「お疲れー」
「よう、生きてっかー?」
「うわ、こいつのパイロットの野郎ヘルメットのバイザー開けて吐きやがった!」
「よーし! 一戦おーわりっと!」
周りの兵士と整備士達が格納庫の中で騒ぐ。 時には笑いながら、愚痴りながら、無重力での立体機動戦の緊張から解放されて吐きながら。
「ハアー…」
後は
あーマジ旨い。 喉の奥にこびりついた血の味を誤魔化せる。
俺の吐いた息と共に灰色の煙が出て上に上がり、天井に設置してる空気換気システムに吸い込まれていくのを見ながら俺は鼻血を止めているティッシュを新しいのに変える。
やっぱ無理に
接近した床に俺は着地し、後ろにケイコが到着するのを聞き声をかける。
「あー、さっきの事は気にすんな。初陣でしかも銃を撃たせようとした俺が悪かったよ」
「……」
ケイコを見ると暗い顔で俯いたままだった。
「えーと……」
こういう時何を言えばいいんだっけ?
『こういう時は甘~い物が良いわ!』
いや、“アイツ”は参考にならん。 ケイコと“アイツ”は違いがありすぎる。
気まずい空気のまま俺達二人は格納庫を後に通路の中を歩く。
「……それは葉巻ですか?」
「ん?」
ケイコがやっと声を出したと思ったら、“葉巻”? ってタバコの事か。
「ガイアにもあるのか?」
「白い棒ではなく、葉を巻いたものですね。」
俺はフィルターまで吸ったタバコを近くのゴミシュートに鼻血のついたティッシュと共に投げ捨てる。
「大丈夫……な訳ないよな」
「……かなりの方達が見えなかったですね」
「でも死亡者率6割は少ない方だ。ラッキーだったな俺達」
俺はそう言うとさっきのモビルソルジャー戦を思い出す。
_________________________________________
『撃つんだ、早く!』
俺は十六式の右腕に装備されたレーザーライフルを乱射し、彼女の方をちらっと見ると青い顔で動きが止まっていた。
あ、新兵症だなこりゃ。
「
【マイケル軍曹ノ
周りが遅くなる中で俺は十六式の各種制御スラスターを駆使し、軌道を無理やり変えながら接近してたディダ帝国の機体を素早くプラズマサーベルで切り付けた後爆発寸前の機体を蹴る。その勢いでもう一機の不意を突き接近して切り付ける。
【
「却下、続行だ」
【マイケル軍曹ノ
頭痛を無視しながら俺は十六式を駆使し敵の攻撃を回避しつつ、威嚇と撃墜を繰り返す。
ちょっと息苦しくなってきたな。
「フンッ!」
鼻に何かつまった感覚をとりはらおうと息を鼻からいきおいよく吐き出すとビシャっと音がした。
ヤバイかな? 鼻血か?
『―――――――? ―――――!』
横にけいこの顔がみえる。 なにかさけんでいるが聞こえない。 耳なりがする。
しかいもボンヤリと────
「ゴホッ!
【オツカレサマデシタ、衛生兵ナドノ健康診断を推薦シマス】
強化解除したとたん、周りの景色が早く感じ、頭痛が酷くなる。 レーダーが周りに敵機の反応がないのを確認し俺はヘルメットを乱暴に取り外す。
「……あー、頭痛────」
『マイケルさん、ジッとしてて下さい!』
無線機越しのケイコの声のする方を見るとヘルメット越しでも顔色が悪い。
やっぱり初の宇宙立体機動戦はきつかったか?
と思いきや魔術を唱えていた。
『命の精霊よ、この怪我し負ひし者に安寧を、安らぎを!』
唱えが終わった瞬間、俺の身体が温かい光に包まれ今まで息苦しさと頭痛が嘘のように引いていった。
「お? サンキュー。楽になった」
「もっと……」
「ん?」
「何でそんなに死に急ぐような事を?」
もしかして兵士としての義務を急ぎすぎているとか?
「いや、そりゃ違うだろ? 俺は兵士。戦うのが義務────」
「ち、違います。違うんです……」
「?」
ハテナとする俺に対し、ケイコは言いよどむ。
_________________________________________
っと、気まずい空気の中俺達は帰還して今に至る。
「6割……ですか」
「大体8割だからな、平均死亡率」
「……」
だからその顔は何だ?
……分からんが、気まずくなる。 目を逸らしてしまう。
ピコンッっと俺の携帯が鳴る。
「ん?」
俺はスマホをポケットから出し、画面を見て────
「お、お、お、お────!」
「へ?」
「おっしゃー!」
「ひゃ?! な、なんなんですか?」
「キタキタキタキター!」
「な、何が来たんですか?」
笑いながら俺はケイコにスマホの画面を見せた。
「軍務からの限定的自由権!待ってました!」
フハハハハハ! やったぞ!
「は、はあ。おめでとうございます?」
何が何だか分からない顔をしているケイコに対し、俺は笑顔を向けた。
「やっとゴロゴロできる!」
「“ごろごろ”? ……回る事でしょうか?」
ガクッ。
「い、いやそっちじゃなくて。
「“なにもしなくていい”?」
む、そういえばケイコは
「つまり俺は一時的に軍務から外れるという事だ」
「それは……戦事をしなくていいという事ですか?」
「そうなるな」
「まあ! それは良い事です!」
うわ、ケイコの手加減待った無しの眩しい笑顔がー!
なんか俺まで今以上に嬉しくなってくるぞ。
「それでマイケルさんはどうするのですか?」
え?
「え?」
思わず声にも出ちまった。 いざ何でもして良いってなると、何をするのか……
そういやケイコに俺の分けれる物の使い方とかの説明だな。
そうと決まればまず
「そうだなー……」
けど中世時代辺りの奴にいきなりデパートは無理難題じゃね?
そうだ。
「博物館……とか?」
「博物館ですか?」
「あ、ああ。博物館かなんかに行くか?」
「え?! よろしいのですか?」
何この食い付き?!
_________________________________________
何故なら
これで彼らの文化がなぜこんな事になったのか分かるかも知れない。
知ったからと言って何かできるとも限らないけど、少なくとも
_________________________________________
何、何、何だ? 博物館が好きなのか?!
「あ、ああ。いいとも」
……ま、いっか。
そんなこんな事をしてる間に俺達のいる救助艦隊は
着いた後の検問などは省略するが、流石に中世辺りの物は珍しいらしく時間を取られた。
待ってる間にケイコからの質問など答えている俺だが……
「戦争の原因?」
「はい、ご存じであれば」
という風な質問ばかり。
俺は兵士であって俗に言う“哲学者”って絶滅した職業に変換した覚えはないんだが。
更に一時間後、質問攻めでヘロヘロになった俺と何だか考え込んでいるケイコは税関職員の
「帰還ご苦労様ですレナルト軍曹、よい日を」
「おう、じゃあ行くかケイコ?」
荷物を手渡され、ケイコの方に向くと彼女は高層ビルが並んでいる地区を見渡している。
辺りは既に夜になり、人口の光で照らされている。
まさに夜が無い街だな。
「凄い景色だろ?」
ガイアではこんな景色あり得ないらしいからな。
「え、ええ。そうですね?」
そこで何で疑問形になる?
黒い夜にライトアップされた雲まで聳え立つ数々の高層ビル。
化学の賜物と言っても良いんじゃないか?
_________________________________________
「まるで巨大な墓場、ですね」
とボソリと言い、マイケルさんの後を追いかけた。
まだまだ続く予定です