100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第四章~2体の王が統べる国~
プロローグ ドワーフの国行き切符


「鍛冶師ムラマサよ、よくぞ参った」

 

 ラビリンシア王宮、玉座の間。

 そこでバーニンはムラマサを迎え入れていた。

 王の護衛として、王立近衛兵総長ランテと1番隊隊長セイザーが控えている。

 ムラマサは聖剣デュランダルを修理した人物。

 ならば、聖剣デュランダルと同等の武器を持っていてもおかしくはない。

 そういう強力な武器を王に向けられた場合の、ランテとセイザーの護衛である。

 ちなみに、ナンタン領主のローラと聖剣の担い手となってしまったリカルドも王宮に来ている。

 この場はあくまでムラマサの処遇判決が主であるため、その2人は出席していないのだ。

 

「で、ボクの処遇はどうなるんですか?」

 

 前置きも礼儀もなく、結論だけを率直に求めたムラマサ。

 その態度が、セイザーには無礼に映る。

 

「貴様……」

「良い、セイザー。この者は我が国の臣民ではない。余に礼儀を尽くす義務はないのだ」

「……出過ぎた真似をしました」

 

 セイザーがムラマサに剣を抜こうとするが、バーニンはそれを制した。

 バーニンはムラマサが『鍛冶神アチューゾ』である可能性を考慮し、神の不興を買いたくないのである。

 そのため、尤もな理由を付けてセイザーを諭した。

 セイザーは誇りある近衛兵かつ貴族として、国王の命に反さない。

 眉間の(しわ)を残しながらも、セイザーは剣から手を離す。

 

「して、其方がムラマサで間違いないか」

「はい、ボクがムラマサです。伝説で度々出てくるムラマサは、ボクの先代たちになります」

 

 バーニンが名前を改めて確認すれば、ムラマサは伝説に出てくる同名の者についても含めて返答した。

 バーニンはその事も訊くつもりだったので、手間が省けたのだ。

 

「貴公が聖剣デュランダルを修理したのだな?」

「そうですよ?修理と言っても応急措置ですけど。さっさとしっかり直したいので、許可だりなんだりを貰えませんか?」

 

 あまりにも無礼なムラマサ。

 セイザーは眉間の皴を深くしているが、バーニンは表情を変えず、ただ、背中に薄く汗を浮かべている。

 正直、バーニンはムラマサの扱いに困っていた。

 相手が鍛冶神であるなら、満足してもらってお帰り願いたい。

 だが、好き勝手されるのは避けてもらいたい。

 さて、神の自由を制限しながら満足してもらうには、いったいどうすべきだろうか。

 

「……貴公は何を望んで修理し、何を望んで修理せんとしている?」

 

 何はともあれ、どうしてそうしたか、これからどうしたいのかを判明させて方が良い。

 バーニンはそう考え、質問をひねり出した。

 内心かなり緊張している。

 

「元々は聖剣デュランダルの回収に来たんですよ、ナンタン家が聖剣を失くしたっていう噂を耳にしましたので。それで、馬鹿の手に渡って誤用とか悪用とかされる前に、回収したかったんです」

 

 聖剣デュランダルには魂が宿っており、その魂が担い手を選ぶ。

 だから、悪しき者を担い手に選ぶ可能性は皆無だ。

 しかし、剣として使い道はほぼないが、剣以外の使い道はあるだろう。

 未知の技術で製造されている聖剣なのだ。

 その未知の技術を解き明かそうと、その聖剣を求める鍛冶師は当然出てくる。

 最悪の想定が、技術を解き明かされてしまった場合だ。

 ムラマサは魂を扱う技術が広まってほしくない。

 魂はとても繊細で、壊れやすい。

 技術を解き明かした鍛冶師がその技術に習熟するまで、どれ程の魂を壊してしまうのか。

 1つだって壊されたくないのが、ムラマサの本音である。

 よって、魂を扱う技術が解き明かされぬよう、ムラマサはムラマサの作品を回収しなくてはならない。

 

「まぁ、結局は失くしていなかったみたいですが。でも折れていたから直しました。その理由は、折れたままでは剣がかわいそうだったのと、防衛機構を正常にしたかったから、です」

「防衛機構とは?」

 

 しっかり直したい理由はまだ回答されていないが、バーニンはそれより先に防衛機構について追及した。

 聖剣カリバーンを所持するバーニンは、聖剣に防衛機構があると聞いた覚えがない。

 防衛機構は聖剣デュランダル限定のものなのか、バーニンは気になったのである。

 

「単純に、悪用されないように聖剣自体が抗います。そうですね、聖剣デュランダルなら悪用しようとした輩が触れた瞬間、その輩を燃やしたりするんじゃないですか?」

「……なるほど」

 

 バーニンはムラマサのその説明で察した。

 聖剣デュランダルには聖剣カリバーンや聖剣エクスカリバー同様、魂が宿っていると。

 同時に、その魂が宿っている事、それが防衛機構なのだと。

 

「えっと、もう1つ質問してましたよね?どうして完全に直そうとしているか、でしたか」

「……そうだ」

「その理由も一緒です。折れているのはかわいそうだし、防衛機構を正常にしたいからです。そもそも、友人が危機に瀕していなければしっかり直す予定だったんですよ」

「……」

 

 バーニンはムラマサの目を注視したが、その目はとても純粋な輝きを灯しており、ムラマサが目を背けるという事もない。

 ムラマサに悪意も後ろめたさもない事が感じ取れた。

 隠し事があったり、価値観が大衆と違っていたりはするが、純粋な人物である事はバーニンにも感じ取れたのだ。

 

「相分かった。貴公に聖剣の修理を許可しよう」

「話が分かるじゃないですか、ラビリンシア王。じゃあ、ボクは修理したいので―――」

「だが、条件がある」

 

 バーニンは修理の許可を出したが、退出の許可はまだ出さなかった。

 いつものムラマサだったらそんな許可を待たないが、今回ばかりは待つしかない。

 いつの間にか、出口の前にランテが立ち、行く手を遮っていたからだ。

 

「……まぁ、ボクにも一応非がありますからね。余程酷い条件じゃなければ呑みますよ」

「安心せよ。貴公に害のある条件ではない」

 

 ムラマサはランテを退かせる気がしなかったので、改めてバーニンと相対した。

 バーニンは退出しようとした事を咎めず、話を進める。

 

「貴公はミナ・ミヌエーラへ向かい、その国にしばらく在留せよ」

 

 そうして提示した条件の思惑は2つ。

 我が国の戦力となるだろう聖剣デュランダルの修理なら、鍛冶が盛んであるドワーフの国で最高の環境を与えたいという事。

 それと、伝説の鍛冶師をそんな国への手土産として持っていきたいという事であった。

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