気が付くと
体を上げ、肺いっぱいに空気を吸い
「やっぱ肩が凝るな、昨日の仕事はハッスルしすぎたかな?」
ぼやけた頭を覚醒する為に独り言を続け
「お、おはよう」
彼女が朝の挨拶をしつつ頭を下げ、その弾みで肩より長い金髪が顔を隠す。
「おはよう、〇〇」
「あ」
「朝から働き者で
「〷も働き者ではないですか」
「そうか?」
この子は〇〇
────誰だこいつ?
ていうかここはどこだ?
辺りを見渡し鏡を見つけ、
────顔の無い、のっぺらぼうのような頭が見返していた。
「うわあああああああああ!!!」
俺は目を覚ましながら叫んでいた。 体を起き上げさせ、周りを確認する。 冷や汗が身体中にこびりついて空調の効いた風が少し肌寒く、いつものプレハブ住宅の部屋だと確認出来た。
「何だったんだ、今のは?」
未だに心臓がバクバクしている、何か夢を見ていたような気がするが……
駄目だ、思い出せん。 嫌な夢だと思うが────
バアン!
────と考えていたところ、豪快な音と共に扉が開いた。
「大丈夫ですかマイケルさん?!」
俺は入ってきた心配しているケイコの顔を見て若干安心する自分に少し戸惑いながら聞いた。
「なあ…俺って…」
「はい?」
「…いや、何でもねえ。それよりラケール達は?」
「はあ…ラケールなら外で待ち合わせをしていると言い出かけました」
外食か?
俺はスマホを探し始め、ケイコがキョロキョロしながら声を掛けてくる。
「ここがマイケルさんの部屋ですか?」
「ああ、そうだが?」
あまり物は置いてはいないが…何か恥ずかしいな。
「────な、なあ」
「はい?」
「…その…」
「何でしょう?」
「俺のスマホどこにあるか知っているか?」
「“すまほ”?」
「俺がいつも持ち歩いている携帯電話」
「えーと…」
あ、通じないか。 じゃあ────
「────持ち歩いている“光る板”」
「ああ! それでしたら下にあります。 持ってきましょうか?」
「いや、いい。 ちょっとメッセージを送るだけだ」
「“マッサージ”?」
ガクッ。
「ち、違う。 とりあえずそれも教えるか」
俺は早速ケイコにスマホの使い方などをついでで教えた。
…なんか新鮮な反応するなケイコは。
ホッとする。
「────これがカレンダー機能って大丈夫か?」
惚け顔になりつつあるケイコに声を掛ける。
「は、はい…と、とにかく機能が沢山あるのが分かりました」
あちゃあ、しまった。 一気に説明しすぎたか。
「すまん、じゃあ取り敢えず電話とメッセージ機能を教えれば良いか」
「はい、お手数を掛けます」
「いやいやいや! 一気に説明し始めた俺が悪いだけだ! っで、これが────」
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「♪~」
「この着メロ…や~っと起きたかあの朴念仁」
私はスマホを出すと共にメッセージを確認する。
『お前もしかして怒ってる?』
ムカッ。
『激おこ』
取り敢えず短く、かつクリアに返信を打ち返す。
『すまん』
『“すまん”でオールオッケーなら憲兵は要らん』
『いやマジで。 俺が軽率だった』
え? こいつ…え?
『すまなかった、配慮すべきだった』
え? え? ええええええ? ちょ、え? マジ?
『もう一度言う、すまなかった』
アイツ………
「ああ、もう! イライラしてるこっちが馬鹿らしくなっちゃうじゃない、もう!」
何とかニヤケそうな顔を必死に我慢しながら返信を打つ。
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「こ、これでいいのか?」
「ええ、これならば良い返事が来るかと」
え? 何をって?
そりゃあラケールへの返信とかに関してだ。
俺が『すまん』と返信したのを見たケイコは
案の定、ラケールからの返信を見れば効果はあったみたいだ。
『分かればいいのよ☆ 今からアイリ達と合流するところだから大人しくピザとかの手配46~☆』
……何この文章表示? 特に最後の“よろ~(星)”って……
普通に怖いんですけどこの豹変化?!
「何ですか? この文章は?」
そらみろ! ケイコだってこんな反応だぞ?!
「えーと、許してくれたみたいで今から友人達とこっちに向かうから準備をしてくれと」
「まあ! それは良かったですね!」
「ああ、お前のお陰だ。 ありがとう、恩を返すどころかこっちが受けてばっかりだな」
「いえいえ、こちらこそしたい事なので苦になっていませんよ?」
はあー、マジ良い感じの子だ。
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「ぶえっくしゅ!!!」
突然のムズムズした鼻のせいで
「お? 何だ何だ? 豪快なクシャミだなラケール?」
「うっざいわね、クシャミぐらい誰でもする」
誰か私のことを喋っているのかな?
…アイツかな?
「大方ラケールが見栄を張って薄着を履いているのが
余計なことを言い始めた知人Bにはエルボー・スマッシュを食らわせた。
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「よし、これであらかたのフィンガーフードとかは良いとして────」
「“ふぃんがーふーど”?」
「手で食べる料理の事だ。あと問題になりそうなのは────」
俺はデリバリーサービスの会計や手配を確認しながら次の問題にとりかかった。
「────飲み物かな。食事はこれでいいとして」
「何か問題があるのですか?」
「うーん…」
腕を組みながら俺は
「? はい、なんでしょう?」
やっぱ
果たして
「なあ、“酒”って知っているか?」
「お酒、ですか? 単語として知っていますが…」
“単語で”かよ?!
じゃなくて────
「じゃ、じゃあ飲んだ事は?」
「無い…ですね、すみません」
「いや攻めている訳じゃないんだ!」
となるとここはやはり────
「────じゃ、炭酸飲料にするか」
「“たんさんいんりょう”とは?」
あー、そういえばそうだった…
俺は近くの冷蔵庫から定番のカフェーラのボトルからコップに少しよそった。
「飲んでみるか?」
「な、なんですかこれは? ブクブクしている黒い油みたいな見た目をしているのですが」
なんだその表現?
「これが炭酸飲料の一つなのだが?」
ケイコが恐る恐るコップを持ち上げ、匂いを嗅ぐ。
「薬…ではないんですね?」
「薬じゃあ無いぞ」
ラケール曰く昔は薬として広告されていたらしいが。
「で、では…い、いただきます────ケホ?!」
ケイコが飲み始めたと思ったら咳をし始めた。
むせたか?
「だ、大丈夫か?」
「ピ、ピリピリしますぅ~。で、ですが貰った物を無下には────ケホ! は、鼻が────」
涙目になりつつもカフェーラを飲むケイコ、そしてむせての繰り返し。
……何この気持ち、ほんわかする。
「たっだいまー!」
「お邪魔するぜマイケル!」
「四肢喪失まだかー?」
「何かいい土産話があると聞いたんですけどー」
ラケール達の声が玄関の方から聞こえてきたので、出迎えに向かう。
「おおー、久し振りだなお前ら!」
素直に俺は嬉しくなり、ラケールが読んできた奴らを見る。
「で、なんでお前だけ顔に痣出来てんだ?」
「いやー、来る途中ラケールに指摘したらこうなってな」
俺はこのグループの中で一回り背が高く、金髪で割と顔が整っているのがクリフ。
軍人大学生の陸軍部所属のクリフ・マックスコナー曹長。
同じ重歩兵のせいかラケールと一緒にかなりの場数を踏んでいる。
「ま、こうなる事は分かっていたがな。 で、まだお前もまだ生身か?」
次に背が俺達の中ではかなり低めで黒に近い濃い栗毛がリック。
軍人大学生の空軍部所属のリック・ダンレマン伍長。
“背が低いから空軍に入れられた”と冗談で言っているが実際空軍所属は基本的に背が低いのは事実だからな。
「元気そうね、マイケル!」
「サイム嬢も元気そうで何よりです」
「もう! お嬢様扱いは社交界とかだけでいいの!」
「へいへいっと」
「よろしい!」
このドヤ顔しながら背が低くて無い
サイムコーポレーションの一人娘でこの中でただ一人のいわゆる“良いとこのお嬢ちゃん”だ。
とは言えお嬢扱いが嫌いで毎度毎度実家から抜け出しては俺達とつるんでいるが。
「このメンツで会うのは久しぶりな感じがするわ」
「ああ、ありがとうラケール。 成り行きとはいえラケールには感謝してる」
「べ、別に良いわよ」
「「「ふ~ん?」」」
「な、何よ
「「「べっつに~?」」」
「なんでそこで三人ともにやけるんだ?」
「ラケール────」
「────俺達は応援してるからな」
「うっさい馬鹿!」
クリフとリックに同情(?)されて怒るラケールにこの場を楽しむアイリ。
うん、懐かしい日常に戻ってきたんだな俺は。
「あの、マイケルさん?」
「あ、ああすまない。 紹介するよ、俺の友人達だ」
背後からケイコの声がして振り返り、紹介する為に再度振り戻ると固まっているクリフ、リック、アイリ達が呆然として立っていた。
「あ、初めまして。 私の事はケイコとお呼びください」
丁重にお辞儀をするケイコ。
「「「…………」」」
と、微動だにしない三人組。
…う~ん、どうしたんだr────
「現地妻キターー!」
と空へと叫ぶクリフ。
「C? D? いやこれはEかFの予感が────」
と真剣な顔でブツブツ独り言を言いながらガン見するリック。
「ラケール大丈夫? 愚痴りたいなら何時でもいらして良いからね?」
と同情の眼差しをラケールに向けながら言うアイリ。
「違うっつーの! あとリック、それ以上見比べたら目玉くり抜くわよ!」
そして三人組に向かって起こる
「????????」
これ以上見た事の無い数のハテナマークがさぞや頭から飛んで状況が読めないケイコ。
さーて、どこから説明すれば良いかな?