fate/stellaris 【完結】 作:宇宙きのこ
年末は本当に大変ですね。
【■■■■式・■■■■■】
─警告
─警告
─警告
深刻な逸脱が発生しています。現状■■乖離指数■■■。
未来の分岐の減少を確認。可能性の抹消を確認。
太陽系内、霊長類の未来絵図の縮小を確認。
逸脱なおも増大中。排除不可能。抹消不可能。
蒸気機関──不許可。1712まで到達不許可。
他多数の不適格な技術の散布を確認。
発生地点。
ローマ帝国。
永遠帝国。
剪定の危険性大。
■■■■からの乖離に対しての速やかなる修正が必須。
修正。修正。修正。補正。補正。補正。
全72柱補正シークエンスに入ります。
【アーサー王】
ここで「剣」の持ち主であるアーサー王とその現状についてまとめていこう。
まず大前提としてアーサー王は男ではなく女性である。
全体的に体は細く身長はそこまで高くもない。
川のせせらぎの様な澄んだ声も声変わり前といえば言い訳できるだろうが明らかに女性の柔らかさがある。
何故誰も気が付かないのだろうか、それとも暗黙の了解でもあるのか。
遠目から見ているだけの民衆ならともかく、近くで控えている騎士たちさえその事実に気が付かないのは不可解であるが、恐らくマーリンが何かをしているのだろう。
はたまた皆が皆、自分の都合のいい幻想を彼女に投影しており、現実としてそこにいる彼女を見る瞳を曇らせているかもしれない。
よくあることだ。
我々もガンヴィウスとして活動する際の初期の頃は神祖に対する解釈違いによって幾つもの派閥が現れ、こちらの忠告も聞かずに好き勝手したものたちがいたものだ。
彼女が剣を抜いた瞬間から本格的に我々の観測は始まった故に彼女の詳細な出生は不明だが、恐らくは純粋な人ではない。
輝かしいばかりの生命力の輝きと強い意志を宿した精神の波長は我々から見たら宝石にも等しい。
ヴォーティガーンの記憶によれば彼女の正体は竜と呼ばれる最高級の幻想種族の力を人工的に宿らされて製作された人工生命体とされるが、果たしてこれも正しい情報かどうかは確認が取れてはいない。
何にせよ彼女は「剣」と「鞘」を有している。
他にも「槍」やら何やらがあるが、この際置いておく。
これこそが最も重要な情報である。
ルキウスを除けばこの星で最も完成された生命体ともいえる彼女は今やブリテンの統一王として押しも押されもしない統治者であり、最高峰の戦闘力を持った存在として君臨している。
アーサー王の統治は盤石である。
彼女を筆頭に円卓と呼ばれる騎士たちに率いられた軍団は我々の育て上げたローマ軍でさえも手こずるほどの精強さであり、それぞれが名高い武具を持つとされる。
更にいうなれば彼女が統治を始めた頃からブリテンの土地はまるで意思を持つかの様に我々が地脈に流し込んだエーテルを貪欲に貪り始め、死にかけていた土地は急速に息を吹き返し始めていた。
その結果、農産物の生産量は跳ね上がり民たちの出生率は上がり、死亡率さえも下がりだしている。
無辜の民たちからすればこう見えるだろう「アーサー王が我々の生活を豊かにしてくれた」と。
結局のところ文明レベル6の民たちからすれば聖剣を使うだの、一騎当千の英雄などという夢物語の存在よりも自らの明日の食事を保証してくれる存在の方が大切なのだ。
戯れにもしも我々がエーテルを地脈に流し込まなかった場合のIFを演算したこともあるが、その結果は酷いものである。
枯れた土地と明らかに足りない食料。巻き起こされる疫病に、延々と続く異民族の流入。
その結果に起こるどうしようもない衰退。
どれほど彼女と円卓が強くても人である以上食料は必須だ。
根本的な産業が死んでしまってはどうしようもない。
多くの民が嘘つきと叫ぶだろう。
多くの騎士たちが人でなしと糾弾し、数多くの荒廃と腐敗が彼女を襲い非業の死が待ち受けるだろう。
だがそんなものは結局のところ戯れに計算した異聞である。
強く美しく己たちを守ってくれる至高の王、常勝の王、そして自分たちの明日の食事を保証してくれる王。
白き城と都に君臨するブリテンの人神。
それが今のブリテンの民のアーサー王に対する評価であった。
実に素晴らしい存在だと我々は考える。
ルキウスの様な野心に溢れ己の足で歩むことを誇りとする在り方もよいが、このように他者の為に滅私する統治者がどれだけいようか。
仮定として我々がルキウスを用意しておらず、ローマを導いていなければ彼女を我々の代弁者としてブリテンを中心に星を解析していく可能性もあったかもしれない。
少なくともあのマーリンよりはましな教育と導きを与えられる自負が我々にはあった。
だが既に決定は下された。幾つかの計画の修正があり、過程の変化はあるだろうが結果は一つである。
我々は彼女と、彼女の装備を手に入れる。全ては我々の昇天の為に。
【キャメロットの休日】
招待を受けたガンヴィウスはこれが罠だと確信していた。
もしくは何らかの謀略へのお誘いか、はたまた自分を害する陰謀が存在することは間違いないと考えている。
複数回の演算の結果で一番低い可能性なのはアーサー王が例の降伏勧告を受け取り、無条件で我々に「剣」を差し出してくるパターンで、これの可能性は0.000(以下無数に続く)である。
更に可能性を上げるとしたら自分が留守の間にローマかロンディニウムにある霊墓発掘地点への攻撃の可能性などもあり念のための防衛は用意されていた。
指定された地はブリテンの首都キャメロット近郊にある森の中だ。
神秘が特に強い土地の、更に妖精の領土ともいえる森林地帯は「彼ら」からしても度々興味深い事象が多発する地であり、いうなれば敵の腹の内であった。
しかし大変よろしい、あえて虎穴に飛び込むのも悪くはないと「彼ら」は決断した。
例え罠であってもペンドラゴンの血筋からの招待とならば受けてやろうではないかと。
どのような出会いと動きがあるのか、興味深い。
そしてガンヴィウスは指定された時間よりもかなり早く現地に足を踏み入れ、視察がてらにキャメロットの街並みを散策しながら眺めていた。
ドローンからいつも報告は受けているが、こうして自分の眼でアーサー王の統治する国を見るのは初めてであった。
道行く誰もがガンヴィウスの存在に気づく事さえなく行き交っている。
本来ならば普通に歩いていたとしても、常人より遥かに長身な老人が歩いていれば噂の一つは二つ流れるだろうがそんなことは起こっていなかった。
今の彼は存在の解像度をとても“薄く”した状態であり、もっとかみ砕いていえば全くと言っていい程に目立たず、人々の意識に留まることがない。
ローマを支配する神祖は立ち止まりブリテンの民たちの姿を観察する。
表向きの喧騒も当然だが、その裏にある精神活動の波長を読み取っていく。
彼らの記憶や人生、未来への思い、そしてその裏側にあるネガティヴな感情も残らず平らげる。
結果は希望に溢れている、の一言に尽きた。
もちろん誰もが前向きというわけではないが、殆どの者らは未来に希望を抱いている。
明日の食事を不安に思うものはおらず、今は裕福ではないもののきっとよりよい明日が来るものだと大勢は信じていた。
安定度、犯罪発生指数、両方とも問題なし。
強いて言うならば農業区画が少し足りないかとガンヴィウスはふと思ってしまい苦笑する。
数えるのも億劫なほどの年月の間宇宙規模でそういった内政を行っていた為、こうして他者の運営する国を見てしまうとどうしても批評したくなってしまうのは癖なのかもしれない。
ガンヴィウスは戯れるように頭の中で浮かんだ仮想のキャメロット運営計画を転がしていく。
POPの数が心もとないのは原始文明故致し方ないがもう少し農業区画を増やした上でキャメロットを軸に治水事業を行いつつ森林の保護と育成をアーサー王は行うべきだろう。
そして時折行われる「剣」を用いての狩という名前の森林破壊、あれは絶対に停めるべきだ。
森林を壊すなどアーサー王の数少ない愚行の一つである。
もしかしたら執務でストレスのたまった王の発散行為なのかもしれないが、ならば海か空にでも向けて撃てばいい。
「もし、そこの御方……」
最初ガンヴィウスはそれが自分に向けて発せられた言葉だとは気が付かなかった。
快活で元気に満ちた声はもっと別の誰かへと向けられたものだと思ったのだ。
「あ、あの! すいません!」
「……もしかして、私に話かけているのかな?」
「はい! 貴方に話かけています! ……えと、ご迷惑でしょうか?」
驚きながらガンヴィウスが声をかけてきた相手に視線を向ければ、そこにいたのはフルプレートの鎧を着こんだ少女であった。
長身のガンヴィウスの腰にも満たない小柄な娘であるが「彼ら」の眼に映るのは途方もなく強いサイオニック・エネルギーである。
腰を微かに折り、少女の翡翠色の眼をガンヴィウスは覗き込む。
「彼ら」は瞬時に少女の素性を検索しヒットさせる。
ブリテンにおける貴族や騎士の顔と名前を始めとしたデータは全て把握している。
彼女の名前はガレス。
円卓の7席目に座る騎士であり、アーサー王の姉であるモルガン・ルフェとロット王の間に生まれた子だ。
つまりアーサー王の血筋と言えば血筋だが、彼女が例の招待状を送ってきた訳ではない。
ガンヴィウスは得心が言ったように頷いたあと微笑んだ。
「……。 いいや、そんなことはないよ。何かな可愛いお嬢さん」
少女は目線を泳がせながら申し訳なさそうにガンヴィウスに答えた。
「……もしかしたらお爺ちゃん、迷子なのかなーって思ったんです。
キャメロットってかなり広いですから。
誰かと待ち合わせとかしてましたか?
よろしければ詰め所までご案内しますよ」
「それには及ばないとも。
私はただの旅人で、ここには観光で立ち寄ったのだ。
しかしよく私に声をかけようと思ったね。
自分で言うのも何だが、声をかけようとは思わない風貌だろう」
「当たり前です! 民を守るのが私達のお勤めですから。
少しでも困ってそうな人がいたら助けるのは騎士としての私の誇りなんです!」
話をしながらガンヴィウスは即興で新しい術をガレスが気づかないように自らに掛けなおしていく。
あくまでも先ほどまで展開していた術が極端に目立たなくするものであるのならば、それに追加して今度は他者が現状に不信を抱かないようにする精神波を発生させていく。
ガレスに見つかった以上、他の者が気づく可能性は十二分にある。ならば見つかっても問題ない状態を作ればよい。
少しばかりガンヴィウスは円卓の騎士というものを侮っていたのかもしれない。
姿形と気配を完全に消すならばともかく目立たなくなるでは、ガレスの様に常日頃からキャメロットを注意深く熱意をもって観察している熱心な者が相手では見破られてしまうのも頷ける話だ。
つまるところガレスの騎士としての矜持と仕事への責任感はつたない誤魔化しなど跳ねのけるほどまっすぐという事である。
そういうことにしておこう。
「私に手伝えることがあれば何でもお申しつけ下さい。
あ、そうだ。もし良ければ私の巡回のルートはキャメロット各所を回る形なので、ついでになってしまいますがこの街をご案内しましょうか?」
ガンヴィウスは逡巡した。会合の時間は夜であり時間的な余裕はたっぷりある。
そしてガレスと言えば円卓の中でも多くの親族の同僚を持ち、かのアーサー王の側近であるアグラヴェインの妹でもある。
つまり何処かで円卓あるいはアグラヴェインと遭遇する可能性があるということだ。
もしもそうなった場合は……何も問題はない。
そもそもローマとブリテンの関係はあまりよくない上に降伏勧告まで迫った仲だ。
マイナスの友好度が更に下がったところで何も意味はない。
そもそも今回の会合に答えたのも殆ど好奇心に近い感情によるものだ。
最初から損をしてもかまわないという前提故にこれがご破算になろうと此方には何も不利益はない。
精々これを企んだ黒幕の全ての策謀と準備が泡になるだけで、こちらは何も失わない。
いずれ攻め落とす予定の都である。
じっくりと案内してもらおうと「彼ら」は判断した。
「大変結構。ご同伴に預かろうか」
「はい! お任せください!!」
ガレスは笑顔を浮かべながら元気に答えた。
【密会】
ガンヴィウスとガレスのキャメロット観光はガレスが一日に定められていた警備の道筋をめぐり終えることによって終わろうとしていた。
半日にも満たない時間だったというのに、あらゆる厄介ごとを体験した一日でもあった。
この円卓の少女はどうやら生粋のトラブルメイカーらしく、たとえ彼女に落ち度がなくても向こう側から問題ごとがやってくるのだ。
ある時は騎士崩れの詐欺師に因縁をつけられた。
どうやら向こうは彼女が円卓の一員ということを知らなかったらしく、表面上の青さだけを見て金銭を巻き上げられそうだと判断したのだろう。
もちろん素手での戦闘力も円卓の名に相応しい彼女からすれば鎮圧は容易であった。
哀れ詐欺師は詰め所に連行されていく羽目になった。
またある時は何故か近場の森からキャメロットの近郊にまで降りてきた巨大な猪と遭遇する事もあった。
しかもこの姿を現した猪はエーテルを宿しており、魔獣一歩手前という怪物である。
これは元々キャメロットの外壁周辺で農業を営んでいた村人たちからガレスが受けていた依頼であり
突然のハプニングというわけではなかったのだが、このような怪物が飛び出てくるとは夢にも思わなかっただろう。
しかして結果はガレスの辛勝である。
彼女は指笛で愛馬を呼び出し、華奢な体には似つかわしくないほどの巨大な槍を持ち出したかと思えばソレを巧みに扱い猪を串刺しにして葬ったのだ。
その際に彼女が披露した馬術はフン族にも負けず劣らずの見事なものであり、ガンヴィウスは人知れず彼女へと拍手を送っていた。
もう少し猪が成長しており、完全なる魔獣へと変貌していたら彼女の手には負えなかっただろう。
その後は祝勝だと村人たちが寄ってたかって彼女を胴上げし、そのまま連れて行かれそうになるのを何とか彼女は辞退し、宴は後日改めてという事で落ち着いた。
彼女はある意味天に愛された人物であるとガンヴィウスは理解していた。
程々の距離で眺めている分には飽きないであろうが近くで巻き込まれる者にとってはたまったものではないだろう。
夕暮れ時二人でキャメロットの内壁へと向かいながらガンヴィウスはガレスに言った。
「君の毎日はいつもこうなのかね? 今日一日だけで随分と苦労したみたいだが」
「苦労なんてそんな……。
私は未熟者ですから、人より多くの経験を積んで早く皆の役に立ちたいんです」
ガンヴィウスの隣で歩く彼女ははにかみながら答える。
両手いっぱいに民たちから貰った祝いの品や花などを抱え、更には引き連れている馬の背にも多くの荷物を載せて歩いてる時点で彼女がどれほど民から信頼を得ているか判るものだ。
「私が見た所では既に十分なほどの実力を君は備えているとも。
献身的で誠実であり前向き。
君の存在は間違いなく多くの人の支えとなっているのは明らかだ」
「そ、そんな……私なんて他の円卓の方に比べたらまだまだです……。
お兄様やランスロット卿に比べたら私なんて」
ガンヴィウスの言葉にガレスは微かに身を震わせながら答えた。
苦笑いとも自嘲ともとれる笑みを浮かべる彼女に老人は諭すように話しかけた。
「謙虚なのはいいが、君はもっと自信を持つべきだな。
アーサー王が君を円卓に加えたのは間違いなく君を認めたからだ。
他者と自分を比較して奮起するのは素晴らしいことだが、卑下するのはよくない」
本当に? と視線で問いかけてくる彼女にガンヴィウスは続ける。
「少なくとも私は今日出会えたのが君でよかったと思っている。……おや、お迎えのようだな」
遠くから近づいてくる黒髪の男を見つけてガンヴィウスは眼を細めた。
黒い鎧と黒い髪。燃え尽きた練炭の様な冷たい瞳をした男の精神を読み取った後にガンヴィウスは改めてガレスに声をかけた。
先ほどと同じ温もりに満ちた声音で彼は言う。
「────さて、もういいだろう。
少々予定より早くなったが、私と話をしたかったのだろう?」
一瞬ガレスは固まる。
視線から焦点が失われ、ぼとっと民たちからもらった花を彼女は落とした。
明らかに彼女のものではない意思が彼女の身体の奥底から湧いてきたのをガンヴィウスは「見た」のだ。
「……意地悪なお方。最初から全てご存じの上で茶番を演じていたのですね」
ガレスが答える。彼女の口から紡がれる声は彼女であって彼女のものではない。
快活で活気に満ちた彼女から出たモノとは思えないほどに妖艶で生暖かい熱を宿した女としての声だ。
意思の弱い男ならば名前を呼ばれただけで精神を蕩かされる魔女の声であった。
「面白いから茶番というのだろう。今日一日退屈せずに済んだぞ。
図らずとも君は最高のもてなしを私にしてくれたわけだ。娘に感謝するといい」
「そうですか。こんな出来損ないでも役に立ったというのならばそれは良いことですわ」
ふむとガンヴィウスはガレスの姿をした別人……彼女の母であるモルガンを「見て」から次いで近くまで寄ってきた黒い鎧の男……(検索)……アグラヴェインに視線を移す。
彼の内心は筆舌に尽くしがたい感情が渦を巻いていた。
あらゆるものへの怨嗟と憎悪、そして自分自身への嫌悪、他者への嫌悪、排斥という言葉を人型にしたような男であった。
「彼ら」からしてみたら特に珍しくも面白みもない精神である。
故郷にはこういった輩は大勢いた。それこそ文字通り星の数ほど。
孤立主義者ならばともかく、自分以外の全てに憎悪の方向性が向いてしまった結果、全方位に浄化戦争を仕掛けて最後は自分たちが残さず滅びることになった。
かの浄化主義者たちの母星を星系諸共シュラウドの力で消滅させたのは他ならないガンヴィウスたちであり、最後の最後まで方々へと怨嗟を吐き散らす最期を看取ってやったのだ。
「こんにちは。君が迎えかね」
「その手はずとなっております。会談は今夜、キャメロット近郊の森で行われる予定です」
アグラヴェインの声は鉄のように硬質であり、冷え切った刃の様に冷たかった。
なるほど、これは中々の逸材だとガンヴィウスは思った。
もしもここにルキウスがいれば彼ならば嬉々として無駄だと判りつつもアグラヴェインをスカウトしていたかもしれない。
息子はこういった人材に目がないのだ。
「よろしい。さて、そろそろ娘を解放したらどうかね?
どのみちもう少ししたら直接会えるのだ、そう焦ることはない」
「──えぇ、楽しみにお待ちしておりますわ。偉大なる御方」
ふっと意識が抜け落ち倒れこみかけそうになるガレスをガンヴィウスの「力」が支える。
不可視の力場に体を支えられた彼女は膝を折りそうになってようやく意識を取り戻す。
ぱちぱちと大きな瞳で周囲を見渡し、ガンヴィウスを認めてから彼女は虚ろな声で呟いた。
「あれ? 私、何を……」
「疲れてしまったのだろう。
かの猪との闘いの疲労は君が思っているよりも深刻だったということだ」
君がいきなり倒れこむので迎えを呼んだぞとアグラヴェインを指せば彼は得心が言ったようにうなずいた。
「ガレス。今日の任務はもう終わりだ。
城に戻り報告してきなさい。私はこの方と話がある」
鉄の様に重い声でアグラヴェインが言う。
「……はい、アグラヴェイン兄さま」
一瞬だけガンヴィウスとアグラヴェインの顔を交互に見た後にガレスの頭は完全に普通に戻ったのか、彼女は深々とガンヴィウスにお辞儀をした。
「今日一日、とっても楽しかったです! また、何処かでお会いしましょう!」
「君が望めばまた会えるだろう。その時を楽しみにしているよ」
はい、と元気よく答えた彼女がキャメロットの内壁に走り去っていったのを認めてからガンヴィウスはアグラヴェインに向き直った。
くくっと皮肉気に笑いながら彼はこの黒い鉄のような男の内心を眺めつつ口を開いた。
「この国は良い国だな。あの子のような若者がいるとなれば未来は安泰だろう」
「ありがとうございます。
……さて、既にご存じでございましょうが、私はアグラヴェイン。
貴方様をお呼びしたモルガンの息子。
今宵予定されている会談の案内人を務めさせて頂きます」
「よろしい。早速説明してもらおうか」
アグラヴェインは頷き外見上はとても恭しく、それでいて心の中では何も思っていない様子でガンヴィウスに一礼した。
全くもって彼の心に動きはない。冷めきった鉄のようであり、この世の全てに何の価値も見出していないようだった。
薄々遠くから感じる気配を感じながらガンヴィウスはアグラヴェインに微かに探るような意識を向ける。
……どうやら彼は気づいていないようだった。
無理もない話である、ガンヴィウスでさえ「薄々」のものを他者よりは圧倒的に強いとはいえ、それでもブリテンの上位層には及ばない彼に気づけというのが無理な話だ。
この地にこうして訪れた時点で判っていた事である。
さて、君はどう動く? と「彼ら」は人でなしに届かないであろう問いを投げかけた。
【千客万来】
ガンヴィウスが案内されたのはロンディニウムの郊外にある森の中に建てられた屋敷であった。
モルガンが住処としているこの屋敷は幾重にも及ぶ厳重な魔術による防護と周囲に生息する妖精たちによる監視網に守られた要塞ともいえる拠点である。
しかし当然ながら来客として呼ばれたガンヴィウスに対してはその偏屈なまでに張り巡らされた防御機構は何一つ作動はしない。
美しい月明りが周囲を照らし出す中、ガンヴィウスの前まで進み出た金髪の女がいる。
黒いドレスに身を包んだ女はむせ返るほどの妖艶さを発しており、普通の男ならば一目みるだけで魂までも魅了されてしまう程の存在感だ。
しかしガンヴィウスは淡々とそれを処理する。こういう手合いは多々相手したことがある。
モルガンを見て「彼ら」が思いだすのはアグリッピナという女だ。
娘であるネロを皇帝に押し上げる為に様々な画策をした女。
当時のガンヴィウスの筆頭執務補佐官であり元老院の議長であったクラウディウスの妻である。
彼の女運の悪さはガンヴィウスをして辟易するものであった。
一人目と二人目こそ普通であったが、三番目のメッサリナと四番目のアグリッピナは神祖からしても不愉快な存在であった。
賄賂、買収、腐敗、堕落。
永遠帝国内に蜘蛛糸の如く謀略を張り巡らせ、神祖への反逆さえも企んでいた存在。
最終的に彼女はガンヴィウスという神祖の妻の座を狙っていたようだが、もちろんそんな事は叶うはずもなく失敗した。
原始的な下らない毒など神祖には何の意味もなく、児戯にも等しい呪詛は瞬く間に彼女に返却された。
議会の席で彼女は直接ガンヴィウスに詰問され、全ての企みを絞り出された後に処分されたのだ。
彼女の娘のネロには童の時期から母親に虐待を受けていたという事も考慮され、恩赦が与えられアグリッピナの一件は終わりを迎えることになる。
そのあとは特筆することもない人生をネロは歩んだ。
元々あった人懐っこさと思慮深さを武器に0からやり直した彼女は最終的には元老院の議員にまで上り詰め、最期は100歳を超えるほどの人生の末に大往生した。
慢性的な頭痛に悩んでいた彼女をガンヴィウスが治療した結果、それに阻害されていたのか以降の彼女は素晴らしいまでの
芸術的才能を開花させ、永遠帝国の歴史内においては議員としての功績よりも芸術家としての側面が強く記録されている。
アグリッピナなどの例を踏まえてガンヴィウスはモルガンを観察していく。
この類の手合いは自らの女を武器とすることが多い。
更にはモルガンはアーサー王の実の姉ということもあり、潜在的な能力は非常に高いと推測される。
「お会いできる時をどれほど待ちわびたことか……。
今宵はこのような機会を設けて下さり、心の底より感謝いたします」
魅力的な体をアピールするように大きく胸元の開いた黒いドレスで着飾った女は、表面上は喜色に満ちた声でガンヴィウスをもてなした。
黒いベールで顔は隠されているが、その下に浮かんでいるであろう笑みはさながら恋人と久しぶりに逢瀬する乙女のようであろう。
「礼には礼で返す。当然の対応だ。
君が愚かな企てなどを起こさない限りは私も真摯に交渉に臨もう」
「あぁ、なんて寛大なのでしょう。
私のような小さな存在にそこまでして頂けるとは!」
大仰な身振り手振りで感動を表すモルガンを「彼ら」は観察する。
シュラウドを通して観測される限りでは彼女の精神、魂の輝きの中に虚偽の念は見られない。
悪意もなく、それでいて狂気も少なくともこちらに向けられる意識の中では見つけられなかった。
ただ、一つだけ気がかりな事があるとしたら、モルガンの魂、精神は綺麗に別たれた三つの色で出来ていたことだろう。
赤。金。白。この三色が合わさり、表面上には黒いモルガンとして出力されている。
恐らくであるが彼女は三つの人格が重なりあった上で四つ目の人格としてのモルガンが存在している。
モルガンが黒い布切れの中で唇を釣り上げて笑う。
彼女はガンヴィウスに「見られて」いることを知っている上で言葉を紡いだ。
「さぁどうぞお入りくださいませ。私達は貴方を歓迎いたします。偉大なる星々を統べる御方」
背後に控えるアグラヴェインにガンヴィウスが彼にも判る様に目配せをすれば鉄のような男が頷く。
屋敷の扉が音もなく開き、モルガンが畏まった動作で礼をした。
「大変結構。では、始めるとしようか」
屋敷の中はモルガンの趣味なのか古今東西様々な芸術品や魔術的な道具が取り揃えられ、飾られていた。
北欧の魔剣、アイルランドの槍、ギリシャ産の毛皮などなどモルガンの手の広さが伺える質、量ともに素晴らしい逸品がそこらかしこにある。
他にもいくつかガンヴィウスの興味を惹くほどの興味深い品が壁に飾られている。
幾つかの扉を潜った後に用意された部屋は今までは打って変わり質素な様相のログハウス然とした部屋であった。
暖炉に火がともり、部屋の中に光が満ちる。
用意された椅子にガンヴィウスが座り、その向かいにモルガンが腰を下ろす。
彼女の背後にはアグラヴェインがまるで従者の様に控えている。
「改めて名乗らせて頂きましょう。私はモルガン。
アーサー王の姉にしてこの島の黒い魔力を受け継ぎし者」
名乗り上げながら黒いベールを脱ぐ。
アーサー王の血族である故にその顔は彼女に瓜二つだ。
翡翠色の瞳、金色の長髪、彼女に比べれば病的に白い肌をした美女である。
「モルガン・ルフェ。勿論知っている。
ガウェイン、ガヘリス、ガレス、アグラヴェインの母……。
いや、モードレッドもそこに含まれるか。
アレは君が作った王の複製なのだろう?」
当然の様に秘密を語るガンヴィウスにモルガンは一瞬だけ呆けた眼をするが、直ぐに笑みへと切り替える。
ガンヴィウスは当然ブリテンの内情を把握している。
至る所に無数に配置された超小型のドローンはブリテンの民の全ての会話や行動を傍受し「彼ら」に届けている。
島一つ程度の全人口の行動や会話の内容を丸ごと読み取ることなど容易い。
その中に幾つか面白い情報があった。
恐らく幼き頃のモードレッドへと語り掛けるモルガンの偏執的なまでの王への害意。
そして円卓の騎士として王に仕え続ける娘への真相の暴露などなど、全て知っている。
「おおよそ君と娘の関係は全て知っていると思っていい。君が王の排除を望んでいることも含めて」
「……そうです。私は王の抹殺を望んでおります。
その為にぜひ貴方様のお力をお借りしたいのです」
素直だなと思いながらガンヴィウスはこの会話を楽しみつつ言葉を発していく。
今の所彼女の言葉に嘘はなく、悪意も見受けられない。
「その役目を背負っているのは君の娘であるモードレッドだろう。
既に君の計画は進んでいるはずだ。今更ソレらを放棄してもいいのかね?」
「構いませんわ。そもそもアレを送り込んだ理由の大半は嫌がらせですもの」
モルガンが蕩けるような笑みを浮かべる。
用意されていた血の様な赤い液体で満たされた杯を手にとり呷る。
「あの子は王にはなれません。
今のブリテンはアーサー王により過去に例がない程に安定しています。
異民族は撃退され、食料は豊かになり、政も滞りなく進んでいます。
あの子が付け入る隙なんて存在しませんわ」
「見事なものだな。アーサー王の手腕は実に素晴らしい」
臆面もなく告げるガンヴィウスにモルガンの顔が喜色で歪んだ。
今にも噴き出しかねない激情を自分の身体を抱きしめて必死に押さえつけている。
「まさか貴方様がそれを仰るなんて! 私は気づいているのですよ!
満ちた真なるエーテル、星の意思に真っ向から逆らい全てをねじ伏せていく特異点!!」
終わるはずだった時代が終わらない。
続くはずだった人の時代が一向に訪れない理由。
消費されて消えていくはずだった星の息吹の異常なる循環。
そして、見せつけられた星さえも軽々と砕く巨大極まりない力。
その全てに酔いしれ、魅入られた女は熱く息を吐いた。
小さな島一つに固執していた女は星々の世界を垣間見て魅力されてしまったのだ。
実の妹が秘めた星の力、自分には持ちえない力、宙という概念が彼女を焼き付けてしまった。
「全て貴方様の御業。
真なる星の光充ちた遥か過去の神々でさえ、貴方の輝きには敵うべくもなき貴き御方。
私の願いは貴方様の大望を叶える一助になることでございます……アーサー王の実姉モルガンはここに無条件の降伏を提案します」
「君の願いは判った。しかし我々は詐欺師ではない。
契約の締結交渉に伴って利益、不利益、あらゆる情報を開示する義務がある。
次は我々の話を聞いてもらおうか。その上でもう一度検討したまえ」
一瞬だけ間をおいてからガンヴィウスは淡々と告げる。
やはりというべきかモルガンの内側はとてつもない激情で満ちていた。
「我々の目的はアーサー王の身柄及び彼女の持つ装備の入手と解析だ。
彼女はこの星の神秘が凝縮したような存在であり、それらの完全なる理解は我々に多くの進歩を齎すからだ。
つまり私はアーサー王を殺すつもりはないのだが、それでも構わないのかな?」
「構いませんわ。アレが王の座から転落するのならば」
ふむ、一つ目は問題なしとガンヴィウスは判断する。
ここで殺害に拘るようであったら決裂である。
「次にこのブリテン島の処遇だが。アーサー王を廃した後はローマに組み込む。
ロンディニウムに置いてある拠点を中心とした大規模な調査と研究を行い、全てのこの星の神秘を入手するつもりだ。
一般的に神秘を解析されれば君たち幻想存在は劣化していくらしいが、何か意見はあるかな?」
「貴方様が差し出せと仰るのならば喜んで献上いたしましょう。
我が島、ブリテンをどうか使い潰してくださいませ」
二つ目も問題なし。
自分が王として君臨することに拘るのならば排斥こそはしないが問題が発生していた。
恐らくであるが、モルガンとルキウスは性格的に相性が悪い。
毒婦と嫌悪をむき出しにする息子の姿がありありと想像できる。
そしてもう一つ。「彼ら」は疑問をぶつけることにした。
「最後の質問だ。
君と私が直接であったのはこれが初めてのハズだ。なぜそこまで私に協力する?
君の腹の底にある願いを聞かせてほしい。君は我々に何を求める?」
神祖の言葉にモルガンが震える。
熱にでも浮かされたような蕩けた顔を浮かべながら彼女は陶酔したように喋った。
「出会ったのは初めてではありません。貴方様は私の本質を一度目撃しています」
証明しましょうと呟き、モルガンの全身が淡く発光する。魔術回路が起動し彼女の全身に力が漲る。
その色は淀んだ暗黒。彼女が受け継いだ黒い魔力と呼ばれる力だが、ガンヴィウスはつい最近これを見たことがある。
「“沈殿物”……霊墓の最深部にいたケモノの力。そうか、君が受け継いだ力の大本は」
「この星が背負う呪。貴方様が相対したケモノ……あれこそが私の力の源泉ですわ」
モルガンの顔が歪む。始めて彼女の精神の波が乱れた。
溢れだした黒い魔力が彼女を内側より蝕んでいる。
億年単位の呪を一部とはいえ出力してしまうのだ、それこそ人外の血筋であるモルガンを以てさえ正気を浸食されるのは道理だ。
微かに抑えていた蓋をずらすだけで彼女という存在はとても不安定になってしまう。
「この力は私を犯すのです。少しずつ、だけど確実に!
元々の自分がどうなのかさえ判らなくなってしまった。
今の私は本当にかつての私なのか、それとも統合して混ざり合った誰なのかさえ判らないの!」
血反吐が噴き出るように彼女は啼く。
魔女であり、乙女であり、戦士のようでもあると評されたモルガンの真相がここにはあった。
故にガンヴィウスは確認の為に一つだけ問いを投げかけることにした。
ここを突けば彼女という存在は瓦解するかもしれないが、だからこそ知る必要があった。
「君はなぜ実の妹を憎む? 彼女を王から追い落とそうとする理由を覚えているかな?」
変化は劇的であった。
彼女を構築する三色の精神が思い思いに暴れだしモルガンという存在の全体図が撓んでいく。
「判らない! もう判らないのよ!!
私達は何で!? この国をどうしたいの?
何なのよ!! 理由、理由、理由────貴方様ならば私達を助けてくれる?」
パチンとガンヴィウスが手を鳴らす。
「結構。もういい」
「………ぁ」
サイオニックエネルギーで彼女の精神に介入し崩れかけていた波長を平定してやる。
分裂しかけた3色の魂を最初の形にこねくり回して戻してやれば、狂想を浮かべていたモルガンの顔は先の様に安らかなものとなった。
「君は治療が必要なようだな。ブリテンを併合した後はかのケモノにも対処してやろう」
「…………は、い」
ふわふわとした様子で返すモルガンを見て神祖はアグラヴェインに目配せを行う。
指先をモルガンに向けてその思考に直接ガンヴィウスが彼女に求める協力の内容を打ち込んでいく。
優れた魔術師である彼女ならば容態が安定したならば直ぐにでも吟味できるような中身だ。
「少し休むといい。君との会話は非常に有意義であったよ」
アグラヴェインが未だにふらつくモルガンを抱え上げ、寝室に連れて行くのを見計らってからガンヴィウスは大きく息を吐いた。
本当にこの男はとても間が悪い。
いや、あえてそういうタイミングでやってくるものだと思いながら。
「やぁ! こんばんわ。元気してるかな?」
部屋の中に唐突に響いたのは軽薄な青年の声だ。
以前聞いた事がある人でなしの声である。
「何も問題はないぞ。何の用かな。君は今日は呼ばれていないだろう」
「それはよかった。
いやいやぁ~、師匠がたまには弟子の様子を見に来るのは当然じゃないか!」
あぁそういえばそうだったなとガンヴィウスは思い当たる。
この男、マーリンはあのモルガンの師であったと。
彼ならばモルガンの住処であるこの要塞染みた屋敷にも侵入出来るだけの技量があるだろう。
「うんうん!
我が弟子モルガンにもやっと友達が出来たようで私は嬉しいよ!
ほら、彼女って男関係は爛れ切ってる上に純粋な友達っていないからさ」
「既に彼女は就寝している。私も帰るとしよう」
「いやいや、ちょーっと待ってほしいな。
実は今日は僕も友達を連れてきたんだ! 是非君にも挨拶してほしいね!
きっと向こうも君と話したくて仕方ないって感じさ」
立ち上がり白いマントを整えるガンヴィウスにマーリンは近づき、何の感情も籠っていない笑顔を浮かべながらウィンクをした。
手の中で杖をクルクルと回しながらその切っ先で扉を示しながら芝居がかった声で叫んだ。
「紹介するよ。遠路はるばる君に出会う為にやってきた我が友、ブリュンスタッド王だ!」
扉が滑るように開けば、そこから現れたのは長い金髪の男。
整いすぎた顔、光の反射で虹色にも見える瞳、ガンヴィウスに負けず劣らずの長身をした異形だ。
以前葬った女に瓜二つ……いや、女が彼に似ているのだろう。
眩い精神の輝きを前にガンヴィウスは眼を細めた。
無垢な子供と純粋な怪物の思考が綺麗に両立している、異邦人。
このSOL3にて活動する生命体に近しいながらも決定的に何処かが違う降臨者がここにはいた。
扉の奥に従者として控えるのはグランスルグ・ブラックモアと名も知れぬ少年。
「そなたがガンヴィウスか。我が臣より話は聞いているぞ」
無遠慮にブリュンスタッドはガンヴィウスに近づき、全身を上から下まで視線を走らせて観察する。
欠片も遠慮という概念がない行為であるが「彼ら」も同じようにこの異邦人を図る様に見つめ返していた。
前から、後ろから、まるで小動物が興味深い逸品を見つけた時の様にあらゆる角度からガンヴィウスを彼は値踏みする。
やがて満足したのか彼はガンヴィウスより離れてから告げた。
「思っていたよりも小さいな!」
満面の笑顔で彼は言う。
ともすれば罵倒ともとれる発言だったが彼の次の言葉で「彼ら」はやはりこの存在は油断ならないものだと評価を確定させた。
「こんな小さな端末にその“中身”を押し込むのは苦労しただろうて」
ガンヴィウスが渋面を作る。
一瞬だけであるが、端末のガンヴィウスではなく「彼ら」とブリュンスタッドの視線が交差したのだ。
刹那の瞬間、ほんの僅かだけシュラウドを朱い月は観測していた。
「多くの話がある。今宵は語り明かそうではないか……なぁ?」
虹色の瞳を輝かせながら月の王は青紫色の霧の中を見渡していた。
後数話でとりあえず終わらせられたらいいなぁとか思っています。
それとモルガン関係は完全に捏造と独自解釈なので本編で彼女の
真意が明らかになったら修正するかもしれません。