俺と僕と私と儂   作:haru970

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第29話 「“またね”と“さようなら”」

 “魔法”…ね。

 (ラケール)はテーブルに置いてある自分の手の甲を見る。

 博物館での出来事がなければ私も笑い飛ばすような内容ね。

 

「結果としてそこにいた同僚の大半は死んだわ、そして私は下半身の自由を失った。 その代わりにラケールの精神を流し込んだ、ラケール本人に限りなく近い姪を取り戻し、私はこの成功例の功績を使って計画から外してもらった。 これが、今ここにいるラケールに関する大体の事よ」

「「……」」

 

 

 _________________________________________

 

 

 ヘレナ叔母さんが話し終わり、重苦しい沈黙が下りた。

 ラケールが時折俺の方を見るが、いやコレを俺にどうしろと?

 

「そこで二人に聞きたいのだけれど、今の事に関してどう思うかしら?」

 

 どう思う、か。

 はっきり言って俺の想像の斜め上を行っている気がする。 俺は一介の兵士であって上院議員とかじゃない。

 いきなりハウト連邦の裏の顔っぽいことを話されてもな……

 ただもしケイコの事に関与している奴らが上層部にいるとしたら────

 ────下手したら死ぬか、“素材”として扱われるか。

 この二つは今更だな。

 だがこの考えが楽観的なのはヘレナ叔母さんの話で分かる。

 甘く考えていた。

 つまりハウト連邦政府を相手にしないといけないかも知れない。

 これを回避する方法か、または何らかの布石を考えないといけないな。

 これはクリフやリック、ラケールには荷が重すぎる。

 アイリなら、まあ何とかなるかもしれない。 あそこは財力と影響力が半端ないからな。

 …よし。

 

「悪いが俺は辞めるつもりは無い。 どうせ救われた命の分ぐらい……いや、彼女をこの世界に連れて来たのは俺だ。 “家に連れて帰るまでが遠征”ってな」

「そう。 ならもう何も言わないわ」

「止めないの、叔母さん?」

「私で止められるなら、ね。でも二人はもう決めたのでしょ?」

 

 ん? 二人?

 

「ええ、私はもう決めたわ」

 

 え? おいちょっとラケール何を────?

 俺はラケールの方を向くと彼女微笑んでウィンクしてきた。

 

「という訳であの約束全部終わった後はケイコちゃんも含めて皆で飲みに行きましょう?」

「な、な、な────?」

「じゃあ、二人には“ご武運を”って言った方がいいのかしら?」

「うん、ありがとう叔母さん」

「ちょ、ちょっと待────」

「────いこ、マイケル」

 

 〔ラケールはマイケルの腕を取り、出口へと引っ張っていく。〕

 

「お、おいラケール────」

「────マイケル君」

「あ、ハイ」

「ラケールをよろしくね?」

「あ、ハイ……ハイ?」

 

 〔マイケルを引っ張っているラケールの二人が玄関へ着くと、ラケールは見送りに来たヘレナへと開き直り頭を深く下げた。〕

 

「今まで育ててくれてありがとうヘレナ叔母さん」

「気遣いはいいのラケール、貴方は私を────」

「ううん、違うの。 経歴がどうあれ、結果的に私はマイケルと再会して今こうして()()()()()し、今の話を聞けた。 だからね────」

 

 〔ラケールが頭を上げると笑顔の顔をヘレナに向けていた。〕

 

「────私は恨みもしていなければ憎んでもいない。 ただ心の底から“ありがとう”って言いたいだけ。 だから今度飲みに行く時ヘレナ叔母さんも行こう!」

 

 〔罵倒を覚悟していたヘレナの顔が困惑に変わるが次第にラケールの笑顔につられ自分も笑顔を返すようになっていた。〕

 

「フフ、そうね。考えておくわ」

「じゃあまたねヘレナ叔母さん! ほら行こうマイケル? 次はアイリ達の所でしょ?」

「ちょ、押すな! あ、ヘレナ叔母さんお世話になりました!」

 

 〔マイケルとラケールが外へ出て雨がまだ降っているのを見ると和傘を差す。 ヘレナはニコニコとしながら二人を見送り、二人はマイケルの四輪駆動車に乗ると窓を開けヘレナにもう一度声をかける。〕

 

「絶対よ! 次に会う時皆と乾杯しに行くわよ!」

「ええ、考えておくわ」

「話ありがとうございますヘレナ叔母さん! ではまた!」

「ええ、()()()()()

 

 俺は片手を振りながらエンジンを掛けて車を出した、何となくだがバックミラーに映った、どことなく寂しそうなヘレナ叔母さんから目が離せなかったのが印象に残った。

 

 _________________________________________

 

「…フゥー」

 

 〔ヘレナは長い溜息を吐き、雨が降り注ぐ空を見上げ目を閉じた。〕

 

「…ありがとうラケール。 ありがとう名前も知らない子。 ありがとう、マイケル君」

 

 〔そのヘレナに近づく人影があり、歩道を歩いているブーツがパシャパシャと水溜まりを踏み歩く。 これに気付きヘレナは音の方向へと向くと侍服装のした少女は雨が続くにもかかわらず、持っていた和傘を閉じる。〕

 

「貴方は、確か…そう、彼らも意地悪ね」

「……」

「中にお茶の用意をしているのだけど、どう?」

「悔いは無いか?」

「無いといえばウソになるけど、満足はしているわ」

「そうか」

 

 〔何かが風を切る音と何かが切れる音がほぼ立て続けに響くが降り続く雨によってほぼかき消される。 ヘレナの腕が車椅子の肘掛けから外れ、力なく垂れる。 侍服装のした少女は和傘をまた開き雨の中ゆっくりと歩き次第に視界から消える。〕

 

 _________________________________________

 

「「…」」

 

 俺は運転しながらラケールの方を時々見るが、明らかに気落ちしていて窓の外をぼ~っと見ている。

 ……なんて声を掛ければ良いんだこの場合?

『まあ、何とかなるさ!』

 うん、いいんじゃね? とりあえず保留。

『飲みに行くか?』

 …だめだ、さっきこいつが皆と一緒にって言ったのを忘れたのか俺?

『一旦家に来るか?』

 それもいいが、何者かが俺の家に前回来た以上監視されている筈だ。

『ホテル取るか?』

 …………何かこいつにぶっ飛ばされる予感しかないので没。

 よし。 ここは取り敢えず────

 

「なあ────」「ねえ────」

 

 声がハモった。

 

「あ、マイケルから先に────」

「いやいや、ラケールこそ────」

「「……」」

 

 あ、またこの気まずい空気だ。

 いやだな~、これいやだな~。

 どうすっべ?

 あ、そうだ。

 

「ラケール、アイリ達に連絡してくれないか?」

「あ、うん。そうだね」

 

 ラケールがスマホを取り出しアイリ、リック、クリフの番号を入れて電脳会議室に待機するメロディが車の中を流れる。

 先に入って来たのはリックだった

 

『ふわ~、もしもしラケール? どうしたんだ?』

「うん、ちょっと皆に話したい事があって」

『ようラケール! お前から連絡とは珍しいじゃないか!』

 

 今度はクリフだな。 相変わらずテンションたか。

 

『お? 何だ何だ? これ皆にいっているじゃねえか? まずまず珍しいなおい』

「うん、アイリが来たら」

『はい、アイリです。 って何時もの皆? どうしたの?』

「うん、ごめんねアイリ? ちょっと話したい事があるから部屋を用意してくれるかしら?」

『えーと、それならカラオケ────』

「いや、()()を用意してくれ」

『…わかったわ。 何時もの場所で落ち合いましょう』

『ああ、()()をしたらすぐに行く』

『おいおい、そこまでかマイケル? いや、答えなくていい。 俺も()()したらすぐに行く』

「ああ、ありがとう皆」

 

 アイリ、クリフとリックが通話を切りラケールがスマホのアプリを閉じる。

 さてと、どこまで行けるか。

 作戦開始(オープンコンバット)

 

 俺は高速道路から降り、例の場所へと向かった。

 大道路の中を走り、周りには列に並んでいる高速ビル。

 ここは大企業の本部などが集結している、いわばハイソサイエティーエリアってところだ。

 その証拠に周りを走っている車はリムジンやファッションを重視したデザインの車だけだった。

 う~ん、やっぱり視線が集まるな、軍用車じゃ目立つが仕方ない。

 

 〔マイケルとラケールの車が角を曲がり、あるビルの地下駐車場入口の中へと進む。〕

 

 ここまでくれば監視が掛かっていても監視続行は難しいだろ。 

 何せここはサイムコーポレーション本部の私有地だからな。

 

 〔マイケルの車が地下駐車場内を通過すると一瞬二人の耳に少々の圧迫感がしてすぐに消えた。〕

 

「フゥー、これで少しはリラックスできるな」

「…そうね」

 

 俺がラケールの方見ると彼女はただ窓の外をぼ~っと見ていた。

 車を適当に止めて、ラケールと共にビル内部へと進むとDocka(人口人形)が俺達を待っていた。

 

「お待ちしておりました。 自分はアンジュと申します。 レナルト様にイヴァノヴァ様ですね? アイリ様がお待ちしております。 どうぞこちらへ────」

 

 さて、あの三人がどう反応するかによって作戦を考えないと。

 

 ………

 ……

 …

 

 〔景色が変わり、何かの会議室のような場所の中の丸いテーブルにマイケル、ラケール、クリフ、リックと正装しているアイリが静かに座っていた。〕

 

 さて、この三人にはほぼ全部包み隠さず話してみたが…今のラケール自身がガイア出身かも知れない事は不確定要素だから除外した事以外。

 

「ふ~ん…Docka(人口人形)の裏にそんな事があったとは」

「何か…いろいろヤバくね?」

「何か……凄いの聞いちゃったな、私」

 

 最後にアイリがポツリと囁く。 その気持ち分からなくも無い。 サイムコーポレーションはDocka(人口人形)製造にも関わっているからな。

 

「で、ここまで俺達にその話をするという事は…何だ? ケイコの生死確認だけか?」

「感から言うとそれだけで収まらない気がする」

 

 うーん、意外だな。 先に聞いて来たのはクリフだった。 それに続いてリック。

 だが反応は悪くない。

 よし、勝負に出るか。

 

「俺がしたいのはケイコの生死確認、ケイコが生きていれば救出して彼女がガイアに戻りたいのであればそれを叶える。 次に博物館の事件に加わった奴らのいぶり出し。 ヘレナ叔母さん曰くその同じ奴らがガイアから人を攫っている可能性が高い。」

 

「ヒュー♪」

「ぐわ、マジか」

「それは…」

 

 〔クリフが口笛を吐きながら笑い、リックとアイリは驚愕の表情をする。〕

 

 …やっぱりそうなるか。

 無理も無い、結果的にはハウト連邦上層部にケンカを売るみたいなものだ。 理由が理由だけにこれに参堂してくれる奴なんてよっぽどの物好きか────

 

「「いいぜ、乗った」」

 

 そうだな、やっぱり普通はそう────

 

「へ?」

 




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