未来を見た。

あらゆる可能性を宙の収縮は飲み込んでいる。

 

並行世界を見た。

青紫色の霧が慈悲深くも魔法使いの瞳を曇らせている。

 

 

 

数百万、数億通りのルートを幾ら辿ろうと必ずロムルスは死ぬ。

それは逃れられない運命であると「彼ら」は定義し、世界はそれを拒絶できない。

ならば、ならばもっと過去だと魔法使いが更に深く時間軸を辿るべく意識をそちらに向ければ───。

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

 

 

ガンヴィウスの青く輝く瞳が魔法使いを捉えた。

あらゆる世界に存在するガンヴィウスが同時に魔法使いを見ていた。

幾多の可能性が交差する並行世界の観測者の領域にまで「彼ら」の力は浸食を開始し、解析している。

 

 

ガンヴィウスが目を細めれば魔法使いを構築する 第二、第三要素(魂と精神)は締め上げられた。

視界が真っ赤に染め上げられ、息ができなくなる。

魔法の行使に集中しすぎてしまい、己の防御が疎かにしてしまった結果であった。

 

 

首には何もないというのに、見えない力が喉を圧迫し、男の存在そのものが軋んでいく。

それでも魔法使いは魔法の行使を止めない、何が何でもロムルスを救ってみせると足掻き続ける。

同化している補正式たちが必死に解呪を試みるが「彼ら」の干渉は72柱の魔神の総力を挙げても早々に弾けるものではない。

 

 

「もう暫し耐えよ!」

 

 

朱い月が動く。

彼は常に浮かべていた余裕ある振る舞いさえなく純粋に心から魔法使いの身を案じガンヴィウスへと躍りかかった。

しかし、当然の結果としてロムルスが動けなくなった今、もはや撃ち抜く事は不可能となったシールドが朱い月を阻む。

 

 

相も変わらず頑強極まりないサイオニック・シールドはαの力に至った朱い月でさえ突破は困難である。

 

 

「───っ! 無粋ッ! こんなもので!!」

 

 

怒りを滾らせながら朱い月はα・クラスエネルギーを宿した拳をサイオニック・シールドへと叩き込む。

魔法使いの補助がなくなった今、制御から外れかかったα・エネルギーは彼の身を焼き始めるが、彼はそんな事さえ些事であるとばかりに障壁に爪を立ててこじ開けるべく足掻く。

薄い膜の様なシールドに僅かな皺が入り、ほんの1ミリ程度穴が開くが、それが限界であった。

 

 

ガンヴィウスが指先を朱い月へと向ける。

月の王のソレとは違う完全に制御されたα・エネルギーが集い、今まさに放たれようとするのはα・エネルギーランスである。

先ほど朱い月を葬ったのと同じ技が牙をむこうとしていた。

 

 

「おの、れっ……!」

 

 

臨界まで高まったエネルギーを朱い月は虹色に染まった瞳で見つめている。

逃れられない死を彼は直視し歯を噛み締めてる。

敗北を前に生まれてはじめて彼は悔しいという感情を味わっていた。

 

 

終わりの刹那、祝詞が響き、ガンヴィウスは思わず顔を傾げた。

 

 

────我らの腕は全てに届き、全てを裂き、全てを拓く。

    いずれソラの彼方にさえも!

 

 

滅亡と創世の宙に閉じ込められ、今まさに消え去ろうとしていた筈の神祖の声だ。

もう間もなく滅び去る存在とは思えないほどに彼の宣言は穏やかでありながら、絶対の自信と人々への慈愛で溢れていた。

 

 

瞬間、ガンヴィウスの瞳が怪訝そうに細められる。

彼の視線は朱い月を通り越し、収縮しようとしている宙へと向けられた。

宇宙膜の内側より一本の紅い光が放たれている。

 

 

深紅の光はガンヴィウスが魔法使いに行っていた干渉を断ち切ってしまった。

 

 

アレは世界を裂き、文明を拓く力の象徴。

いつか星々の宙に至れると人を愛し信じる神の光だ。

ガンヴィウスの懸念を否定する様にソレは美しく輝いている。

 

 

浪漫なる両の腕は、まるで光の槍が如く。

もしもこのような場面でなければ「彼ら」は純粋に美しいモノであると感嘆していたかもしれない。

そしてこの星には美しいものが満ちている、故に保護しなくてはならないと続くだろうが。

 

 

ロムルスの力が0次元を突き破り3次元へとその力を誇示しているのだ。

それだけならばまだいい。

出られる筈がない程の規模で力を行使したが、世の中には絶対はないのだから。

 

 

元より多くの祈りを束ねて顕現した神である。

苦境において限界を超えるなど当然の話だ。

 

 

問題はロムルスの光が貫く先である。

遥か彼方、天へと伸び続けるソレの先を「彼ら」は観測する。

自暴自棄になったとは欠片も思っていない。

 

 

ロムルス=クィリヌスが諦めるなどありえないと短い時間交戦しただけで「彼ら」は理解していた。

 

 

普通ならば星を穿つコロッサスを狙うだろう。

もしくはガンヴィウスという端末か、または護衛艦隊か。

考えづらいがステラー級という可能性さえもガンヴィウスは考慮して、どれもが違うとすぐに答えは出た。

 

 

宙に高々と立ち上る柱の最先端には「孔」が開いていた。

そうだ、ロムルスの腕は宙を貫いている。

 

 

これに何の意味がある? と「彼ら」は考え……「孔」の内側から高エネルギー反応を感知し思わず目を見開いた。

瞬間「彼ら」は悟った。アレは「孔」ではない、ハイパーレーンの出現ポイントだと。

 

 

「これは、なんだ?」

 

 

巨大なサイオニック・エネルギーの反応だ。

パターンとしてはリヴァイアサンの放つ超大な生命力の波長に近い。

問題はそれが()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

 

 

ただ一人、最も近い存在である朱い月だけがすぐさま正体に気が付いた。

 

 

彼は僅かばかり意識を逸らしたガンヴィウスからすぐさま距離を取り、魔法使いの傍へと駆け寄る。

荒い息をしながら咳き込む魔法使いの背を擦り、肩を貸してやりながらも月の王は宙に開いた穴を見つめていた。

 

 

「ゲホッ……グ……ありがとうよ……ん、どうした?」

 

 

「いや、来てしまったなと思っていたのだ。

 本来ならば全ては真逆のハズであったのだがな……」

 

 

朱い月の言葉に魔法使いは宙を見て、己が展開した覚えのない第二魔法の行使を感じた。

可能性の向こう側より、この星系が有する全ての惑星がシュラウドという侵入者と戦うことを選択した結果が間もなく訪れようとしている。

同じ世界に同じモノは同時に存在できないという大前提さえ無視して並行世界全てから「それら」は近づいてきている。

 

 

「我が同胞、兄弟たちよ……この世が終わるまでお前たちに出会うことはないと思っていたぞ……」

 

 

朱い月は万感の思いを込めて呟いていた。

これは正真正銘、太陽系が保有する最大の戦力である。

間もなく始まるのは魔法使いでさえ想像を絶する凄まじい戦争だろう。

 

 

本当ならば逆であった。

守るのではなく殺す為に来るはずだった。

死に絶えずに生き永らえる霊長の残骸を消し去り、死した星の表層に真なる静寂を齎す為に訪れる筈であった。

 

 

 

ロムルスが貫いた宙の孔より黒い気体の様なモノがあふれだす。

人の手の様な形状に固定されたソレは超高密度に圧縮された結果、気体でありながらも液体であり個体にもなりうる。

黒い巨人の腕は「孔」の淵を押し広げていく。これから訪れるであろう同胞が通れるほどに整える為に。

 

 

 

幾つもの黒い腕があふれ出して「孔」は見る見る数百、数千キロ単位にまで拡大していく。

もう止める事はできない。洪水の様に数多くの怪物がFTL航行を行いながら次々とジャンプアウトしてくる。

「彼ら」は久しく「敵」の存在を感知し全ての艦船を攻撃態勢に切り替えた。

 

 

虚空を埋め尽くす巨大な十字架の群れ(タイプ・サターン)が居た。

 

太陽の心臓を持ち無限に巨大化する巨人(タイプ・ジュピター)の軍団が居た。

 

宙を漂う巨木が数えるのも億劫な程(タイプ・ヴィーナス)にいた。

 

虚空に球体の姿を取り浮かぶ惑星サイズの海(タイプ・ネプチューン)があった。

 

可視こそ出来ないが、空間を沸騰させる移動し意思を持つ熱エネルギー生命(タイプ・ウラヌス)が居た。

 

内部に凄まじい変換効率の反物質リアクターを持つ鋭角な多面体形状を持つ透き通った鉱石生命体(タイプ・マーズ) が居た。

 

 

そして、地表、南米より一体の影がFTLで飛翔し怪物たちの先陣を切るかの様にコロッサスと向き合う。

八本の脚、翡翠色のこの世の存在とは思えない色彩と形状の装甲。

あえてSOL3における生物で例えるのならば「蜘蛛」と評せる生命体、遥か彼方()()からの来訪者。

 

 

数えるのも億劫な程の「世界」を自らの頑強であり、柔軟であり、鋭角であり、あらゆる温度差と途方もない時間経過に耐えうる装甲の中に抱え込んだ「蜘蛛」が此処にはいた。

この存在にあえて名を付けるのならばこうなるだろう。

 

 

水星からの来訪者(タイプ・マーキュリー)など偽り。

かの者は星系を覆いし星雲より飛来せし大いなる先ぶれ。

人理が安定した世界では眠りにつき、星が目覚めし世界では蠢動するもの。

 

 

 

故にこう呼ぶべきである。

『タイプ・オールト』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【縺九°縺」縺ヲ縺薙>】

 

 

 

全艦隊Σクラス兵器の使用を許可。

現実穿孔機スタンバイ。

シュラウド・ハイパーショック(サイオニック・遠隔星系規模根絶攻撃 )準備開始。

 

 

 

 

 

 

 




ようやく七割程度が終わり書きたいシーンの一つが書けました。
ステラリスもネメシスの発売が近くなり、FGOも6章の配信が決定されて
いい感じに双方盛り上がりを見せていて嬉しい限りです。


しかしこの戦い、傍から見ると若い美男子たちが
寄ってたかって老人を集団リンチしようとしてるという酷い絵面になるんですよね……。

ガンヴィウスこと「彼ら」に地球と人類の未来を委ねるのは……?

  • あり。
  • なし。
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