俺と僕と私と儂   作:haru970

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お待たせしました! またも長めですが。


第30話 「F○ck!」

「へ?」

 

 俺はほぼ即答で答えたクリフとリックを見る。

 

「お前ら、良いのか?」

「いんや、“良いと”か“悪い”で言うと“ヤバい”。 けどやっている事が気に食わない」

「右に同じ」

「……本音は?」

「「可愛い宇宙人の子達と親しくなれるかも知れないから」」

「馬鹿なのね二人共」

「「いや~、照れる」」

「違った、大馬鹿なのね」

 

 今回はラケールに同感だ。 未だに考え事をしているアイリを俺は声をかける。

 

「アイリは? 降りたいのなら別に構わないが、手伝ってくれると正直助かる」

 

 何せ俺の知り合いの中で唯一軍部から外れている上流階級の人材だからな(ガイア風に言うと“貴族”になるのかな?)。

 

「そうね、マイケルってお披露目パーティーとかって経験ある?」

「“お披露目”って何だ?」

 

 ………

 ……

 …

 

 

 何故こうなった?

 俺は憂鬱な気分で溜め息を吐き夜の景色を見ていた。

 

 〔場は変わり、高層ビルの中にあるフロアに注目が行く。 フロア一色がパーティー会場風になっており、中から周りの景色が見えるように透明な高質ガラス────

 ────ではなくかなりの制度でガラス窓と大差ないモニターが外の景色を映していた。

 中は暗すぎず、落ち着いた雰囲気を醸し出している配色と雰囲気、そして素人が見ただけでも高価な物だと分かる見事な装飾が施され録音ではなく生で演奏される穏やかで落ち着いた演奏に室内が満たされる。〕

 

 何故こうなった?

 溜め息交じりに俺は片手に持っているワインガラスに口を付き、周りの人達を見る。

 何処を向いても軍の上層部、元軍将校、大企業のCEOとその家族らしい者が辺りにいて、各々輪を作って話をしている。

 部屋のテーブルの上には天然物の食材で作られた食べ物に飲み物のお代わりを給仕の人らが交換する。

 そして隣には正装のドレスを着ているアイリが延々と俺に話しかけようとしている若い男性達に対応している。

 

「ええ、大変申し訳ございませんパーシヴァル様。 ()は病弱の上、人見知りでして今回のお披露目が初めてで────」

「────そうか、ならば致し方無いな」

「ご配慮ありがとうございますパーシヴァル様。 この埋め合わせはきっと────」

 

 俺は空になりかけたワイングラスを通りかかった給仕に渡しアイリと共に頭を下げた。

 

「────いやよい。 ()()の父親からアイリの姉が出場すると聞いて話をと思ったのが」

 

 俺はアイリにつられ頭を上げて遠のく元ハウト連邦軍大佐のパーシヴァル・ギュンターを見送る。 顔見知りだから一瞬ビビった。

 

 

「…うん、中々様になって来ているじゃない()()()♪」

「覚えていろよアイリ」

「そこは“覚えておきなさい”でしょ?」

 

 俺とアイリがボソボソと笑顔を崩さずに話す。

 もう一度言う。

 何故こうなった?!

 いやわかっている。 理屈としてはわかっている。 

 俺とラケールの話を聞いていたらこれに関して知っているかも知れない人に心当たりがあるってアイリは言った。

 そしてその人が今夜開催するパーティーに参加することも。

 そしてサイム家が招待されている事も。

 俺達の中でアイリが行く様なパーティーにクリフとリックは行った事があるから相手とは顔見知りで警戒されるかも知れない。

 と言うか変装するとなるとそれ以前に二人の体格的にこんな芸当は無理。

 ラケールも顔(と言うか体格)も実験体だったからウィッグと多少の化粧で誤魔化しが効かないかも知れないのでアウト。

 と消去方法で俺が()()()()()の役をする事になったが何故姉と言う架空の身分の用意されてあったのか?

 

『上流階級にもなるとそう言う()()()()()()()()()が必要になるかも知れないから』

 

 成程、架空の身分とは何かと役立つのは分かる。

 で次はなぜ兄ではなく姉役なのか?

 

『昔お父様に姉妹が欲しいと言ったらその日に病弱の姉の身分が作られた』

 

 成程成程、アイリの父さんの親バカさは相変わらずだな。

 では最後に。

 なんでラケールやDocka(人口人形)じゃなくて(マイケル)なんだ?!

 

『その話が本当なら相手はラケールの顔と体格を知っているし、今から事情と戦闘プログラムをDocka(人口人形)にセットするには時間がないからアンジュ確保』

『ハイお嬢様』

 

 成程成程成程。 パーティーは今夜開かれる予定で事情を知ってある程度戦闘ができる俺に役がまわったと。 なら問おう。

 何でファッションショー並みに衣装を次から次へと変える? それってこの作戦に関係無いよね?! というか爆笑してないで助けろ、この二人馬鹿(クリフ&リック)

 ラケールも気分悪いのか顔を真っ赤にして鼻を押さえていたし。

 アイリは笑いながら化粧をしていたのに化粧とかし終わったら急に真剣な顔になるし。

 変装の準備が全部終わった後に俺が俺自身の姿を鏡で見て一瞬ドキッとしたのは墓まで持って行こう……

 

 という訳で今俺はマイケル・レナルト軍曹ではなく、アイリの姉リーア・サイムとして振舞っている。 礼儀作法など諸々はアイリ付きのDocka(人口人形)のアンジュの猛烈なシゴキ────コホン、教育の付け焼刃。

 後の大きな問題は声なのだが一応“病弱な人見知り”なので極力声を出さないようにしている上に仕込みはあるがこれは最後の手段。 できれば使いたくはない。

 

「来たわよ、今会場に入って来た人よ」

 

 俺はウィッグの前髪を通してアイリの示す人物を見て護衛らしき者達を観察し始めた。

 見える護衛が5名……いや既に入場している人達の何人かの反応からしていたからそいつらも裏の護衛らしいな。 合計8名って所か。

 表の護衛が5名とも全員黒スーツにサングラス、青白い肌。 懐と腰辺りが盛り上がっている具合からして拳銃と近接武器所持の戦闘用Dockaか?

 裏の護衛が3名、こっちは人間っぽいな。

 最後に今入って来た50代程のスーツのイケメン。

 ヘレナ叔母さんと同じくハウト連邦“中央”の化学機関所属のスコット・エッシェンバッハ。 今でも現役でかなりコネとかがある。 自称だが。

 ただアイリ曰く前のパーティーで酒に酔っていたら()()()として働いただけなのに出世したと笑っていた。

 

「ちょ、ちょっとマイ────リーア姉様。 殺気漏れているよ!」

 

 おっと、思い出しただけで()()とは情けない。 平常心(ポーカーフェイス)平常心(ポーカーフェイス)

 

「準備は良い?」

 

 俺が頷くとサイリは平然とした足並みで向かい、俺もなるべくマネしながら後を追った。

 作戦は至って単純でスコット・エッシェンバッハを捕縛し、ケイコに関する情報を話してもらう。以上。

 

「ん? おお! これはこれは! サイム嬢ではないか?」

「お久しぶりですわエッシェンバッハ様」

 

 アイリがスカートの裾をちょこんと持ち上げて、俺も同じ様に挨拶をする。

 ううぅ……股辺りがスースーする。 女の子ってこんな着ていたのか……

 あ、聞く前に()はちょいきつめの短パンだからな。

 え? 胸はどうしたって? そりゃあ……()()した。 と言っても普通は胸の欠損とかになった女性用だけど何とか合うサイズを見つけた。

 あ~、ちょっと変装の説明に入るけど良いかな?

 ん? アイリ達の会話が気になる? 大丈夫、だってただの世間話とかお世辞とかの話で俺は相槌を打つだけの筈だから。

 という訳で良いよな?

 良いよな?!

 俺だって女装されてこんな所でばれてみろ! 文字通りヤバイシチュエーションだから少しは現実逃避したくなるよ! 

 えー説明としてはこの女装が如何に凝っているか説明しようではないか。 まず目が大きく見える様に目元に化粧、クマや髭剃り跡を隠す為のコンシーラー(オレンジ色)、ウィッグセットで横髪と前髪で頭の特徴や輪郭などを女性寄りに………

 化粧とかは全部アイリがコーディネートした。 何でこんな事出来るのだって聞いたら無断外出する時に変装用のメイクや化粧が身に付いた技とか。

 そして服装と胸とかはラケール担当(こっちは何かよく解らない旧世界の“こすぷれ”ってヤツで習ったらしい)。 ハイヒールは断固として拒否したのでシューズにしてもらった。 代わりに無理やり足を少しでも痩せているかのように見える超キツイタイツをはかされた。 トホホ。

 他には何かあったかな? ああ、そうだ。 今回何で俺が女装しているかって言うとスコット・エッシェンバッハは大の酒好きの色男で()()の女性が好みらしく、酒が絡むと気に入った子に酒の相手をさせる癖があるってアイリが言っていたな。 鬼のような形相で。

 その顔のまま俺達の“あっは~んエッシェンバッハうっふ~ん誘惑で誘拐作戦”に同意したっけ?(なおこの酷いネーミングセンスはクリフとリックが付けた。)

 なので男のまま俺が付き添ったらアイリが相手されないかも知れないって事で女装という提案が上がった。

 

「────そしてそちらが噂に聞いていたリーア嬢だね?」

 

 スコット・エッシェンバッハが俺の方を見たのでペコリとお辞儀をすると奴の視線が俺の胸を見ているのを感じた。

 ……フェイクの胸でもこれは嫌だな。

 

「ええ、ようやく人前に出られるまで顔色が良くなりました」

「ふ~む、アイリ嬢に似て綺麗だね。 お嬢さん、良ければご自分で挨拶をしてくれないか?」

「あ、リーア姉様は────」

「────わかっているとも。 病弱と聞いているが言語障害は聞いていないからね。 な~に声さえ聞ければ私は満足だとも」

 

 あー、やっぱ来たか。 声出すタイミング。

 だからアイリ苦笑いはやめろ、ばれてしまうだろ? それに言った筈だ、奥の手があると。

 

 俺は口を開け、出来るだけフワッとした笑顔を作り────

 

「お初にお目にかかりますわ、エッシェンバッハ様。 リーア・サイムと申します」

 

 ────何オクターブか高い()()()声で今夜初の挨拶をした。

 

「ほう! 顔だけで無く声も可憐とは!」

「……」

 

 おいそこ、口をポカーンと開けっ放しにすんなアイリ。 アンジュがいたら“令嬢に有るまじき行動”だぞ? 俺自身かなりビックリしているが忠告した筈だぞ?

 この芸当の種は風の魔術で俺が喋っている間、声と共に発する空気を弄って女性の声に変えている。 声なんてようするに空気の振動とかで決まるのだからこれ出来なくね?と思って実験していたら割と出来た。 人間必死になれば何でも出来るのだな。

 ただネックが魔術で効果が“声を出す時”だから首か口辺りにどこかに術式を組み込んだものを肌身離さず持っておかないと駄目で最終的にネックレスに組み込んだ。

 

「……嬉しいお言葉ありがとうございますエッシェンバッハ様、姉もがんばって声を出したかいがある言うものです。 して、あちらに良いお酒などを見かけたので────」

「────ぬ、そうか? では案内してくれないかね?」

「はい、では────」

「ああ、出来ればリーア嬢にしてもらおうかな? 確かアイリ嬢は酒が苦手だったと前回聞いたが?」

 

 ────え゛?

 

「ぇ────あ、ああ! あの時はまだ成人して間もなかったのです。 ですのでお酒の経験が────」

「そうなのかい? では二人に案内役を頼めるかな?」

「え、ええ。 喜んで、ね? 姉様?」

「ア、ハイ」

 

 ちょっと待てい! 聞いていないぞ?! 思わず疑問形の“ハイ?”じゃなくて肯定の“ハイ”が出ちまったじゃねえか?!

 

 何・故・こ・う・なっ・た?! Someone (誰か)tell me(教えて) please(くれ)!  F○ck(フ〇ック)

 




是非お気に入りや感想、評価等あると励みになります!

あ、あとお気づきになっている方もいるかも知れませんがなるべく土日に投稿予定をしております。

最悪の場合前の月曜日投稿に戻るかも知れませんが今のところ土日のままで。

ではまた明日!
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