〔さて、ハウト連邦“中央”の化学機関所属のスコット・エッシェンバッハについて少し説明しよう。
先ほどアイリはマイケル達に自称でコネがあると言っていたが実はと言うとスコット・エッシェンバッハはこれ以上目立つのは嫌なので敢えて今の地位に固執していた。 元々彼は天才でも何でも無く、それを彼自身はよく理解していた。 ではなぜ彼は“中央”所属のまま出世の誘いなどが未だにあるとすると彼には二つだけ抜きんでた取り柄がありそれを駆使していたからだ。
その取り柄とは鑑識眼(物や人の潜在的価値を見定める目)とそれを上手く利用して立ち回れる思考。 この二つのおかげで彼は適材適所の人員の振るい方や推薦、プロジェクトの方向性の見極めなどで彼の手柄またはに恩を感じる者達が少なからず化学機関だけで無く、軍部などにもいた。
大の酒好きの色男で年(・)下(・)の女性が好みらしい。 これは間違いではないのだがある誤差が生じている。 確かにスコット・エッシェンバッハは大のお酒好きであるし人並に好意など持ち合わせている。 では色男で年(・)下(・)の女性が好みと言うのは?
実はこれも先程の鑑識眼に関係してありスコット・エッシェンバッハはごますりをしてくる輩、自分の利益の為に利用しようとする者、身を保身の為に寄せ付けるなどの人物には最低限かつ社交的に接し、純粋な者達には親が子供に向ける好意や応援を。
ただこのおかげで少々在らぬ噂などが出回っているが本人はさほど気にしていない。 このパーティーに参加するのも目立たず消えさずの体制を保つ為に仕方なく来ているだけ。〕
「(さて、今日の参加者は…何時もの人達か。 やはりつまらん、さっさと高い酒を────ん?)」
〔彼はパーティー会場を見渡しつまらなさそうに見ていたがある人物に目が行った。〕
「(何と儚げな顔! そして普段の令嬢とは違う健康的な血色! あれはもしかして受付にて署名してあったもう一人のサイム嬢か? 病弱だったのが最近になって良くなったと聞いたが…)」
〔彼が見たのは壁際で憂鬱な表情をしていたリーア・サイム嬢(マイケル)。 大抵の参加者の女性達はコルセットや濃い化粧、ファッションなどで着飾っているのに対しリーア・サイム嬢(マイケル)はほぼ素の格好と状態での正装ドレスを着ていた(スコット・エッシェンバッハ視点)。
これにより興味を持ちサイム姉妹に声を掛けると────〕
「お初にお目にかかりますわ、エッシェンバッハ様。 リーア・サイムと申します」
「ほう! 顔だけで無く声も可憐とは!」
〔姿と身長に似合わず妖精の様な声でさらにスコット・エッシェンバッハの興味が引かれた。 何故リーア・サイムでアイリ・サイムに向けられていないかと言うと以前のアイリは他のご令嬢方の噂話や実際会った時の彼の視線が気に入らなかったとか。〕
「……嬉しいお言葉ありがとうございますエッシェンバッハ様、姉もがんばって声を出したかいがある言うものです。 して、あちらに良いお酒などを見かけたので────」
「────ぬ、そうか? では案内してくれないかね?」
「はい、では────」
「ああ、出来ればリーア嬢にしてもらおうかな? 確かアイリ嬢は酒が苦手だったと前回聞いたが?」
「ぇ────あ、ああ! あの時はまだ成人して間もなかったのです。 ですのでお酒の経験が────」
「そうなのかい? では二人に案内役を頼めるかな?」
「え、ええ。 喜んで、ね? 姉様?」
「ア、ハイ」
「(ふむ、表情豊かで妹思いに一般的な仕草と反応。 今まで見てきた人達では貴重と言えるほどの…ますます興味をそそる)」
〔かくしてスコット・エッシェンバッハはリーア・サイムに対しての評価が上がりつつ飲み物バーへとアイリとリーア(マイケル)に案内され、他愛ない世間話などをスコットとアイリはし続けていた。 その隣では相槌を打つだけと時々近くの飲み物を飲むリーア(マイケル)。〕
「(アイリ嬢と違って酒がいける口か)」
〔そう、男性はともかく女性はとやかく飲み物を普通ガバガバと飲まない。ましてやそれがお酒とならば。 だがリーア(マイケル)はあまりの場違いの緊張と女装からとりあえず落ち着こうと必死だったがそれが裏目に出た。〕
………
……
…
なんでやねん?!
えー、現状報告。今俺は
っという訳で今俺の脳ミソフル回転で質問中&考え中。
「え、ええ。アイリとは世間の話をして…エッシェンバッハ様は普段“中央”ではどの様な事を?」
「ム? 私は……まあ雑用係だな。 良い人材を雇い、色々なモノに手を付けている。 リーア嬢は病弱と聞いていたが?」
「お父様が良い医師を雇っていたおかげです…わ。 エッシェンバッハ様は先程“色々なモノ”とl…仰っていましたが例えばどの様な物を?」
アイリ噴出すな、俺だって頑張っているんだよ!
「どの様なモノ…か。 まあ、色々だ」
「例えば
「やはりサイム家として気になるか? 初めの方はそうだったな…」
お? これって…もしかして行けるか? ほろ酔いっぽいし……こんなに飲んだのは久しぶりだな。
「初め? では今は負傷者などでしょうか?」
「負傷者? 何故そう思うのかね?」
「いえ、エッシェンバッハ様は“中央”では医療などにも通じているとお聞きして」
「“負傷者”……と言えば負傷者か、星は違えど────」
来た!
「星が違う? 辺境の最前線でしょうか?」
「辺境……最前線ではあったが────」
〔スコット・エッシェンバッハが手招きをしてリーア(マイケル)は耳を貸す。〕
「この前の博物館騒ぎの事だ。
「……その情報とやらによりますわ」
「
〔マイケルは汗がジットリと背中に湧き出ているのを感じ、心臓の心拍数が上がるのを感じた。〕
「何故……その話を私に?」
「先の素体達の輸送の際に儂が小細工を施したのが余程気に入らなかったらしくてな。 影武者が近い頃必要になると感じたまで」
「ですが何故妹ではないのですか?」
「お主からはこんな場所に出てくる輩みたいな考えに染まっていない、それにアイリ嬢は何かと儂の事を毛嫌いしている節がある」
「……分かりました、父上に話をしすぐ手配するように致しますわ。」
「うむ、ここに頼む」
そう言ってスコット・エッシェンバッハは握手するように見せかけてメモを手渡してくる。 握手を返すとエッシェンバッハはもう片手で俺の手を包み込むかのように握手を続ける。
………
……
…
「フゥー」
〔スコット・エッシェンバッハは赤くなった顔でパーティー会場から護衛と見送りに来たアイリとリーアと共に出て待機してあるリムジンへと向かう途中、後ろからアイリの声がした。〕
「エッシェンバッハ様! すみません姉様の様子が」
〔スコット・エッシェンバッハがリーア嬢の方を見るとアイリが明らかに顔色の悪いリーアに肩を貸していた。〕
「む? 車に乗りなさい二人とも、近くの病院まで送ろう」
「ありがとうございます! ほら、姉様」
〔近くにいたエッシェンバッハの護衛
「ありがとうございますエッシェンバッハ様────」
「────い、いや儂が軽率だった。 病み上がりのものにお酒の相手をさせるとは…いやはや申し訳ない」
「ウッ!」
〔リーア・サイムは呻き声をあげ、隣にいた護衛
「エッシェンバッハ様……」
「何かねリーア嬢? 窓をあk────」
「──── “
「……
〔スコット・エッシェンバッハの答えを遮るかの様にリーア・サイムは掴んでいたジャケット内からベレッタ92FSを素早く取り出しながらセーフティーを外し元所持者の顎下から発砲し、反応した反対側の護衛
「運転手に『このまま運転』させろ!」
「わわわかった! 『このまま運転しろ』!」
「両手を上げたまま後ろを向け! アイリ────」
〔リーア・サイムはアイリにベレッタ92FSを一つ渡し、背を向けたスコット・エッシェンバッハの懐からスマホを抜き取り、窓を開けて外へと放り出す。〕
「な、なんなんだ君は? ま、まさか────」
「さてと、ケイコの事を洗いざらい吐いて貰おうかエッシェンバッハさん」
「な、なぜ────?」
「
「リ、リーア嬢?」
「あー、ワリィが違うな。で? アンタの命とケイコの情報、どっちが大事だ?」