100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者 作:RAINY
「これは……。何が起こっている……」
ラビリンシア王宮の国王執務室にて、バーニンは机の上に3つの封筒を几帳面にも並べ、苦悶していた。
国王がそのように苦い感情を表に出すのは、避けるべき行為である。
王が苦しむ顔など、国民に不安しか与えない。
自身しか居ない執務室とはいえ、普段から感情を殺しておくに越した事はない。
でも、今回ばかりは情状酌量の余地があるかもしれない。
その理由は――
「ミナ・ミヌエーラ双王、パローナ教皇、パンデモニウム天皇。そんなお歴々が、どうして一堂に会そうとしているのだ……!」
――その並べられた手紙が、強国に数えられる国々の
それも、ラビリンシアへ来訪を告げるための手紙である。
来訪日時は多少合致しないが、滞在期間は確実に重なるのだ。
ラビリンシアも約1000年保っている強国ではある。
だが、1000年以上続く国々に比べれば、まだまだ若輩も良いところだ。
そう。ミナ・ミヌエーラ、パローナ、パンデモニウム。その3国は、1000年以上続く国なのである。
「
バーニンは頭を抱えた。
人間として最良の可能性を考えたいところだが、王として最悪の可能性を考えてしまう。
例えば、それら強国が手を組んで、ラビリンシアを崩しにかかって来ているのではないかと。
(最悪を想定するのが国王としての務めでしょうが、少し落ち着きなさい。あれらの国は平和協定を結んでいるけど、協力関係ではないわ。少なくとも、協力して攻めてきている、という事はないでしょう)
そんな悩める国王に、救いの手が伸ばされる。
もちろん、カリバーンだ。
前述の『自身しか居ない』という前提は覆るが、カリバーンはバーニンの良き理解者であり、ラビリンシアの存続に尽力する者であるから問題ない。
(とりあえず、双王は手紙の内容を額面通り受け取って良いでしょう。あの2体は国土を広げる事に消極的で、戦争も好んでいないでしょうから)
カリバーンは長い年月で蓄積された双王の情報より、双王の性格を分析していた。
双王はこの1000年、侵略行為を行っていないのだ。戦争も、自身らから仕掛けた事はない。
仕掛けられた際も、双王が敵国家に直接乗り込んで、脅迫まがいの和平を締結させるという方法を取っている。
そこまでされて和平に応じなかった国にも、戦争犯罪人を抹殺するに留めているのだ。
実に寛大すぎる処置である。
(対魔王軍に関する同盟の創設、及びその同盟へのミナ・ミヌエーラ加盟。あっちも魔王軍に手を焼かされているようだから、これは真意と考えて良いでしょう)
そんな双王が手紙で願い出ていた事。それが、対魔王軍同盟の創設。
双王はラビリンシアの手で、その同盟を創設してほしいようだ。
確かに、人類の防波堤であるラビリンシアが創設する事によって、その同盟の対魔王軍という理念は強く強調される。
それに、今まで果たしてきた役目により尽力しようという気概が窺え、多くの者がその理念を信じ、その同盟の意義を認めてくれるだろう。
そういう意味で、やはり対魔王軍同盟はラビリンシアが創設すべきなのだ。
(……余も双王の温厚さは把握している。彼らの意見も、合理的だ。真であろうと、判断すべきか)
(念のため、魔王軍幹部を見過ごしている事への反論材料と賠償は用意しておこうかしら?まぁ、本当に念のためだけど)
双王については、手紙の内容をそのまま受け止め、万が一に備える。
そういう対策をすると、バーニンとカリバーンは可決した。
これで、問題は1つ解決。残り2つである。
(……教皇と天皇からは、会談したい事があるという旨しか、手紙には記されていない)
(時期として、高確率なのが魔王軍関連でしょうね。それ以外は、輸出入の関税撤廃とかかしら?わざわざ
残り2つで考えられるのが、こちらもミナ・ミヌエーラと似たように魔王軍関連。
教皇も天皇も、魔王軍の活発化はもちろん、ミナ・ミヌエーラに潜入工作員が居た事は耳にしているはずだ。
ならば、手をこまねいている訳もない。打って出たいのが、手を焼かされている者らの総意である。
故に、会談の内容は魔王軍関連である可能性が高い。
(もしかしたら、その2つの国からも責任追及されたりしてね)
(怖い事を言わないでくれ)
パローナとパンデモニウムから、魔王軍を見過ごしている事について責任追及されないか。
カリバーンは冗談めかしながら、その可能性を提示した。
その可能性に、バーニンはつい身震いしてしまう。
強国2つ、もしくは3つから責任追及されたら、ラビリンシアと言えど賠償しきれない。
その可能性は最悪の可能性、その1つなのだ。
(交渉材料を準備しておきましょう。あまりしたくはないけど、私や妹を放出する事も検討しておきなさい。強力な武器だとしても、たかだか武器なのだから。国を失うよりははるかに良いわ)
ラビリンシアを救えるのであれば、カリバーンは喜んで身を捧げる覚悟だった。
カリバーンはそれ程この国を、この国の成した勇者を、気に入っているのだ。
(貴公の覚悟に感謝する。そして、そのような事態を迎えぬように努めよう)
バーニンはカリバーンの意見を頭に入れつつ、その意見を通さぬように頭を
そうして、ラビリンシア国王は長く、自国のために