fate/stellaris 【完結】   作:宇宙きのこ

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遂にステラリスがバージョンアップし、ネクロイドが発売しましたね。
バージョンが変わるごとにMODを付け替えるのも楽しいものです。


神導ローマ帝国

 

【経過観察報告1】

 

 

 

我々がこの星の観察を始めて1万年以上にも及ぶ年月が続いた。

殆どの文明の発達段階は予想通りである。

彼らは前進と後退を繰り返しながら、何とか文明レベル7の域を脱しようと足掻いているが、中々にそれは上手くはいかない。

 

 

 

どうやらこの星には現地住民のサイオニック・エネルギー、現地風に言い換えれば「認識」または「信仰」とも言える精神活動を糧に生存と強大化を行う半エネルギー生命体が複数の派閥に分かれて生息しているらしく、彼らは己たちの立ち位置、つまり「神」として上位に君臨するために原住民が過度な文明社会を持つことを望んでいないらしい。

 

 

つまり、現地住民……霊長……いや、人類と称される存在たちは彼ら「神」にとっては家畜のようなものなのだ。

 

 

その家畜がいなければ今頃彼らはコレクターの巨人に蹂躙され、消滅していたというのは皮肉な話である。

 

 

ふと我々の脳内に浮かんだのは機械化帝国に占領された現地住民の姿だ。

彼らは薄暗い棺の様なポッドに押し込められ、生命力が枯れるまで生体バッテリーとして消費されていた。

形は違えど同じようなものだろう、自分たちの意思のエネルギーを搾取され、その搾取した力で神々は思うがままにふるまうのだから。

 

 

 

しかし彼らの生態はとても興味深い。

シュラウドの中に蓄積された思念の残留物が寄り集まり、一種の生命となることは確認されているが、まさか通常次元の惑星の中で同じような事が起こるとは、今までに前例がない。

この星における「信仰」という概念は非常に面白い研究課題になりそうだ。

 

 

転換点が訪れたのは我々が消極的な観察を始めてちょうど1万年目辺りだった。

大陸のとある国家に神々によって設計され生み出された王が誕生した。

とても奇妙な男であり、その生涯はレポートに記すにはここでは余白が足らないので割愛するが、彼はとても面白い存在であったと残す。

 

 

 

良くも悪くも思うがままに生きたその人物の影響により、人々は神からの自立を始め、ようやくこの星は文明という灯を手に入れたのだろう。

 

 

 

 

 

 

かの「剣」と思われるエネルギー反応を我々が捕捉したのはそこからさらに数千年後の話である。

故に入手のための準備を行うのは当然。現地の一国家を取り込み、外部からの刺激を与える事が決定された。

 

 

 

我々は自らの探究と前進を第一とする。故にかの王が示した道を評価はすれど、迎合する理由はないのだ。

 

 

 

【神による導き・神導帝国ローマ】

 

 

 

西暦5世紀後半、そこには一つの国があった。

ローマ、またの名を神導ローマ帝国と呼称される超巨大な一つの国家である。

この途方もなく巨大な国家は東西に別たれることはなく、総人口は億を超える。

 

 

ありえざる繁栄を謳歌するこの国家を人々は永遠帝国と称した。

 

 

その一つの国家として異常極まりない規模の領土は、南は地中海を基点に長く伸びる南アフリカ大陸を平らげ、東はサーサーン朝とかつて呼ばれた国家を飲み込むほどである

もしもの歴史で手を焼く事となったであろう北部の問題も、今まさに「解決」の時が来ていた。

 

 

 

200年ほど放置し続けていた厄介ごとの種であるゲルマン民族たちであるが、彼らは既に滅亡の岐路に立たされている。

凍土はいくら開拓しようとも満足な食料を産出することは叶わず、更には火山活動の活性化により生存が可能な土地そのものが急速に減少しているのだ。

更に輪をかけるように、残り少ない食料生産地域をめぐっての内紛までが始まり、その文明の寿命はもう限界であった。

 

 

彼らはゆえに大移住を決断したのだが、それもまた難航しているのが現状だ。

幾度しかけようと精強極まりないローマの防壁を破る事は叶わず、数をすり減らすだけであった彼らは、ここ1年の間にほぼすべての民族を結集した大同盟を作り上げ、ローマへと攻め入ろうと足掻いていた。

 

 

 

正真正銘、最後の足掻きである。これを逃せば彼らは殺されてしまう。ゆえに必死である。

掠れた神秘の残り香までもを動員して行われる攻撃は並の国家ならば幾度も滅んでいてもおかしくはないのだが……彼らは一言で言えば運が悪かった。

既に彼らのサンプルはとりつくされ、めぼしいものはないと判断された時点で命運は決しており、200年もの間放置されていたのは単純に「経験」をとある存在に積ませる為でしかない。

 

 

 

ローマ北方、オスニングの森と呼ばれる地で両軍は激突していた。

 

 

 

凍土の、未だ雪が色濃く残る雪原を踏み砕き、大勢のゲルマン人らが絶叫を上げながら展開されたローマ軍へと猛攻をしかけるべく突貫する。

彼は一人一人が極寒の地で生き残るべく生まれた時より生存競争を強いられた挑戦者たちであり、死を恐れぬ寡兵であった。

 

 

 

 

迎え撃つべく整然とローマの兵士たちが行進し、極めて効率的で戦術的な動きを披露する。

彼らは自らを殺しに猛るゲルマンの敵を見ても顔色一つ変えない。

徹底的に鍛錬を施され、神のため、ローマの為戦う彼らに恐れはないのだ。

 

 

ローマ軍が行ったのはとても基礎的な戦術行動である。

前線を重武装の兵士たちで固め、その後方で急ごしらえで作られた陣地に遠距離攻撃要因を配備し、接近前に勢いを削ぎ、残った生き残りを刈り取るというシンプルな手だ。

 

 

 

まずはロリカ・スクアマタを着込みボウガン、またはロングボウで武装した弓兵たちがその技量を惜しみなく発揮する。

ボウガンが的確に一人ずつ突撃を行う蛮族を始末し、その連射の隙をロングボウ部隊が無尽蔵に供給される矢によって的確につぶしていく。

蒼天の空を膨大な矢が覆いつくし、それらの一斉掃射が終わった後に残ったのは突撃部隊の3割近い数を失ったゲルマン人たちだけである。

 

 

もはや後退は叶わない彼らは捨て鉢でローマの防衛線に挑みかかるが、強固に揃えられた盾に勢いの全てを完全に押し殺される。

無様にも跳ね返された彼らの首はあっけない程に簡単に宙を舞う。

 

 

 

 

しかして、彼らは笑っていた。

この程度か、と。

軍における、捨て駒の役割、威力偵察の任を任されるものなど所詮はその程度のものしかいないのだ。

 

 

何なら殺してもらえたほうが幸いである。

無駄な食料を消費しなくて済むのだから。

 

 

彼らの陣の奥深くに潜み、未だ尊き血筋を維持した者らは幾つかの言語を唱えた。

源流を遡れば、何処かに巨人の血を宿した彼らは怪物たちに簡単ではあるが、指示を下すことができる。

 

 

 

森の木々をなぎ倒し、巨大な影が幾つも現れる。

かつてハンニバル・バルカやタレントゥムも使用した戦象を彷彿とさせる巨影だが、これらはアレらよりも更に大きく、何より二足歩行である。

即ち、巨人である。今や衰退し、世界の「表」舞台からは姿を殆ど消しつつある神秘の残り香たち。

 

 

並の成人男性の十倍以上はあるそれらがのっそりとした動作で森の中から次々と顔を覗かせだす。

灰色の死んだような表皮はまるで岩の様に堅固であり、あの巨木の様な腕が一度振り払われれば砦でさえ何の役にもたたないだろう。

 

 

 

僅かながらにローマ軍に緊張が走った。

今まで何処かにあった、自らは絶対に勝利を約束されているという安心感が揺らぐ。

彼らは死を恐れないが、敗北と不名誉を恐れる。

ほんの僅かでも敗北という文字が頭をよぎれば、それは己の栄誉ではなく偉大なる祖国に傷がつくと考えてしまう。

 

 

だが、そのようなちっぽけな臆病風は一人の人物がローマの陣営から堂々とした足取りで歩を進める様を皆が見れば消えてしまう。

戦場の最中だというのに兜も盾ももたないその人物、その男は巨大で武骨な刀剣を一本だけ携えて悠々と敵陣へと進んでいく。

 

 

獣のごとき凶暴性と刀剣を想起させる冷たさを宿した男であった。

真っ赤な戦火を宿したような髪をし、鍛え上げられた、という言葉だけでは足りない芸術的な肉体を持つ男でもある。

 

 

 

矢が射かけられる。

しかし、男は意にも介さず進む。払う、守る、避ける動作さえしなかった。

目に見えないが、確かにそこにある不思議な、魔術とも違う力が彼を包み込み全ての矢は「当たらない」という事実だけが世界に浮かび上がってくる。

 

 

 

男と進軍する巨人たちとの距離が縮む。

巨人の一歩は男の10歩以上に相当するゆえに、傍目が思うよりも早く両者の距離は0となった。

怪物が技巧も何もなく手に持った巨大な鉈の様な大質量を男へと振り下ろす、それさえも男は避けない。

 

 

そして───。

おぉっと歓声があがった。

固唾をのんで見守っていたローマの民たちは目を輝かせながらその光景を見ていた。

対してゲルマンの軍は忌々しい怪物を睨むように眺めている。

 

 

 

巨人の一撃を男は片手で軽々と受け止めている。

綿でも握りしめているかの如く顔色一つ変えずつまらなさそうに鼻を鳴らし、一言。

 

 

「つまらん。貴様らはローマの敵に値しない」

 

 

“軽く”力を込めて鉈を持ち上げれば、その単純な動作だけで巨人は大きく空へと跳ね上がった。

木の葉の様に巨人は蒼天へと吹き飛び、轟音を立てて森の遥か彼方に落下し、地響きだけが残る。

ひぃ、ふぅ、と男は森の中から次々と現れる巨人、ゲルマン、獣を眺め、数え、落胆したようにため息をつく。

 

 

全くもって興味に値しない。興奮できない。栄誉にも届かないと。

 

 

「ローマの威光に惹かれた虫ども。

 ならば相応しい末路をくれてやろう。この俺の手で」

 

 

そして一方的な虐殺劇が始まる。

戦いとさえ呼べぬ、どうしようもなく不可逆な殺戮の連続が。

故に特に記す必要などないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【“神祖クィリヌス”】

 

 

たった一人の男により完全崩壊したゲルマン人をローマの軍勢が追いかけまわし、駆除して回っている間にそれを成した男は本陣へと帰還していた。

陣営の奥深く、急ごしらえで作られた無人の玉座の間に戻った彼は座には座らず、むしろ臣下の様に膝をつき頭を垂らす。

すると、部屋の空気が一瞬だけ震え、いつの間にやら一人の男がそこにはいた。

 

 

異質な男であった。

ローマどころか、この世界の存在とは思えない、奇妙な存在感を発する人物である。

老齢の域に差し掛かった顔には深い皺が刻まれ、しっかりと手入れされセットされた髪にも所々に白髪が混ざっている。

それだけ見ればこの人物の余命はそれほど長くはないと伺わせるというのに、この男は何百年も前から全く外見を変わらせず、これ以上老けることはない。

 

 

 

まるで姿かたちを固定された人形のようである。

そして老人とは思えないほどにまっすぐな背筋は顔さえ除けば全盛期の若者の様な活力を感じさせ、圧倒的な生命力を他者へと伝播させた。

元老院の上層部のみが着込むことを許される所々に金で刺繍が施されたローブの上に、更に純白のマントを羽織った彼はただそこにいるだけで多くの人々の心を震わせるナニカを持っていた。

 

 

 

カツンとブーツで石畳を叩き、男はそれが当然の様に玉座に腰を下ろし、赤髪の男を遥か高みから見下ろした。

そして口を開き、外見相応の年季と経験、そして知性を孕んだ深い声で彼は言った。

 

 

 

「報告を聞こうか。ルキウス」

 

 

 

彼こそ永遠帝国、神導ローマ帝国に君臨する神。

ウラキ・ガンヴィウス=クィリヌスである。

建国より千年近く生き続け、皇帝という地位さえ彼にとっては自らの補佐官でしかない。

事実上のローマの支配者であり神代が終わってもなお君臨し続ける絶対の神であった。

 

 

 

答えるのは次期皇帝と目されるルキウス・ヒベリウス。

戦場における苛烈さは息を潜め冷静な従者として彼はふるまった。

 

 

「ゲルマンの軍勢は崩壊。

 此度の一戦は小さな戦いでしたが

 こちらの強大さは奴らの全ての部族に瞬く間に広がるでしょう」

 

 

「大多数は降参に応じると考えるか?」

 

 

ガンヴィウスのどこか試すような口調にルキウスはいいえと頭を振った。

 

 

「まだ足りません。最低でもあと1回は戦う必要があるかと。

 その時こそ徹底的に心を折ります。

 奴らの過半数を消し去り、残る者らには永遠に消えない傷を残す。

 二度とローマに逆らえない様に」

 

 

 

よろしい、とガンヴィウスは満足気に頷き玉座より立ち上がる。

彼はルキウスの眼前に立つと彼に手を差し伸べた。

 

 

 

「大変結構。その調子で励む様に」

 

 

ルキウスの手を取り立たせると、二人は揃って歩き出す。

 

 

「まさかこちらに神祖が御自らいらっしゃるとは」

 

 

「気になる報告が幾つかあった。

 何やら夜間の警備兵たちが見回りから帰ってこない事件が多発しているらしいな」

 

 

脱走、とは少し毛色の違う報告である。

確かに奇怪な事件ではあるが、神祖が自ら出張るにはあまりにもちっぽけな件にも思えた。

ゲルマンの工作活動とも違う。いや、そもそもこの事件はローマとゲルマンの戦争とはまた別問題であるとガンヴィウスは考えている。

 

 

血痕。食い荒らされた後。おぞましい徘徊者たち。

 

 

 

「我々の手の者を何名か送ったが全て行方不明。

 恐らくどれだけの人材を投入しても時間と人の無駄遣いになるだろう」

 

 

「私が対処に当たると?」

 

 

 

いいやとガンヴィウスは頭を振った。

 

 

「お前はゲルマンとの戦に集中しろ。

 そして来る試練の時に備えよ。

 あのような蛮族とは比べ物にならない巨大な力がお前の前に立ちふさがる時は近い。

 それを乗り越えて初めてお前が皇帝を名乗ることを許そう」

 

 

「準備は出来ています。失望はさせません」

 

 

 

よろしいとガンヴィウスは答え、これ以上話すことはないと彼はルキウスに背を向けた。

その背を見送る彼の眼に炎のような野心があることを彼は知っていたが、全ては些事である。

 

 

 

 

 

 

【デミ・ネクロイド 前兆】

 

 

永遠帝国の兵士たちは常識レベルで軍規を叩き込まれ、どのような小さな異変であっても必ず報告することが義務となっているゆえに、この件を我々が気が付くのは素早かった。

始まりは一人の兵士が夜半の警備中に行方不明となった報告から始まる。

この兵士は陣地の外周を警備するコースを担当していたのだが月の明かりもない深夜に突如として行方を眩ませた。

 

 

脱走か? などとは誰も思わなかった。

なぜならこの帝国に置いて兵役とは一種の精鋭の証であり、それに見合った報酬も十分に支払われているからだ。

豊富かつ美味な食事。20代の若者を例として挙げるならば同年齢の数倍の給与、負荷をかけすぎないように計算されたシフト、そして手厚い福利厚生と引退後の転職支援サービス。

更には怪我などを負ったとしてもすぐに現地の拠点に設置された簡易的な細胞活性化センターによって復元されるため欠損を恐れる必要もない。

 

 

このような条件で逃げ出す者はおらず、更には前提レベルで刷り込まれた愛国心と神への信仰も重なり、逃走はまずありえない。

複数の探索部隊が派遣され、見つかったのは夥しい血痕のみ。

原始文明の者らには理解できないだろうが、我々による血液鑑定によればその血は間違いなく行方不明となった兵士のものであり、現場に付着した量は失血死する程である。

 

 

だが、死体だけは見つからなかった。

獣が食べたのならば骨や肉片、毛などは残るはずだというのに、綺麗に痕跡一つ残っていない。

 

 

 

 

次に消えたのは3人1組で行動していた分隊である。

誰かが消えたのではなく、分隊が丸ごと消失したのだ。

同じように残されたのは夥しい血痕だけであり、死体などは相変わらず見つかることはなかった。

 

 

その後も複数回同じような事件は発生し、今に至る。

対策の為、情報収集と戦闘を行えるだけの能力を持ったエージェントを任命し派遣したのだが、これもすべて消えた。

 

 

 

緘口令が敷かれ、この話題に触れることは禁忌となったローマ軍の間では、僅かな恐怖が根を張り始めている。

この問題に対策し、謎を解きあかし、二度と同じような事を起こさない必要がある。

当然、我々はエージェントの失踪を予期しており、彼らには小型のビーコンを埋め込んでいるため、今彼らがどうなっているかを遠隔から把握することが出来る。

 

 

 

心拍数 0 現状、我々のエージェントは心停止の状態であり、医学的には「死亡」状態である。

 

 

脳波  0 現状、我々のエージェントの頭脳は活動しておらず「脳死」状態である。

 

 

 

現在位置 移動中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜半、一人玉座に腰かけたガンヴィウスこと彼らは空間に投影された画面を興味深そうに眺めていた。

三次元的に表現された地図であり、その中には幾つかの赤い光が点滅しながら移動している。

白の混ざった手入れの行き届いた髭を指でなぞりながら頭を傾げて笑う。

この星は何度も何度も新鮮な研究対象を提供してくれて、本当に素晴らしいと。

 

 

当然の話ではあるが、ウラキ・ガンヴィウス=クィリヌスとは「彼ら」である。

 

 

人類が抱く優れた統治者の容姿、声などのイメージを分析され設計を施されたこの肉体端末は非常なウルトラハイエンド仕様であり、大本である「彼ら」が行使する超大極まりないサイオニックパワーを惑星上に出力するのに十分な性能と、この星のどのような生命体と交戦しようと問題なく勝利できる戦闘能力を兼ね備えていた。

 

 

いざとなった場合の地上軍の降下ポイントビーコン、または艦隊の出力地点としても機能が可能である。

 

 

 

かの「剣」に似た反応を検知し、現地への直接的介入を決定した彼らが最初に行ったのはこの星で活動するにあたって便利な勢力づくりである。

この課題はすぐに達成することができた。

ちょうどよく未来性を感じさせる国家、建国当初のローマを見つけた彼らはその建国者を嵐の最中に「掃除」し成り代わる形で君臨することとなった。

 

 

後は簡単である。

この手の潜入工作は幾度も行ったことがあり、マニュアル化されているのだ。

手に入れた国家の文明レベルを7から6へと近づけてやれば、それだけで周囲とは圧倒的な格差が発生し、残るのはただ領土を広げるだけの作業だった。

 

 

蒸気機関技術。

遺伝子改良された栄養豊富にして枯れず、手間もかからず、直ぐに刈り取れる農作物。

羅針盤と正確な海図。

岩盤の下まで掘り進められる掘削機。

限定的な惑星改造による砂漠地帯の開発。

海水を淡水へと変換し作られた河。

無償で提供されるワクチンと予防接種。

 

 

 

たったこれだけの、彼らからしてみれば雀の涙にも劣る投資により神導ローマ帝国は今やこの星で最も優れた国家へと至っている。

 

 

 

「死者が動く……ネクロイドに似ているが……はて」

 

 

 

玉座に腰かけながらガンヴィウスは超能力を行使する。

シュラウドに深く強く接続され、更には集団自我と化した「彼ら」の力を絶え間なく受け取るこの存在は信じられないほどに絶大な力を誇る超能力者なのだ。

この世界では魔術と称される力に近いが決定的に違うソレは力を発揮し、彼の視界の一部は空間モニター上で点滅している赤点の持ち主……死んでいるはずのエージェントたちの元へと飛ぶ。

 

 

 

千里眼と形容されるであろう力を行使した彼は目に飛び込んできた光景を見てもやはりというべきか顔色一つ変えなかった。

真っ赤な手に、こびりついた肉片。濁った視界に、荒い鼻息。動きに知性はなく、反射的で本能的な行動を繰り返しているだけ。

感じるのは絶え間ない激しい飢え。まるでかつて滅ぼしたカバリ貪食群の様な、途方もない食欲の暴走だなとガンヴィウスは評価する。

 

 

サイオニックな観点から見れば、このエージェントはやはりもう中身はない。

きざな言い回しになるが、魂は既に抜け落ち、肉体だけが動いている。

そしてその肉体には彼らが当初予想していた寄生体ネクロファージは存在せず、彼らはネクロイドとは呼べない。

 

 

 

だが、とガンヴィウスは目を凝らしてこの存在を注視する。

 

 

「新しい頭脳体が形作られているな……」

 

 

空っぽになった本人の魂の代わりに新しい霊的な人格が再形成されかけているのを彼らは見た。

まだまだ受精卵程度であるが、もしもこれがうまく大きくなれば数年もしたら新しい人格をこの存在は宿すだろう。

更に言うならば、ガンヴィウスはこの存在が更に大きなナニカに接続され、ひっきりなしにサイオニックエネルギーを搾取されていることにも気が付いた。

 

 

真社会性生物染みた構造。つまるところ、この存在は働きアリであり、女王はほかにいる。

玉座よりガンヴィウスは立ち上がり、モニターを操作し虚数の奥深くに身を潜めるステラー級へと幾つかの要望を送った後に小型のゲートウェイを展開させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【懐かしきガンヴィウス】

 

 

ローマ軍の陣営より大きく離れた森の中で戦いが起こっていた。

荒い吐息を撒き散らし、死臭を振りまきながら死体たちは動きまわり、何とか自らに迫りくる滅びから回避しようと足掻いていた。

彼らの人間に比べてとても素晴らしい反射神経や肉体的な頑強さは光速で飛来し、当たればすぐさま分子崩壊を引き起こすプラズマエネルギーの前には何の意味もなかった。

 

 

残念ながら秒速27万キロの速度を彼らは見切る事が出来ないのだ。

また一人、また一人と正確な偏差射撃の前に倒れ、全身を青白い光に包まれてからサラサラとした砂へと変えていく。

彼らが小型の携帯型エネルギーシールドを持ち合わせていればこうはならなかったのだろうが、残念ながら彼らにあるのはたんぱく質の脆弱な肉体だけなのだ。

 

 

彼らを追い詰めるのはプロメシアンと呼ばれる二足歩行の戦闘ドローンである。

4mほどの身長と1トンを超える質量を持ち、4本の腕をそれぞれ旧式のエネルギー兵装で武装したコレらは「彼ら」が比較的よく使役する戦闘マシーンである。

今回の調査に対して3ユニットほどがステラー級より転移させられ、この動く死体たちに対処する任を与えられていた。

 

 

どのようなウィルスや細菌がこの死体たちに作用しているかも不明な現状、有機的な感染が起こらないロボットを投入するのは当然と言える。

金属の体に飛びついた死体たちが爪を突き立てもがこうと、特殊な加工金属は表面に傷一つ付けることは叶わず、指先がボロボロと崩れてしまう。

 

 

腕一本でプロメシアンは死体を引きはがし、彼らの細胞や血液のサンプルを回収した後に残りの三本の腕からプラズマが炎のように放射され、この哀れな死にぞこないを消毒。

交戦開始よりものの数分も立たずに殲滅は終了した。

戦闘の終了を見計らい空間が揺れ、ガンヴィウスが姿を現せばプロメシアン達は周囲の警戒、および護衛状態に入り彼の周りを囲む。

 

 

 

周囲に飛び散った肉片と血液からは寄生虫、細菌、ウィルスの反応はなし。

同時に解析したサンプルからもその手の反応はなし。

 

 

 

ガンヴィウスが手を翳せば切断され、焼け残った死体の一部が彼の前に引き寄せられ滞空する。

彼の、彼らの眼を用いてサイオニック関連の視点から直接観察を開始。

やはりというべきか、不可視の因果的な「糸」が伸びており、その向こう側にいるであろう女王に絶えずエネルギーを奪われ続けている。

 

 

力を集めてその「糸」を掴み、辿っていけば直感的に頭の中に幾つかの座標が浮かび上がった。

恐らく、これらの母体はその座標にいるか、または何らかの次の手がかりを得られるだろう。

 

 

 

 

ふと、何らかの視線を感じてガンヴィウスが空を見上げれば美しい月夜を背景にいつの間にやら空を鳥……カラスの群れがぐるぐると周回している。

やがて鳥の群れは一点へと収束し、繭の様に寄り集まる。

再び群れが散開すれば、カラスの群れが集結していた空間には人影が浮かんでいた。

 

 

人と同じような四肢を持っているのだが、異常なまでに細い、まるで骨に最低限の肉だけがくっついてるようだった。

腕は途中から鳥類の様に黒い翼へと変わっており、翼爪の在るところに人としての手がある。

何より、この存在は顔、頭の形が違う。人の猿人類から進化してきたとされる顔ではなく、鳥類、正確には真っ白なカラスのそれが座していた。

 

 

 

 

常人ならば化け物だと叫ぶ異形であったが、彼らの中に浮かんだ感情は望郷と哀愁だった。

とても懐かしい姿である、今使っている名前の由来であるガンヴィウス帝国を支配していた種族の姿はちょうどこんな鳥人類であった。

彼らとはとてもいい関係を築けた。切磋琢磨しあい、技術と知識を競い合い、最終的には滅ぼして併合した。

 

 

始めて惑星浄化装置コロッサスを用いたのもあの時であったっけと。

輝かしい黄金時代を思い返し、彼らは非常に高揚した。

 

 

「こんばんわ。散歩かね?」

 

 

ガンヴィウスは浮かび上がる上機嫌を隠そうともせず、道端で古い友人と出会った時の様な親愛を込めてこの鳥人へと呼びかけた。

すると、鳥人は一瞬だけ驚愕したのか身を震わせガンヴィウスを見つめ、すぐに地面へと降りてくる。

鳥人の口からは見た目からは想像できないほどに流暢で、貴族とも思える優雅な声音が出た。

 

 

「いやいやこれは。ご丁寧に。

 殆どの者は私のこの姿を見れば逃げ出すのだがね。

どうやら貴公はこの姿の優雅を理解できると見た」

 

 

「何、かつての我々の友に同じような姿の者たちがいたのだ。

 彼らはとても賢く、正に賢者と言える存在だった。

 どうやら貴方も彼らの同類のようだな」

 

 

 

ほぉうと鳥人はガンヴィウスを見つめ、手を叩く。

元より彼は今の姿を醜いとは欠片も思っておらず、むしろ素晴らしいものだと心底思う感性の持ち主である。

そんな彼がおべっかや社交上のものではなく純粋に自らの姿を称賛されて愉快にならないわけがなかった。

 

 

 

「私はグランスルグ・ブラックモアと呼ばれる者。

 此度は我が主よりとある調査を任されこちらを通った」

 

 

「それはコレのことかな?」

 

 

ガンヴィウスが残った死者の腕を見せればグランスルグは頷いた。

彼は暫し考え込んだ後、意を決したのか口を開く。

 

 

「それらはグールと呼ばれ、親である死徒に血液を供給するために作り出された奉仕種族だ。

 放っておけば多くの血肉を食らい、独立し、自分が死徒へと変貌する。

……少しばかり毛色は違うが、かくいう私も死徒である」

 

 

「興味深い。

 その言い方を鑑みるに、死徒という存在に至る道は一つではないということか」

 

 

特に反論することもなくグランスルグは頷く。

ガンヴィウスもまた、非常に複数の演算を繰り返しながら情報を選んで喋った。

 

 

「失礼、まだ名乗ってなかった。私の名前はガンヴィウス。

 他者より少しだけ探究心の強い男だ。

 私もこの存在……死徒とグールに興味が湧いてきた所でね……そこで提案なのだが」

 

 

 

にこりとガンヴィウスは微笑んだ。

威厳ある老人と少年の様な熱意がまじりあった、人の姿に興味のないグランスルグから見ても魅力的な笑顔だった。

 

 

 

「君の調査、私にも協力させてくれないか?

 我々の知識と技術は間違いなく貴方の役に立ち、時間を大幅に短縮させられるだろう。

 報酬は、今回の調査で得られるであろう死徒とグールについての知見さえあれば十分だ」

 

 

黒い翼の怪物はちらりとガンヴィウスの周囲に控えるプロメシアン達を見る。

全く未知の技術で作られた異質な存在はこの男の言葉が正しいという確信を彼に与えるのに十分すぎるほどの存在感を放っていた。

なりたてとはいえ、ルーツを辿ればとても雑種とはいえないグールたちを一方的に殲滅した力は戦力しては及第点である。

 

 

何より出会って少ししか経ってないというのに、彼はこの男を気に入り始めており

更には主より賜った任が少しでも早く解決するのならばそれに越したことはないという事実も彼の決断を後押しした。

 

 

 

「……承諾した」

 

 

 

暫し熟考した後、黒翼は承諾するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

【共同調査】

 

 

 

我々は現地の友好的な死徒、グランスルグ・ブラックモアと共同で作業をすることとなった。

どうやら今回の騒動で発覚した死徒という存在の大本を辿ればそれは彼の主が実験的に作成した奉仕種族たちであったらしい。

しかしある日完全に制御され、服従していたハズの死徒たちが突如として暴走、脱走したそうだ。

 

 

彼の主にとっては戦力的にも死徒がいくら消えようと問題はないとのことだが、それでも裏切り、制御から外れたという事実は消えず、その本質的な調査および脱走した存在の排除をブラックモアは命じられたと本人は語っている。

それでも裏切り、制御から外れたという事実は消えず、その本質的な調査および脱走した存在の排除をブラックモアは命じられたと本人は語っている。

 

 

もちろん我々はグランスルグ・ブラックモアが全てを語ったとは思ってはいないし、向こうも我々を完全には信頼してはいないだろう。

まだ何か一つか二つ、調査を進めていく上で新しい事実が出てくるのは間違いない。

 

 

我々は死徒についての知見と理解を深めるため、新しいスペシャルプロジェクトを用意した。

これはグランスルグ・ブラックモアとの作業が進むにつれ、進展していくだろう。

 

 

 

 

 

 

スペシャルプロジェクト【大脱走】が開始されました。




ローマ絶賛魔改造中。

文明レベル6(産業革命時代)に片足を突っ込んでいます。
統治形態は「神による支配」です。



さくさくとこのまま進んでいきたいですね。
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