少し長めですがお楽しみいただけると嬉しいです。
「フゥ、フゥ────」
ああ、頭痛い。 これは何処か切っちゃったわね。
視界に点々が見える。 頭の傷から流れる血がウザイ。
頭が熱い。 カツラは取った筈なのに。
「�����?」
ケイコがまた聞いた事の無い言葉で語ってくる。
「何よそれ────?!」
「────ゲホ、ガイア語だ…」
「マイケル、喉は大丈夫?」
「ああ、何とか────」
別に状況が良くなった訳じゃないけど────
「�����」
────ケイコがニタァと笑い、先程私が撃った腕を舐め────
「────ええええ?! ウソ?!」
何アレ?! 傷口がもう閉じ始めている?!
「なら────!」
私が引き金を引いたと思った瞬間、私の意識が遠くなりそうな程の痛みが背中を走っていた。
「────! ────!」
マイケルが何か叫んでいる。
耳がキーンとする……
あ。 吹き飛ばされたの、私?
何に?
……じゃない、早く立って……
あれ? 足に力が入らないや。
それに頭がグワングワンする。
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「やめろ! やめてくれケイコ!」
「
ケイコがそう俺に聞いてくる……
撃つか? いや、まずは動きを止め────
「うわ?!」
俺は魔力の動きらしきモノを肌で感じ、反射的に横へ身を投げると俺のいた場所当たりの床に無数の切り刻んだような傷跡が出来た。
「く────!」
「
俺は銃の引き金を引く指に力を込め────
……
何をしているんだ俺?
撃て。
「
早くとラケールを医者に見せないと。
俺は未だに壁に叩きつけられ、呆けているラケールを見る。
俺が、何とかしないと。
でもケイコを撃つのは────
────でもそれじゃあ────
「クソォォォォォ!」
俺はグチャグチャになりつつある思考を無視してようやく撃つ気になった指で引き金を引き、弾丸がありもしない方向へと撃ち込まれる。
「……ハッハッハッハ!」
ああ、やめてくれ。
そんな顔を俺は見たくない。
そんな声を聞きたくない。
優しい笑顔の出来る人が、顔が────
────人を嘲笑う様な────
そこでケイコは壁の方に向かい、突然の爆発にもかかわらず笑っていた。
「突げ────グエ?!」
「な、なん────ウグ?!」
「ハッハッハッハ!」
ケイコが笑いながら壁に穴を開け、突撃してきたハウト連邦部隊の隊員に文字通り飛び掛かり、獣の如くどこから湧いてきている怪力か何かで防弾ベストごと胴体や首などを引き裂いていく。
「って、見てる場合か、俺?! おい、ラケール! 大丈夫か?!」
俺は遠のくケイコの笑う声を頭の端で聞きながらラケールのいる側まで走った。
「う…」
ラケールが苦しそうに呻き声を上げる。
「おい!」
「背中と頭…痛い…」
ラケールの頭から血が流れているのを俺はいま気付き、自分のジャケットの腕部分を千切り、ラケールの頭に巻き付け、出血を試みる。
「背中は────」
「あう」
ちょ、変な声出すなよ。
調子狂うな。
「後は────」
「どわあ! いった~い!!!」
俺はラケールの背中を見るためにそっと身体を前のめり具合にした後、出血が外部にも内部にもないことを確認した。
「出血はしていない────」
「早く追いなさいよマイケル。」
俺が応急処置を施そうとするとラケールに止められた。
「
「え、いやでも────」
「行きなさいってば!」
半場力任せに俺はラケールに押される。
「…そうか、ありがとう」
「良いって事よ」
俺はAK-105に不調が出ていないか確認し、部屋の外から聞こえる悲鳴を頼りに走った。
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あ~、私ってば何やってるんだろう。
そう考えながら
「ッ」
立ち上がった瞬間、眩暈がして、倒れそうになるのを壁に寄りかかって阻止する。
「おかしいな、こんなにヤワだったっけ私?」
そういえばちょっと前まで昏睡状態だったんだっけ、私。
「でもそれにしては筋肉とかは衰えてないわね、リハビリとかしてないのに」
あ~、こんなに体が痛いのって
0261空域戦線、私とマイケルが共に駆け抜けた場所。
そして私がこん睡状態に陥った戦線でもある。
「…あれ?」
懐かしむように私はその時のことを思い出そうとして
「あれれ?」
えっと、私は確かに出動して、母艦から発進する前にマイケルと話してそれから……
その先からの事から目覚める前の記憶の空白に冷汗が私の背中を埋め尽くし始める。
「なん…で?」
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〔同時刻頃、マイケルは博物館内の通路を走っていた。所々にはハウト連邦の軍服と装備をしている軍人だったらしき
何なんだこれ?! ケイコに何が起きたって言うんだよ?!
クソ、クソ、クソ!
角を曲がったところで自分の目を疑った。
〔マイケルがそこで見た光景は実に見慣れたモノだった。 横たわって呻き声を上げる者、自分の欠損した手足などを探しそれを抱きしめる者、愛する者への願いなど。
そこはマイケルが嫌と言うほど
だが────〕
「────ウッ!」
〔何故か吐き気が込み上げ、嘔吐するのを必死に我慢するマイケル。
口を手で覆い、先を急ぐ。〕
何でだ? 新兵じゃあるまいし、何で俺は吐き気がしたんだ?
〔困惑しながらもマイケルは走り、別の区に着くとそこには阿鼻叫喚となっていた。
逃げ惑う兵士、恐怖に負け銃を乱射する兵士、勇気を使い、襲ってくる
その誰もが例外なく、等しく死に至る傷を終え散って逝く。
そしてその原因は既に人の形を捨てているかのように黒い靄が全身を覆い変質し、この世のモノとは思えない、大きな四足歩行の異形のモノに変わり果てていた。
異形のモノは黒い靄で作られた前足と口を使いながらその場にいる兵士達を時には遊ぶかのようにいたぶった後、食していた。〕
俺はその景色を見て、覚悟を決める。
「ケイコ…」
〔マイケルの声で異形のモノが
『おお、先程の小僧か。』
〔ガイア語ではなく、直接頭に響くような声にマイケルは内心動揺しながらも銃を構える。〕
「ケイコは…彼女は何処だ?」
〔マイケルの質問を聞き、異形のモノが高らかに笑い始める。〕
『そんなに我の依り代が大事か? 安心せい、すぐに会える────』
〔マイケルの背中に寒気が走ると同時に異形のモノが大きな靄で作られた口でマイケルの胴体に噛みつき持ち上げる。〕
「グワアァァァァ?!」
俺は胴体に走る痛みにくぐもった声を上げ
『────我の表現の血肉としてな!』
「待ってたぜ────」
俺は右手で持っていたAK-105と背中に背負っていたもう一つのAK-105を左手で取り出し構えた。
照準を合わせるのは怪物の両目!
『────何?!』
「これで避け様がねえだろうがー!」
〔マイケルが引き金を引き、二つの銃が火を吹く。
その場に響く弾丸の音が数秒ほど鳴ったほどで止まり、辺りが沈黙に包まれる。〕
『…見事な覚悟だ、小僧』
〔マイケルは浮遊感を感じ、身体が地面へと落ちた。
彼は突然の出来事で態勢がよろめき尻餅をつき、銃を両手から手放す。〕
「ハァ、ハァ、ハァ────」
俺は高ぶっている気持ちを落ち着けるように深呼吸を続け、目の前の靄の塊が擦れていく中、巨体が横へと倒れ辺りに地鳴りを促した。
「覚悟なんて無かった。 俺はただケイコに恩を返したいだけで、お前は…お前は
『クハハハハハ! 恩を返す相手を打ち倒してまでか?!』
「アンタは…魔術か魔法関連の
『…成程、こやつが思っている様な面白い小僧だ。』
「は? どういう意味だそりゃ?」
『いずれ分かる。 次回は…正しく我が呼ばれる事を待つとしよう────』
黒い靄が急に薄くなり、消えた。
代わりに床に横たわるケイコが露になり、俺は傍へと寄った。
「ケイコ!」
〔マイケルが近づくと、ケイコの身体は無理をしたかの様に所々大きな傷跡等があり、酷く出血していた。〕
「おい! 脈は────」
「マイ、ケルさん?」
ケイコが今にも消えそうな声で俺の名を呼ぶ。
「ケイコ!よかった、喋るな。 今から病院に────!」
「御免…なさい…」
謝る? ケイコが俺に?
何で?
「いや、謝るのは俺だ! 俺は────!」
………
……
…
「…あー、ダルイ」
今いるのは博物館の近くに設置してある病院で中は患者などで溢れかえっていた。
「…そうね」
俺はあの後出来るだけケイコの出血を止めるとすぐに第二突撃隊と出くわせ、ラケール共々一緒に入院した。
ちなみに隣のベッドにはラケールが横になっていた。
俺達二人は割と軽傷で済んだらしいのでそう言う様な他の患者と一緒に大部屋でいたが…
いまいちラケールに元気が無い。
「…ねえマイケル」
「あん?」
〔マイケルは入院して初めてラケールから呼ばれ、身をベッドから身体を起こし彼女の方を向いた。〕
「0261空域戦線の…」
0261空域戦線だと?
あれって確かラケールが
「ううん、何でも無い」
それを言い残し、ラケールは俺から隠れるように寝返りをする。
いったい何だったんだ?
そこに軍医らしき奴が数名の看護婦を連れて俺のベッドの横で止まる。
何でだ?
この流れは大抵良くない事が────
「君がレナルト軍曹か? あの女性仮市民の保証人をした?」
仮市民の保証人?
ケイコの事か?
「あ、ハイ。 そうだと思います?」
俺の胸の鼓動が高鳴るのを感じ、耳にまで心臓の音が聞こえてくる。
「えっと、君と一緒に発見した変な髪の色をした女性の事だが────」
いやいやいや、まさか────
「先程息を引き取ったと────」
〔マイケルは勢いよくかぶっていた毛布を払いのけ、腕に刺さっていた点滴を乱暴に抜き取り重傷者用の病棟へと走った。〕
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
〔マイケルは重傷者用の病棟へと着くと、荒げた息を整える事無く周りを見渡しながらズダズダと速足で歩く。〕
アイツが、ケイコが────!
〔マイケルは点滴を抜き取って腕から血が出ているのを無視しながら移動を続け、病院の裏にある遺体安置所の扉を乱暴に開けた。
中には生気は無く、ただヒンヤリとした空気が開かれた扉から抜け出していく。
マイケルは片っ端から遺体に被せてあるバッグのジッパーを開け、中の顔を次々と確認する。〕
違う。
違う。
こいつも違う!
仕切りに俺は次のジッパーに手を掛けると自然にうるさい鼓動がより音を増し、頭の中に大きなドラムが鳴っているかのような────
そ、そんな筈は────
そう自分に言い聞かせ、いまさらながら自分の手が震えている事に気付いた。
気付いたとはいえ、止める事も無くジッパーを開け────
「ウ、オエエエエ!」
────中から青白い肌に変わり果てたケイコの顔を見た瞬間今までの吐き気が込み上げ、俺は床に吐いた。
〔マイケルが吐き、地面へと倒れる。
ほどなくして病院のスタッフがマイケルを発見し彼をもとの部屋に戻すのをラケールはボーっと見ていた。〕
では“なろう”からのストックはここまでなので今後ともよろしくお願いします!