100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第十四節 いざ、ダンジョンへ

「勇者テノールよ、貴公に王命を言い渡す。ダンジョンを攻略せよ」

 

 パースから王命が降ると告げられた翌日。玉座の間にて、威厳に満ちたバーニン王が己の仕事を果たした。

 

 王命が告げられる日は予定通りなので良いのだが、調査から攻略にすり替わっている件について。

 どこに抗議状を送れば良いのか、非常に訊きたい現状だ。

 

「承りました。見事ダンジョンを攻略してみせましょう」

 

 もちろん訊ける訳はないので二つ返事で王命を受けるしかない。この国の王は勇者を便利な小間使いと勘違いしている故に。

 

 とにかく、玉座の間でやる事は終わり、さっさとダンジョン攻略に駆り出される人員に合流する。

 合流場所は、複数の隊が集まる場合に使われる場所であり、共通資源が確保されている近衛兵中央隊舎。

 その隊舎の会議室にはすでに数名の近衛兵が席に着いており、見知った顔が少なくない。

 

「やぁ、テノールさん。今回も私が足ですよ」

「毎度お世話になります、パースさん」

 

 一番面識があるため、パースが最初に声をかけてきた。

 今回もと言うが、そもそもこの人が俺の足でなかった時がない。

 

「ここに居る方々は全員ダンジョン攻略の人員という事で、間違いないでしょうか」

「はい!勇者様のお供に志願させていただきました!」

「右に同じく。弟共々、よろしくお願いします」

 

 俺の質問へいの一番に返事をするのがベアウ、続いてウィン。

 ベアウがやる気充分であるのに疑いようはなく、ウィンも気合が入っていると窺える。

 

「1番隊からその2人で、我が隊4番隊は私含めて4人。副隊長は来ませんでしたが、隊員の中でも優秀なのを集めましたよ」

「近衛兵4番隊所属、ニオです!」

「ユンです!」

「ベンです!」

 

 パースが指し示した彼の部下ら3人(内約:女性・女性・男性)は規則正しく背筋を伸ばした。

 何故だろう、背丈も髪型も顔立ちも違うはずなのにまるで個性が感じられない。

 

「そして最後が2番隊の隊長である彼女ですね」

「2番隊からは隊長自ら来てくれたのですか」

「一応私も4番隊の隊長なんですけどねぇ」

 

 パースが小さく呟いていたが、聞こえなかった事にした。

 そんな事より2番隊隊長だ。

 魔術戦闘を専門とするその部隊と俺は初接触であり、当然にその部隊長とは初邂逅である。

 彼女と呼ばれていたし、きっと綺麗な女性なのだろう。

 

(気になってるのはやっぱそこかよ。お前は外見でしか女を見れねぇのか?)

(お前については中身も見た上で嫌いだから安心しろ、エクスカリバー)

 

 そんなくだらない思念のやり取りをしている間に、1人の女性が俺の前へと歩み出る。

 顔は、かなりきつめではあるが美人だ。体格も、そのきつめの美形に似合うすらっとした物である事が、軽装鎧の上からでも見て取れる。

 

「近衛兵2番隊隊長、トリス・トーランド」

「初めまして。僭越ながら勇者の称号をいただいております、テノールと言います」

 

 トリスから差し出された手を握り、握手を交わした。

 それから、すぐに彼女は手を放し、歩み出る前の立ち位置へと戻る。

 

(……え?それだけ?)

(体をなめ回すように見てたから、嫌われたんじゃねぇか?)

(馬鹿を言え、女性に対して俺がそんな不躾な視線を向けるか!ただ俺は宝物を鑑定するように仔細に観察しただけだ!)

(それを『なめ回すように見る』っつうんだからな?)

 

 なんという事だ。まさかエクスカリバーがしているような勘違いを、トリスにまでされてしまったか。

 

「失礼、テノールさん。彼女は少し不愛想でして、誰に対してもあんな態度なんですよ」

「あ、ああ、そうでしたか。嫌われたんじゃないかって、ちょっと心配してしまいました」

 

 パースが俺の狼狽える姿に見かねたか、トリスの普段の態度を補足してくれた。

 どうやらやはりエクスカリバーは勘違いだったらしい。

 

(チッ!ただの変わりもんかよ)

 

 自身の勘違いを他人のせいにして舌打ちするんじゃない。

 

「それで、ダンジョン攻略の人員はこれで全員ですか?」

「ええ、これで全員です」

 

 近接戦闘専門の1番隊から2人、魔術戦闘専門の2番隊から1人、輸送部隊の4番隊から4人。俺を含めて計8人。

 

(……少なくない?)

(ダンジョンは基本狭いからな、少人数で行くのが常識だぜ?4番隊の隊員はともかく、他は悪くねぇ。ベアウも及第点だ。大抵のダンジョンは攻略できるだろ)

 

 エクスカリバーから常識を教わる事になってしまった。

 しかし、俺はダンジョン攻略素人であり、エクスカリバーは本人曰くダンジョン攻略の達人である。

 ここは素直に聞き入れておこう。

 

「じゃあ、全員の顔合わせが済んだところで、ダンジョンへ向かいましょうか。馬車を隊舎の外に用意してあるんで、乗り込んじゃってください」

 

 この中で最も口が回る隊長・パースが取仕切り、ダンジョン攻略への旅立ちを先導した。

 

「ダンジョンの所在地はホッタン領とチューオ領の境付近。馬車で2日かかる予定です。快適な馬車の旅をお楽しみくださいね」

 

 こうして、俺のダンジョン攻略任務が始まろうとしていたのだった。




『ホッタン領』
…ラビリンシア王国の王都ドラクルがある領地。領主に統治の自由裁量がある程度許された5つある区画の1つ。しかし、他4つの区画と違い、この区画は国王の直接統治下である。ラビリンシア王国全体からすると、この区画は北側にある。
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