俺と僕と私と儂   作:haru970

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第34話 「川の中、霧の中、森の中、□□□□の中」

 景色は変わり、そこは廃虚のような場所だった。 霧が薄く、百メートルほど先は何とか目を凝らせば見えるというような状態。

 廃墟といってもその見える建物は歪ながらしっかりとした作りであり、その建物の中で包帯と副木をしたラケールが鍋の中身を玉杓子のような物でかき混ぜているのが見える。

 

「お、いい匂いだなラケール」

 

 後ろからマイケルの声がして、ラケールはクスリと笑う。

 

「まあね。 案外食材で作りのも悪くないかなって時々思っているの。 それに────」

 

「…………う?」

 

 ラケールが振り返るとそこにはラケールと同じように包帯や絆創膏をつけているマイケルがいた。

 

 

 

 キョトンとしたケイコと手を繋いで連れて。

 

「ケイコちゃんもいるしね~」

 

「あう~?」

 

「ハァ………これで何時も普通に料理さえしてくれれば」

 

「何か言った?」

 

「いーえ、な~んも」

 

 マイケルが溜息を出して、ケイコを近くのテーブルに座らせ、ラケールがドロドロに煮ていたシチューを食器に入れてテーブルへと片手で持っていく。

 

「フー、フー………ほらケイコ、あーん」

 

「あー………んっ」

 

 マイケルが幼い子供をあやす様にケイコにシチューを食べさせる。

 

「………(あれから何日位たったんだろう?)」

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 

 さて、今の状況を説明するとマイケル達は霧の中へと輸送トラックごと落ち、数百メートル程下にあった川の中へと落ちた。 初めは死んだと思ったマイケルとラケールは気を失ったが、水へ落ちた衝撃と冷たさで意識が戻り、命からがら陸へと泳いだ。

 

 そこで力尽き、気を失ったラケールをマイケルが近くにあった森の中から枝と自分の服を破り、脱臼した右肩と骨折した右腕に処置を行い、自分達の傷を確認しながら疑問が彼の頭の中を駆け巡る。

 

 市外は大量破壊兵器の使用で荒れ地になっていなかったのか?

 何故こんなところに森が?

 過去の核兵器の放射能に対応した植物なのか?

 この川の水は飲めるのか?

 よくあの距離を落ちて死ななかったな。

 

 となど、かなりの混乱に陥っていた。 これは無理もなく、さんざん市外=死地という認識で生きてきた者に今の状況は不可解だった。

 

「……………う………………いっっっっっっっったーい!!!!」

 

 ここでラケールも若干回復したのか息を吹き返し、身体の痛みに叫んだ。

 

「痛いって事はまだ生きているって事だ」

 

「うっさい。 どこの教官よ。てかよく生きているわね私達。 てかなにあれ森?」

 

「一度に聞くな、そうだな────」

 

「────う…………ううぅぅぅ…………」

 

 マイケルはラケールと同意する前にケイコがうめき声を上げたのに反応する。

 

「ケ、ケイコ? おい、聞こえるか? マイケルだ!」

 

 マイケルは今まで起きそうな気配もなかったケイコの所へと移り、体を揺すりとケイコがトロンとした顔で目と口を開き、マイケルの顔を見る。

 

「よ、よかった………生きていて……お前には話さないといけない事が……」

 

「良かったわね、マイケル……」

 

「……うー?」

 

「ケイコ?/ケイコちゃん?」

 

 ケイコは表情を変えず、ただ何の意味も言語でもない声を上げ、彼女の口から涎が顎にまで垂れる。

 

「お、おいケイコ? 俺だ、マイケルだ。 分かるか?」

 

「あー、あおあー?」

 

 ケイコは返事をせず、ただただ回るを見る。

 

 

 

 まるで初めて物を見るかの様に。

 

「ねえ、マイケル………」

 

「おいケイコ? おい。 おい!」

 

 マイケルがケイコの顔を自分の方へと無理矢理方向を変えてケイコの目が彼の目を見、彼女は手をマイケルの頬を撫で────

 

「ケイコ────あいで?!」

 

「うーあー」

 

 ────ずにマイケルの髪の毛を引っ張った。

 

「あいでででででで?!」

 

「う? ……う………うわー………うわーーーーん!」

 

「「えええええええ?!」」

 

 そしてケイコは急に泣き出す。 これを見たマイケルとラケール二人は呆気に取られ、顔を見合わせる。

 

 二人が困惑している間もケイコはわんわんと泣き続け、マイケルは自分の膝辺りが温かくなるのを感じ、アンモニア臭が彼の鼻にツンと────

 

「────わわ、マイケルちょっとその子から離れて────!」

 

 ────とラケールが言い、マイケルを(ほぼ力ずくで)ケイコから離し、未だに泣くケイコを担ぐようにサッと二人は川の中へと飛び込む。

 

「こっち見るなマイケル!」

 

「……………えーと?」

 

 マイケルは何が起こったのか理解せず、ただ川に背を向ける。 後ろからはキャッキャッと楽しむようなケイコの声に反して────

 

「────ちょ、こら! そんなに手足バタバタ────いた?! 髪を引っ張らないでー?!」

 

 どこか苦戦するようなラケールの声にマイケルは自分の膝を見ると、水とは違うシミのようなモノが付いていた。

 

「何だこれ?」

 

 そしてパズルのピースがはめ合うかのようにマイケルはハッとする。

 

 

 

 もしかしてこれは……………尿では?

 

「あ、こらケイコちゃん! 服を────!」

 

「うおあ?!」

 

「うー! あうー!」

 

 マイケルは後ろから水をかけられ、反射的に振り返ると楽しそうにしていたケイコがいた。 施設から連れ出した彼女は貫頭衣(かんとうい)に似た簡易な服装だった(正に余分な織物を使わないと言う様な感じの)。

 

 だがその衣類(?)は今何故かラケールが左手に持っている。 つまり今彼女はそれを着ていなく、ぜんr────

 

「────ブフォ?!」

 

 マイケルは咄嗟に目と顔をそらし、鼻を抑える。

 

「(ナンデ?! 全裸?! ナンデ全裸?! って、考えてみたら当たり前か?)」

 

 更にバシャバシャと水が跳ねる音がして、ラケールの承知を得ると今度はマイケルが川に入り自分のズボンを洗い始める。

 

 そしてマイケルとラケールが分かった事は、今のケイコは子供の更に幼い赤ん坊に似ていると(主にラケールの見たアニメや漫画からの知識だが)。

 

 だが二人とも実際に子育ての経験どころか世話などした事がないのでラケールの知識(?)頼りに、また手探りで自分達がいる場所の周りを比較的けがの少ないマイケルが偵察しに行った。

 

 子育ての経験や世話などした事がない二人だが長年軍人として生きてきた癖は抜けておらず、しかもマイケルは短期間とはいえ自然の多いガイアの中にいた為、地理の偵察にケイコの周りの警戒はすんなりとスムーズに行った。

 

「よ、ただいま」

 

「うわー」

 

「ケイコもただいま」

 

「お帰り、どうだった? 火を起こせそうな物とかある?」

 

「一応あるが、ちょっと森の中で気になる物を見つけて、な。 これだ」

 

 マイケルがポケットから取り出したのは()()()()()()()()()()だった。

 

「薬莢ね。 かなり古い────え?」

 

 幾度となく戦場を駆け抜けている者には違和感の無いソレ。 だが本来なら森の中ではありえないもの。

 

「ああ。 今もどうか知らないが、少なくとも人かDockaか何かがこの辺にあったと言う事だ」

 

「なら、少しここら辺を────わわわ! ケイコちゃん待って!」

 

「へ?」

 

 ラケールが急に立ち上がり、“ハイハイ(四つばい歩き)”しているケイコを制した。

 

「キャッキャッ♪」

 

「………この状態のケイコをラケールと二人でするのは……難しいかラケール?」

 

「まあ、片腕折っているしね」

 

「分かった、じゃあ俺がケイコを負ぶって────」

 

「────私が殿ね、了解」

 

 こうしてマイケル、ラケール、とケイコは森の中を進む。

 

 体感で言うと十分ほど進むと、二人(+1)は道路のような、しっかりとした地面の上に出たことに驚いた。

 

「これって………」

 

「ただ単に地面を固めた……て訳じゃないな。 かなり前なのか所々アスファルトの小石とかが土に交じっている」

 

「うあーおー」

 

「どういう事? 市外ってノーマンズランドじゃなかったっけ?」

 

「…………」

 

「……うー」

 

 二人(+1)はそのまま歩くと今度はかなり古い、廃墟のような建物が見え始めた。 壁はひび割れ、時間によって、屋根が崩れたものや壁が崩れたものなどがチラホラと見え、三人ともキョロキョロとする。

 

「町? いえ、『村』って言うのかしら?」

 

「分からない、ただ一つ言える事は随分前に『人が住んでいた』って事だな」

 

 マイケルはそう言い、周りを見渡すと、霧の向こう側に一際大きい影が見えた。

 最初マイケルとラケールは崖と思っていたそれは近づけば人工物だということに驚いた。

 

 しかも大きさは視界の端から端を埋め尽くすほどであった。

 

「うわ~、でか。 てかなんだ、これ?」

 

「あ、マイケル! あっちに梯子が!」

 

 ラケールが左手で指さすと確かに錆び付いている梯子があった。

 

 梯子はこの人工物に直接繋がっているのか角度が少し偏っていた。 怪我人のラケールにどこからどう見ても幼い子の言動を続けるケイコ。

 

「俺が上って行ってくる、その間にラケールはケイコの世話をしてくれ」

 

「了解」

 

 そういい、マイケルがケイコを背中から降ろそうとすると、ケイコが服を掴んだ。

 

「うー、あー」

 

「…………」

 

「うー! うー! うあーおあー!」

 

 マイケルは無言でケイコの手を離させ、梯子を上ると後ろから聞こえてくる、訴える様な声を無視して登っていく。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「かなり登ったな、これ」

 

 マイケルはポツンと独り言をいい、梯子の頂上である所から霧に隠れた下を見、中へと入ると明らかに見覚えのある構造にマイケルはびっくりした。

 長らく放置されたのか錆や苔が目立つが、その通路は宇宙船や無重力で移動の際に使う取っ手やレールなどが設置されていたからだ。 マイケルはポケットに電源を切っていた携帯の光を頼りに中へと進む。

 

「(宇宙船の残骸か? それにしては霧の中というのに状態がいい………ん? )」

 

 近くの壁に案内図みたいなのが目に入り、苔を服の袖を使って払い、構造を見ようとするこの人工物の名称か何か薄っすらとあった。

 

「えーと、ペ…ペガ……ペガ…スIII? もしかして、『ペガサスIII』? 聞いた事ないな……早速検索を────って、圏外か」

 

 舌打ちをしてマイケルはそのまま進んで、さっきの案内図に『居住区』と書かれていた場所へと行く。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 その間ラケールは別の疑問に頭を悩ませていた。

 

 酷く悩ませていた。

 

 爆撃で荒れる高原を身一つで走った時より。

 

 仲間が次々と何も出来ず海の藻屑と消えていった無謀な上陸作戦より。

 

 それは────

 

「(いやこれどないせーっちゅうねん?! 子供の世話なんてした事ねえっつうのー!)」

 

 ────ケイコの世話だ。 さっきマイケルに訴えるような唸り声を出し、彼が視界から消えると泣き始めるケイコに苦戦していた。

 




作者:ハイ、という訳で気付いた人もいるかもしれません

ケイコ:うー?

作者:うわわ、涎が!

ケイコ:キャッキャッ! ♪

作者:あだだだだだ! 髪の毛が! は、禿げるー!

三月:いや流石にこれはちょっと…ねえ?

作者:うるせえ! これのプロット書いたの何歳だと思ってんだ?!

三月:確か10歳だっけ? こう、いろいろなアニメと漫画にのめりこんでいて

ラケール:あー、わかる~。 面白いもんね!

マイケル:てかラケール普通に料理できたんだな(これで物体X食わなくて済む)

作者:あー、今は非常事態だからねー。 でも落ち着いたら────

マイケル:────やめてくれ!
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