100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第十二節 予定の決定

 教皇の凶行に付き合う事数日。

 俺は無事にドラクルへと辿り着いた。

 この道中、エクラタント教皇に同室での宿泊を誘われたり、馬車内で舌を這わせかけられたりと色々あったが、無事だったのだ。

 あの猛烈に迫ってくる教皇と一緒に居ての無事は、ちょっとした奇跡なのではないかと疑ってしまう。

 

 とにかく、ドラクルの城門を潜ったところでエクラタントとは別れ、一旦王宮の自室へと向かった。

 バーニン王から何か話があれば、そこへすぐに使いを寄越すだろうと考えたからだ。

 

「テノール様、国王陛下が執務室にてお待ちです」

 

 読み通り、自室に着いた瞬間、使いが寄越されて呼び出された。

 ドラクルに帰ってきたばかりだが、国王に逆らえる訳もない俺は、素直に国王の執務室に足を運ぶのだった。

 

 

 

「勇者テノールよ。依頼からの帰還後、即座に馳せ参じてくれた事を感謝する。そして、エクラタント教皇の対応に努めてくれた事は、感謝が尽きない」

 

 エクラタントに俺が拉致された事、バーニン王は既に知り得ていたようだ。

 近衛兵であるウィンとベアウがその現場を目撃しているのだから、報告が上がっていても不思議ではないか。

 

「勿体ないお言葉です。俺はただ、エクラタント教皇猊下と楽しくお喋りしていただけでしたから。何も努めてはおりません」

 

 俺は本心から謙遜した。

 だって、本当に世間話を軽くしただけだ。

 俺は何も頑張っていないし、苦労していないのである。

 

(そりゃ苦労もねぇわな。美人に抱きしめられて役得だったもんな)

 

 役得だった事は肯定したいが、エクスカリバーの言葉に肯定するのは癪だ。

 なので無視しておく。

 

「貴公の広い心には、頭が下がる思いだ。貴公はこの事を功績とせぬだろうが、余は貴公の成した事を覚えておこう。其方のおかげで、教皇は随分と機嫌が良い」

 

 謙遜してなお、バーニン王は俺の功績であると押し切った。

 それ程、エクラタントを警戒していたのだろうか。

 理解できなくはない。

 あの教皇が不機嫌だった時、何を仕出かすか予想もできないのだから。

 

「お褒めに(あずか)り、光栄です。ですが、この場がその功績に対する褒賞を賜れる場であるなら、俺は辞退させていただきます」

 

 功績は功績でも、小さな成果で得られる褒賞など高が知れる。

 なので、俺は今回の褒賞が次の分に上乗せされるよう、受け取らない方針に決めた。

 故に、丁重にお断りさせていただいている。

 

「そう急くな。この場は貴公に賜す土地の候補が纏まった事と、建国記念祭での行事が決まった事を報告する場だ」

 

 バーニン王は土地の一覧表を記した紙と、行事の予定表を記した紙をこちらに差し出した。

 土地の方は後で吟味するとして、重要なのは予定表の方。

 俺が主役を任される行事がなんなのか、その予定表を読み進めていく。

 

「……武闘会、ですか?」

「そうだ」

 

 例年にない行事があったため、それかと口に出してみれば、見事当たりを引いたらしい。

 バーニン王は頷き、その詳細を説明する。

 

「参加資格はなく、腕に覚えがある者を広く募るつもりだ。その参加者たちで勝ち抜き戦をしてもらい、優勝者は賞金及び勇者と戦える権利が得られる」

 

 なるほど。選定の義に取って代われるかは怪しいが、面白い試みではある。

 何しろ、この武闘会は強者を見出せるのだ。

 

「将来性のある者、元々の実力者。その者たちを近衛兵、ないし何らかの予備戦力として確保できますね」

「強者を国家戦力に組み込むかは、まだ検討中だ」

 

 やはり、バーニン王はそこまで思慮が至っていたらしい。

 『検討中』というのは、確保した強者の所属する部署が準備できていないからだろう。

 魔術師なら2番隊に所属させられるが、剣士などの近接戦闘を主とする者では、貴族でないと1番隊に所属させられない。

 所属させても、セイザーが難癖付けて追い出すのだ。

 国王の権力でセイザーの難癖をはね退けてしまえるのに、バーニン王はそうしない。

 

「とりあえず、俺は優勝賞品として戦えば良いのですね」

「貴公の役目を明確にすべく、王命を降そう。勇者テノールよ、この武闘会の優勝者と勝負せよ」

 

 国王の考えを分析するのもそこそこに、俺は俺の役割をしっかり言及すれば、バーニン王は分かりやすく明言してくれた。

 王命という事は、これも褒賞が出る。

 しかし、俺には多少懸念があるのだ。

 

「拝命いたします。ですが、大丈夫なのでしょうか。俺、おそらく負けますよ?」

 

 そう。俺は魔物や悪人以外に本気を出せない。もとい、エクスカリバーが力を貸してくれない。

 そういう弱点があるために、俺は負ける。確実に負ける。

 ただでさえ勝ち抜き戦で勝ち上がってきた相手だ。俺が適うはずはない。

 

(後ろ向きな自信だな)

 

 何か言いたい事があるなら力を貸せ。

 

(絶対に嫌だね)

 

 だろうな。期待してない。

 

「その点は大丈夫だ。貴公がこの手の戦いで本気を出せないのは周知の事実。国の威信を考慮してくれたのだろうが、貴公の心優しい姿こそ、我が国の威信となる」

 

 相変わらず、俺が躊躇してるために本気を出せないって話になってるが、都合が良いので訂正しない。

 

「了解しました。では、憂いなく務めを果たさせていただきます」

「そうせよ。……用件は以上だ。退出を許可する」

 

 バーニン王から聞くべき事は聞き終えた。

 俺はバーニン王の許可に促されるまま、執務室から退出するのだった。

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