俺と僕と私と儂   作:haru970

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今回はケイコ視点で少し長めですが、是非読んでいってください!


第3話 「“日常”」

 私の名前はケイコ。 ()()しがない狩猟や巫女としてメンレに住んでいます。 

 このキョーゲ大陸の中央に位置する大樹の森の近くにある街です。

 え、家名? 家名は有るには有るのですが、()()さほど重要ではありません。

 

 私は朝早く目を覚まし、近くにある桶にお湯を出す。 右手から水を出し、左手で出した火球で温める。

 程よい量が桶に溜まり、肌着から狩り用の服に着替える際に体の寝汗を拭き、胸に布を巻く。

 

 私の自慢の髪の毛も念入りに櫛を使い、鼻歌をしながら整える。

 

 術式のコンロに魔力を流し、燻製の肉をお湯の張ってある鍋の中に入れ、煮ている間に野菜を切りこれも煮、簡単なスープを作る。

 

 朝ご飯を食べる前に、私は祈りを捧げ、肉や野菜、数々の積み上げた“モノ”のお陰の“今”に感謝をする。

 

 狩りに出かける前にもう一度身だしなみと装備品の確認、点検を済ませたあと、まだ日が出ているか出ていないか位の時間に森を目指す前に家の前を確認する。

 

 良かった、急ぎの薬の調合や患者の知らせの(ふみ)はいないみたい。 みんな、健康が一番。感謝の気持ちいっぱいに、私は森へと出かける。

 

 これが私の“日常”の始まり。

 

 いつもなら私はこの後、まだ獣や魔物の餌食になっていない薬草や薬になるカビを採取し、木の上の枝と枝を移動し、狩りを行う。

 狩りで街に脅威になりそうな魔物の群れや凶暴性のある獣を主に狙い、数を減らす。

 これが終わり、私は町に戻り、その日の収穫を売り捌いたり、在庫が少なくなってきた薬の調合や町の巡回を終えた後、一日の感謝を祈り、お風呂で疲れと汚れを取り、晩御飯を食べ、就寝の前に明日があることに祈りを上げ、寝る。

 

 これが私の“日常”であり続けると思っていた。

 

 その日もいつもの様に薬草や薬になるカビを採取し、木の上の枝と枝を風属性の“瞬時の浮遊(跳躍の強化)”を駆使しながら移動し、良い狩場を探している途中、耳の鼓膜が割れるような勢いのある音が頭上で発生し、反射神経でビックリしながらも上を見上げる。

 

 何かが空から降って────?

 

「────きゃ?!」

 

 移動中だったので着地が甘かったらしく、足を踏み外そうになるが移動の勢いを使い必死にしゃがみ、枝を両手で握り一回転した後座る。

 

「痛い……」

 

 まるで鉄と鉄の衝突が頭の横で起きた感じだ。 キーンとするが……さっきのはな────

 

 考えを纏めている最中にまた大きな音がした。今度は火山が噴火したような音がし、木が揺れる事数分。

 

「今のは……何? 流れ星かしら?」

 

 流れ星であるならば冷えるまで近くにいて採取すれば貴重な素材が入手出来るかもしれない。そう思った私は()()()が落ちたと思う方向へ駆け出していた。

 

 私は流れ星が落ちる際なぎ倒した木や千切れている枝を避けながら、土煙を出している“ソレ”を見た。

 

「何なのかしら、あれ?」

 

 シューシューする音がし、空気の流れが“ソレ”から発しているのが分かる。

 

「空気を出す流れ星?」

 

 見ている内にみるみる赤かった表面の色が変わる。

 

「え、もう冷えた?」

 

 まさかと思いながら、変な感覚と音が“ソレ”の方向から数度私の体を覆う。

 

 何だろう。まるでネットリする様な、体の中を探るような、頭を圧迫する様な嫌な感覚だった。

 

「ッ!」

 

 周りの空気が変わるのを感じ、私はさらに上の枝に上がった。一分も待たずにすぐ下を興奮したラージウルフの群れが私と同じように枝と枝を移動し“ソレ”の周りの木に潜む。

 

 こんなに興奮しているラージウルフは見た事が無い。さっきの変な感覚のせいかしら? 風上とは言え、こんなに近いのに察知されている様子が全く無い。

 

 急に空気が抜けるような音がし“ソレ”が卵の殻一部分を割ったかのように開き、()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()?  まさか、(いにしえ)()()()?!

 

 本当に()()()なら今すぐに事切れるまで射抜かないと大変な事になる!

 

 “ソレ”から出て来たのは斑模様(まだらもよう)の見た目をした服と、背負いカバン?、をした人だった。持っているのは何かの鉄の塊?

 

 おかしい、()()()が伝承通りならば鋼の体で出来ているはず。だが“コレ”は見るからに“人”だ。 天空人(仮)として今は名称変更しておこう。

 

 暗い髪色に平たい顔で周りを呆けた表情でキョロキョロと見る。

 可愛いと思ってしまうのはホリネズミみたいな仕草だからだろうか────? 前に

 

「��?!」

 

 天空人(仮)にラージウルフの一匹が襲い掛かり、天空人(仮)の斑模様(まだらもよう)の背負いカバンが若干破れる。

 天空人(仮)が驚きの声を上げ前に躓きながらもラージウルフに持っていた鉄の塊を振りかざす。

 

「��!」

 

 振りかざした途端、紙袋が破裂したような音が連続で響き、鉄の塊に付いている筒のような先端から火がでる。

 

 あれは何?

 

 辛うじてだが火が出る瞬間、筒の先端から()()()出るのを見た。っと思ったらラージウルフの体に無数の穴が開く。

 

「ギャン!」

 

 ラージウルフが痛がり、口に入っていた背負いカバンの布が落ちる。

 

 今のは魔術? 魔力の流れが全く感じなかった。矢の類でもない。

 

 ラージウルフの姿を見た天空人(仮)はさらに目を見開き、驚きの顔をしながら後ずさる。

 

 あ、そっちは危険です!

 

「グルルルルルル!」

 

 そう思った瞬間、木の上から群れの数匹のラージウルフが飛び降りて天空人(仮)に襲い掛かっていった。思わず私は弓に矢を構え、奇襲の機を窺うラージウルフを射抜き始め、存在を察知されてしまった。

 

「クッ────!」

 

 襲い掛かってくるラージウルフ達をかわし、彼らの眉間や足を射抜き、時にはすり抜けざま腰にある短剣で斬る。

 

 魔術、弓術に剣術を駆使し、周りにいたラージウルフの駆除をしている間さっきより遠い距離でまた紙袋が破裂したような音が連続で響く。

 

 私は最後の一匹を仕留め、急いで天空人(仮)の後を追った。 紙袋が破裂したような音がまた響き、私が駆け付けた時には天空人(仮)の胸にラージウルフの爪が食い込み、血が────

 

「��?!」

 

 ────血が出ず、体が吹き飛ばされ近くの木に衝突する。ラージウルフは最後の詰めと言う風に襲い掛かり金属がぶつかり合うような音が響いた。

 

「��������!��������!」

 

 天空人(仮)が聞き慣れない言葉でまた叫ぶ。さっきからこの叫ぶ声には()()()()()()()()()。どちらかと言うと、これは哀しみの────

 

 私が考えるよりも先に私の弓から矢が飛び、天空人(仮)を襲っているラージウルフの頭に命中した。絶命したラージウルフを自身から蹴り、彼と目が合った。

 

「���」

 

 天空人(仮)彼はあどけない顔で聞き慣れない言葉で私を見ながら何かを言う。 いや、そもそも天空人(仮)なのか?

 

 私が枝から飛び、瞬時の浮遊(跳躍の強化)の応用で足腰や膝に負担をかけず地面に降りた。 その瞬間だけ天空人(仮)から強い眼差しを受けた気がしたけどそれはすぐに消える。 私が天空人(仮)を見ると彼が立ち上がった。立ち上がる際に目眩がしたのか、自分の太ももに軽く拳を叩きつけた。

 

「�、����────」

「私の言っている事、わかりますか?」

「�? ��������────?」

 

 本当に聞いた事が無い言葉。 声から彼は男性と考えられるが、少し微妙ですね……がもし彼が本当に()()()ならその名に反応するはず。

 

「あなたは(いにしえ)に聞く“天空人”なのですか?」

 

「����」

 

 ……困りました。彼は本当に私が何を言っているのか分からない様ね。 意思疎通の風ならあるいは効くのでは?

 

 私は対象である彼に指を差し────

 

「精霊達ぞ。我の願ひ聞き、この者との話能ひして。“意思疎通の風”。」

 

「��������?!」

 

 私が唱え終わり、天空人(仮)が自分の体に精霊が宿るのを見た瞬間両手で蚊か何かを追い払うかの様にバタバタする。

 

 ……………何か持ち上げた子犬のように腕をバタバタするわね。 って楽しんでいる場合じゃないわ、ラージウルフ達の血の匂いが散漫しているはず。 ここから早く離れなければ────そうだわ。 “天空人”は下々の者に労働をさせていたと言う筈。 これでこの者が“天空人”かどうか────

 

「あの────」

 

「へ?」

 

 天空人(仮)はあどけない表情で私を見る。

 

「────早くラージウルフを持ってこの場から離れたいのですが、手伝ってくれませんか?さっきの騒ぎが他の魔物を呼び寄せる前にしたいのですが。」

 

「あ……ああ、もちろん!」

 

 躊躇も無く答えた。 これは……

 

 私は周りを警戒しながらラージウルフを移動しやすいように前足と後ろ足を近くにあった若くて曲がれる枝を切り落とし、くくり始める。 たまに布が破れるような音がしたので見ると天空人(仮)が薄く巻いた布を手で切り、自分の斑模様(まだらもよう)の服に付ける音だった。

 

 あれは何をしているんだろう?

 

 そう考えながら事切れたラージウルフを共に森の出口に移動し始めた。

 

「さっきはありがとう、俺はマイケル。」

 

「いえ、こちらこそ手伝ってもらってありがとうございます。私の名はケイコと言います。」

 

 話しかけられた。 (マイケル)は落ち着きを取り戻したのかさっきよりハッキリと声を出すようになった。

 

「さっきの矢、君のだろ? いい腕しているな。てか、普通に喋れるようになったな俺達?」

 

 そういえばさっきの鉄の塊の筒のの事を聞きたかった。

 

「いえ、あなたの魔術こそよく発動しているのに魔力の気配を一切発さないとはさぞ名のある魔術師なのでは?私も多少嗜む程度ですが、“意思疎通の風”位なら扱えます。」

 

「魔術?魔力?“意思疎通の風”?」

 

 マイケルはまるでその単語を初めて聞くように聞き返した。 おかしい、どんな人でも多かれ少なかれ魔力は生まれ持つ。 たとえ年を取り、魔力が退化するとしても()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ご存じ無いのですか?」

 

「いや、まあ……うん、色々あって……」

 

「そうですか。」

 

 思わずその“色々”の詳細を聞きそうになりました。 けど、マイケルの声のトーンと目を逸らす表情があまりにも哀しそうでやめました。 

 

 森が暗いからでしょうか?

 

「あ、やっと森の出口が見えてきました!」

 

「へ?」

 

 私達が森を出ると、マイケルから変な声が聞こえた。 何かあったのかとマイケルの方に振り向くと、そこには必死にラージウルフと戦っていた者の顔ではなく、あどけない、まるで世界を初めて見る子供のような純粋な目をした者ががあった。

 

 可愛い。思わず顔が()()()()()でにやけ始める。 彼はゆっくりと私の顔を見た。

 

「?どうかなさいましたか?」

「ああいや、何だか……夢でも見ているんじゃないかって。」

 

 夢? おかしい事を言うのですねマイケルは。 あ、これは彼の所謂(いわゆる)冗談の仕方なのでは?

 

「フフ、私は夢などではなく本物ですよ?」

 

 そう悪戯っぽく返したら彼は目を逸らした。 図星だったようですね。

 

「お~い!ケイコや、デカいウルフだな!」

 

 小麦畑の間にある道を歩いていると庄屋(しょうや)のハイムさんに声をかけられた。

 

「ええ!今から肉屋に持って行く所なの!新鮮な肉がもうすぐ売りに出るわよ!」

 

 ハイムさんは私の事を幼少から知っている、数少ない知人。

 

「こりゃ早いとこ、畑仕事をいったん切り上げてカミさんに伝えなきゃ損だな!ん?その坊主は誰だ?この辺じゃあ見かけねえ顔だな。」

 

 ハイムさんがマイケルを見、目を細める。

 

「え?」

 

「どこから来たんだ?」

 

「お、俺は────」

 

「彼、森の中を遭難していたみたいなの!彼を助ける代わりに私の手伝いを申し出たの!」

 

 マイケルの答えを遮り、嘘でも本当でもない事を言う。

 

「何だ、ようやく嬢ちゃんにも“コレ”が出来たのかと思ったぜ!」

 

 そう言いながらハイムさんが笑いながら小指を立てる。

 

「“コレ”?」

 

 あれは何だろう?

 

「ブッ?!」

 

 小麦が口に入ったのか、よくわからない吹き出し方をマイケルがするのを聞こえた。 あの立っている小指に何の意味があるんだろう?

 

「“コレ”って何ですか?」

 

「がっはっはっは!ただの冗談だ!さて、いったん切り上げるぞお前ら!」

 

 はて? 何なのだろう?

 

 そう考えている内にメンレにあるいつもお世話になっている肉屋に私は入る。

 

「ごめんくださーい!」

 

「はいよー!」

 

 奥から店主のサワモさんの声がする。少しするとお店の奧から出てきて────

 

「よーケイコ、いつもより早かったな!」

「ええ、森でラージウルフの群れと遭遇して────」

「お!こりゃ期待出来そうだな!」

「いえ、それが急に凄い轟音がしてラージウルフの群れ共々森から逃げたのですよ。その際に森の浅い所で群れからはぐれたラージウルフを仕留めまして────」

「あー、そりゃ災難だったな。 あの音はもしかして(りゅう)が争っている音じゃないかって噂でな────」

 

 確かに。 あの音だったら(りゅう)が暴れているように聞こえなくもないですね。

 

「で俺ァ言ったんだ、『(どらごん)ならともかく、(りゅう)だったら俺たちは今頃死後の夢の中さ』ってな!」

「ア、アハハハハ」

「ッと済まねえ、ラージウルフの買い取りだな。“これ”でどうだ?」

「それは銀貨五枚ですね────」

「アアン?! 銅貨五十枚の意味だ!」

「それは駄目ですね。 少なくともいつもの値段の銀貨一枚以上でないと悪い冗談にしか聞こえませんよ?銀貨四枚」

「そりゃ高すぎる! 銀貨一枚だ!」

「あら? ハイムさん達も久しぶりの大物の肉で急いで畑の収穫を切り上げましたよ? 銀貨三枚」

「ぬぐ……銀貨二枚」

「銀貨二枚に銅貨五十枚」

「……ほらよ、持ってけ!」

 

 にやにやしながらサワモさんが貨幣を数え、銀貨二枚に銅貨五十枚の入った革袋が渡される。

 

 良い人なんだけど「元商人のプライドが許せへん!」とか言って毎回ああいうやり取りをみんなに強いる。

 

「で? 肝心のラージウルフは?」

「あ、それなら大きいので外に連れの者が────」

 

 サワモさんと一緒に出るとそこは地面にこすりつける勢いでひれ伏している人達に困惑しているマイケルに。

 

 一瞬心が冷えかけたが向かいの通りの人達がマイケルを見ているのが分かる。でも何で?

 

「あのう────」

 

 何が起きたのか聞く為にマイケルに声をかける。

 

「いや、俺に聞かれても────」

 

()()()()()、どうかお許しを────!」

 

 マイケルの近くにひれ伏している子供と母親らしき女の人がそう叫ぶ。 マイケルはもっと困惑する表情で何が起こっているのか付いて行けないような感じがした。

 

 ここは────

 

「皆さん頭を上げてください!確かにこの方は()()()()()()()ですがこんな事を望むような方ではありません!どうか、頭を上げてください!」

 

 ゆっくりとだが恐る恐る頭を上げながらひそひそと“私がお願いするのであれば”と話し合っているのを聞こえてくる。

 

 これでこの場の人達は勘違いをした何度と恥ずかしみを受けず、かつマイケルは温厚な他所の者として受けられる。

 

「では、買い取りありがとうございました。」

 

「あ、ああ。」

 

 私は何もなかったようにサワモさんに笑顔を向け、マイケルの手を引き歩き始めた。

 

 後ろでサワモさんが私を呼んだと思うけど今はなるべく早くマイケルが何をどうやったのかあんな事になったのか知りたい。

 

 少し歩いて()()強引に路地裏にマイケルを引きずり込み────

 

「って力つよ?!」

 

「さっき何が起こったのですか? 何故あんな事に?」

 

 さっきの平伏す人達の景色を思い出しながらマイケルに事情を聞いた。

 

 ……

 

「成程……そう言っては仕方が無い事ですね。」

 

 マイケルは悪気が無く好奇心旺盛な子供とやり取りしていた事が分かった。 これは私の所為でもある。少しの間だけと思い彼を見知らぬ土地で一人にしてしまった。

 

「えっと、“騎士様”にも驚いたが、“魔術騎士”って────?」

 

「“騎士”など普通は貴族や貴族に所縁ある者達が普通なる職業ですわ。“魔術騎士”等となると“騎士”の中にさらに上の上位職業になります。」

 

「な、成程。いや、すまん。軽率だった。」

 

 マイケルが頭を下げた事に少し驚きながらも何とも言えない気持ちが沸き上がる。 

 

「いえいえ、わかって頂けるのなら幸いです。 ですが今からすぐ私の家に行き、詳しい話を聞かせてもらいます。」

 

「ア、ハイ。」

 

 何だろう、マイケルを放って置けない感じがする。

 思えば、この人との出会いと会話から私の“日常”が変化し始めたのだと思う。 

 この時は夢にも思わなかったが。

 




日本語独学者なので訂正すべき所などがあれば是非とも感想などお願いします!

初めて日本の古典を(チョロンと)使いましたが合っているかどうか。。。



ではまた、次の話で!



え? 今回は予告っぽいの無いかって? 今回は無いです。 強いて言うのならばケイコ視点続な感じです。
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