俺と僕と私と儂   作:haru970

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第23話 「異は日頃うちつけに」です!


第23話 「異は日頃うちつけに

 〔大きな犬モドキがドア付近の匂いを嗅いでいるとマイケルの撒いた重曹を吸い込んだのか咳をしているかの様な音が三人の耳に聞こえてくる。〕

 

「Gugah! Gaha! Gaha! 」

 

 そのままどっか行け!

 っと(マイケル)は念じながらAK105カーバインをラケールと共に狙いをドアに付ける。

 

「Fushuuu…」

 

 頼むからどこか行ってくれ!

 

「「「…」」」

 

 ドアの外からノッシリとした足音っぽいのが響いて遠のくのを俺、ラケール、ケイコが全員待ってから数分後(実際には数秒後か?)に長い溜息を出した。

 

「何だったんだ今のは?」

 

「ていうかちょっとグロかったわね」

 

「“ぐろ”とは?」

 

「“グロ”テスクの略。 なんか“屋敷・オブ・ジ・デッド”に出てくるゾンビ犬みたいな感じがしてない?」

 

「ああ、気味が悪いな。それに嫌な予感がする」

 

 俺はケイコとラケールに換気口での出来事を話す。

 

「…」

 

「うげ、何それ? ブードゥー儀式か何か? てかいまだにティダ帝国にそんな考えをする人がいるなんて…」

 

 ラケールが薄気味悪く反応しているのに対してケイコは何か考え事をしているのか黙り込んだ。

 てか何か心当たりがあるんじゃないか?

 

「どうしたんだケイコ?」

 

「え?」

 

「何か知っているのか?」

 

「いえ、ただ…」

 

「ただ?」

 

「生贄を用途する魔法は時に使い方を間違えると魔物を呼ぶと聞いた事が…」

 

「「え?」」

 

 じゃあなんだ? さっきの怪物は“魔法で作られた魔物”ってか?

 

「と、とにかくここから出よう」

 

 〔マイケルが話を終わり、三人は廊下へと通じるドアを開け、通路の様子を見る。 辺りには腐った肉の破片や固まりつつある瘡蓋らしく物が転がっている他は何も見えないらしく、マイケル、ケイコ、ラケールの順番で通路を進む。〕

 

「で、ケイコちゃんの使う感知の魔法ってどのぐらい有効なの?」

 

 未だに“ケイコちゃん”かよ。

 

「はい、私は主に風の動き、即ち“呼吸”の動きを“聞く”事によって分かるのですが…」

 

 あ、この流れは────

 

「な、何?」

 

 おずおずと聞くラケールに対して申し訳なさそうにうつ伏せるケイコが話の続きをする。

 

「先程の者は呼吸をしていませんでした」

 

 …え?

 

「え?」

 

 俺の内心とラケールの言葉がハモった(と思う)。

 

「…ちょっと不味いなそれは」

 

「ハア? 何でよ?」

 

「いや、だって呼吸をしていないって事はもう死んでいるって事だろ? もう死んでいるヤツをどうやって殺すんだ?」

 

「死ぬまで撃つ」

 

 何言ってんだこのアホ(ゴリラ)

 いや、脳筋か?

 

「弾が持つと思うのか?」

 

「博物館の保管庫の物を使うとか?」

 

「いやそもそも脱出して外の奴らと合流して────」

 

「そう言えばさっきから静かね、もう既にハウト連邦軍が突入しておかしくない筈なのに…」

 

「マイケルさん?」

 

「ん?」

 

 さっきから黙っていたケイコを見る。

 

「先程説明した話の中で術式らしき物を見たと言っていましたね? その部屋に案内してもらえますか?」

 

「…あー、いいが部屋の中はかなりグロイぞ?」

 

「かまいません、少し気になる事があるのです」

 

「分かった、こっちだ────」

 

 〔見る場所が変わり、博物館外の大道路の景色が見える。 

 そこにはハウト連邦所属のモビルソルジャー隊と戦車が先陣を切り博物館入り口付近に先程マイケル、ケイコ、ラケールが見た様な怪物を駆逐し、兵士が後方から装甲車に乗りなが博物館への突入の準備を進めていた。 

 その中の兵士二人が喋っていた。〕

 

「しっかしやっと突入できる段階になったな」

 

「ああ、先程のBOW(生物有機兵器)達が雪崩出て来て前衛を襲った時は焦ったが────」

 

「────そもそも無茶な命令だったんだよ、“周りのビルに被害無く殲滅しろ”なんて」

 

「まあ、M(モビル)ソルジャー隊の何人かは喜んでいたが」

 

「…まあ、気持ちは分からなくも無い。俺も火炎放射のナパームぶっ放しながら────」

 

「お喋りはそこまでにしろ! 各隊、博物館内の見取り図を再度頭に叩き込んでおけ!」

 

 〔士官らしき男が叫び、兵隊の何割かはもう既に掃討気分なのかスマホを使い今夜の献立や予定を立てていた。

 

 景色がまた博物館内にいるマイケル、ケイコ、ラケールに戻り、三人が()()()()に着く。〕

 

「ウッ!」

 

「うっわ、グロ」

 

「だから言っただろ?」

 

 ()()()()に着き、ケイコが口を塞ぎ別の方向を向き、ラケールバツが悪そうな顔で中を見る。

 

 部屋の中の照明をつけた今、中の景色がさらに鮮明に見えた。

 

「…大丈夫か?」

 

「…ハ、ハイ────」

 

 ケイコの顔色悪そうだな。やっぱ()()()()のは見慣れていないか。

 ケイコが床に刻み込まれているモノをブツブツと言いながらなぞっている間俺は机の上に置かれていた物に注目が行く。

 

「これは────」

 

 これは確か前に見たあの男女の傍らの男の方の奴が独り言を言っていたブツか?

 何だ、本か────

 

「何?!」

 

 俺は()()を手に取り目を見開く。

 

「何々? …なにこれ、ミミズみたいな模様?」

 

「いやこれは────」

 

 俺はこの文字を()()()()()、いや正確には()()()()()文字だ。

 

「何で…何で()()()()がここに書かれているんだよ?!」

 

「え? ガイア語って────」

 

 そう、本の題名がガイア語で書いてあった。

 

「マイケルさん、この術式は────きゃああああ?!」

 

「うお?!」

 

「何?!」

 

 ケイコが何かを言いかけたが突然床からの発している閃光に俺とラケールが声を上げ、ケイコが叫ぶ。

 

「ケイコ?! クソ、なんなんだよ?!」

 

 光りが眩しく、とても瞼を開けられる状態ではなく、俺は目を瞑り激しい風が周りを吹く。

 

「なにこれ?! 何なのよこれ?!」

 

「知らん! クソ、光が────!」

 

 俺は何とかケイコの方に歩もうとしたが、足が鉛みたいに重く、激しい風のせいで足元が不安定でうまく進めなかった。

 その中僅かにだがケイコの声がした様な気がした。

 

「マイケルさん」

 

 と消え入りそうな声で一言だけ。

 

「ケイコォォォォォ!」

 

 俺はありったけの声で叫んだつもりだが周りの暴風に飲み込まれ、自分自身が聞き取れないぐらいの音量にまで達していて、眩い光が辺りを埋め尽くすと共に何か吸引力みたいな力俺の体を引き込もうとする。

 

「ぬあ?!」

 

 この新たな勢いにびっくりしながらも何とか身体をかがみ、引き込む力に抵抗する。

 やがて暴風と光が収まり何とか目が見える程度に回復した。

 

「く、なんなの一体」

 

「ケイコは?!」

 

 ラケールも視界が回復し始め、俺はケイコのいた方を見ると彼女が床に横たわっていた。

 

「ケイコ!」

 

 俺は焦り始める気持ち何とか心の奥に押し込み、ケイコに駆け寄った。

 

「マイケル? え、ケイコちゃん?!」

 

 俺はラケールを無視しケイコのバイタルと呼吸をチェックした。

 …外傷なし、呼吸音もしているし心拍も強い。

 気を失っているだけか?

 

「ッ! マイケル!」

 

 後ろでラケールが息を潜む声がした様な気がするが今はそんな────

 

「グワ?!」

 

 〔マイケルの身体が何かに弾き飛ばされたかのようにケイコから遠のき、ラケールのいるところまで飛ばされる。〕

 

「な、なんだ今のは────?」

 

 俺は突然の勢いで遠くなりそうな意識を無理やり押し止め、ケイコの方を見る。

 そこにはどこを見ているのかハッキリしない目をしたケイコが立っていた。

 

「……」

 

「ケ、ケイコ?」

 

 何が何だか分からん。

 何だかわからないが…

 猛烈に嫌な予感が────

 

「────ドワ?!」

 

 急にケイコが動いたと思ったら喉を摑まれ、身体ごと宙に浮かされていた。

 じ、地味に苦しい。

 

「ちょっとケイコちゃ────きゃ?!」

 

 〔近寄ったラケールが声を出すと同時に急な風がラケールの身体を横に吹き飛ばし、その勢いで体が壁に打ち付けられる。〕

 

「ウガ…ガ…」

 

 く、苦しい…い、息が…

 俺は首を鷲掴みにしているケイコのてを何とか振り解こうと試みるが────

 ────細腕にどんだけ力入れてるんだ────

 ────無残にももがくだけだった。

 

�����(我を呼びしは汝か)?」

 

 通訳の魔法を切っているのかケイコが俺にガイア語で直接話しかけてくる。

 

「ガ…」

 

 未だに力を弱めていないケイコの腕をバシバシと手で叩く。

 答えようがないっと目で訴えたのが伝わったのか、握る力少し弱まる。

 ていうか俺の足浮いてね今? 地面に足が立っている感覚がないんだが。

 

「グハア! ハア、ハア、ハア────」

 

 あー、空気うまい。 酸素うっめえ。

 

�����(とくいらへよ、人)?」

 

 俺が空気いっぱい息継ぎをしていると再度ケイコから質問が来る。

 てか何か口調変わっていないか?

 それともこれがガイア語での口調なのか? イマイチ聞いてくる事が理解出来ない。

 

「ま、待ってくれケイコ、まず俺を下ろ────」

 

�����(まあ、よし。先ずは腹を満たすや)。」

 

 急な寒気が俺の背中を走り、ケイコが舌なめずりをする。

 

 そして銃声の音がして俺の身体が離され、俺は咳をしながら後ろへと後ずさった。

 

「マイケルから離れなさい!」

 

 俺が見るとラケールは頭からカツラを投げ捨てていてどこか切ったのか血が頬の横を流れ、ケイコの腕に弾痕の穴が数個開いて血がそこから床へと落ちて行った。

 

「|�����《ム、何なりそのあやしき筒は?それにこの依り世、余りにも動き鈍い》。」

 

「ごちゃごちゃとうるさいわね! マイケル、立てる?!」

 

 何が起こっているんだ?

 何なんだこれは?

 どうしてこうなった?




久しぶりに次回予告っぽいのをどうぞ!


運命の手綱を握っているのは偶然か“偶然”と装う名の何かなのか?
それは永遠の時を超える答えの無い謎かけ。
では視点を変え、問おう。
運命とは何ぞや?

次回第24話 「Rain From a Cloudless Sky」

晴天に降る雨は塩辛い。
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