「そういや、馬肉って堅かったなー」
そう言った後、ケイコが心の入っていない笑いをする。
「いやホントに。人それぞれらしいが俺は慣れないかな?」
「……冗談ですよね?」
「?」
この一週間のうち起こった一つのやり取りを思いながら歩く。
前は注目を浴びない為にフードを羽織っているが、正直逆効果だったらしく今はガイアでよく見る質素なものを着ている(下半身は俺の私物の中にあったプレーンなジーンズとスニーカーだ)。
今では少しだがガイアで使っている言語(仮名称ガイア共通語)も話せるようになった。
ちなみに家名をホイホイ名乗らないようにっと稽古に釘を刺された。
何でと聞いても場合と場所によっては意味が異なるらしいが詳しく教えてくれなかったが、俺の想像通り(もとい、聞きかじった旧世界の知識)では確か家名って貴族関係者しかなかったっけ?
魔術や魔力の感知の仕方も覚え始めたが、何とも言えない奇妙な感覚だ。
こう、あえて言葉にすると体の髪の毛が静電気の籠った風船を近づけるとブワってする感覚に似てる。
ただこれもその人の魔力によって違うらしい。
魔力自身に属性というか、得手不得手な部類があり使い易いものと使いにくいものになるらしい。
これを聞くと旧世界のアニメの“アレ”を思い出す。
狩人x2。
考えながら歩いてると声をかけられた。
「お、噂の漂流者だ!おはよう!」
「オ、オハヨウ」
「そう堅くなるなって、この間ガキンチョどもの相手をしてくれて良い評判だぜ。なんて言ったけ、あの遊び? サーカッ?」
「サ、サッカー。デス」
「あー、サッカーだな。子供も大人の間も流行ってるぜ」
「ド、ドモ」
この人(ハイムだっけ?)はケイコの知り合いらしくよく喋る人の一人だ。
この間ケイコが巫女(俺的には医者)関連の仕事に患者の家に訪問したら相手は女性だったので俺だけ文字通り蚊帳の外だった。
待ってる間適当に歩き回ったら汚れた、ボール状の布塊が農具の手入れ用に売られていたんで買った(ガイアの金の勉強のためにはケイコから少しもらった。)
町の端にある少し開けた場で久しくしていないドリブルをし始めて数分。ボールを落としたら周りからドワッとざわめきが走ってちょいマジビビった。
どうやら暇だった子供や老人たちが俺の奇妙な踊り(ドリブルだっつーの)に目を引かれてそこから瞬く間に流行った。
それもあってか待ち人に声を掛けられるようになり、畑仕事の手伝いにも繰り出された。
ちなみに仕事後のビールはなかったが初めてミードを飲んだ。
甘かった。
で、なんで今ハイムのおっさん(本人は否定しているが見た目がおっさん)といるかって言うとハイムのおっさんの妻が久しぶりにケイコを招きたいって言い、今日の夕ご飯はハイムのおっさんの家族と一緒にする事になった。
……ローレさん奇麗だったなー。こう、ケイコとは違う大人の余裕と言うか、芯が強いというか。
で、食材とかをさばいている最中男性組は男性で他所で暇潰せって。手伝いをするって言ったが即却下された。
と言う訳でメンレを散歩中に
「で、どうだ?」
「ナニ、デショウカ?」
「ケイコの事だ」
「???」
質問の意図がわからん。
「いやだってお前の事情があるとはいえ一つの屋根の下で若い女と男が一緒に住んでて何もなかったはないだろ? こう、思うところの一つや二つはあるだろ?」
「ナイ、デス」
「……ハ?」
「ナニモ、オンジン、ナイデス」
「……お前」
そりゃそうだろ。 可愛い前に命の恩人だ。恩返しするならまだしも“そんな事”をする気は毛頭ない。
“覗きや妄想は?”ってか? 覗きとかは別腹だが隙が無いが積極的にする気もない。
そうだ、
「ハイム、サン。 トショカン、アル?」
「図書館だー? モチっと大きな都市ならあるかもしれんが、何でだ?」
「イロイロ、シリタイ」
「ああ、そういえばお前の記憶が曖昧だったな。俺でよければ何でも聞いてくれ、分かる範囲でだが」
「カン、シャ。 ゲンショ、コトワリ。リカイシタイ」
「うを、なんつーハードルの高い事を」
これが解らなければ魔法は使えない。魔術なら何とか行けそうだが、今後の事を考えると実戦に使えれば俺の生存率は高くなる筈だ。
「ダメ、カ?」
「うーん、俺なりの説明でもいいかどうか……つか何でだ?」
「タチタイ。ヤク、タチタイ」
「ふーん? 充分役に立ってると思うぜ?」
「???」
「……ここだけの話、男と男の話だ。いいな?」
目が
「イイ」
なら迷わず、俺は頭を縦に振った。
「うし。 ケイコの事だ。」
ナニッヌ?
何でここでケイコの話になる? 思わず声に出しそうだが必死に無言&ポーカーフェイスで切り抜く。
「昔あいつの子供の頃には色々あって、数年前までは極力人と付き合わない様にしてたんだ。それこそあいつとやり取りしてたのはローレと村長と領主様だけ位だった」
ふ~ん。
「顔を見せ始め他の奴らも安心したんだが毎日同じ事の繰り返しと言うか、まるで“生きてる”って感じがしてなくてな? なんだか危なっかしい感じだったよ」
ほう。
「そこでお前だ」
……
「お前が来たから
ふーん、ケイコにもそんな時期があるんだなっとこの時は軽く思ってた。
あとからだがこの事をもっと真剣に聞けって過去の自分に殴りながら叫びたい。
「っと、話が逸れちまったな────」
やっと気づいたかよ
「────原初の理だっけか? 俺が思うには、あれはこの世界の事だ」
「?」
「えーっと、ここに俺達がいるだろ? っで、地面がある。地面の上にたまに草があって地面の中にも蟻はあるだろ?」
なんのこっちゃ。 そうだ────
「ハイムサン、ゾクセイ?」
「ん? 俺の属性か? 俺は“製作”寄りだな」
「???」
え゛。
ちょいまちーや。こげなこときいとらんぜよ。
「まあ、そのお陰で畑仕事の長になったって感じもしないがな。ってその顔じゃ分からんか」
頭を縦に振る。
「チョット、ワカラナイ」
「いや、俺もその手の部門の事は疎いからな……そうだ! ローレに後で聞いてみるか?」
「カンシャ、スル」
「いいってことよ!
背中をバシバシするのはやめてくれねーか、おっさん《ハイム》?
ガタイが良いだけにマジで痛い。
「本当に……
だから余所者の俺に何を期待してるんだ?
……
結果的に言うとケイコ+ローレさんコンビの飯はうまかった。酒があれば尚更良かったが夫婦二人に断固拒否された。
何故だ。
その夜の帰り道に俺のスマホの着メロが鳴る。
「ひゃ?!な、何ですか?!」
「お、悪いな。俺のスマホの着メロだ」
「その、光っている板の事ですか?」
久しぶりに見た、ケイコのキョトン顔。 俺はスマホを操作し、メールが久々にが入っているのを見た。
【レナルト軍曹、生存を嬉しく思う。先の依頼で確認された生存者は貴殿のみ。多々の知的生命体の存在を感知しているので救出隊との合流座標をそちらからの送信を待つ。それまで低軌道にて待機する】
うおおおおお! 文明を感じるゥ~!
「やったー! 帰れるぞー!」
「え?」
「迎えがすぐそこまで来てるんだ!」
「?」
俺が上を指さし、ケイコはそれに釣られて夜空を見る。
「……そうですか、それは良かったですね。」
なんだ? 一瞬顔の表情が曇ったな。
「どうかしたか?」
「何を、ですか?」
「何をって……」
そういや、
「?」
反則だろ、その“何が起こってるか分からないけどとりあえず笑顔”は。
「なあ、一緒に来るか?」
「……え? どこに……ですか?」
「いやだから俺と一緒に。」
「……え? で、ですがそれは……つまり……でも……」
どうしたんだ? いつもはどこかポヤポヤしてるのに、こっちをチラチラと見たり、ぼそぼそと独り言をしたり。
いつものポヤポヤ心は何処へ?
「俺はただ
「そ、その……迷惑、じゃないでしょうか?」
「? 何が?」
「ですから、マイケルにです」
「迷惑っていうか、俺がしたいんだが……むしろお前の方は大丈夫か?、
「確かにメンレを離れることを文にしないといけませんが……」
ああ、わかったぞ。 躊躇する理由が。
「安心しな!」
ズバリ!
「へ?」
な~んだ、そんな事か! 確かに帰れるかどうかわからないと不安だからな!
「大丈夫だ!
「……」
胸を張り、唖然としてるケイコに俺はそう宣言する。
「本当に……いいんですか?」
「おうよ!」
「
「恩人に二言はない!」
ま、
責任もってこっちが今度は世話を見るさ。
「本当に……」
「ん?」
「……」
な、なんだ? なんなんだその顔は?
……とりあえず気まずいから目をそらして────
「────あ────」
────俺はスマホの救出座標設定を見た。ケイコが何か言いかけてたがスルー。
「うーん、どこがいいかな? やっぱ森か? なあ、船が着陸する場所って、森でいいか?」
俺が声をかけてケイコがハッとしたような顔をする。
「……え? あ、夜の森にしたほうがいいと思います。夜は比較的に人が少ないので。」
「りょーかい」
俺たちはケイコの家に帰り、
いやいや、隠れてそうしてるつもりでも
てかなんで俺を見る?
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第8話、いかがでしたでしょうか?
次回の予告っぽいもの:
狩る者と狩られる者、そしてその残り物を拾う者、
刃を持たぬ者は生きて行かれぬ“戦”という場所。
己の道徳など無くただただ生きる為が世界、
“ここ”は永い“戦”が生み出したゴモラの成れの果て。
“戦”と無縁の者が見るもの、するものとは何か?
次回、「“驚愕”」
自分の知っているものからかけ離れたものは、苦い。